すでに、Raw現像ソフトのノイズ低減処理の比較検証を行ったときに紹介していますが、ART(1.9.3)では、RawTherapee5.8にない、スムージングというモジュールが増設されています。目的は名前から分かるように、画像の粒子の荒れを抑えて(荒れをぼかして)画面をスムーズに見せる機能です。ノイズ低減の一種とみなせます。
一つはディテールタブの最終スムージング、もう一つはローカル編集タブのスムージングです。
スムージング < ローカル編集
上図がスムージングのダイアログです。私が試した範囲では、高ISOの暗いノイジーな画像では、単独ではあまり良い効果が得られず、ディテールタブのノイズ低減と併用することで高い効果が得られました。今のところ、どうやらノイズ低減をメインにし、その効果を高めるためにスムージングを使うというような使い方が良いような気がします。
チャンネル:
これは、輝度, 色情報(Chrominance), RGBが選べますが、通常RGBで良いと思います。輝度や彩度だと粒子があまりスムーズになりませんでした。
モード:
スムージングは画像をぼかすことによってスムーズに見せていますが、その方式です。方式はガイド付き、ガウスぼかし、Glow、非局所平均(Non-local means)が選べますが、私が試した範囲では、画像の荒れが大きい画像では、ガイド付きが一番好結果を生むようです。ガイド付きとは、エッジを残してスムーズにぼかす技法のようです。
参考サイト
ガイド付きぼかし
ガウスぼかし
一般的に画像をぼかす際によく使われる手法です。
非局所平均ぼかし
これもエッジを残してぼかしを掛ける手法のようです。
Glowに関しては、GIMPやPhotoshopに元のレイヤーにガウスぼかしを掛けスクリーンモードで重ねて、光り輝いているような画像を作る、グロー効果と呼ばれる編集テクニックがありますが、それと同じアルゴリズムなのかどうか、確認できません。
半径
ぼかしの基準となる大きさです。ぼかしたい粒子の大きさに合わせないと、うまくスムーズになりません。
ディテール
細部のテクスチャをどの程度維持するかです。値を上昇させるとぼけが減り(スムーズでなくなる)、下げるとよりぼけが大きくなります(スムーズになるが細部が消える)。スムージング効果と相反するパラメータです。一旦最大値にもっていって、テクスチャの荒れとぼけのバランスが取れるところまで下げていくことにより調整するのが良いようです。
反復
反復の回数を増やすとぼけ/スムーズ化の効果が高まりますが、やりすぎるとテクスチャが失われます。半径と併せてバランスを取ってみてください。
マスク
ローカル編集タブのモジュールなので、マスクが掛けられます。部分によってスムーズにしたい粒子の大きさが異なる場合など、マスクを掛けて局所ごとに編集できます。
最終スムージング < ディテール
ARTのオンラインディスカッションによると、ローカル編集にあるスムージングと、ディテールにある最終スムージングは基本的に同じアルゴリズムを使っているそうです。ただし現像処理パイプラインでの位置が異なり、最終スムージングは、ノイズ低減処理の後に実行されるということです。またパラメータもご覧のように簡易化されています。
輝度ノイズは、ローカル編集にあるスムージングでチャンネル選択をしたとき輝度を選択したのと、色ノイズは、やはりチャンネル選択で色情報を選択したのとおそらく同じかと思います。RGBチャンネルは選べません。また半径、反復といったパラメータも指定できません。ローカル編集にあるスムージングを使っていると、ここではほぼ効果はないようです。
なお、ARTを使って高ISO画像の補正を行った例を、他のRaw現像ソフトと比較で、下記に掲載しています。