省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

決定版! 不均等黄変・褪色ネガ写真のデジタル補正術 (1)

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目次

1. 本連載記事の概要 (本記事) 

2. 今まで紹介されてきた経年劣化による変褪色写真の補正術 

3. 写真補正の原理  

4. Bチャンネル再建法による不均等黄変・褪色ネガ写真補正の方法  

5-1. 具体的な補正実施手順 - 準備

5-2. 具体的な補正実施手順 - ImageJによる作業

5-3. 具体的な補正実施手順 - GIMPによる作業

6-1. 追加マニュアル補正の実施 - 補正不完全の原因分析と追加補正方針の決定 

6-2. 追加マニュアル補正の実施 - 追加編集作業の実際

補足. GIMPの代わりにPhotoshopで不均等黄変画像の編集を行う

補足. Bチャンネル再建法 補正ツール簡易版

補足. 標準的なBチャンネル再建法(+汎用色チャンネルマスク作成ツール)による黄変写真補正過程 (2021.5追加)

チュートリアルビデオ. 決定版! 不均等黄変・褪色ネガ写真のデジタル補正術・チュートリアルビデオ (2021.9追加)

1. 本連載記事の概要

 カラーネガフィルムはフィルムベースがオレンジ色のためか、ポジフィルムより褪色しやすく、かつ往々にして不均等に退色したり、黄変しやすい傾向にあります。褪色がさほど深刻ではなく、かつ均等に褪色していれば、Photoshop等のフォトレタッチ・ソフトウェアで補正が可能ですが、不均等に変褪色している合は、補正をかけてもあちらが立てば、こちらが立たずという状態で、多大な労力をかけない限り補正が困難だったり(細かく細分化したマスクをかけて補正をかける、等)、事実上不可能に近い場合も度々です。

 しかし、このほど私は、カラーネガ写真の経年劣化による不均等黄変褪色の多くのケースで有効な標準的な補正術を開発しました。この方法が従来知られてきた補正法と全く異なる点は、劣化・毀損したB(青)チャンネル画像を他 (赤R, 緑B) チャンネル情報を流用して再建し画像を再合成するという点です (これを Bチャンネル再建法命名します)。この補正術を適用すれば、完璧とはいかなくても6-8割程度の補正が可能になります。また一旦これにより補正した写真画像は、あとはフォトレタッチ・ソフトウェア等でグローバルな追い込み補正が可能になる土台となります。つまり、完璧に補正できなくてもフォトレタッチ・ソフトウェアで調整可能な、均等に近いところまで、色が偏っている状態に持っていくということが目標になります。

 とりあえず、どの程度の補正が可能なのか知りたい方は、このページに掲載してあるサンプルをご覧ください。

 また、いろいろ能書きはいいので、手っ取り早くBチャンネル再建法による補正方法を知りたいという方は、まず 4 を読んでいただいて概要を把握したうえで、以下のページをご覧ください。

yasuo-ssi.hatenablog.com

原理的な観点から見た、不均等黄変・褪色補正法の主な種類 (2020.10追記)

グローバル補正法 (フォトレタッチソフトを使った通常の補正)

フォトレタッチソフトに備えられたホワイトバランス調整やトーンカーブ、色彩レベル補正といった色彩補正機能を使った、画面全体(グローバル)に掛ける通常の補正。不均等変退色の程度が激しくなければ、グローバルな補正でもごまかせるが、激しいとごまかしきれない。なお、Paint Shop Proには[色あせ補正 (Fade Correction)]という褪色補正に特化した機能があるほか、Photoshopサードパーティーから発売されているプラグインにも褪色補正機能を備えたものがある。

 

明度(輝度)ゾーン別補正法  (この項 2021.2加筆)
 画像全体に対し補正を掛けるのは、グローバル補正法と同じだが、特定の明るさの領域のみに補正を掛ける方法。例えば黄変が明るい空の領域のみに限定されている場合は、明るい領域のみに対してのみ色補正すれば、明るさが中間~暗い部分には補正の影響を受けずに済む。
 具体的には、シャドウ域、中間域、ハイライト域に分けて色相を調整するツールがを備えたフォトレタッチソフトがある、(例えば、GIMP, Photoshop, darktableのカラーバランスツール)。あるいは、もっと細かく調整したい場合は、レイヤー編集をサポートするフォトレタッチソフトウェアであれば、輝度マスク(Luminosity Mask)を使って、特定の明るさの領域のみに補正を掛けるという方法もある。筆者が作成したImageJを使った輝度マスク画像作成ツール(GIMPPhotoshop等レイヤー編集をサポートしたフォトレタッチソフトで利用可能)はこちら

 

マニュアル色塗り補正法

・変色した範囲に対し、マニュアルで色を塗ったり、マニュアルで範囲を指定して色を変換させたりしてローカル(局所的)に補正する。変色範囲が広かったり、形が複雑だと膨大な手間と時間がかかる。また補正範囲と非補正範囲の境界線を自然に見せるために細心の注意が要求される。

 

画像情報や色域指定を活用したマスクを使ったローカル補正法

・画像情報や色域指定を活用したマスクを作って変色部分の補正範囲を指定し、それに対して局所的(ローカル)に色彩補正機能を適用することで変色部分を補正する。マニュアルではなく、画像情報等を活用して範囲を指定するので補正範囲の境界を人工的ではなく自然に見せることが可能。このようなマスクを、R, G, Bチャンネルや輝度画像などから、一から作ることも可能だが (筆者の過去のその事例) 面倒なので、マスク作成の手間を減らす各ソフトウェアに備わっている機能、ツールをどう活用するかがポイント。どのソフトウェアのどのツールを使うかでできるマスク (補正適用範囲) のつくり方に差が出る。Bチャンネルの毀損が激しかったり、情報抜けがある場合はこの方法でも補正しきれない可能性がある。

具体例:

PhotoshopGIMPなどの色域指定選択や、Paint Shop ProのRGB値による自動選択を使って範囲指定し、トーンカーブ等の色彩補正を実行する (変色範囲以外も指定される可能性があるので、それを除外する手段の併用が必要)

Nik Collection VivezaNikon Capture NX-Dのカラーコントロールポイントを使った補正

SILKYPIX (Proバージョンのみ) の部分色域選択機能を使った補正

○レイヤーマスクによる黄変部分補正法 (当サイト別記事)

 

■Bチャンネル再建補正法 (当記事)

・Bチャンネルの情報抜けに対応可能な唯一の補正法。またBチャンネルの毀損が激しく、他の方法では補正しきれない、あるいは膨大な手間がかかりそうな場合に有効。但し、GチャンネルとBチャンネルの値が接近する副作用があるので、画像によってはG, Bチャンネルの値を離す追加補正が必要になる場合がある。

 [以上、補正難易度が低いものから高いものへ適用可能な順]*1

上記補正手法分類別に、比較した記事を公開しました。ご参照いただけると幸いです。下記のリンクをクリックしてご覧ください。(2020.11)

 やや軽度な事例 :
  不均等黄変ネガ写真を様々な方法で補正してみる [手法比較事例紹介]

 やや重度な事例:
  不均等黄変ネガ写真を様々な方法で補正してみる2 [手法比較事例紹介]

 

 参考までに、Bチャンネル再建法によるいくつかの補正サンプル画像をお見せします(リンクが張ってあるサンプルは、補正過程をご覧いただけます)。

サンプル1

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オリジナル

 

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補正 (本手法のみ適用)

サンプル2

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オリジナル

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補正1 (本手法のみ適用)

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補正2 さらに汎用色チャンネルマスク作成ツールを使ったローカル補正
+darktableによるホワイトバランス、コントラスト補正を追加  (2021.5 写真入替)

サンプル3

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オリジナル

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補正1 (Bチャンネル再建法のみ適用)

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補正2 さらに、汎用色チャンネルマスク作成ツールによる
マスクをかけGIMP上で色補正
+ RawTherapeeによる最終調整 (2021.5 写真入替)

サンプル4 (以下2021.5追加)

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オリジナル

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補正1 (Bチャンネル再建法のみ適用)

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補正2 汎用色チャンネルマスク作成ツールによるマスクをかけ色補正
さらにRawTherapeeで最終調整

サンプル5

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オリジナル

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補正1 (Bチャンネル再建法のみ適用)

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補正2 汎用色チャンネルマスク作成ツールによるマスクをかけ色補正
+RawTherapeeによる調整

サンプル6

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オリジナル

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補正1 (Bチャンネル再建法のみ適用)

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補正2 汎用色チャンネルマスク作成ツールによるマスクをかけ色補正
+RawTherapeeによる調整

サンプル7

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オリジナル

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補正1 (Bチャンネル再建法のみ適用)

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補正2 汎用色チャンネルマスク作成ツールによるマスクをかけ色補正
+ darktableによるコントラスト補正

 

 いずれも不均等な黄変がきれいに消えているのがお分かりいただけると思います。たぶんこのような不均等黄変フィルムの補正を手掛けたことのない方には大したことがないように思われるかもしれませんが、手掛けたことのある方にはこれがいかに大変なことが理解していただけるかと思います。しかも、従来の方法に比べて、大幅に短い時間でオリジナルから最終補正状態までもっていくことが可能です。
 多くの方にこの補正技術を活用していただくために、本連載記事でその方法を公開いたします。

 なお、本連載のアイディアのもとは、以前私が「高尾山麓日誌」に公開した不均等黄変退色ネガ写真の補正術です*2。ただ、当時の記事で公開したテクニックは、そこそこ良い結果は出せていたものの、膨大な労力がかかっており、また、私の色彩の原理に対する理解が不十分だったため、技術の標準化ができませんでした。今回公開する技術は誰でも使える標準的な技術になっていると自負しております。また、どうしても個別の写真を見て判断しなければならない手作業が必要なため、完全な自動化は無理ですが、処理を比較的短時間で済ませるためのサポート・マクロスクリプトも公開します。

 また、使用するソフトウェアは、無料で使えるImageJとGIMPです。ImageJ上での処理はほぼ全自動でできますので、ImageJの使い方をあらかじめ学んでおく必要はありませんが、GIMP上では手作業が残りますので、GIMPの基本的な使い方を理解していることを前提とします。なお、基本的な方法論を理解していればGIMPの代わりにPhotoshop等、レイヤーを扱えるフォトレタッチソフトを利用することも可能です。

※2020.9追記

 使い慣れたフォトレタッチソフトの乗り換えは困難なことを鑑み、GIMPで説明している作業を、ユーザが多いと思われる Photoshop (含Elements) でもできるよう補足ページを公開しました。上の目次の [補足] をご覧ください。なお、ImageJの利用は必須になります。

 Paint Shop Proなどの他のレイヤー編集をサポートした画像レタッチソフトでも可能とは思いますが、筆者は所有していないので具体的な作業方法をお示しできません。悪しからずご了承ください。

 また、不均等黄変でも、Bチャンネルの損傷がさほど激しくない場合、黄変部分が、青空などの一部分に限られている場合は、より簡便な、レイヤーマスクによる黄変部分補正法も使えます。黄変部分を検出するレイヤーマスクの作成についてはこちらの記事をご覧ください。また、Nic CollectionのVivezaを使うというのもありだと思います。

 log.goo.ne.jp

Keyword: 退色補正 退色ネガ 黄変ネガ 写真補正 退色修復 黄ばんだネガ フィルム黄ばみ

 

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*1:なお、色チャンネルの毀損が1チャンネルのみであれば何らかの方法で補正可能ですが、2チャンネル以上毀損している場合は、モノクロ写真に着色するのと同様な考え方で対処するしかありません。

*2:

blog.goo.ne.jp