[敢えて補正量を抑制する]
Bチャンネル再建法を適用すると、黄変は消え去っても、著しく色が単調になって、その後追加補正を行ってもどうにもならない画像があります。それが以下の画像です。
これに、Bチャンネル補正法を適用すると...
黄色味は消えますが、ちょうど浮世絵初期の紅刷りのようです。また草の部分も、色自体は黄変がかかっている方が本来の色に近いようです。むしろ、上の黄色みが消えていない部分の方が色が自然です。そして、補正後の画像から色を補正しようとして、いろいろやりましたがどうにもなりません。
この原因を探ってみました。そこで、チャンネル間の相関係数を取って見ます。相関関係を計算するには、先日公開したツールを使います。
まず補正前から...
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画像ファイル統計: 1986_9_上田交通2NC_0032_s.tif
1番目の色Ch: Red 2番目の色Ch: Green
計算対象輝度範囲(グレースケール): 0.0 - 255.9
計算対象ROI: X: 0 - 1280 /Y: 0 - 1955
色Ch間ピクセル輝度差の平均: 1.52 Ch 1平均輝度: 135.29 Ch 2平均輝度: 133.77
輝度差分散: 167568.78 輝度差標準偏差: 25.58 輝度最高差: 252.67 輝度最低差: -113.51
Ch1分散: 755056.91 Ch1標準偏差: 54.31 Ch2分散: 752694.04 Ch2標準偏差: 54.22
Ch1-2 共分散: 670091.08 ピアソン相関係数: 0.89
マニュアル補正調整量目安: 24.07
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1番目の色Ch: Red 2番目の色Ch: Blue
計算対象輝度範囲(グレースケール): 0.0 - 255.9
計算対象ROI: X: 0 - 1280 /Y: 0 - 1955
色Ch間ピクセル輝度差の平均: -1.13 Ch 1平均輝度: 135.29 Ch 2平均輝度: 136.42
輝度差分散: 323325.32 輝度差標準偏差: 35.54 輝度最高差: 253.39 輝度最低差: -173.87
Ch1分散: 755056.91 Ch1標準偏差: 54.31 Ch2分散: 669946.54 Ch2標準偏差: 51.16
Ch1-2 共分散: 550839.06 ピアソン相関係数: 0.77
マニュアル補正調整量目安: 34.41
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1番目の色Ch: Green 2番目の色Ch: Blue
計算対象輝度範囲(グレースケール): 0.0 - 255.9
計算対象ROI: X: 0 - 1280 /Y: 0 - 1955
色Ch間ピクセル輝度差の平均: -2.65 Ch 1平均輝度: 133.77 Ch 2平均輝度: 136.42
輝度差分散: 207699.35 輝度差標準偏差: 28.48 輝度最高差: 143.97 輝度最低差: -125.91
Ch1分散: 752694.04 Ch1標準偏差: 54.22 Ch2分散: 669946.54 Ch2標準偏差: 51.16
Ch1-2 共分散: 607470.61 ピアソン相関係数: 0.86
マニュアル補正調整量目安: 25.83
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それがBチャンネル補正法適用後は...
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画像ファイル統計: 1986_9_上田交通2NC_0032_補正1(0)_s.tif
1番目の色Ch: Red 2番目の色Ch: Green
計算対象輝度範囲(グレースケール): 0.0 - 255.9
計算対象ROI: X: 0 - 1280 /Y: 0 - 1955
色Ch間ピクセル輝度差の平均: 1.52 Ch 1平均輝度: 135.29 Ch 2平均輝度: 133.77
輝度差分散: 167568.78 輝度差標準偏差: 25.58 輝度最高差: 252.67 輝度最低差: -113.51
Ch1分散: 755056.91 Ch1標準偏差: 54.31 Ch2分散: 752694.04 Ch2標準偏差: 54.22
Ch1-2 共分散: 670091.08 ピアソン相関係数: 0.89
マニュアル補正調整量目安: 24.07
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1番目の色Ch: Red 2番目の色Ch: Blue
計算対象輝度範囲(グレースケール): 0.0 - 255.9
計算対象ROI: X: 0 - 1280 /Y: 0 - 1955
色Ch間ピクセル輝度差の平均: -26.65 Ch 1平均輝度: 135.29 Ch 2平均輝度: 161.94
輝度差分散: 152279.91 輝度差標準偏差: 24.39 輝度最高差: 235.53 輝度最低差: -140.02
Ch1分散: 755056.91 Ch1標準偏差: 54.31 Ch2分散: 642588.21 Ch2標準偏差: 50.10
Ch1-2 共分散: 622682.60 ピアソン相関係数: 0.89
マニュアル補正調整量目安: -2.26
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1番目の色Ch: Green 2番目の色Ch: Blue
計算対象輝度範囲(グレースケール): 0.0 - 255.9
計算対象ROI: X: 0 - 1280 /Y: 0 - 1955
色Ch間ピクセル輝度差の平均: -28.17 Ch 1平均輝度: 133.77 Ch 2平均輝度: 161.94
輝度差分散: 11411.27 輝度差標準偏差: 6.68 輝度最高差: 9.90 輝度最低差: -65.30
Ch1分散: 752694.04 Ch1標準偏差: 54.22 Ch2分散: 642588.21 Ch2標準偏差: 50.10
Ch1-2 共分散: 691935.49 ピアソン相関係数: 0.99
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もともとこの画像は、高いはずのR-G間の相関係数が0.89と結構低いです。もちろんB-G間はもっと低いですが...
ところがBチャンネル補正法を適用すると、R-G間は変わらないのに、B-G間は0.99 と非常に高くなります。この結果 B に単純に G を代入した結果に非常に近くなったということかと思います。
ただ、一概にBとGの相関係数が非常に高くなると問題とは言えないと思います。例えばこちらに掲げた補正後の画像(当該ページの下の事例)ですが、補正後B-G間が0.99に上がっていますが、不適切には見えません。つまり他チャンネル間の相関係数とのバランスの問題と考えられます。
つまり、上の画像の場合はR-G間の相関が元々比較的低いにもかかわらず、G-B間の相関が非常に高くなったのが問題ではないかと思われます。
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そこで、Bチャンネル補正法を実行する際に、敢えて補正効率を下げるように走らせてみて、補正をやり直してみました。その実行パラメータが下記です。実行する際にチャンネル間のレベルを合わせないことにしたのです。
その際、エキスパートメニューに入ります。ポイントは、[correction amount adjustment] というオプションを、[No] に設定することです。
このパラメータで作成した素材ファイルをGIMPで読み込みます。そして次のような編集を加えました。
●周辺部補正レイヤー
周辺部補正レイヤーは上端とそれ以外の部分にコピー>分割しました。そして以下のようにマスク編集を行いました。
上端補正レイヤー用マスクは上端以外は塗潰します。
こちらは、上端とは反対に、上端のみ塗潰します。
そして、上端部補正レイヤーの不透明度を23%程度に落としました。
●遠景補正レイヤー
遠景補正レイヤー用マスクは、近景を下記のようにすべて塗潰します。
●近景補正レイヤー
今回一番いろいろ考えたのがこのレイヤーのマスクです。このレイヤーのマスクの有効/無効を繰り返しながら考えて、結果的に以下のように編集しました。
下から 1/3 程度を塗りつぶしました。つまり下から 1/3 には一切補正を加えないということです。
●Bチャンネルの再構成
Bチャンネルの再構成には、以下のレイヤーを使いました。
これにより再構成されたBチャンネルは下記です。
チャンネル間のレベル調整を行っていないので、空の不均等感が取り切れていません。これは後の追加補正で調整しないといけないと思います。
そして上の画像を基にRGB合成した結果は下記になりました。
下から 1/3 は敢えて全く補正していません。この画像を基に追加補正を行っていきます。
長くなりましたので、以下次回に続きます。