省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

決定版! 不均等黄変・褪色ネガ写真のデジタル補正術 (5-2a) エキスパートモードメニュー解説

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・5-2. 具体的な補正実施手順 - ImageJによる作業に戻る

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【Ver. 4.7以降対応】(2023.1.8 Ver. 4.8バージョンアップに伴う一部記述補訂)

 ここでは、ImageJ対応 Bチャンネル再建法補正ツールのエキスパートモードのパラメータ設定方法について説明を行います。

 なお、エキスパートメニューは、ノービスモードで望ましい結果が得られない場合、さらにパラメータを追い込んで設定するためのメニューです。一度ノービスメニューでパラメータを設定し、ノービスモードで走らせると、その時のパラメータが保存され、次にエキスパートメニューを開いたときにそのパラメータを読み込みます。そこで変更したいパラメータのみ調整する、というような使い方を想定しています

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 まず、以下のノービスメニューが出たら、右下のキャンセルボタンを押してください。

図1 ノービス・メニュー

 すると以下のエキスパートメニューに移ります。

エキスパートメニュー

 エキスパートメニューでは、ユーザが迷いにくいように、現在のメニューの組み合わせで無効になるパラメータに関しては濃い灰色で表示するようになっています。上から5番目までの項目は、[Periphery Adjst Threshold]を除きノービスメニューと共通です。異なるのは、[Periphery Adjst Threshold] および [select algorism] 以下の項目です。

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長野電鉄からやってきた、上田交通モハ5261 (蔵出し画像)

 さて、今回は旧形国電ではありません。750V時代の上田交通のモハ5261です。上田交通は1986年10月1日付で1500Vに昇圧され、それまで名物だった丸窓電車などが、東急からやってきたアオガエルなどと交代し引退してしまいました。その直前の9月に撮影しました。確か青春18きっぷの消化を兼ねて、上田を訪れたと記憶しています。

 上にも触れましたが、上田交通は丸窓電車が有名でした。しかし本車は丸窓電車ではなく長野電鉄からやってきた車輛です。でもなぜかご縁があり、結果的に一番たくさん写真を撮っていました。

モハ5261

モハ5261

 別所温泉駅です。

モハ5261

 コーポ寺下、という文字が見えますので、寺下駅のようです。

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ART 1.16.3 がリリースされています

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 ARTのマイナーバージョンアップ、1.16.3が、2022.9.27付でリリースされています。バグフィックスコンパイル時のオプションの追加、トーンカーブ動作の安定化、フィルムシミュレーターのパイプラインの位置の変更等、細かい変更です。

 詳細は下記をご参照ください。

https://bitbucket.org/agriggio/art/branches/compare/1.16.3%0D1.16.2

色の編集に手こずったケース: 遠景と近景で編集の仕方を変えるべき? - チャンネル間相関統計の活用

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 どうも何度やっても全く満足な結果に至らないネガフィルムからスキャンしたカラー画像があります。これは、黄変除去の問題というよりは、元のスキャナの癖や補正の結果、色被りしてしまった画像の補正の問題です。それが下のケースです。

オリジナル

 黄変しているのはもちろんですが、おそらくスキャナの過剰補正で青紫に寄っています。最近のBチャンネル再建法ツールの進化で、黄変や、周辺の情報抜けはかなり補正ができるようになりました。しかし、スキャナの過剰補正で全体的に青紫に寄ってしまった結果をどう修正しても、満足できるような結果ににほど遠く途方に暮れていました。

Bチャンネル再建法適用後状態

 黄変自体はかなりきれいに消えていますが、その後、全体的に紫に寄った画像をいくらマゼンタ補正マスクをかけて補正を掛けてもどうもうまくいきません。全体的に緑が過剰になりがちで、不自然な感じが残ってしまいます。例えば、以下が以前の補正結果です。

以前の補正結果例

 青紫を修正しようとすると、全般的に緑が過剰になってしまいました。ある部分を修正しようとすると別の部分がおかしくなり、別の部分を修正しようとすると、また別の部分がおかしくなるという典型的なあちらが立てばこちらが立たず状態でした。

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darktable 4.0.1 がリリースになったようです

 9/17に darktableのマイナーバージョンアップ、4.0.1がリリースされたようです。

www.darktable.org

当然、大きな機能追加はなく、マイナーなものとして

・ファイルのインポート時に変数 $(MAKER) および $(MODEL) を使用できるようになった。

exif標準でサポートされているように、非常に長い焦点距離の場合、無限と表示。

が挙げられ、あとはすべてバグフィックスです。

また4.0.1で新規にサポートされたカメラは以下の通りです。

Base Support

    CANON EOS R7
    CANON EOS R10

Noise Profiles

    NIKON D780
    NIKON D4s
    CANON EOS M50 Mark II
    CANON EOS 850D

ダウンロード元は以下です。

www.darktable.org

ImageJ対応 相対RGB色マスク画像作成ツール Ver. 0.26 バージョンアップ

 夏にもバージョンアップしましたが、今回相対RGB色マスク画像作成ツールを、Ver. 0.26にバージョンアップします。6月のバージョンアップの主目的は、マゼンタ被り補正への対応強化、夏のバージョンアップはユーザインターフェース、特にプレビューの改善でしたが、今回のバージョンアップの主目的は、緑の析出の改善です。

 緑の析出の改善に向けて、今回2つの機能を追加しました。1つはチャンネル間レベル調整オプション、もう一つは、Gチャンネルを対象としたマスク作成時に、Bチャンネル情報のみを比較対象にするオプションです。

■チャンネル間レベル調整オプション

チャンネル間レベル調整オプション

 読み込み画像指定後出てくるパラメータ指定ダイアログで、上記のようなオプションが付きました。例えば下記のやや青紫に色被りしている画像の...

サンプル 元画像

イエロー透過マスクを作ろうとしたときに、このオプションにチェックをつけると...

イエローマスク レベル調整 On
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フィルム画像のダメージ度合いを測定する ImageJ対応 チャンネル間相関統計計算ツール

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 今回、フィルム画像のダメージ度合いを診断するための、画像統計計算ツールを作成しましたので公開します。先日、ImageJの getStatistics APIを使った簡単な画像統計表示ツールを公開しました。このプログラム、単に、ImageJのgetStatistics メソッドを使って、獲得した統計値を表示するという非常に単純なものですが、意外に記事に対するアクセスがありました。

 ただそれだと、画像ダメージの指標となる画像チャンネル(R, G, B)間の相関係数が計算できません。そこで、今回チャンネル間の相関係数や平均値、標準偏差等を出力するImageJに対応した統計計算ツールを開発してみました。

 今回のツールの非常にユニークな特徴として、

1. チャンネル間の相関係数が計算できる

 は、もちろんですが、その他に

2. 任意に指定した、画像の部分的な矩形範囲の統計が計算できる

3. 任意に指定した、輝度範囲を限った統計が計算できる

という他に類を見ない特徴を備えています。

 また、Bチャンネル再建法補正ツールに対応した

 4. マニュアルで補正値を調整する場合の目安値の計算機能

も付けました。

 まず、1. のチャンネル間の相関係数の計算ですが、先日お示ししたように、ダメージが大きいほどチャンネル間の相関係数 (特にBチャンネルとGチャンネルの相関)が低くなる傾向にあり、拙作のBチャンネル再建法フィルム画像黄変補正ツールに内在されている、拡張擬似フラットフィールド補正アルゴリズムだけでは黄変の補正が不十分になる傾向が見られます。

 一般的な風景画像ですと、正常な画像の場合、G-R間の相関係数が最も高く、G-B間、R-B間の順に相関係数が下がる傾向にあります。そして通常、G-R間の相関係数は0.95以上 (0.97〜0.98ぐらいが多い)、G-B間は0.95前後程度、そして相関が低めのR-B間でも 0.8代後半から0.9前後を大きく下回ることはあまりありません。大体0.90代前半あたりの数値になることが多いです。

 人間の感覚だと、G-B間より、G-R間の相関が高いのは意外ですが (主観的には、青と緑のほうが近いように感じるので) 、実は植物の緑は結構、GとRの値が高く、B が低いというパターンなので (特に新緑は G-R と Bの落差が大きい) 植物の緑が多く写っている景色ほど、G-R間の相関が高く、G-B間の相関は低くなります。一方、植物がほとんど写っていない都市の風景などは、人間の直感通り、G-R間より、G-B間のほうが相関係数が高くなることが多いです。

 例えば以下の写真の場合...

 R-G間の相関係数は、0.98、一方、G-B間の相関係数は、0.96です。

一方、以下の写真では...

 R-G間の相関係数は、0.93、一方、G-B間の相関係数は、0.95です。こちらはG-B間が上になっていますが、植物がほとんど写っていない影響です。またR-G間が低めなのは照明の影響等もあると思います。

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