省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

フィルムスキャン用にVuescanを設定する

 Vuescanというスキャナ用の汎用ドライバ兼ソフトウェアをご存じでしょうか? アメリカ、フロリダ州サニー・アイスル・ビーチにある hamrickというソフトウェアメーカーで開発しているソフトウェアです。

 今、日本メーカーはことごとくフィルムスキャナの製造から撤退してしまいましたが (現在世界的にみてもまともそうなフィルムスキャナを作っていると思われるのは台湾メーカーの2社のみ) かつてはニコンコニカミノルタが高性能なフィルムスキャナを作っていました。で、当時5400dpiという解像度にひかれて、コニカミノルタDimage 5400IIというフィルムスキャナを買っておいたのです。ここで掲載している鉄道写真の大半もこれでスキャンしたものです。

 

 とはいえ、色の出方にやはり不満で何とかならないかと思っていました。実はVuescanというソフトウェアは5,6年前に知ったのですが、いままで純正ドライバで我慢してきました。ただ、今までVuescanに関するネット上の評判を見ても、Vuescanを良いと評価する記事もあれば、さほど変わらないとする記事もありで、純正ドライバが使えないときの救済策程度にしか考えていませんでした。しかし、ちょうどコロナでどこにも出かけられないし、しかもいま多少円高になっていることも手伝ってつい買ってしまいました。

 ただ、買っては見たものの、純正ドライバほど操作方法が簡単ではなく、2,3日悪戦苦闘が続いて、ようやく何とか使えるか、という状態になりましたので、皆様の参考になるかどうかわかりませんが、備忘録を兼ねて私の場合の設定を紹介します。なおVuescanはフィルムスキャンに対応するフラットヘッド型のスキャナ(EPSON等)にも使えますし、フィルムスキャナ専用というわけではありません。また通常のスキャナを通した写真の取り込みや、さらにFPUなどのドキュメントスキャナなど非常に幅広いスキャナに対応します。また、フィルムスキャナ以外のスキャナからRawファイルを生成できるもの大きな利点です。例えばフィルムにも対応したフラットヘッドスキャナであるEPSON GT-X980からフィルムを取り込んでRawファイルで保存する、ということも可能なはずです。英語だけですが文書を取り込んでOCRに掛けるなどという技もあります。また、ファイルを読み込んで褪色補正をするというようなこともできますので、想像以上に幅広く使えますあるいは、スキャナで読み取った文書を即プリンタで印刷するといった、スキャナを簡易コピー機化するというような機能もあります (とくにマイクロフィルムなどで有効な機能)。そしてメニューも日本語化されています(ただしサイトは英語のみ)。もっと早く買っておけばよかったと思いました。

 ちなみに販売サイトはこちらです。ウォーターマークが入りますが試用もできます。2020年8月現在、希望価格はフィルムスキャンに対応するProバージョンで日本円で10000円(ドル建てだと$99.95)、ただし今キャンペーン価格で8500円となっています(2020.8.20現在)。Pro版だとこの価格で将来のバージョンアップも無償ということです。なお、試用する場合は、なるべく様々な条件のフィルムを読み込むことをお勧めします。フィルムの状態によっては純正ドライバとあまり結果が変わらない場合もあります。

www.hamrick.com

 なお、ヘルプはオンラインヘルプになっていて、日本語ユーザーはGoogleの自動翻訳を通してヘルプが提供されますが、理解が難しいところはいまいち何を言っているのかよく分かりません。むしろ英語マニュアルを見たほうが早いです。でVuescanの公式マニュアルはこちらにあります。

Vuescan公式マニュアル

https://www.hamrick.com/vuescan/vuescan.pdf

 それと第三者が作成した非公式マニュアルもあります。こちらも有用です。特に公式マニュアルにない、おすすめの設定などが書かれており、必読です。

http://amild.se/digitdia/dokument/vuescan.pdf

 また、日本語でもViewscanユーザーが利用情報を書いたサイトがいろいろありますが、まとまっていません。

 

 とりあえずフィルムスキャナーによるフィルムスキャンに絞ってVuescanの機能を紹介していきます。

 Vuescanの特徴としては、TIFFJpegだけではなくRAWファイルを出力できるという点が挙げられます。これは非常に意味があります。RAWファイルは、TIFF(デフォルト)もしくはDNG形式での保存になります。またスキャナに赤外線によるゴミとり機構(厳密にいえばスキャナが赤外線チャンネルのスキャンが可能なら、それを使ってVuescan独自のごみ取り処理を行う)やマルチサンプリング、さらに赤外線による読み取りなどの機能があればそれを活用することができます。

 色の復元や褪色復元機能もありますが、これらはスキャナのファームウェアを使わず、Vuescan自体が持つ機能を使っています。

 Vuescanの色については、いろいろブログに書かれていますので検索してみてください。ともあれ、ネガフィルムのベースの色を読み込んで、フィルムごとに特性を変えて読み取れるという点は非常に大きいと思います。スキャナ付属のドライバ&ソフトを使うよりも好ましいスキャンが可能だというのもこのせいかもしれません。

 

 以下がVuescanのインターフェースです。

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 左側にいろいろタブがありますが、ここで細かい設定を行います。

 で、以下プロフェッショナルモードでの設定です。

 

 

[入力タブ]

※[入力タブ]はスキャナの機種によって表示される項目が変わります。

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 [オプション]、[タスク]の設定は自明でしょう。[ソース]も自明ですが、フィルムスキャナだけではなく、パソコンにつながってさえいれば、フラットヘッドスキャナやドキュメントスキャナも選べます。ネットワークにつながっているスキャナを選ぶ場合は、メニューの[スキャナ]→[スキャナを探す]を選ぶと、選べるようになります。モデル名も自動的に出てきますが、若干問題なのはアメリカで販売されているモデル名で出てくるので、日本とモデル名が異なる場合は戸惑うかもしれません。また、ここでスキャナ名を選ぶのではなく、[file]にすると、その下にファイル選択ダイアログボックスが開き、画像ファイルが選択できるようになります。つまりスキャン済みのファイルをvuescanで再度読み込んで再調整することが可能なのです

 本記事はフィルムスキャナでのVuescanの設定について書きますので、以下、フィルムスキャナを前提とした内容に限定します(フラットヘッドスキャナ等だと、当然以下の選べる項目が変わってきます。また厳密には同じフィルムスキャナでも機種が変わると設定可能項目も異なってきます)。[モード]は35mmストリップフィルムを読ませるなら[35mmフィルム]、マウントしたスライドを読ませるなら[35mmスライド]です。この指定は、スキャナーにフィルムを読ませる前に行ってください。[媒体]は、カラーネガを読み込ませるなら当然[カラーネガ]、リバーサルフィルムを読ませるときは[スライド]、モノクロネガなら[白黒ネガ]、マイクロフィルム (モノクロポジ) なら[マイクロフィルム]です。これを切り替えるときは、必ず前の設定を消すために、メニュー→[画像]→[メモリの初期化]を行ってください行わないと、特にネガ←→ポジ切替え時や、スキャナ読込からファイル読込に切替えるときに、設定が変わらないことがあります。またパラメーターを変更しても、前のパラメーターに加算されるのかどうかよく分かりませんが、メモリを初期化せずにパラメーターを変更するのと、初期化してパラメーターを変更するのでは、結果が違ったりします。また、フィルムベースカラーの差が大きかったり、褪色状況が異なるフィルムを立て続けに読み込む時も、一旦、メモリの初期化を行わないと、色被りを起こすことを確認しています。

 1ピクセル当たりのビット数は、赤外線ゴミ除去を有効にするなら、[64ビット RGBI]を指定します(RGBIのIは赤外線チャンネルの意味)。ゴミ除去を使わないなら、適宜それ以外の選択肢から選んでください。

 [バッチスキャン]ですが、行わないなら[オフ]、スキャナの全コマを一括して取り込むなら[オン]、特定のコマをバッチで読み込む場合は、[リスト]を選択します。すると、その下に[バッチリスト]という入力欄が出てくるので、そこで読み込むコマを指定します。例えば4-6コマを読むなら、 4-6、1,3,5コマを読み込むなら 1,3,5 というように。またこの時フィルムの回転を指定することができます。Lなら左90度、Rなら右90度、Nは無回転、Fは180度というように。例えば1L, 3N, 5 とすると1コマ目を左90度、3コマ目は無回転、5コマ目も同じ、という意味になります。コマ番号に何もついていないとその前のコマと同じ処理をします。
 [フレーム番号]はバッチスキャンをオフにしてマニュアルで処理するときに、読み込むコマの番号を指定します。バッチスキャンを有効にしているときは無意味です。

 [プレビュー解像度]は[自動]にしておくと最大約100万ピクセル (約1200x800以下) に設定されます。これでは不足する場合、適宜指定してください。

 [スキャン解像度]は通常はそのスキャナの最大解像度を指定します。ここを[自動]にしてしまうと、スキャンされた画像が約400万ピクセル (通常の4:3画像だと 約2500 x 1700程度) ピクセル)前後以下に設定されてしまいますファイルを読み込ませて再修正掛けるときも同様ですので注意してください。

 あと、[オートフォーカス]は[常に]を指定するのがベスト。

 [サンプル数]は多重露出を有効にするとき、何回露光するかを指定します。これはスキャナが多重露出機能をサポートしているときのみ出てくるダイアログです。とうぜんここで指定した結果を有効にするにはその後にある[多重露出]にチェックを入れなければなりません。因みに、多重露出はHDRに近い効果を持ち、より諧調の豊かな画像を得られたり、フィルムの粒状を軽減する効果がありますが、スキャナの精度が低いとかえって解像度が低下する可能性があります。多重露光を有効にすべきかどうかはスキャナごとに試してみて決定してください。

 なお、[オプションの初期設定]も、若干誤解を招く翻訳ですが、要はオプションをすべて初期化しデフォルトの設定に戻すかどうかということです。これは以下すべてのタブについて共通です。

 

◎フィルムベースカラーの読み込み方法

 ここで、フィルムのベースカラーの読み込み方について解説します。

1) 初期化

まず、前の設定を消すため以下を実行します。

メニュー→[画像]→[メモリの初期化]

あと、

メニュー→[ファイル]→[オプションの初期設定]

 が必要だと書いてあるサイトもあるのですが、必ずしも必要ないと思います。これをチェックするとオプションがすべて初期化されてしまいますので、好みの設定がある場合は、また一から設定しなおしになります。また、好みのオプションを保存しておき、それを読み込むこともできますが(メニュー→[ファイル]→[オプションの保存] or [オプションの読み込み] )、ベースカラー読込後にオプションの読み込みを実行すると、当然ながら、その直前に解析したベースカラー情報が、保存しておいたオプションのベースカラー情報に置き換わってしまいます。それも考えますと[オプションの初期設定]は必ずしもチェックしなくても大丈夫かと思います。但し、個別の画像用に[カラー]タブで、[カラーバランス]を[マニュアル]に設定し、パラメーターをいじっていたら[オプションの初期設定]をチェックした方が良いでしょう。また必ずやらなければならないのは、[入力]タブで、[フィルムベース色のロック]、[露出のロック]のチェックを外します[多重露出]については、チェックを外すと書いてあるサイトもありますが、プレビューの時は関係ないので、使っている場合は、外す必要はないでしょう。

 また、[環境設定]タブの [ポジティブ表示]をOffにしろ、と書いているサイトもありますが、これも、たぶんどちらでもよいと思います (但し、プレビューイメージをRAWファイルとして保存するよう指定している場合を除く)。[ポジティブ表示]がオンだと、ネガフィルムを読んだときでも、画像表示がポジで表示されるだけです。なお、このプレビューのポジ表示は不正確です。

2) バッチスキャンをオフにしてフィルムをセットし1回目のプレビューを行います。できれば映っていないコマがあるなど、フィルムの最も透過度が高い部分があるフィルムをセットしてください。

3) フィルムの最も透明度の高い部分(例えばネガフィルムなら未露光部分)を範囲指定します。なお、この点も誤解を招くような指南をしているサイトがあって、フィルムの未露光部分を指定しろと書いているサイトがあります。ネガでは正しいですが、ポジでは間違っています。とにかくフィルムの最も透明度の高い部分でフィルムのベースカラーを測るのです。

4) 「露出のロック」を onにしてもう一度 previewをします。これで[入力]タブのRGB露出やRGBのアナログゲイン値が自動的に決まります。

5) うすると今度は「フィルムベース色のロック」というチェックボタンが出現するのでチェックをオンにして再度プレビューします。これでフィルムの基準の色(ベースカラー)を教えたことになり、[カラー]タブのフィルムベース色のR,G,B各値が決まります。一度設定したらフィルムを一本スキャンするまで設定はロックし続けてください。

6) 3)で指定した範囲指定をフィルム全体に戻します。また多重露光をする場合は、[多重露光]オンに戻してください。これを戻さないと後のスキャンで、範囲指定した部分しかスキャンしなかったり、多重露光をやらなったりします。

7) このあと本格スキャンを行います。一旦ベースカラーを決めたフィルムをスキャンして、もしネガフィルムでしたらフィルムベース色を決めた場所が全暗黒になっているか、ポジフィルムでしたら、真っ白になっているか確認してください。もしなっていない場合は、[カラー]→[ホワイトポイント]の値を調整しますが、この値をどう設定すべきかは後で述べます。

 なお、露出(黒の基準値)、フィルムベースカラー設定情報をスキャンしたファイルを保存しておく必要があると書いてあるサイトがありますが、原則必要ありません。後で、一旦フィルムベースカラー情報を変更しておいて、また戻すというような場合は必要かもしれませんが、その場合でも、オプション設定情報を一旦保存しておいて、また読み直しても同じだと思います。

 

[切抜き]タブ

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 ここはデフォルトのままいじっていません。ただし、フラットヘッドスキャナ(EPSON GT-X980等) でフィルムを読み込んでいる場合は、ここをいろいろ指定する必要があると思います。この点については他にフラットヘッドスキャナでVuescanを使っている方のブログをご参照ください。

  

[フィルタ]タブ

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 赤外線によるゴミ除去を行う場合は、赤外線スキャンによるゴミ除去を指定します。Digital ICE対応のスキャナでも、Digital ICE自体は純正スキャナドライバで実行することになりますので、Vuescanでは独自のごみ取り機構で除去します。そのため、Digital ICEが対応しないKodachromeでも、現像に問題がなければ(銀残しのような現像が行われていなければ)、Vuescanではごみ除去が可能です。通常は弱が適当です。あとは必要に応じて、色の復元や褪色復元にチェックをつけてください。粒状性の低減は指定しても良いですが、解像度は落ちます。Nik Collectionを持っていればあとでDfineを使ったほうが良いでしょう。

 [色の復元]、[褪色復元]は、一旦フィルムをスキャンしますとメモリに画像が残りますので、それに対し、オンにしたりオフにしたりして、どれを適用するのが適当なのか探ってみてください。個々のフィルムによって何が適当なのか変わると思います。同時期に撮影したフィルムでもチェックをつけた方が良かったり、つけないほうがよかったりとまちまちですのでフィルムごとにプレビュー、あるいは1枚スキャンした上で判断してください。[シャープにする]は、取りこんでそのまま出す以外は、オフのままにすべきです。

 

[カラー]タブ

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 まず[カラーバランス]ですが、通常はホワイトバランスを選択しますが、夕焼けなど、意図的に色被り状態を活かす場合はニュートラルを選択してください。あるいはニュートラルにしておいてあとでRaw現像で調整するなど考えられるでしょう。その他オリジナルの光源によって選択を変えてください。

 [ブラックポイント][ホワイトポイント]の設定は非常に重要です。この設定は、Vuescanがスキャンした画像をどのようなヒストグラムの形に変換して保存するかを決定するアルゴリズムに作用します。つまり、Vuescanの絵作りに決定的な影響を与えます。この項目の単位は%です。この値が1だということは、最も暗いピクセル([ブラックポイント]の場合)または最も明るいピクセル([ホワイトポイント])の1%が、真っ黒もしくは真っ白になるようにヒストグラムを調整する、ということです。要は黒潰れまたは白飛びをするピクセルの%を決定するわけです。デフォルト値はブラックポイントが 0 ホワイトポイントが1に設定されています。

 ホワイトポイントが0ですと、明るい部分の諧調がより多く活かされますが、全体に暗くなる可能性があります。上のサードパーティー製のvuescanマニュアルでは、ブラックポイントはデフォルトの0で良いが、ホワイトポイントがデフォルトの1だとややハイキー傾向になるとし、0.3の値を推奨しています。私もとりあえず0.3で取り込んでいますが、軟調気味に取り込めています。やや軟調に取り込んで後で調整するぐらいがちょうどよいのかどうか、いろいろ設定を変えて今後再検討してみたいと思います。

  [曲線低] [曲線高]の設定は明るさのトーンカーブ調整をするのと同じ効果を持ち、[曲線低]の値を低くすれば低くするほど暗い部分の諧調を細かく、[曲線高]の値を高くするほど明るい部分の諧調を細かくスキャンします。[曲線低]を上げ、[曲線高]を下げるとコントラストが上がり硬調になり、[曲線低]を下げ、[曲線高]を上げるとコントラストが下がり、軟調になります。デフォルトは[曲線低]=0.25 [曲線高]=0.75で、これはトーンカーブで直線と同じです。以下、デフォルト、低0.3 & 高0.7, 低0.2 & 高0.8のケースを提示します。なおトーンカーブ曲線はメニューの[画像]→[グラフ カーブ]をチェックすると表示されます。

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デフォルト 曲線低0.25 曲線高0.75

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コントラスト高 曲線低0.3 曲線高0.7

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コントラスト低 曲線低0.2 曲線高0.8


 

 なお、こちらのサイト http://mirrorsofmine.blogspot.com/2012/09/vuescan.html では、ブラックポイント 0 ホワイトポイント 0.5 曲線低 3 曲線高 7 が最適だと書いてありました。何度か試しましたが、この値は適切なように思います。

 [明るさ]に関しては自明かと思いますが、全体に白っぽく(明るすぎる)なるようでしたら、やや暗め、黒っぽくなるようでしたら、明るく調整します。標準は1です。なおR,G,Bそれぞれ単独に調整できます (フォトレタッチソフトの、RGBごとのレベル補正とほぼ一緒です) が、一挙に取り込む時はR, G, Bばらばらに調整すると良く分からなくなる可能性があるので、一旦RAW形式でスキャンした後、RAWファイルを読み込んで調整するときに使ったほうが良いと思います。なお、カラーバランスを[マニュアル]にして、画面の白いピクセルを基準にしてホワイトバランスの調整を取ると、R, G, B別の明るさの値が動いてバランスを取ります。

 [フィルムベース色]は、先に述べたフィルムベース色の測定を行うとそれで設定されますので、通常はそれ以上いじるべきではありません。

 フィルムのメーカーとブランドの指定は、[フィルタ]で色の復元や褪色復元を指定すると無効になります。ここでのフィルムタイプの指定よりはフィルムベース色の決定のほうが重要です。

 色空間に関しては、[フィルム色空間]は初期設定のまま、それ以外は、sRGBかAdobeRGBでしょう。ご自分の環境に合わせてください。

 

 

[出力]タブ

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 ここはユーザーがどのようなファイルを最終的に得たいのかで、どう設定するかが大幅に異なってきます。私の場合は、通常のイメージファイルをTIFFで保存するとともに、RAWファイルをDNG形式*1で保存したいので(ほかにTIFFで保存することも可能)、そのように設定します。後でRAW現像ソフトなどで活用するつもりならDNGフォーマットで保存した方が良いでしょう。なおVuescanのRAWイメージは16bit(x3チャンネル=48bit)で保存する場合だとガンマ補正を行わずにそのままのデータで保存されますので(ガンマ=1.0)、カラーマネジメントの行われない状態(=トーン再生カーブ未適用状態)で表示すると、通常のイメージよりかなり暗くなりますが、それで正常です(一般のPCやiMacはガンマ=2.2近似値[sRGB式ガンマ補正] 以前のMacでは1.8)。また8bit(x3チャンネル=24bit)で保存する場合はガンマ補正(2.2近似値に調整)され、適正な明るさになるはずです。また、ここで作成したDNGファイルを通常のイメージビュアーで見ると、サムネイル画像(249 x 163ピクセル)しか表示されないので、ファイルの画像解像度が極端に小さくなったように思えますが(私もあせりました)、RAW現像ソフトで読み込ませると正しい解像度で読み込まれます。Rawビュアーのなかでもサムネイルしか表示できないものがありますので要注意です。

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48bit (16bit x 3) 保存時のDNG (RAW) イメージ (未補正 ガンマ=1.0)
※トーン再生カーブ未適用状態での表示イメージ

[印刷サイズ]は通常[スキャンサイズ]で変える必要はないでしょう。

TIFFファイルで保存するときは、[TIFFファイル]にチェックを入れます。TIFFファイル名は、保存するTIFFファイル名です。デフォルト値は YYYY-MM-DD_0001+.TIF になっていますが、これはスキャンした当日の日付に0001から順番に番号を付していきます。例えばスキャン当日が2020年8月15日なら、2020-08-15_0001.TIF,  2020-08-15_0002.TIF,  2020-08-15_0003.TIF...   というふうに順番に附番していきます。これも適当に変えます。

[TIFFサイズの縮小]は、画像のピクセル数をどれほど減らすのか、ということを指定します。縮小なしは1です。ここで縮小を指定すると、画像サイズが小さくなります。画像のピクセル数を減らさずにデータ量を圧縮するという意味ではありません。データ量の圧縮のみを行いたい場合は[TIFF: 圧縮度]を使ってください。

[TIFF: 圧縮度]はTIFFファイルをLZW圧縮するかどうかです。

[TIFF:ファイルのタイプ]は保存するファイルのタイプを指定しますが、カラーなら24ビット(1チャンネル当たり8bit)か48ビット(1チャンネル当たり16bit)でしょう。なおフォトレタッチソフト等で追加補正を行うつもりなら、48ビットを選ぶべきです(Photoshop Elementsを使う場合を除く)。なお、64ビットRGBIも選べますが、TIFFファイルで赤外線チャンネルを活用することはないので無意味です。

RAWファイルを保存する場合は、[RAW: ファイル]にチェックを入れます。[RAW: サイズの縮小]はTIFFと同様ピクセル数を減らすかどうかです。画面サイズを小さくしない圧縮とは異なります。

[RAW: 出力]は選択肢が紛らわしいのですが、いつの時点でRAWファイルを保存するかです。プレビューの時点で保存するのか、スキャンの時点で保存するのか、それとも最終的なファイル保存時に保存するのか、という意味です。保存するのか、スキャンやプレビューだけか、という意味ではありません。補正を掛けた結果を保存する場合は[保存する]を選ばなくてはなりません。ポジフィルムなら[スキャン]だと最も手の加わっていない取って出しの鮮度の高いRaw画像が保存されますが、補正・回転前の画像になります。埃除去補正後の結果を保存したい場合は[保存する]にしてください

[RAW:保存フィルム]も何の意味やら困惑する項目です。ですが、RAWファイルをポジ転換や回転などの補正を適用してから保存するかどうか、ということです。ここをチェックするとネガフィルムはポジでに転換されて保存されます。逆に言えば、[RAW: 出力]が[スキャン]になっていても、ここにチェックが入ってさえいれば、ネガをスキャンしたときにRAWファイルは回転後のポジティブイメージで保存されるということです。

 端的に言えば、ネガスキャンの結果を回転後のポジ画像で保存したい場合は、[RAW: 出力]を[スキャン]に、[RAW:保存フィルム]にチェックを入れます。また単にポジ画像で保存するだけではなく、カラー補正を掛けたポジ画像で保存したい場合は、[RAW: 出力]を[保存する]を選びます。この場合は、[RAW:保存フィルム]にチェックがなくてもかまいません。

 

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何の変換もなく保存されたRAWファイル

[RAW: DNGフォーマット]はDNGフォーマットで保存するかどうかで、ここをチェックしないとTIFF形式でRAWファイルが保存されます。その後の説明等は必要に応じて適宜指定してください。撮影日や撮影場所などを入れておくと便利だと思います。

 

 なお、一旦設定を決めたら、[ファイル]→[オプションの保存]で、現在の設定を一時的に保存しておいたほうが良いと思います。というのも何らかのトラブルでVuescanがフリーズし、スキャナ& Vuescanの再起動が必要になったとき、設定が消えてしまう恐れがあるからです。保存しておけばすぐその設定を読みだせば、一から設定作業をやらなくて済みます。

 設定項目が多岐にわたりますので、ポジ、ネガ、モノクロなどフィルムの種類ごとにお気に入りの設定オプションを保存しておいて、各フィルムごとに変更が必要な部分(ベースカラーの設定やファイル名等)のみ変更する、ということをしておくのが良いと思います。

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  以下、純正ドライバーとVuescanによるネガフィルムの取り込み結果の比較です。純正ドライバーですとかなり色彩が人工的な感じがします。Vuescanの取り込み結果は色が自然で、圧倒的に良い結果が得られています。同じスキャナを使ってスキャンしたとは信じられません。コニカミノルタDimageってこんなに良いスキャナだったのかと驚嘆させられました*2

 ひょっとすると通常のフラットヘッドスキャナでも純正ドライバより良い発色が得られるかもしれません。いまお手持ちのスキャナの発色にご不満な方はVuescanを導入すると、ひょっとするとスキャナを買い替えるよりも大幅に良い結果が得られるかもしれません。ちなみにRAWファイルを読み込ませて、露出を補正すると、非常に色彩が派手になります。自然な感じにするにはかなり彩度を落とす必要がありました。これ以外にトーンカーブ補正を掛けています。

 また、スキャンした画像をRAWファイルで保存できるという点は非常に良いです。スキャナドライバの取り込みで一発で正解を目指すよりも、RAWファイルにいったん落として、RAW現像ソフトで細かい調整を行うことを考えた方が良いと思います。Rawから現像しなおすと、発色も非常に良くなる可能性があります。

 Vuescanの画質に関しても、昔の記事で純正ドライバとあまり変わらないと評価しているものもありますが、実際に使用して評価すべきです。画質に関して進化している可能性があります。また評価する際は、1枚の写真をスキャンするだけでなく、様々な条件の写真をスキャンして評価すべきかと思います。

  

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純正ドライバー取り込み結果 (カラー補正なし)

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Vuescan TIFF保存 (ホワイトポイント 0.3+色の復元)

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Vuescan DNGファイルをRawTherapeeで加工

 

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純正ドライバーで取り込み (色彩補正なし)

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Vuescan TIFF保存 (ホワイトポイント 0.3+色の復元)

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DNGファイルをAdobe Bridge+Photoshopで補正

 なお、こうして作成したDNGファイルの中の一部に、RawTherapeeだとうまく色彩調整できないファイルがありました。2番目のファイルは、RawTherapeeだとどうしても色彩がおかしくなってしまい、しかたなくAdobe Bridge + Photoshopで処理しました。Bridgeで正しく扱えるので、これはVuescanが作ったDNGファイルの問題ではなく、RawTherapeeの問題でしょう*3。あるいはRAWファイル読み込みプロファイルを調整すればうまく読めるのかもしれませんが、まだ試していません*4

 

最後にはまりやすい問題点について確認すべきチェックポイントをまとめておきます。

・フィルムベースカラー測定後、選択範囲をフィルム全体に戻しているか?
 → 戻さないと、スキャンを行ったときにベースカラー測定範囲しか取り込まない。

・本スキャンの際に、多重露光のチェックを忘れていないか?
 → 多重露光を使わないなら関係なし。

・最大解像度 (または望む解像度) で取り込むよう、きちんと設定をしてあるか?

 → 設定が[自動]のままだと、取り込み最大ファイルサイズが400Mb強以下に制限される。

・ネガフィルムスキャンでRAWファイルを保存する場合、ポジイメージを保存するよう設定をしておいたか?
 → デフォルトの設定だと、ネガイメージかつ未回転 (ポートレイト方向) のままで、RAWファイルが保存される。

 

また、RAWイメージを得る場合、以下の点は問題ありません。

・48bit (16bit x 3) でRAWイメージを保存したら、画面が異常に暗い
 →ガンマ=1.0のまま保存するので、Windows上の通常のイメージビュアーで見た場合、それで正常です。

・イメージビュアーソフトでDNGファイルを見たら、画面サイズが異常に小さい
 → 通常のイメージビュアーではデモザイク(現像処理)ができず、DNGファイルに含まれるサムネイル画像しか表示されないので、それで正常です。心配ならRAW現像ソフトで取り込んでみてください。

・(2021.7追記) RawTherapeeで、Vuescanから出力されたDNGファイルを読み込み、トーンカーブの自動調節を掛けると画面が異常に暗くなる。

 → RawTherapeeのトーンカーブの自動調節ではRawファイルに含まれるサムネイル画像を参照し、それに合わせてトーンカーブを掛けます。通常のカメラrawファイルならそれで構いません。しかし、Vuescanが吐くDNGファイルは、サムネイル画像がガンマ=1.0のまま作成されますので、それに合わせると暗くなってしまいます。RawTherapeeではトーンカーブの自動調節は使わないでください。

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[Vuescan フィルムスキャン実行時のチェック項目]

1. メモリーの開放を行ったか?
 →開放しないと設定を変更しても前の設定が維持される
2. ネガ / スライドの切替を行ったか?
3. フィルムベースカラーの測定を行ったか?
4. 多重露出 / マルチスキャンの設定を行ったか?
5. フィルムベースカラー測定の際のクロップを戻したか?
6. プレビューを行ってフィルタの適用を確認したか?
7. RAW出力の設定を確認したか?
 →フィルタ適用や埃取りの結果を保存するには[保存する]を適用
8. 出力ファイル名やExif出力情報を確認したか?

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参考資料

Steinhoff, Sascha, 2011, The VueScan Bible: Everything You Need to Know for Perfect Scanning

http://temp.fotoluzr.net/board/doc/Rocky.Nook.VueScan.Bible.Jun.2011.pdf

 

flickr.com Vuescan user forum

https://www.flickr.com/groups/vuescanusers/

 

talk photography The Vuescan discussion thread...
https://www.talkphotography.co.uk/threads/the-vuescan-discussion-thread.532812/page-5

 

RANGEFINDERFORUM.COM Scanners / Scanner Software Forum

https://www.rangefinderforum.com/forums/forumdisplay.php?f=148

 

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Keywords: フィルムスキャン, ネガデュープ, 退色フィルム, 退色補正

 

*1:Adobe社が業界標準にしようと各社に提唱しているRawファイルフォーマット。但し必ずしも各カメラメーカーは追従しておらずPDFのように普及していない。

*2:[2020.10追記] その後、ポジフィルムも取り込んでみましたが、ポジに関しては純正ドライバとの差はそこまで感じられませんでした。ただRawファイルで保存できるという利点は大きいです。Raw現像ソフトによってはRawから現像することで、発色が良くなる可能性があります。Vuescanに対する評価も、高く評価するもの、さほど評価しないものいろいろですが、どの媒体を取り込んでいるかによって大きく異なるように思います。フィルムスキャナ+ネガフィルムに関しては圧倒的に良いですが、ポジフィルムに関してはそこまでではないようです。むしろポジよりネガが好成績なのがVuescanの特徴のようです。またフラットヘッドスキャナ+印画紙写真の取り込みについてもそこまでではないかもしれません

*3:これは私がRawTherapeeをよく分かっていなかったためです。Vuescanの画像をRawTherapeeで扱う方法については、以下に書きました。

yasuo-ssi.hatenablog.com(2020.11追記)

*4:その後、確認して調整が可能なことが分かりました。通常のデジタル一眼カメラのRawファイルにはカメラプロファイル情報が埋め込まれており、ガンマ補正等基本的な補正カーブが記録されています。RawTherapee は、デフォルトでプロファイル指定が[カメラ]になりますので、その場合はRawファイルに埋め込まれているプロファイル情報を読み込んで補正した画像を表示します(RawTherapeeのプロファイル指定を[ニュートラル]にすると、Rawファイルに埋め込まれているプロファイル情報を読まず生のRawファイルをそのまま表示)。しかし、Vuescanで作成したRawファイルには、プロファイル情報が埋め込まれていないので、デフォルトの状態でも[ニュートラル]を指定したのと同じになってしまいます。従って、RawTherapeeでVuescanで作成したRawファイルを知覚的に適正に表示するには、トーンカーブ機能を使って、ガンマ補正をマニュアルで掛けてやる必要があるということでした。