省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

飛行機の窓から撮った中部~関東北部の山々

 3月に所用で韓国に行って来ましたが、帰りの飛行機からの日本の山々です。韓国から日本に行くこの便の航空路は、日本海から入ってきて、石川県能登半島の付け根付近を西から東にやや北上しながらまっすぐ通過するようです。そして中部、関東北部を横断し、太平洋の近くで南に旋回して洋上に出て成田に向けて南下します。

航空路

 以下の写真、北から南を覗いています。

石川~富山南西部の山々

 右上は白山、中央やや右は笈が岳、そしてそこから左は石川と富山の県境をなす両白山地の山々と思われますが自信ありません。

[国土地理院地図]

https://maps.gsi.go.jp/#10/36.297972/136.792145/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1

白山?

 白山と思しき山、拡大してみました。その向こうに見えるのは飛騨山脈南部でしょうか?

富山県南西部の山々?

 おそらく両白山地富山県南西部の山々で、山の向こうは飛騨の白川郷かと。

黒部湖周辺

 中央は黒部湖です。北側から南方向を見ています。その右の真っ白な山は立山で、雪深さが伺えます。黒部湖は飛行機からわかりやすい目印になります。

[国土地理院地図]

https://maps.gsi.go.jp/#12/36.568253/137.649765/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1

黒部湖周辺拡大

 拡大して撮った写真。黒部第4ダムがはっきり見えます。左は針ノ木岳、奥は、三俣蓮華岳や雲の平でしょうか。さらにやや左に続く稜線の先は槍ヶ岳かと。

黒部湖周辺

 右の白い部分が黒部湖です。その左から張り出しているのは、針ノ木岳蓮華岳、その背後の細長いのが高瀬湖。その左、餓鬼岳ー燕岳の稜線そしてその背後は安曇野です。そしてやや左手前、雲の間から顔をのぞかせている、折れ曲がった稜線が鹿島槍ヶ岳かと。

青木湖~大町市

 真ん中の白っぽい部分は大町市付近、その下青いのが木崎湖で、青い逆ハート形が青木湖です。

[国土地理院地図]

https://maps.gsi.go.jp/#12/36.601886/137.872581/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1

青木湖周辺拡大

 青木湖周辺を拡大しました。青木湖の下は神城、そして川を渡って白馬村中心街の南端が見えます。青木湖の北、白く雪に覆われたのは中綱湖、そして木崎湖、その北は大町市街です。

四阿山および長野盆地

 大きなカルデラが見えてきました。最初は浅間山かと思いましたが、地図で確認すると四阿山のようです。浅間山はその後ろのようで。その間に挟まれているのが嬬恋高原でしょう。四阿山のすぐ左は田代湖でしょうか。四阿山の方が火山としては浅間山より規模が大きいように見えます。その手前は長野盆地小布施町 (手前中央) から長野市 (手前やや左) が見えます。地図で見るより、長野市四阿山の距離が近く圧縮されて見えます。

[国土地理院地図]

https://maps.gsi.go.jp/#11/36.618008/138.499832/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1

白根山から四阿山

 四阿山から左に伸びる尾根をたどった先が草津白根山。その北 (写真手前) は志賀高原かと。

野反湖

 野反湖で、手前がダムです。野反湖は、冬季通行止めとなるようですが、上空から見ても相当の雪が積もっているのが分かります。後方は白根山の噴火でできた草津高原が広がります。野反湖も大きさの割には、冬季には飛行機の上からでもはっきり確認しやすいです。

[国土地理院地図]

https://maps.gsi.go.jp/#13/36.706343/138.648491/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1

男体山中禅寺湖

 中央やや左、山頂付近に小さなカルデラがある山があり、そのすぐ向うに湖が見えますが、日光男体山中禅寺湖のようです。その右は日光白根山かと。飛行機は尾瀬ヶ原上空を飛んでいるものと思われます。

[国土地理院地図]

https://maps.gsi.go.jp/#12/36.833607/139.468002/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1

日光山地拡大

 日光山地を拡大します。中央やや右に中禅寺湖、その手前の白いのが戦場ヶ原、そして男体山、太郎山、大真子、子真子、女峰山、左手前は川俣湖です。

鬼怒川上流

 山の上に湖のようなのが見えますが、栗山ダム湖 (意外にかなり目立ちます)、その手前は鬼怒川の上流でその左端は川治ダム湖です。後方には、関東平野北部 (今市から宇都宮方面) が広がっています。栗山ダム湖の背後は鬼怒川温泉街かと。

 栗山ダム湖はもともと火山のカルデラだったのかもしれません。

五十里湖

 手前、五十里湖、そして川治ダム湖、栗山ダム湖、右後方の白っぽいのは大笹牧場です。その奥に日光から今市に至る関東平野の端が広がっています。

高原山

 なだらかな山容は高原山です。こうしてみるとかなり大きい火山だと分かります。右端はハンターマウンテン塩原スキー場、そしてエーデルワイススキー場の端が見えます。その手前は塩原温泉新湯、一番下は八郎が原牧場のようです。

 高原山の向こうの平原は日光市東部 (旧今市市) 、さらにその上は宇都宮市と思われます。

[国土地理院地図]

https://maps.gsi.go.jp/#13/36.896577/139.783344/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1

那須野が原

 鶏頂山を過ぎ那須野が原に入りました。左下から右に向けて斜めに突っ切るのは東北新幹線および東北本線のようです。そして左下は黒磯市街、その右はブリジストン那須工場のようです。東北自動車道は、右下にゆるやかにくねって見えています。右端は、黒磯 PA のようです。黒磯市街とブリジストンの手前を左から右下中央ににながれるのは那賀川。そして東北新幹線をさらに右上に上がっていくともう一つ工場らしきものが見えますが、これはブリジストン栃木工場で、その手前が那須塩原駅です。右中央付近から左斜め上にかけて流れるのは箒川。

[国土地理院地図]

https://maps.gsi.go.jp/#13/36.950235/140.051994/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1

久慈川流域

 那須野が原を抜け、阿武隈山地に入りました。中央縦にまっすぐに伸びるのは久慈川流域で、鉄道で言うと水郡線が走っています。手前は棚倉町あたりでしょう。向こうには太平洋が見えます。飛行機はこのあたりから大きく南に旋回して成田に向かいます。そろそろ日没です。

[国土地理院地図]

https://maps.gsi.go.jp/#13/37.005637/140.401325/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1


1976年度 片町線新性能化計画に伴う旧形国電廃車計画

 1976年に、片町線が新性能化されることを知って当時片町線を担当していた淀川電車区に問い合わせていただいた資料です。

 84輌の冷房つき 103系を新製し、半分を大阪環状線 (森ノ宮区) に、半数を首都圏に投入し、新製の冷房つき 103系と 首都圏から捻出した非冷房の 103 系で森ノ宮区の 101 系を置換え、その大半を片町線に振り替えることで片町線の旧形国電を置き換えるという計画でした。

 なお、捻出された101系T車の一部は103系に改造編入し、そのまま環状線で使われました。また、片町線の72 系の一部は阪和線に転出しました。

 なお、以下の資料、コピーしたものを画像ビュアー等に貼り付けて拡大して見てください。

 まず計画概要です。

計画概要

 以下は具体的な配転計画ですが、一番上の欄が日付、次はメーカー公式試運転日程、次は首都圏での組み換え日程、森ノ宮での103系投入日程、森ノ宮での101系組み換え日程、そして淀川での101系投入日程、旧形捻出日程、最後は工場入場予定です。12月13日が最後になっていますが、この時点 (1975年 10月) で捻出車輛は 53輌分しか書かれていないので、その先の予定はこの時点ではまだ未定だったようです。

電車置換計画 1

電車置換計画 2

電車置換計画 3

 こちらは車両ごとの廃車、転配計画案です。廃車・解体予定付きの下に車輛番号と、検査切れ日付が書かれています。検査切れ日付の横に Z, Y の記号がありますが、Z はおそらく全検切れ、Y は要検切れと思われます。こちらの方には 77年 3 月までの予定が書きこまれています。

車輛転配一覧

 

クハ79056 (大ヨト) 1976.3 鴫野

 

G'MIC をアップデートしても GIMP から起動するとアップデートされていない

 先日 GIMPプラグインソフト (厳密に言うと、現在では GIMP だけでなく、商用ソフトを含む複数の画像処理ソフトのプラグインとして動く) G'MIC のアップデートインストールをして、GIMP から起動してみたところ、アップデートされないという現象に出くわしました。

 また、以前 G'MIC に AI ノイズ低減機能が搭載されてすぐに検証してみましたが、その時は Windows 上でエラーメッセージが出て実行できませんでした。

 今回調べてみたところ、結局その原因は、G'MIC のインストールフォルダ構成が変わったり、古い設定ファイルにあったようです。

 その対策ですが、一旦ユーザ設定ファイルのフォルダを改名して、GIMP をインストールしなおし、さらに最新版 G'MIC をインストールしてみたところ、正しくバージョンアップもされ、かつAI ノイズ低減ツールも稼働するようになりました。

 どうやら G'MIC の場合 C:\Users\%USERNAME%\AppData\Roaming\GIMP\2.10 (Windows の場合) を消すか、適宜改名してから、G'MIC の新バージョンをインストールする、というのが基本のようです。その下に引き継ぐべきユーザが設定したファイル (プラグインなど) があれば、改名しておいたフォルダから必要なファイルを新しい設定ファイルフォルダにコピーし直します。

 どうも設定ファイルにあるフォルダの pluginrc ファイルが悪さをしていたのではないかと思われますがはっきり分かりません。

 

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[参考サイト]

www.gimp-forum.net

discuss.pixls.us

OM system 150-600mm f/5-6.3 IS に関する PetaPixel レビュー

 写真機材のレビューサイト PetaPixel に OM System の 150-600mm f/5-6.3IS (フルサイズ換算 300-1200mm 相当) のレビューが出ています。レビューアーは、DP Review にいたクリス・ニコルズです。

petapixel.com

 このレンズは SigmaOEM のようで、Sigma の他社フルフレーム用 150-600mm f/5-6.3 レンズをベースに作っているようです。形態もほぼ同じと指摘しています。性能的には申し分なく、フルフレームでは問題となっていた周辺光量低下も、m 4/3 のセンサーの小ささが幸いしてほとんど見られないようです。但し 600mm 端では、絞りを F 7~ 8 に絞ったほうがより良い結果が得られると指摘しています。

 とは言え、フルフレーム用レンズの転用ですので、m 4/3 専用に設計されていればもっと小さくできたはずだと指摘しています。それでも、1日持ち運んでもさほど苦にならない大きさとは言われていますが (おそらくアメリカ人の体格基準で)。

 もう一つの問題は価格の高さです。Sigma のフルフレーム用のアメリカでの希望価格は、$1500 ドルであるのに対し、OM System のレンズの希望価格は $2700 と2倍近くになっています。この「プロ」価格と、もっと小さく作れたはずだと考えると、OM System 150-400mm f/4.5 (フルサイズ換算 300 - 800mm 相当) の方がはるかにリーズナブルであり、あまり売れないのではないかと指摘しています。

 因みに本レンズの重さは、2065g それに対し、OM System ED100-400mm F5.0-6.3 IS の方は、1120g、本レンズの国内価格は、大手量販店価格で 44万円程度ですが、100-400mm は、16~17万円前後となっています。もちろん、m 4/3 でどうしてもテレコンバーターを使わずに、フルサイズ換算 1200mm までの望遠が欲しいとなるとこれ一択になるのですが... 因みにテレコンバーターですが、ヨドバシカメラの価格だと、1.4倍の MC-14 は 27000円強で重さ 105g、2.0倍の MC-20 は42000円強という価格で、重さ 150g。一段暗くはなりますが、重量、価格面でも有利です。あとは写りの問題ですが...

 ちなみに本レンズのベースとなった Sigma の 150-600mm はキャノンEF用、ニコン F用でも、12~14万円程度です。これを APS-C で使えば、225 - 900mm 相当で使えます。また、TAMROM もほぼ同重量、同価格帯で SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2 を出しています。さらに Canon の F200-800mm F6.3-9 IS USM (重量 2Kg強) ならやはり APS-C で使えば、300-1200mm 相当で使え、お値段は 30万円程度、また単焦点ですと Canon の RF 800mm が、13-4 万程度であり (重量は 1260g)、これを APS-C で使えば、1200mm 相当で使えます。特に最近キャノンは、手振れ補正を強化してきており、OM system に迫ってきていますので... しかしこう考えると望遠域を手軽に使うというコンセプトなら、 センサーサイズの小さい、APS-C カメラこそ手振れ補正を強化することは必要ですね。

 以上のことを考えると、価格的にはもうちょっと何とかならないものかと思います。150-400mm f/4.5 よりちょっと高いぐらいだったら、かなりキラーレンズになったでしょうに。あるいはこの値段で出すなら、m 4/3 に最適化した設計にして、1.5 Kg ぐらいの重量で出してほしいところです。m 4/3 でどうしても 1200mm まで欲しい人がしかたなく買う (買わされる) レンズというあたりかと。

 要は m 4/3 だから軽く使える、にも m 4/3 だから安く買える、にもなっていないということです。

 いま、円安で、しかも工場がことごとく海外に出てしまったこともあり、カメラの価格も上げざるを得なくなっています。その中で、Nikon などは重くて高級感のある路線を追求してそれなりに成功しているようです。ただ私などは、軽く作れるのがミラーレスの真骨頂なのに重厚長大路線を追求してどうすると思ってしまうのですが。

 しかし、m 4/3 の特性を生かすには、被写界深度の深さを活かしたマクロ域の充実か、もしくは、フルフレームよりも軽く、安く、手持ちで望遠域が使えるという方向性を強化していくしかないと思います。この点では、今までオリンパス - OM が追及してきた手振れ補正を強化する路線は正しいのですが (しかし Canon がかなり追い上げてきています)、足りないのは、鳥や動物、飛行機などに追従できる、C-AF 機能の強化です。この点では Canon に負けているようです。

 さらに、他メーカーに追随して、重厚長大高価格路線を追求するような傾向が見られるように思われますが (それなら m 4/3 を買う意味がない!) 、それだと失敗するだけだと思うのですが...

 

ART におけるカメラの標準的プロファイル データについて

f:id:yasuo_ssi:20210904211415j:plain

 ART のカメラプロファイルは、デフォルトでは、一部のカメラについてはカメラ固有の DCP プロファイルがあり、Raw ファイルを読み込んだときにそれが自動的に適用されます。これはボランティアによって作成された DCP プロファイルです。

 しかし、ボランティアによって作られた DCP プロファイルがない場合は [カメラの標準的プロファイル] が適用されます。このデータはどこに定義されているかというと、ART のインストールディレクトリにある、cammatrices.json というファイルに定義されています。このファイルを見ると、例えば以下のように定義されています (一部を抜粋)。

-------------

    {
        "make_model" : "NIKON D5200",
        "dcraw_matrix" : [8322, -3111, -1047, -6367, 14342, 2179, -988, 1638, 6394]
    },
    {
        "make_model" : "NIKON D5300",
        "dcraw_matrix" : [6988, -1384, -714, -5631, 13410, 2447, -1485, 2204, 7318]
    },
    {
        "make_model" : "NIKON D5500",
        "dcraw_matrix" : [8821, -2938, -785, -4178, 12142, 2287, -824, 1651, 6860]
    },
    {
        "make_model" : "NIKON D5600",
        "dcraw_matrix" : [8821, -2938, -785, -4178, 12142, 2287, -824, 1651, 6860]
    },
    {
        "make_model" : "NIKON D6",
        "dcraw_matrix" : [9028, -3423, -1035, -6321, 14265, 2217, -1013, 1683, 6928]
    },

-------------

 ここに、Raw ファイルに記録されているセンサーから取得したデータを適切な RGB 値に変換するために掛けるカメラマトリックスデータが定義されています。センサーの 光スペクトラム に対する感度は人間の目の感度と異なりますので、それを人間の目が見て適切になるように変換する必要があるためです。各マトリックスデータは 9 個の要素のある配列データとなっていますが、これはセンサーの RGB 3チャンネルデータに対し、 3 x 3 の配列 (マトリックス) データを掛け、変換した RGB データを得ているためと考えられます。

 これを見ると、全てのカメラで同一のマトリックスが適用されているのでなく、カメラごとに異なったマトリックスデータが適用されているのが分かります。おそらく、カメラに使われているセンサーごとに異なった値が適用されるのでしょう。従って、この値が同一のカメラ同士では同じセンサーが使われているものと考えられます。例えば、上の例だと、D5500 と D5600 は同一の値が使われていますが、これは同じセンサーを使っていると判断できます。

 ところでこの値はどこから得ているのでしょう。これについては、cammatrices.json の冒頭でこのように書かれています。

/*

Matrices extracted from the D65 ColorMatrix tag of DNG files
generated by Adobe DNG Converter

Updated on Wed Oct 16 18:58:10 2019 (with Adobe DNG converter 11.3.0.197):

 

 つまり、Adobe DNG Converter から取得されているのです。ということは、この値は、Adobe DNG Converter に付属する、Adobe Standard DCP プロファイルのD65データ (一般的なカメラ標準色温度である昼光光源に相当する6500Kでの値) と同一の値が適用されているものと思われます (なお、DCP プロファイルには、D65 と D50 [昼白色光源 5000K 相当でのデータ]の両方のデータが定義されています。D65 の方が青みが強いです)。

 なお、ART には、より詳細なデータが記された camconst.json というファイルもありますが、カメラ機種によっては、camconst.json にデータがないものもあります。一方 RawTherapee の方は camconst.json ファイルのみです。この違いは、現在の ART の方は Raw の読み込みに Libraw を使っているのに対し、RawTherapee の方は基本的に DCRaw を使っているためと思われます (以前は ART も DCRaw を使っていました)。

 ART は現在のバージョンでは camconst.json は使用せず、カスタマイズされたカメラ固有の DCP プロファイルが用意されている場合はそちらを (カメラ固有のプロファイル)、それがない場合は cammatrices.jsonマトリックスを適用しているようです。したがって ART の標準的プロファイルは、Adobe Standard (のD65データ) と同一とみなしてよいと思います。

 一方、RawTherapee の方の標準プロファイルは、camconst.json  のデータを使っており、このデータは、ボランティアによる詳細データが得られる場合は、それを、得られない場合は、DNG Converter によって得られるデータを使って作成されているようです。したがって一部カメラ機種に関しては ART とは異なります。端的に言えば、RawTherapee は、ボランティアデータがないカメラは Adobe Standard を、ボランティアデータがあるカメラはカメラ出し Jpeg の色を模しているといえます。

 ただどうせボランティアデータに一部依存するなら、ART のように、*.json ファイルに記述するカメラマトリックスデータは、DNG Converter から得ることにして、ボランティアからデータが得られる場合は、ボランティア作成の DCP ファイルからデータを得るようにし、ボランティア作成 DCP ファイルの読み込みを優先するという形の方が、管理都合上合理的かと思います。

 ちなみに Adobe Standard の DCP プロファイルは Adobe が独自に作成しているプロファイルであって、カメラメーカーが作るカメラ出し Jpeg の色合いとはまた異なります。ただ、Adobe Standard はどのカメラであっても同一の色づくりを目指したプロファイルですので、カメラの特性を殺してしまうプロファイルでもありますが、逆に言うと、同一の結果を目指す故、Adobe Standard のカメラマトリックスデータがカメラごとのセンサーの特性の違いを一番よく反映できているはずです。その意味で、これをスタートポイントに持ってくるというのは正しいと思われます。

 一方、カメラ出し Jpeg に近い色合いを目指す場合は、それでは不都合です。ボランティア作成の DCP プロファイルがないカメラに関して、カメラ出し Jpeg に近い色合いを出したい場合は、同じ Adobe DNG コンバータに付属する DNG プロファイルの中でも、Adobe Standard ではなく、Adobe がカメラ出し Jpeg をエミュレートして作ったカメラ固有プロファイルを使ってください。

 あるいは、先の例に挙げた D5500 と D5600 のように、同じセンサーを使っているカメラで、片方はボランティアが作成した DCP プロファイルがあり、もう一方はないなら、一方の DCP プロファイルをコピーし、それらを DCP プロファイルのない方のカメラ名に変えることでカメラ固有プロファイルを追加することができます。

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[参考記事]

yasuo-ssi.hatenablog.com

yasuo-ssi.hatenablog.com

 

 

余剰サロ85を70系用制御車に改造した クハ77003 (蔵出し画像)

 戦前形旧形国電を主として紹介してきましたが、今回は戦後製の旧形国電です。新前橋区にいたクハ77003です。本車は元々 サロ85 でしたが、80系の地方転出に伴い余剰になった サロ85 を、地方転出に伴い不足していた 70系用制御車として転用した変わり種です。新前橋区のみに配置され、両毛線を中心に一部吾妻線でも使われました。

 70系に合わせて使用するために、ご覧のように 3 扉に改造され、ジャンパケーブルも2線になっています。なお、信越線長野地区、上・信越線新潟地区、中央西線・岡多線で使われた 70系は引き通し線は横須賀線を踏襲して 3 線で使われましたが (但し新潟地区では、クハ68に関しては、正面のジャンパ栓受けは 2 栓しかありませんでした)、新前橋区では、70系と40系の混結があったためか、2 線使用でした。但しクハ77 に関しては、3本目のジャンパ栓があるのが分かります。この写真でも確認できます。改造の際、他地区への転属を考慮していたものと思われます。またこの写真では暗くて不鮮明ですが、偶奇同仕様だったようで、奇数向きにも偶数向きにも連結できるようになっていたようです。おそらく他線区への転出も考慮しての仕様だったと思われますが、結局両毛線系統を離れることはありませんでした。

クハ77003 (高シマ) 1977.5 新前橋電車区

 本車は元番号が サロ85020 でしたが、1968年10月の両毛線電化に際して、1968.9 に改造されたようです。

褪色写真のカラー修復に有効な ImageJ 用クラシック・ヒストグラム平坦化プラグイン 16bit 画像出力版

 先日、褪色フィルム画像の補正に使える ImageJ 用の古典的ヒストグラム平坦化プラグインを公開しましたが、途中で ALT キーを押さなければならないのが煩わしいというのと、32bit 画像非対応の点、ならびに 8bit 画像にそのままヒストグラム平坦化を掛けるよりは、16bit 画像に直したほうがベターではないかという点から、改訂版を作成しました。

 なおヒストグラム平坦化アルゴリズムの褪色フィルム画像のカラー修復効果については、欧米のユーザにもほとんど知られていないので (私も偶然発見しました)、GIMP の平滑化コマンドも将来的に Photoshop のように「欠点」が「改善」されて、カラー修復効果がなくされてしまうことを恐れて、このプラグインを開発しました。以前にも指摘しましたが、このカラー修復効果は、本来のこのアルゴリズムの目的 (暗部を鮮明に見せる) からは色相が変わってしまう「欠点」に過ぎませんので。なお、ImageMagick にもヒストグラム平坦化コマンドがありますが、バージョンの進化でこの特徴が「改善」されてしまったようです。

 今回の改訂版の特徴は、読み込む画像の bit 深度にかかわらず、一旦 16bit 画像に変換してプロセスを実行し、常に 16bit 画像を出力する点です。また上でも触れたように ALT キーを押す必要はありません。なお読み込みファイルを上書きしないという特徴 (最後に、元のファイル名に、"_equalized.tif" をつけた名前で実行結果を保存) はそのまま維持されています。

 コード的には、ImageJ の ContrastEnhancer API に依存するのを止め、この API のクラシックなヒストグラム平坦化アルゴリズムをそのまま Python に移植することで、ALT キーを押さなくてもクラシックなヒストグラム平坦化を実行するように変えました。一部直接 Java の 命令を叩いているところもあります。

 実は先日ヒストグラム平坦化アルゴリズムの解説を書いたのは当プラグインを書くための準備でした。

 ImageJ 版のヒストグラム平坦化プラグインを使うとGIMP に比べ次の点で有利です。

GIMP の平滑化コマンドを実行するより、特に 16bit ネイティブ画像においてより諧調のきめ細かい画像が得られる

 この特徴は、前のバージョンの ImageJ 用プラグインも同じです。また性能面でも変わりはありません。

 一方注意を要する点は、

・一般の画像処理ソフトで読み込める形式に変換するには、拙作の GIMP 用 ImageJ RGB TIFF ファイルインポートプラグインで一旦読み込んで保存しておく必要あり (もしくは手動で RGB 合成が必要)。

・ImageJ はカラーマネジメントに非対応なので、オリジナルファイルが sRGB 以外の場合、他の画像ソフトに読み込んだ際、カラープロファイルを割り当て直す必要がある*1

 この注意点も、前のバージョンと同じです。

メニュー画面

 メニュー上は histogram equalization16 と表示されます。

 因みに当プラグインヒストグラム平坦化を実行した結果と、GIMP 上で実行した結果を比較して見ます。読み込むファイルは以下のファイルです。このファイルは以前こちらの記事でサンプルとして使用しました。なおこのサンプルは赤色褪色ポジを使っていますが (手持ち画像の関係です)、他の褪色パターンでも、不均等に変褪色しているのでなければ有効です。

f:id:yasuo_ssi:20210417112011j:plain

オリジナル

 オリジナルのヒストグラムも掲げます。

上のヒストグラム

 ハイライト域を中心に、R チャンネルの値が G, B チャンネルより高めに推移しているのが分かります。

 これを変換した結果のヒストグラムIrfanView で取ってみます。なお IrfanViewヒストグラムは 16bit 画像もいったん 8bit に直してからとっていることにご注意ください。比較のため GIMP 平滑化コマンドを適用した結果もヒストグラムをとります。

プラグイン 16bit → 16bit

プラグイン 8bit → 16bit

GIMP 平滑化 16bit

GIMP 平滑化 8bit

 8bit の場合諧調のきめの細かさは、当プラグインGIMP ではあまり変わらないようですが、16bit では顕著な差があり、当プラグインの方が諧調のきめが細かく、ヒストグラムもより文字通り平坦になっています。これだけ滑らかだと本アルゴリズムの弱点であるトーンジャンプはほぼ無視できるレベルだと思います。よく分かりませんが、GIMP の平滑化コマンドの方は、16bit ファイルの場合、ヒストグラムの諧調数が ImageJ より少ないものと思われます。ImageJ を使うとひと手間増えますが、16bit ファイルの場合そのひと手間を掛ける価値は十分あると思います。逆に元ネタが Jpeg などの 8bit ファイルならそのまま GIMP 上で平滑化コマンドをかけた方が楽で効果も同じです。

 ただ実行結果の見た目はどれもあまり変わりません。ヒストグラムが結構違うのにこれはちょっと不思議です。

実行結果 当プラグイン 16bit → 16bit

 因みにこの実行結果 (16bit → 16bit) を GIMP で通常の TIFF ファイルに変換した後、ART に読み込ませ、霞除去を掛け、露出でブラックポイント補正を行っただけで以下の結果が得られました。

上のファイルを ART で編集

 このブラックポイントの調整で、上のヒストグラムの右端の山はほぼクリップされました (下図ヒストグラム参照)。

 さらに、ART のチャンネルミキサーの原色補正モードで調整を掛けると...

さらに原色補正で編集を追加

出力結果 (周辺一部トリミング)

 更に筆者がこちらのフォーラムで公開している ART 用の CTL スクリプトを使ってさらに追加編集を加えると...

再々編集出力結果

 自画自賛で恐縮ですが、これはいいですね。

 当プラグインのダウンロードはこちらから。

 なお、インストールその他については以下の前のバージョンの記事をご参照ください。

yasuo-ssi.hatenablog.com

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[最近の関連記事]

yasuo-ssi.hatenablog.com

yasuo-ssi.hatenablog.com

*1:GIMP におけるカラープロファイルの割り当てに関しては、以下の記事の、3. をご覧ください。

yasuo-ssi.hatenablog.com