久しぶりに不均等黄変写真の補正過程の事例を紹介します。個人的には日常的に使っている手法ですが、手法として紹介していませんでしたので、今回取り上げます。不均等黄変は元の色によって出方が異なります。これは色との関係で黄変が目立たない部分がある、ということもあると思いますが、元の色素によって色素の変化の仕方が異なるということが大きな原因ではないかと思います。程度がさほどひどくない場合は、青空や白っぽいの部分にのみ黄変が出るというケースもあると思います。この場合、黄変がなかったり目立たなかったりする部分はオリジナル画像を活かす追加補正方法があります。以下事例です。
まずオリジナルです。
イトーヨーカドーの壁の部分、それからその周辺の青空を中心に黄変が広がっています。これに対し黄変補正素材ファイルを作成するImageJ用のプラグインをすべてデフォルトで走らせます。
次にこちらにある説明に従って、GIMPを立ち上げ、補正素材ファイルを読み込むプラグインを走らせます。その上で遠景補正レイヤーのマスクを、空の部分のみに効果がかかるよう、以下のように編集します。
そして以下のように可視レイヤーを指定し、GIMP上で、新規B画像作成→RGB合成を行う拙作プラグインを使い、一挙に画像合成を行います。
下記のような黄変補正ファイルを得ました。パラメータはすべてデフォルトです。
黄変はかなり改善していますが、GとBの接近で電車の青がかなり緑に寄っています(とくに右側の車輛)。そこで電車の濃い青い部分を中心に、元の画像を活かすことにします。
まず電車の青透過マスクを作成します。拙作の相対RGB色マスク画像作成ツールを使って作成します。
Bの明度55-107の範囲に対し、青の閾値 15 と透過係数を 1.5 にして青透過マスクを作りました。
補正画像をGIMPに読み込み、その上にオリジナル画像をレイヤーとして読み、それに対し青透過マスクを掛けます。右の車輛の青を中心に改善されています。これで黄変に関する補正としては一応終わりなので、通常ならばこのあとRaw現像ソフトに読み込んで仕上げの補正を行うところです。
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しかし、本ファイルの場合はVuescanで取り込んでいないため、ネガカラーフィルムによくみられる全般的なマゼンタ被りがあります。青の部分もそのため紫がかっています。そこでこのケースの場合更に追加でマゼンタ被りの改善を図ります。マゼンタ被りの改善ですが、今回暗いところと明るいところで補正方式を変えてみます。暗いところはチャンネルミキシングで、明るいところはGチャンネルの値上昇で補正してみます。
まず暗いところの補正です。相対RGB色マスク画像作成ツールを使って暗部透過マスクを作成します。
マスクのパラメータは、対象チャンネルをLiminosity にして透過範囲を0-10 透過係数を1.0にしています。
このマスクを、先ほどの補正画像を読み込んだレイヤーに掛けます。次に、そのレイヤーに対し、チャンネルミキサーを使ってGチャンネルに対しRチャンネル70% Gチャンネル30%でミキシングします。
次に明るい部分の補正です。相対RGB色マスク画像作成ツールを使って、マゼンタマスクを作成します。
パラメータは、マゼンタ閾値 20 透過係数 1.0 明度 全域 です。次に先ほど編集した画像に[可視部分をレイヤーに]を使ってもう1枚レイヤーを増やし、増やしたレイヤーに対しこのマスクを掛けます。そして、マスクを編集します。人工的な赤の目立つ部分は、くすませたくないので、効果が及ばないようカバーします。
次にマスクを掛けたレイヤーに対し、トーンカーブを使ってシャドウ域を中心に、Gチャンネルの値を上昇させます。
編集が終わったら、一旦TIFFファイルとして出力します。
出力したらGIMPを終了し、今度は出力したTIFFファイルをフリーのRaw現像ソフトARTに読み込み、最終調整を行います。
まず霞除去とトーンカーブ補正を掛けます。さらに若干電車の青の部分のニュアンスを調整したいので、カラー/トーン補正を使って調整します。
まず青い部分を覆うマスクを、類似色マスクを使って指定します。
マスクを指定したら、青みを変えるために下記のように調整します。
補正したものを出力した最終結果が以下です。
再度オリジナルを掲げますので、比較してみてください。黄変およびマゼンタ被りが改善されていると思います。
なお、マゼンタがかりを補正するには、先日紹介したdarktableを使う方法もあります。ただ、相対RGB色マスク作成ツールによるマスクとGIMPを組み合わせて使う方法とdarktableのどちらが良いかは、どちらがマスクを作りやすいかによるかと思います。マスク画像を直接色塗り等で編集するにはGIMPのほうが自由度が高く、パラメータを使ってマスクを作成するのはdarktableがやりやすいと思います。つまりGIMPはラスタ画像を使ったマスク、darktableはベクタ画像を使ったマスクで、どちらのほうがやりやすいかという問題です。また、darktableの方は相対的なRGB値に基づいたマスクは作れない一方、最終処理まで一貫してdarktableで完結するというメリットがあります。個人的にはいずれも一長一短かと思います。