省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

darktable3.6で、NikonのRawファイルをExpeed4, 6処理に近づけてみる

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 先日の検証で、darktable3.6のデフォルト設定が、Expeed4と同様、かなりニュートラル志向であることが分かりました。ここでdarktable3.6で、NikonのD5500のRawファイルを読み込んで、Expeed4, 6に近づける設定を試してみます。たぶんD5600もセンサー等は同じだと思いますので、応用可能かと思います。

 darktableでRawファイルを読み込むと、基本、filmic RGB, Exposure, orientation, white balanceがオンになった状態で読み込まれます。

 white balanceはデフォルトでカメラ設定(set white balance to as shot)になっていると思いますので、これを維持します。自動調整にするとかけ離れた状態になることが多いようです。ただこの状態だとかなり暗めなので、まず露出で調整します。

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読み込んだデフォルト状態

 以前お見せしたヒストグラムだとこんな感じでした。

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darktable3.6 ヒストグラム比較

 まず Expeed4に近いところを目指します。

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露出調整

 大体、露出を+1.1EV、黒レベル補正を0.01弱ぐらいに持っていくと、かなりExpeed4に近いレベルに行きそうです。ただ若干カメラはやや露出開け気味に補正するようなので、露出を+0.7前後ぐらいにするのが妥当かもしれません。

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露出 +0.72EV

 

 次に、color calibrationをオンにします。オンにしただけで、clip negative RGB from gamut (色空間からマイナスのRGB値を取り除く) にチェックが付いた状態になるので、これでヒストグラムが Expeed4により近くなります。

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color calibrationオン

 ただ、これだけだとまだExpeed4との差があります。それが下図です。

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左: darktable 右: NX Studio Expeed4相当

 RGB値を調べてみると、R値はほぼ同じですが、Bの値がExpeed4の方が高いようです。G値も微妙に違います。そこでdarktable上でもう少し調整してみました。

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darktableでcolor calibrationを使って再調整

 結局、color calibrationを使って、Bを1.203、Gを1.017にしたところ、空の濃い部分はかなり近似するようになりました。Expeed4はニュートラル志向と書きましたが、若干Bを上げる方向に補正していたようです。

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左: darktable 右: NX Studio Expeed4相当 (再調整)

 ただ、下のグラデーションは一致しません。これはdarktableがリニアワークフロー(シーン参照ワークフロー)、NX Studioが非リニア(知覚的ガンマ補正)ワークフローという違いからくると思われますので、むしろdarktableの特性と割り切る必要があると思います。そもそもNX Studioと全く同じ結果を得たいならNX Studioを使って現像すべきですし... ただfilmic RGBを追い込めばもう少し近づけることは可能そうです。

 この間に調整して気づいたことは、青空のスッキリ感は、B値とG値の相対的距離に応じるということです。BとGが離れるほどスッキリし、近づくと黄色っぽく、濁った感じになります。ただ離しすぎると青すぎて人工的になってしまいます。

 darktable3.6はかなりニュートラル志向だと思われるので、これから判断すると、Expeed4はニュートラルより若干Bを上昇する方向に調整されていたようです。

 

 次は、Expeed6に近づけることを目指します。Expeed6は、ニュートラルより若干Rを上昇させる方向に調整されているようですので、これからRを上昇させていきます。

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darktableでcolor calibrationを使って調整中

 結局Rを1.083、Bはさらに上げて1.256、一方Gは1.0に戻したところ、青空の濃い部分に関してはかなり近似しました。

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左: darktable 右: NX Studio Expeed6相当

 下の方のグラデーションが一致しないのは、前と同じです。それと、緑が黒っぽく沈み込むのが前より目立ちます。Expeed6相当も4よりやや青っぽいですが、ここまで沈みこむ感じはありません。Expeed4に合わせた時はそこまで緑に差を感じなかったのですが...

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左: Expeed4相当 右: Expeed6相当

 そこでNX StudioのExpeed4相当と6相当を比較します。緑部分の差がほとんど分からないぐらいに補正されています。Expeed4にせよ、6にせよ、単純にR, G, Bの値を操作して調整しているのではなく、Lookup Tableを使ってかなりきめ細かい補正がされているものと思われます(特にExpeed6)。やはり良くできていると言わざるをえません。

 

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