省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

「不均等黄変・褪色ネガ写真のデジタル補正術」他公開のプラグインバージョンアップ

f:id:yasuo_ssi:20210310145522j:plain


「不均等黄変・褪色ネガ写真のデジタル補正術」(5-1) および、「GIMP, Photoshopで使えるフィルム黄変部分画像マスク作成スクリプト」で公開のImageJ用プラグインスクリプトをバージョンアップしました。

バージョンアップ内容は下記のとおりです。

16bitバージョンにおいて、読み込もうとするファイルのファイル名や、ファイルのあるフォルダ名にスペースが含まれている場合、読み込みエラーが発生するのを修正。

なお、8bit用プラグインは変更ありません。

 

続きを読む

不均等黄変ネガ写真を様々な方法で補正してみる2 [手法比較事例紹介]

f:id:yasuo_ssi:20210310145522j:plain



 前回は、黄変の程度は強いけれども、Bチャンネルの毀損はさほど進んでいないケースを取り上げました。今回は、黄変が様々な色域まで及んでおり、かつ周辺のBチャンネルの情報抜けも起こっているケースを取り上げます。前回より毀損が進んでいるケースです。なお、以下の手法分類に関してはこちらのページをご覧ください。

 

 オリジナル画像はこちらです。1983年に飯田線で撮影したクハユニ56011の写真です。フィルムはフジのHR400です。高感度フィルムほど変色しやすい傾向にあります。

f:id:yasuo_ssi:20201109210402j:plain

図0. オリジナル画像

 黄変の範囲が様々な色域までに広がってしまっているとともに、周辺部分でBチャンネルの情報抜けに伴う青紫化が起こっています。黄変の程度は前回より弱いですが、実は補正は前の事例より厄介です。どの程度Bチャンネルの毀損が進んでいるかBチャンネル画像を見てみましょう。

f:id:yasuo_ssi:20201109210811j:plain

図0-1. Bチャンネル画像

 ディティールが油絵のマチエール状になるほど劣化が進んでいるわけではありませんが、周辺の情報抜けと広い色域にわたる変色は明らかな状態です。真ん中部分が薄暗く変色しているのもわかります。これが黄変の原因です。フィルムの損傷程度としては、前回の尾瀬の写真が軽~中程度(4/10)だとすると、今回の写真は最重傷とまでいかなくても中~重傷、7.5/10 ぐらいの損傷程度かと思います。ディティールが油絵のマチエール状になると最重傷クラスです。

続きを読む

不均等黄変ネガ写真を様々な方法で補正してみる [手法比較事例紹介]

f:id:yasuo_ssi:20210310145522j:plain


 当サイトで公開している「決定版! 不均等黄変・褪色ネガ写真のデジタル補正術」の1回目で、不均等黄変写真の補正手法について大きく4つに分類しておきました (2020. 10 追加加筆内容)。 それぞれの分類手法を使うとどう違うのか比較事例を載せておくと、不均等黄変写真の補正を考えている方へのサポートになると思いましたので、本記事でそのうち、補正を行うにはちょっと大変な「マニュアル色塗り補正法」を除く3種類について比較します。

 

 まず補正元となるオリジナル写真を提示します。この写真は1991年に尾瀬で撮影した写真です。オリジナルフィルムはコニカカラーで、ラッシュプリントを依頼するため、フジカラーのラボに現像依頼を出しました。それをコニカミノルタのフィルムスキャナー Dimage Scan 5400 IIを使い、Vuescanの退色復元および色の復元をオンにして取り込んだものです。実は色の復元をオフにして退色復元だけ使ったほうが黄変の程度はややましになったのですが、補正サンプルとして色の復元をオンにしたものを使います。

 なお、同時期のフジの純正フィルムですと(保管条件は同一)、もちろん褪色は進んでいるので退色復元はオンにしなければなりませんが、不均等黄変はないか、あっても軽微な程度で済んでいます。やはりコニカのフィルムであったためか、あるいは非純正処理だったため不均等変色が進んでいることは間違いありません。しかも変色はなぜか空の部分に限られています(逆にそれが不幸中の幸いだったかもしれません)。これも不均等黄変にありがちな典型的な傾向かと思います。但し、やはり不均等褪色にありがちな、画像周辺部分のBチャンネルの情報抜けによる青紫色化はまだ起こっていません。黄変の程度は強いですが、Bチャンネルの毀損の程度は見た目ほどはひどくはないかと思います。

 

f:id:yasuo_ssi:20201030170448j:plain

図0. オリジナル
続きを読む

「不均等黄変・褪色ネガ写真のデジタル補正術」公開のプラグイン緊急バージョンアップ (2020.11)

f:id:yasuo_ssi:20210310145522j:plain


決定版! 不均等黄変・褪色ネガ写真のデジタル補正術」(5-1)で公開しているImageJ用プラグインプログラムをバージョンアップしました(Ver. 2.02)。

バージョンアップの内容は以下の通りです。

1. 遠景補正レイヤー作成用のマスク原稿ファイルが、ImageJ の Make Binary コマンドの仕様変更?により(ポジの二値画像作成 → ネガの二値画像作成へ)、ネガ画像になってしまう不具合が発生しました。これをポジに戻すようにプラグインを書き換えました。GIMPプラグインは変更ありません。

 なお、この仕様変更はImageJの配布サイトに何のアナウンスメントもありません。ひょっとすると何らかのミスによる仕様変更?、あるいはFijiディストリビューションの環境設定の変化による不具合かもしれません。というのはFijiディストリビューションでないオリジナルのImageJですと、Make Binaryコマンドを実行してもネガ化されません。Fijiディストリビューション版のImageJだけネガ化されるようになってしまいました。ですので、念のため旧バージョンもダウンロードできるようにしておきました。もし新バージョンでネガ画像になってしまう場合は、旧バージョン(Ver. 2.00/1)をご利用ください。

※もし ImageJのバージョンアップを行っておらず、特に不具合がなければバージョンアップする必要はありません。またバージョンアップする場合は上記ページから再度ダウンロードして下さい。

 

f:id:yasuo_ssi:20201103004719j:plain

修正前に作成されていた画像

f:id:yasuo_ssi:20201103004746j:plain

修正後に作成される画像

 

カラー写真の褪色補正に有効なソフトウェアに関する海外の口コミ、レビューいろいろ

 写真の褪色補正を考えるうえで、海外の褪色補正に関するネット上の記述も随分調べてみました。その中から、褪色補正に有用なソフトウェアの口コミ情報や評判について紹介してみたいと思います。なお、前にも書いた通り、欧米では湿度が低いせいか、あるいはポリエチレンネガシートの普及率が低いせいか、ネガの不均等変退色補正に関する記事は、探した範囲では見当たりませんでした。いずれも均等な褪色に対する補正に関する評価や口コミ記述です。また、日本に比べると、全体的にフィルムスキャンよりも褪色した印画写真をスキャンしてどう補正するかという書き込みの比重の方が高いように思われます。

続きを読む

Vuescan使用雑感

 8月にVuescanを購入して、Vuescan + フィルムスキャナ (Konia-MinoltaのDimage Scan 5400 II) を使ったフィルムの取り込みを行っていますが、これまで使ってみた印象です(あくまでデータ的に検証したものではありません)。 

続きを読む

RawTherapeeで VuescanのRawファイルを扱う

この記事のポイント

・フリーのRaw現像ソフトRawTherappeで、Vuescanで保存した16bit Rawファイルを読み込むと、カメラプロファイル情報がないため、暗くなる
・この暗くなった画像を、視覚的に適正な明るさにする方法について解説

 

 VuescanでスキャンしたRawファイルを RawTherapee で処理したいというニーズがどれほどあるのか分かりませんが、備忘録として書いておきます。

 すでに紹介したように、Vuescanだとフィルムや印画写真をスキャンしてRawファイル(TIFFまたはDNG形式)で保存することができます。そうしておけば、さらにRaw現像ソフトで細かく画像調整することができます。ただこれをRaw現像ソフトウェアで扱う場合、注意が必要です。というのは、通常のデジタル一眼カメラ(DSLR)のRawファイルの場合、センサーから出た生データだけではなく、カメラのプロファイル情報が含まれています。これには、ガンマ補正情報や色空間情報、ホワイトバランス情報などが含まれていますが、Vuescanで保存したRawファイルにはこのようなプロファイル情報は一切含まれていません。

続きを読む