今回紹介する、ART / RawTherapeeのモジュールはテクスチャ増幅です。このモジュールはもともとはRawTherapeeのトーンマッピングを改名、改善したもののようですが、2020年の夏バージョン(1.5.2)からAgriggio氏がアルゴリズムを書き改めたようです*1。場所はローカル編集タブの下にあります。
なお、ARTの日本語版をお使いになっていて、モジュール名が[テクスチャ増幅]ではなく[トーンマッピング]のままの方は、お手数ですが、以下のページから最新版の日本語ファイルをダウンロードして入れ替えてください。
もともとRawTherapeeの独自の機能であるトーンマッピングとは、逆光の画像など、極端な明暗のコントラストのついた画像を、ディテールを維持しながらコントラストを弱めるツールとして作られたようです。シャドウ/ハイライトモジュールなどに目的は似ていました。疑似HDR画像を作る機能などと紹介されることもありました。ただそのディテールを維持したり強化したりする機能に着目する使い方もされていました。ARTでは、そのディテール強化機能に着目して、[テクスチャ増幅 Texture Boost]と改名して設置していましたが、さらにアルゴリズムを書き換えて、ディテール増幅効果を主目的にし、特化したのが、現在の[ディテール増幅]です。従って現在はアルゴリズムもパラメータもRTの[トーンマッピング]とは異なったものになっているようです。なお、RawTherapeeのトーンマッピングが担っていた機能は、トーンイコライザや対数トーンマッピングにRegularization機能が付け加わりましたので、役割的にはこちらでほぼ代替されるものと思われます。
RawTherapeeの[トーンマッピング]のパラメータはパッと見で意味不明でしたが、[テクスチャ増幅]では自明になっています。[強さ]は効果の強さ、[ディテールの尺度]は増幅する細部のキメの大きさの尺度を設定するパラメータです。大きくすると増幅するテクスチャのきめが粗くなります。[反復]を増やすと計算回数が増え、より効果が強まります。
以下サンプルです。
なお、反復を増やすと効果は強まりますが、やや不自然な効果が出て荒れる印象です。
なお、このモジュールは、RawTherapeeにあってARTで廃止された、機能の似たマイクロコントラストや詳細レベルによるコントラスト調整といったモジュールを代替する役割も果たすものと思われます。
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なお、ARTで新たに付け加わった編集モジュール、あるいはRawTherapeeと比べて大幅にインターフェースが変わったモジュールは以上のようです。あとはインターフェースが簡略化されるなど、解説がなくても分かりやすい変化だと思いますので、これにて、ARTのRawTherpeeから大きく変わった機能紹介シリーズは一旦一段落とします。
これ以外の機能を調べるにはRawPediaをご参照いただくか、拙稿のRawTherapee機能一覧ページがあるので、そちらをご参照ください。
*1:以下のディスカッション参照。