省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

darktable 日本語翻訳ファイルの作成法

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 検索エンジンで、「darktable, 日本語化」というキーワードで検索してみると、タイトルなどに darktableを日本語化する方法、などと入っていたりするにもかかわらず、本文を見ると、日本語化できません、と書いてある、なんちゃってサイトが出てきます。それで、先日、3.0まで日本語化されていてそのまま使える部分のみ3.6.1に流用した応急日本語化ファイルを公開しましたが、これだとWindows以外を利用されている方には助けになりません。そこで今回は、そもそもdarktable向け日本語翻訳ファイルをどう作るか、という情報を紹介します。もちろん、ここに書いてある情報から、Windows以外の応急日本語化ファイルを作ることも可能です。

 ARTやRawTherapeeの翻訳ファイルはテキストファイルベースで、非常にすっきりしたシンプルな形式になっています。ところがdarktableの翻訳ファイルはテキストベースの原稿(po形式ファイル)を、バイナリーのmoファイル形式にコンパイルしなければなりません。しかもその元のオリジナルとなるテキストファイルも、なんだか訳のわからない凶悪なフォーマットになっています。

 既存の3.0用の日本語翻訳 po ファイルは公開されているものの、それをどうやって3.6.1用に流用しようかと首をひねっていましたが、オンライン上の情報を探してよく説明を読んでみると、結局PoEditという、どうも元々はWordpress用の多言語プラグインを作るためのエディタを使うようにできているらしいということが分かりました。

 結局、PoEditを使うと非常に簡単に作業ができ、ファイルもmo形式ファイルに簡単にコンパイルできるということが分かりました。それで作成したのが先日アップしたファイルでした。そのファイルをdarktableのインストールディレクトリにコピーすると日本語化できます。Macの方はMac版のPoeditを使えばMac用のバイナリ mo ファイルが作成できます。moファイルの置き場は以前の記事をご参照ください。

 まず PoEditを以下のページから入手してインストールしてください。サイトは英語ですが、ソフトウェア自体は日本語化されています。Linux, Windows, Macに対応しています。

poedit.net PoEditは、無料で使えますが、有料のPro版にすると、オンラインで原文を基に翻訳文を提案してくれます。無料版でも10か所までは提案をしてくれます。課金は年単位で、Microsoftの翻訳エンジン(Pro版)なら3499円、Google(Pro+版)なら4788円となっています(2021/11 閲覧時)。契約は年単位です。

 次に、https://github.com/darktable-org/darktable/tree/master/po から以前の日本語翻訳ファイルと、最新darktable用のテンプレートファイルを入手します。

 darktable.pot というのがテンプレートファイル、ja.poが日本語翻訳ファイルです。日本語ファイルの更新は2年前になっています。

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darktable 言語ファイル置き場

 

 例えばここからja.poをクリックして、中に入り、

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ja.po

コードをすべて選択してコピーし、テキストエディタに貼り付けて ja.poやJapanese.poといった名前で、かつ文字コードUTF-8で保存します。同様にdarktable.potファイルも保存します。Gitを使うともっと簡単に取得できるはずですが、使える方はこんなご説明は必要ないでしょう。但し、ここにあるdarktable.potファイルは最新ですでに仕様の固まった次期3.8.x用になっていると思われ、3.6.1以降にさらに改訂されている可能性があります。3.6.xのdarktable.potファイルを入手するには、こちらです。

github.com

 次にPoEditで、ja.poファイルを開きます

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PoEditで日本語ファイルを選択中

 下記は読み込まれた状態です。

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既存の日本語ファイルを開いたところ

 次に最新のテンプレートファイルを読み込んで、新しいテンプレートファイルに既存の翻訳を移行します。メニューの[翻訳]>[POTファイルから更新]でdarktable.potを選んで適用します。

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[翻訳]>[POTファイルから更新]

 

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darktable.potを選択

 テンプレートのpotファイルを読み込むと以下のようになります。

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最新テンプレート適用状態

 翻訳文章が黒い部分はそのまま使える部分です。問題は赤い文章の部分です。この文が表示されている、下の対訳という欄の右上の[要確認]ボタンが赤くなっています。

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翻訳の提案

 文字が赤いところは、Poeditが翻訳がおかしいのではないかと提起しているところです。これは、基本的には、以前の翻訳の英語のオリジナルテキストと、今回のテンプレートのオリジナルテキストの内容が変わった部分です。また明らかに形式的におかしいというような場合も赤くなります。その右側に翻訳の訂正提案が出ます。もしその提案が良ければ、右の提案をクリックすると、翻訳文が入れ替わり、黒くなって確定します。

 この翻訳提案は、次の種類があります。1つ目は上の画面に出ているように(あるいは下の図の一番下)、提案の下に、「翻訳 Microsoft」と出ているものです。これはMicrosoftの翻訳エンジンをネット経由で使って自動翻訳して提案しているものです。無料バージョンでも10カ所は自動翻訳エンジンで提案をしてくれますが、それ以上はしてくれません。なお、プロ版をgoogleで契約すれば、googleの翻訳エンジンを使って提案してくれるはずです。

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Poeditの翻訳提案

 もう一つは、既存の翻訳済みファイルの中からマッチしそうな文を探してきて提案するものです。上の図のディスクが重なったアイコンが横にある提案です。これは次のような意味です。旧バージョンのファイルと新しいテンプレートファイルで、同じオリジナルテキストはあるけれど、テキストを貼り付けるキーの位置が変わってしまえば、一旦翻訳文は却下・ペンディングになります。その場合でもやはり文章が赤くなってしまいます(但し、Poedit上ではキー情報は表示されません)。しかしキーの場所が移っただけですので、別の場所でその翻訳文がそのまま活かせるはずです。そのような一致しそうな翻訳文を探して提案してくれているのが、このディスクが重なったアイコンが横にある提案です。その下の%は原文の一致度です。

 あるいは、提案と異なってもそのまま確定したい場合は、PoEditの下のパネルを見て、

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要確認ボタン

 対訳欄の要確認ボタンを左に切り替えて確認すると黒くなって確定します。訳を修正するときは対訳欄で修正します。

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確認済みに変更

 修正したらコンパイルしてmoファイルを作ります。なお、文字が赤いままの部分はコンパイルされたときに除外されます。ご覧のように、3.0x用の日本語ファイルに、3.6xのテンプレートを適用すると、半分以上 (2/3近く) 赤くなるか、未翻訳状態になりました。なお、応急日本語化ファイルで良いというなら、何も翻訳を修正せずにmoファイルをコンパイルすれば、一致するところだけ日本語化した、先日私が公開したようなmoファイルができます

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コンパイルする

 できたmoファイルを、darktable.mo に改名し、先日指摘したディレクトリにコピーすると日本語翻訳が darktable に適用可能となります。

 

 なお、この翻訳を公式サイトにアップロードするには、以下にある指示に従います。

github.com 未翻訳行が20行以下、翻訳のあいまいな部分が50か所以下というのが、公式にアップロードする条件となっていて、ちょっと厳しいです。日本語サポートもこの基準を満たせなくなって外れてしまったようです。

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 ところで、ここで翻訳の仕方を詳しくご紹介したのは、別のプラットフォームをお使いの方に応急日本語化ファイルの作成方法をご案内する、という意味もありますが、どなたかに darktable の翻訳作業に協力いただければという気持ちがあるからです。公式アップロードまで行わなくても、ある程度翻訳し、公開するだけでも、助かる方は多いと思います。

 という訳で、3.0用の日本語訳に3.6x用のテンプレートを適用し、私が翻訳を付け加えたpoファイル を以下のURLのGoogle driveで公開します。まだ未翻訳部分、要修正部分が残っているものですが、上の公式サイトにアップされている日本語訳を使って、Poeditでコンパイルするよりはましになっており、見た目上はかなりの部分を翻訳しておきました。サポートメッセージなどはまだ要修正・未翻訳部分が多いのと、訳語の矛盾、不統一などはまじめにチェックしていません。但し、テンプレートファイルを適用する必要もなく、すぐPoeditでコンパイル可能です。ご自由に使っていただいて結構です。

https://drive.google.com/drive/folders/1gaoUFDtaOh_fgkGWKDx9DfQb9qTyyHEC?usp=sharing

 

 また、12月リリースが予想される、次期3.8x用はこちらです。上の翻訳文に最新のテンプレートファイルを適用しただけですので、当然不一致部分(未翻訳部分)が上より多くなっています。最新のテンプレートファイルは、すでに次期リリースの仕様も公示されていますので、3.8x用にほぼ固まっている状況です。

https://drive.google.com/drive/folders/1XELHmjsYtw7RdbDQzooLQZxdxlMHa-uK?usp=sharing

 

 しかし、darktableの3.0xから変更点が滅茶苦茶多く(バージョンは同じ3.0代なのに)、前の日本語ファイルのメンテナーの方がメンテナンス作業を放棄された気持ちも分かります。3.0以降、darktableはシーン参照ワークフローに大きく舵を切りつつあり、そのため変更点がバージョンアップごとにかなり多いのと、公式サイト受付基準が厳しいので、ついていこうとするとかなり大変です。

 ARTに関しては、私が日本語圏に紹介した側面がありますし、またせっかくユーザフレンドリーを目指しているのに英語がハードルになってはいけないので、今後とも日本語訳はできる限り責任をもってサポートしていきたいと思います。しかし、darktableまではちょっと手を広げすぎで、公式サイトアップデートまで責任を取り切れません。

 それでも、少しずつは翻訳を付け加えていくつもりではありますが、公式サイトにはアップせず、このままプライベート公開のままにしておくつもりです。率直に言って、darktableのエヴァンジェリストになる気もなく、公式サイトにアップするほど頑張ろうというモチベーションが湧きません。そこで、他力本願で申し訳ないのですが、こんなんじゃだめだ、と思われる方は、上で公開しているファイルに更に翻訳をつけ加えて下記のメールアドレスに送って頂ければ、その内容で更新していきたいと思います。

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 上の [アットマーク] というところは、 @ に置き換えて送ってください。送って頂いたらこちらのサイトのコメント欄に送ったよ、と一言付け加えていただけると、ありがたいです(普段は見ていないメールアカウントですので、こちらにご連絡がないと気づくのに遅れます)。

 あるいは、自分がみんなに代わって頑張って翻訳してやって、公式サイトにアップしてやるぜ、と思っていただける方がいらっしゃるなら、それこそ大歓迎です。その際はこちらのファイルの内容を流用していただいて構いません。

 特にPoEditをすでにPro版で使っていらっしゃる方には、楽に翻訳できると思いますのでご検討いただけないでしょうか。やっても良いと思われる方はコメント欄にご一報いただけると幸いです。

 もちろん、皆さんがこの程度の緩い翻訳で十分とお考えであれば、私の気まぐれで緩く進めて、たまに更新してアップロードもするかもしれませんので、それをお使いください。ただしあまり期待はなさらないでください。個人的には、このまま主なメニュー表示がおおむね日本語訳で表示される程度でお茶を濁そうかな、と思っています。翻訳しているときは各メッセージがどのコンテクストで使われるか分からない状態で作業しているので、まじめにやるなら、一度ちゃんと翻訳がコンテクストにあっているか確認もしなければならないのですが、そこまでまじめにチェックしてまでのやる気が起きない、というのが正直なところです。