省型旧型国電の残影を求めて

戦前型旧型国電および鉄道と写真補正編集の話題を扱います

不均等黄変ネガ写真を様々な方法で補正してみる [手法比較事例紹介]

 当サイトで公開している「決定版! 不均等黄変・褪色ネガ写真のデジタル補正術」の1回目で、不均等黄変写真の補正手法について大きく4つに分類しておきました (2020. 10 追加加筆内容)。 それぞれの分類手法を使うとどう違うのか比較事例を載せておくと、不均等黄変写真の補正を考えている方へのサポートになると思いましたので、本記事でそのうち、補正を行うにはちょっと大変な「マニュアル色塗り補正法」を除く3種類について比較します。

 

 まず補正元となるオリジナル写真を提示します。この写真は1991年に尾瀬で撮影した写真です。オリジナルフィルムはコニカカラーで、ラッシュプリントを依頼するため、フジカラーのラボに現像依頼を出しました。それをコニカミノルタのフィルムスキャナー Dimage Scan 5400 IIを使い、Vuescanの退色復元および色の復元をオンにして取り込んだものです。実は色の復元をオフにして退色復元だけ使ったほうが黄変の程度はややましになったのですが、補正サンプルとして色の復元をオンにしたものを使います。

 なお、同時期のフジの純正フィルムですと(保管条件は同一)、もちろん褪色は進んでいるので退色復元はオンにしなければなりませんが、不均等黄変はないか、あっても軽微な程度で済んでいます。やはりコニカのフィルムであったためか、あるいは非純正処理だったため不均等変色が進んでいることは間違いありません。しかも変色はなぜか空の部分に限られています(逆にそれが不幸中の幸いだったかもしれません)。これも不均等黄変にありがちな典型的な傾向かと思います。但し、やはり不均等褪色にありがちな、画像周辺部分のBチャンネルの情報抜けによる青紫色化はまだ起こっていません。黄変の程度は強いですが、Bチャンネルの毀損の程度は見た目ほどはひどくはないかと思います。

 

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図0. オリジナル

 

1. [グローバル補正法]

 まずは画像全体に均一の補正を掛けるグローバル補正法です。「グローバル」というのは、画像全体を対象に補正を掛けるという意味でそう呼んでいるので、要は、通常のフォトレタッチソフトの画像補正機能を総称して指しています。ここでは Photoshop CS4 と Vuescan (スキャン済みのファイルを再度読み込んで補正) での事例をお見せします。

 まずは Photoshop。一旦自動カラー補正を掛けてみます。

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図1-1. Phothoshop 自動カラー補正

 緑は若干鮮やかになりましたが、黄変についてはほとんど変化がありません。次に画面の中でホワイトポイントを探して、ホワイトバランスを取ってみます。

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図1-2. Photoshop ホワイトバランス ピックアップ調整

  何か所かピックアップを繰り返し、最も黄変が消える部分を取ってみました。黄変はかなり消えましたが、画面全体が青くなってしまっています。特に湿原の枯草の茶色が紫色に変色しています。また、空の雲のディティールも黄変と共にかなり消えています。

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図1-3. Photoshop で調整し、中間妥協点を探る

 そこで、トーンカーブ補正やレベル補正を活用して、枯草の褐色を戻そうとすると、空は真っ黄色になり、空の黄色を解消しようとすると、枯草は紫になり... とグローバル補正法では、枯草の色の補正と空の色補正の両立は不可能です。とりあえず中間の妥協点を取ったのが図1-3ですが、補正しきれません。これ以上やるなら、空の部分を切り取った画面だけ補正を掛けて、未補正の画像に貼り付ける、というような張り合わせなどの対策を取るしかないと思います。ただ、どうせ切り貼り加工をするなら、下の[画像情報や色域指定を活用したマスクを使ったローカル補正法]で補正をしたほうが、手っ取り早いと思います。

 次に、同じグローバル補正法でもVuescanを使ってみました。TIFFファイルを再度Vuescanに読み込み、褪色復元フィルターをオンにします。

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図1-4. Vuescan 退色補正

 黄変は弱まりましたが、全体も薄くなってしまいます。次に、ホワイトバランスを、ホワイト点をピックアップして調整してみますが...

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図1-5. Vuescan ホワイトバランス ピックアップ調整

 徒に、画面全体が青くなるだけで、黄変の程度自体は全く変わりません。図1-4のほうがまだましです。取り込む時に既に褪色補正を掛けていますので、再度掛けても同じアルゴリズムではこれ以上効果がないものと思われます。Vuescanの退色復元機能は、均等な変褪色には強いですが、不均等黄変に対しては効果があまりない印象です。ただ、不均等変褪色を補正する出発点となるファイルを作るのにはVuescanの褪色復元機能は良いと思います。

 

 いずれにせよグローバル補正法だけでは、この画像は補正しきれないということが明らかになりました。ただ不均等黄変の程度が軽微であれば対応できそうです。

 

2. [画像情報や色域指定を活用したマスクを使ったローカル補正法]

 ここでは Capture NX-D を使った補正法と、本サイトオリジナルのレイヤーマスク作成ツールを使ったレイヤーマスクによる黄変部分補正法、およびGIMP or Photoshopの色域指定を使った3つの手法をお示しします。

2-1. Nikon Capture NX-Dを使った補正

 まずは、カラーコントロールポイントが使える NikonCapture NX-Dを使った補正です。Nik CollectionのVivezaを使ってもほぼ同じかと思います。TIFF形式のファイルで読み込みます。

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図2-1-1. Capture NX-Dによる調整

 上の図は、コントロールポイントを3か所ほど置いて、なるべく色のつながりが自然になるように、R, G, Bのレベルと明るさのレベルをいじって補正を掛けてみました。ただ、なるべく色のつながりが自然になるように調整すると、雲のテクスチャのディティールが薄くなってしまいます。ともあれ、レイヤー操作も必要なく(Capture NX-Dではもともとレイヤーもありませんが... )、かなり簡便にローカル補正できるというのが、コントロールポイントの随一の特徴です。但し、黄変の形が複雑でコントロールポイントを多数置かないと調整しきれない、というようなケースでは、かえって面倒になる可能性もあります。

 なお、SILKYPIX Pro (Ver. 9以降) の部分色域選択機能を使ってもおそらく同様な効果が得られるのではないかとおもいますが、所持していないので、使い勝手などについては分かりません。

 ともあれ、これだけのツールを無料で公開してくれている Nikon には感謝、感謝です。

2-2. レイヤーマスクによる黄変部分補正法 

 次の補正事例は、当サイトオリジナルの黄変部分補正用のレイヤーマスク作成ツールを使ったレイヤーマスクによる黄変部分補正法です。以下、GIMPを使った画面を見せていますが、Photoshopでも同様に使えます。

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図2-2-1. レイヤーマスク作成用原稿1 (R+G)/2 - B が0以下

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図2-2-2. レイヤーマスク作成用原稿2 (R+G)/2 - B が-20以下

 上の2枚の図は、ImegeJおよび本サイトの黄変部分補正用のレイヤーマスク作成ツールを使って作成したレイヤーマスク作成用原稿画像ファイルです。上は少しでも黄色がかった部分を白く表した画像、下はある程度黄色味が強い部分(20以上)のみを白く表した画像です。見てわかるように、樹木の葉の部分なども黄色味のある部分として白抜きされてしまいますので、このまま補正用マスクとして使うのは不適当です。加工する必要があります。なお、詳しい編集方法はオリジナル記事をご覧ください。

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図2-2-3. 加工して完成した補正用マスク

  GIMPまたはPhotoshop読み込み加工して、変色している空以外の部分を黒塗りにしたのが図2-2-3です。これをレイヤーマスクとして使い補正を掛けます。白い部分が補正される部分です。以下、GIMPを使って編集した事例ですが、Photoshopなどでも同じことが可能です。

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図2-2-4. マスクを掛けた補正レイヤーをトーンカーブで調整中

 オリジナル画像を読みこんだレイヤーの上に、それを複写したレイヤーを作成し、そこに先ほど加工した画像をレイヤーマスクとして掛けています。レイヤーマスクを掛けた画像に対し、トーンカーブによる補正を試みています。Bチャンネルの出力を上げ、Rチャンネルの出力を下げることで黄色味をなくしていきます。Capture NX-Dを使った補正に比べ、雲の部分のテクスチャがはっきりしていることが分かります。なお、Photoshop を使う場合は、トーンカーブ補正(またはレベル補正)の調整レイヤーを作成し、それに先ほど加工した画像をレイヤーマスクとして掛けて調整すればOKですので、GIMPよりひと手間減ります。

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図2-6. 調整終了

 補正部分と非補正部分の境界部分を自然に見せるため、黄色味のレベルの異なるレイヤーマスクを掛けた補正レイヤーを2つ作成し補正しています。

 なお、Photoshopですと調整レイヤーを使うことができますので、境界部分を自然に見せるのはより容易かと思います。

2-3. GIMPまたはPhotoshopの色域指定を使った補正

 GIMPまたはPhotoshopの色域指定を使う場合は、いきなり色域指定を掛けると画面全体を対象にしてしまいますので、変色範囲以外に必要のない補正が掛かることになります。ですので、まず変色している空の部分周辺を範囲指定し、それに対してのみ色域指定を行います。まずGIMPの事例から...

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図2-3-1. オリジナル画像レイヤーを複写しアルファチャンネルを追加

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図2-3-2. 複製したレイヤーの空周辺以外の部分を切り取る

 GIMPの場合、調整レイヤーがないので、一旦オリジナル画像レイヤーを複写し(図2-3-1)、コピー先レイヤーにアルファチャンネル*1を追加します。これから空周辺以外の部分を切り取ったレイヤーを補正レイヤーとし(図2-3-2)、これに対して色域指定を掛けます(図2-3-3)。その際、図のようにメニュー→[選択]→[選択範囲エディター]を起動しておくと(図2-3-3の右上)、選択範囲が明確になりますので便利です。

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図2-3-3. 補正レイヤーに対し色域指定を行っているところ

 Photoshopの場合は、一旦空の周辺を範囲指定し、それに重ねて色域指定で範囲指定すると、最初に指定した空の周辺のみに対し色域指定を掛けることができます (図2-3-4)。これに対し調整レイヤーを掛ければよいので、レイヤー複製の手間がいりません。また色域指定ツールに、GIMPにおける「選択範囲エディター」的モニターがもともと組み込まれていますのでその点でもひと手間省けます。

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図2-3-4.

 この色域指定した範囲に対し、トーンカーブ補正なり、レベル補正を掛けていきます。上がGIMPの例(図2-3-5~6.)、下がPhotoshopの例(図2-3-7~8.)です。一旦Bのレベルを上げて黄色味を消しますと、空がピンクになりますので、次にRのレベルを下げ、赤みを消していきます。

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図2-3-5. GIMP Bレベル引き上げ

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図2-3-6. GIMP Rレベル引き下げ

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図2-3-7. Photoshop Bレベル引き上げ

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図2-3-8.  Photoshop Rレベル引き下げ

 GIMPPhotoshopのどちらを使っても、同様な結果が得られます(図2-3-9.)。

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図2-3-9. 最終編集結果

 なお、色域指定による補正は、黄変が多様な色域に広くまたがっている場合は、難しくなると思います。その場合は、私が作成したツールを使った、2-2のレイヤーマスクによる黄変部分補正法や、3のBチャンネル再建法を採用した方が良いように思います。

 

 画像情報や色域指定を活用したマスクを使ったローカル補正法では、どのような手法を使うにせよ、グローバル補正法よりずっと良好な結果が得られています。

 

3. [Bチャンネル再建法]

 最後はBチャンネル再建法です。詳しい補正手順は「決定版! 不均等黄変・褪色ネガ写真のデジタル補正術」の連載記事をご覧ください。まず、当サイトにある補正素材画像作成ツールをImageJを使って走らせますと、次のようなR, G, B分解画像が得られます。

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図3-1. R画像

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図3-2. G画像

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図3-3. B画像

 Bチャンネルの空が黒々としているのが分かりますが、これこそが黄変の原因です。それに対し、R, Gチャンネルには問題は見られません。このBチャンネルの黒々とした空を修正して、Bチャンネルを再建します。GIMPもしくはPhotoshop等を使って再建Bチャンネルを編集します。

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図3-4. 補正Bチャンネル

 こちらが再建されたBチャンネルです。空のレベルがほぼGチャンネルに近いレベルまで明るく補正されていることが分かります。この補正BチャンネルをまともなR, Gチャンネルと共にチャンネル合成を掛けますと下の図になります。

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図3-5. R+G+補正Bチャンネルを合成した画像

 一応黄変は消えていますが、GチャンネルとBチャンネルの値が近づいた副作用で、全般にピンクがかっています。とくに空はかなりピンクが強いです。

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図3-6. 追加調整後の最終結

 そこで、ピンクがかっているのを修正するため、空の部分をピックアップし、それを基準にホワイトバランスを調整しました。さらに、全般に(グローバルに)トーンカーブ補正を掛けて調整したのが図17です。空の雲の部分を基準にホワイトバランスを調整したときに雲のテクスチャがだいぶ薄くなってしまいました。追加補正当初からトーンカーブ補正のみで補正したほうがテクスチャが保たれたかもしれません。とはいえ、全般に地味目ですが、まずまずの感じに仕上がりました。あとはRawTherapeeのフィルムシミュレーションなどを使うと、全般的なニュアンスを調整することができるかと思います。

 

 今回のサンプル画像は、黄変の程度が激しいのでグローバル補正法では当然補正は無理ですが、黄変が空に限られ、またBチャンネルの情報抜けが始まってないこともあって、画像情報や色域指定を活用したマスクを使ったローカル補正法およびBチャンネル再建法のどちらでも補正可能な事例でした。どの結果が好ましいかは、それぞれの方の好みの問題かと思います。なお、手間という点では、画像情報や色域指定を活用したマスクを使ったローカル補正法の方が (特にCapture NX-D) おおむね有利でした。

 なお、黄変範囲が広がり、様々な色の範囲まで広がっている場合、あるいはBチャンネルの情報抜け*2がみられるケースのような、Bチャンネルの破損が甚だしい場合では、Bチャンネル再建法の優位が明確になると思います。Bチャンネルの毀損状態はRGB分解をしてみて、Bチャンネルの画像を見ると確かめることができます。特にBチャンネルの画像のディティールが、あたかも油絵で描いたマチエールのように見えるほど*3毀損していれば、Bチャンネル再建法以外では補正が困難だと判断できます。図3-3は、まだある程度ディティールがしっかりしていますので、他の方法でも補正が可能なのです。

 

 また、Bチャンネルだけでなく、もう1チャンネルの毀損も明白な場合は、もはやモノクロ写真に着色するのと同様な考え方で行かない限り補正は不可能かと思われます。これをマニュアル着色法で行うのは、可能とは言え大変困難ですが、業務用ではAIがモノクロ写真の着色をサポートするプログラムが開発されているようですので、それがコンシューマーが利用できるようなソフトウェアとして頒布されるようになるのを待つということになるかと思います*4

 以上、不均等黄変ネガ写真の補正に対する参考になれば幸いです。

*1:画像に透明部分を作るためのチャンネル。

*2:決定版! 不均等黄変・褪色ネガ写真のデジタル補正術 (3)の3-2の下にあるBチャンネル画像の右端がその典型例です。

*3:例えば、決定版! 不均等黄変・褪色ネガ写真のデジタル補正術 (6-1)の6-1-2にある、Bチャンネル画像をご覧ください。

*4:すでに、自動でモノクロ写真をカラー化するソフトウェアとして次のようなものがあります。

akvis.com

また以下のページではWeb上のカラー化サービスを紹介しています。

digibibo.com