いよいよ本格的な Linux 移行に向けて、ツールの互換性を検証しています。とりあえず現在毎日のように Kubuntu を使っていますが、ネット利用関連では、Windows ユーザとしてはほぼ違和感なく全く快適に使えています。また画像編集関係は既にその大半をフリーソフトに移行しているので、Kubuntu に移行してもほぼ問題はありません。
後の難関は、Microsoft Office をどう代替していくかですが、Libre Office をメインに使うことは必須かと思います。問題は、その操作体系にどう慣れていくかということと、やはり MS Office との互換性の問題です。
以前、Linux 上の Office ワープロソフトの Microsoft Office Word との互換性を検証しましたが、今回、さらに互換性の厳しい書類を考えました。
日本でよく使われる文書に、枠線を多用した文書があります。これは欧米ではあまり使われません。というのは欧米ではタイプライターが 19c 以降普及したため、タイプライターで打ちにくい枠線を多用した表というのがほとんど使われないためです。表で使われるとしてもタイプライターで打てる横線のみで、縦線自体があまり使われません。これは今日コンピュータで文書作成されるようになっても文化として残っています。
日本でタイプライターに代わって使われたのは謄写版です。これにはそのような制約がありませんので、枠線を多用した表が今日でも使われるのです。したがって、欧米ではあまり使われない、枠線を多用した表を含んだ文書というのは、欧米で開発されることの多いワープロソフトのファイル互換性確認にとって最もハードルの高いテストということになります。
以前このような文書として、Word2007形式の履歴書テンプレートを読み込んでみました。今回、枠線を多用した表に画像を貼り付けてみました。
ちなみに画像は Wikipedia から取ってきたタレントの写真です。元の画像のピクセル数はまちまちで、そのまま貼り付けて OK だったものもあれば、1/3 程度に縮小して枠内に貼り付けるようにしたケースもあります。またフォントの影響を避けるために、文字は入れていません。フォントが共通かどうかは文書の互換性に大きな影響を与えますので、今回その影響を避けて比較したいためです。また、今回 Free Office は比較対象にしていません。前回の検証でかなり互換性が低いことが明らかですので。それと、Web Office アプリとして、Microsoft 365 Word Web 版と、Google Document を比較対象としました。
まずオリジナルです。Word 2019 で作成しています。

次は Linux の鉄板、LibreOffice Writer (Ver. 24.2)です。
最初の枠に関しては問題がありませんが、2番めの枠は写真がズレるとともに、枠もそれに引きずられてかズレています。最初の写真はピクセル数がうまく合って、拡大縮小をかけていませんが、2番めの写真は、ピクセル数が大きすぎたため概ね 1/3 にズームで縮小をかけています。これがズレに繋がったようです。拡大縮小が 100% の画像オブジェクトではずれが出ないようです。
図形や画像オブジェクトの互換性を確保するのがやはり難しいところです。

その次は、Word との互換性を誇る WPS Office Document です。流石です。ズレがなく、素晴らしいです。ただ、最近新しいバージョンにアップデートしたら、docx ファイルを読み込むときに必ずクラッシュするようになりました。再度読み込むと何もなかったように読み込みます。

なかなか良いのですが、Linux 上でインライン入力ができないのが不便です。個人的には、LibreOffice で基本的に文章を作成し、それを WPS Office に読み込ませて、Microsoft Word 互換ファイルを作成する、という使い方をするつもりです。
次は Web 版アプリです。まず、Google Document ですが、Google Document の読込み結果は LibreOffice Writer と全く同じです。おそらく Google 側がレンダリングするコードを LibreOffice からパクっているものとおもわれます。ズレ具合も全く同じです。

次は、Web版 Microsoft 365 Word (無償版) ですが、ひょっとして、Edge の特殊な API (というものがあるのかどうか分かりませんが) を使っている可能性を考えて、Linux 版 Edge上で動かしました。...

なんと互換性最悪です。お話になりません。写真も表もズレまくりです。Microsoft では、デスクトップアプリと Web アプリの融合を図っているはずですが、大丈夫なのでしょうか? ひょっとして Office 2019 だと互換性はだめだけど、2021 や 2024 あるいは 365 のデスクトップ版だと互換性があるという話なのでしょうか? ファイル形式は同じはずですが? ちなみに無償版だとプレミアムフォントが使えず、基本フォントしか使えません。ただ、文字を入力していないので、それは影響ないはずです。
そもそも Web 版 Word は縦書きもサポートしていませんので、そこからもうお話にもならないと思います。ネットの動画とか見ると、Word は無料の Web 版 Word で大丈夫などと言っている場合がありますが、大嘘ですね。メニューがデスクトップ版と似ているので迷いにくい (ただし完全に同じではない)、という以外はメリットがありません。
しかし、なんだかなぁ... です。Web版の Microsoft 365 わざわざ使う価値ゼロですね。まだ Google Document のほうがマシです。こんな状態で、デスクトップ版と Web 版の融合を進めようとすると、Microsoft の Office ソフトへの信頼を失うだけのような気が...
欧米スタイルの文書しか作らないのであれば、つまり、縦書きを行わない、罫線を使った表を作らない、タイプライターで打てるような形式範囲の文書を作成するという点を守れるのであれば、OK なのでしょうが...
とはいえ、以前見たときより改善されている点もあって、クリップボードでデスクトップと Web の間でやり取りできるデータの種類が拡張されています。以前はほとんどテキストしかやり取りできませんでしたが、図形や画像などもやり取りできるようになっています。
それでも、図形処理のやり方が、デスクトップ・アプリケーションと明らかに異なっていて、互換性が低いのも当然かもしれません。
ともあれ、Microsoft Office と Libre Office や Google Document との互換性を高めるには、画像オブジェクトを拡大縮小して使わず、そもそも画像処理ソフトでビット数を落として使うというのが一つのキーポイントのようです。
また、Libre Office や Google Document などはここのところ、急速に互換性を高めているようです。
こちらからサンプルファイルをダウンロードできます。
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[追記]
Ver. 25.8 へのアップデートで、WPS Office ほどではありませんが、docx 形式のレイアウト再現性がある程度向上しています。
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