省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

マイクロ 4/3 AI ノイズ低減比較 OM Workspace vs. FOSS ノイズ低減ツール

 先日、デジタルテレコンを使うより FOSS (Free Open Source Software) の Real ESRGAN アップスケーラを使った方が良好な結果が得られると報告しました。そこで、今回は FOSS のノイズ低減ツールを使ったらどうなるかを試してみます。

 マイクロフォーサーズは元々センサーサイズが小さいため、低照度下、高 ISO で撮影した画像にノイズが入りやすくなります。そのため 公式 Raw 現像ソフトである OM WorkSpace に AI を使ったノイズ低減機能が搭載されています。しかし、Mac OS では常に使えますが、Windows だと cuda を使っているのか、NVIDIA の GPU を使っていないと AI を使ったノイズ低減機能が使えません。また OM WorkSpace はそもそも Linux に対応していません。Wine 経由で使えるかもしれませんが、その場合は GPU は常に使えなくなってしまうので、使う意味がなくなります。

 

 というわけで、FOSS のノイズ低減ツールがどれぐらい使えるか試してみました。FOSS のノイズ低減ツールは、GIMP および自作 plug-in を通して、RawForge と NIND denoise を使用しています。

yasuo-ssi.hatenablog.com RawForge は標準的な、TreeNetDenoise モデルを使っています。

yasuo-ssi.hatenablog.com

 NIND denoise はモデルに、2021-06-14付のモデルを UtNet で使っています。 

 まずオリジナルです。

左: ISO 200 / 右: ISO 25600

 左は参考に ISO 200 で撮ったもの、右は、テスト用にわざわざ ISO 25600 で撮影しました。カメラは OLYMPUS OM-D E-M1 mk iii です。流石に、ISO 25600 だとノイズだらけです。

 下は、OM WorkSpace の AI ノイズ低減をかけたものとオリジナルです。

左: OM Workspace AI ノイズ低減 / 右: オリジナル (ISO: 25600)

 ノイズは目立たなくなりましたが、さすがに細部を完璧に再現するところまで行きません。

 下は、OM WorkSpace の AI ノイズ低減と、FOSS の RawForge でのノイズ低減結果を比較しています。

左: OM Workspace AI ノイズ低減 / 右: RawForge

 OM WorkSpace で処理したものより、RawForge を使ったほうがより良い結果が出ています。RawForge なら、AMD の GPU や intel の内蔵 GPU なども使えます。

 もう一つ、NIND Denoise も使ってみました。一旦 ART でデモザイクを行ったものを GIMP に読み込ませ、それに NIND Denoise を掛けてみましたが....

左: OM Workspace AI ノイズ低減 / 右: NIND denoise

 ところが、NIND Denoise を掛けてみても、ほとんどノイズが取れません。最初は設定を間違えているのかと思いましたが、Nikon で撮ったイメージに対してはかなり効果を発揮します。あきらかに OM のカメラで取った画像に対してほぼ効果がない状態です。しかし撮ったカメラによってこんなに効果が違うのは驚きと思いましたが....

 そこで、デモザイクする Raw 現像ソフトを変えてみると変わるのではないかと、darktable ででモザイクして GIMP に読み込ませたものを NIND denoise に掛けると...

左: OM Workspace AI ノイズ低減 / 右: NIND denoise (darktable 経由)

 今度はうまく行きます。どうも ART と OLYMPUS カメラと NIND denoise の相性が悪いようです。結果ですが、やはり NIND denoise のほうが精細な結果が得られます。RawForge とは甲乙つけがたい結果ですが、微妙に NIND denoise のほうが良いかもしれません。またカーブミラーが一番はっきりわかりますが、これはデノイザーの効果なのか、途中で darktable を噛ましたせいなのかは微妙なところです。

 

 下は ISO 6400 のケースです。まずオリジナルと、OM WorkSpace の AI ノイズ低減の比較です。

左: オリジナル (iso6400) / 右: OM Workspace AI ノイズ低減

 また OM WorkSpace の AI でノイズと RawForge の比較が下です。

左: OM Workspace AI ノイズ低減 / 右: RawForge

 一見すると OM Workspace の方が、精細感があるようですが、細かく見ると細部のスムージングではやはり RawForge の方に軍配が上がるようです。ただある程度ノイズが含まれた方が、精細感が出るのは否めません。

左: OM Workspace AI ノイズ低減 / 右: NIND denoise (darktable 経由)

 NIND Denoise との比較では、NIND Denoise は非常にスムーズですが、スムーズすぎて細部が残らない傾向が出ています。この点ではやはり RawForge のほうがベターではないでしょうか。黄色っぽいのは darktable の効果です。

 

 最後、E-P3 で撮影した画像です。F4.1, 1/6, iso 1600, 21mm で撮っています。E-P3 は結構前の機種で、あまり評価されていなかったパナソニックのセンサーを使っていた機種です。iso 1600 でも結構ノイズが乗っています。OM Workspace では開けますが AI デノイズが適用できない機種になります。

左: オリジナル / 右: RawForge 適用

 左が、オリジナルで、右が RawForge 適用結果です。非常にスムースですが、スムーズ過ぎてややぼやけ感もあります。多少ノイズを残した方が良いようです。

 

左: RawForge / 右: NIND Denoise

 次は FOSS のデノイザー同士の比較です。NIND デノイズは、やはり ART で現像してしまうとうまく適用できないので、darktable で現像したものに対してデノイズをかけています。一長一短のようなところもありますが、やはり RawForge の方がややしっかりした感じでしょうか。

 なお、デノイズの際、採用するモデルが変わると結果も変わるかと思います。

 

 まとめとしては、OM WorkSpace の AI ノイズ低減より FOSS のノイズ低減ツールのほうが効果が大きく、GPU が NDIVIA に限られない点もメリット。ただし RawForge と NIND denoise の比較では、どちらが良いかはケースバイケースというあたりになりそうです。




GIMP3 対応プラグイン: シグモイド・カーブ Ver. 3.3 アップデート

 8/9 にアップデートしたばかりの本プラグインですが、再度じっくり見直して、細かい不具合や改善を施して、今回再度アップデートさせていただきます。ダウンロードはこちらから。修正点は下記のとおりです。

 

1) 前回、最暗点にマイナスの値を設定できるようにしましたが、マイナスの値を設定すると、任意のガンマを計算色空間に設定すると、カーブ計算でエラーが発生していました。これを修正しました。

2) GIMP3.0 で使用した場合、イメージが複数のレイヤーを含む場合、必ずトップのレイヤーに基づいて編集を行うようになっていましたが、任意のレイヤーを指定できるようにしました。

3) カーブ計算色空間を変更する際、もしユーザが任意のガンマを設定しておいた場合、一旦別の色空間を選択した場合でも、設定したガンマ値を保存しておいて、再度任意のガンマの色空間を選択した場合に、もとの値が適用できるようにしました。

 以前は任意のガンマ空間からレガシー (知覚的色区間) に変更したときのみ、設定値を保存していましたが、今回リニアに変更したあと再度任意の色空間に変えても、以前の設定値が直ちに適用されるようになっています。

4) カーブ表示グラフを多少変更しました。最明点、最暗点をデフォルト値から変更した場合、最明点、最暗点をグラフ上明示するようにするとともに、変曲点表示もわかりやすくしました。

UI 変更点

 本プラグインは今まで不足しているところもありましたが、今回のアップデートでほぼ完成版に近づいたかと思います。もちろん今後の GIMP のアップデートに伴う変更点は出るとは思いますが。

基本的な説明は引き続き以下の記事をご覧ください。

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GIMP3 プラグイン: darktable による Raw 編集・読込プラグイン

 新しい筆者作成の GIMP3 用プラグインをリリースします。今まで、ART および RawTherapee を使った、Raw ファイル読み込み編集プラグインをリリースしてきましたが、今回はその darktable 版です。

 本プラグインは Raw ファイルを一旦 darktable で読込・編集を行った上で、GIMP に読み込むプラグインです。基本的には、GIMP にビルトインされている darktable を使った Raw 読込プラグインと同じですが、ビルトイン Raw 読込プラグインが使えない Flatpak 版の GIMP でも稼働することと、Nikon HE 圧縮を採用した NEF ファイルを扱える点です。但し、Nikon HE 圧縮ファイルを扱う場合は、ヘルパープログラムとして Adobe DNG コンバーターと exiftool のインストールが別途必要になります。Linux の場合、Wine を使って DNG コンバータをインストールしてください。

 また、darktable の AppImage 版を使いたい場合は、以下の記事をご覧になって darktable を展開した上で、本プラグインを設定してください。

yasuo-ssi.hatenablog.com

 ダウンロードはこちらから。インストール方法は下記を参考にしてください。

yasuo-ssi.hatenablog.com

 なお、一旦上記に沿ってインストールしたら、ユーザが使っている PC 環境に従って Config.ini ファイルを編集してください。デフォルト値は下記のようになっています。

-------

[darktable directory path on Linux]
# non-flatpak darktable:
COMMAND_LINUX;/usr/bin/darktable
# Flatpak darktable:
#COMMAND_LINUX;flatpak run org.darktable.Darktable

[darktable directory path on Windows]
COMMAND_NT;C:\Program Files\darktable\bin\darktable
# Do not add ".exe" for COMMAND_NT

[darktable directory path on Mac OS]
COMMAND_DARWIN;/Applications/darktable.app/Contents/MacOS

[Temp file format]
TMP_FILE_FORMAT;tiff
# The value of TMP_FILE_FORMAT must be tiff or png
# and it must match the export settings in darktable

[Acceptable file extensions]
EXTENSIONS;.dng .DNG .cr .CR .nef .NEF .nrf .NRF .arw .ARW .sr .SR .raf .RAF .orf .ORF .rw2 .RW2 .rwl .RWL .pef .PEF .x3f .X3F .tif .TIF .png .PNG

[Use Nikon HE Raw compressed NEF]
NIKON_HE;False
# The value of NIKON_HE must be True or False

# Following parameters are needed if only NIKON_HE=True
[Exiftool path]
# Linux
EXIFPATH;/usr/bin/exiftool
# Windows
#EXIFPATH;C:\Program Files\exiftool.exe
# Mac OS
#EXIFPATH;/opt/homebrew/bin/exiftool

[DNG Converter path on Linux]
DNG_LINUX;/home/username/.wine/drive_c/Program Files/Adobe/Adobe DNG Converter/Adobe DNG Converter.exe

[DNG Converter path on Windows]
DNG_NT;C:\\Program Files\\Adobe\\Adobe DNG Converter\\Adobe DNG Converter.exe

[DNG Converter path on Mac OS]
DNG_DARWIN;/Applications/Adobe DNG Converter.app/Contents/MacOS/Adobe DNG Converter

[temp. dng file delete]
DELETE_DNG;False
# The value of DELETE_DNG must be True or False

[Enable UI of darktable]
UI_ACTIVATE;True
# True or False
# if you set this False, without showing UI, DT import Raw to GIMP directly.

-------

[darktable directory path on Linux]

は Linux における darktable のパスを設定します。デフォルトパスは、

/usr/bin/darktable

となっていますが、異なる場合は変更してください。

また Flatpak を使っている場合は、デフォルトの行を # でコメントアウトした上で、#COMMAND_LINUX;flatpak run org.darktable.Darktable 行の頭の # を削除し有効にしてください。

[darktable directory path on Windows] および [darktable directory path on Mac OS] は通常いじる必要はないはずです。

 

Nikon HE 圧縮ファイルを扱う場合は、

[Use Nikon HE Raw compressed NEF]

のパラメータの False を True にした上で、その後のパラメータで、exiftool および、DNG コンバーターのファイルパスを適宜設定します。

 

[Enable UI of darktable]

パラメータは、Raw ファイルを読み込んだあと darktable の UI を表示するかどうかですが、UI を一切表示させずにすぐ GIMP に読み込みたい場合はここを False にします。UI を無効にすると、既存の xmp ファイルがあればそれに従い、なければデフォルト設定で読み込みます。

 

■ インストール後の使い方

 インストール後は GIMP メニューの [ファイル] の下に [Raw ファイルを darktable で編集してインポート...] が現れますので、それをクリックして起動します。

メニュー位置

 するとファイル選択ダイアログが出ますので、開きたい Raw ファイルを選択し、ダブルクリックしてから OK ボタンを押します。

ファイル選択

 その後、darktable の UI が起動しますので、編集した上で、darktable を閉じます。その際、エクスポートのフォーマットオプションで、フォーマットに TIFF または png を選んでください。それ以外が設定されると、編集後の画像が GIMP に読み込まれません。またbit 深度は、16 bit もしくは 32 bit に設定することを推奨します。

darktable UI

 darktable の UI を閉じると、Raw ファイルの現像並びに GIMP への読込が行われます。

GIMP に読み込まれたところ

 最後、上記のように読み込まれたら終了です。

Python 文法関連リンク集

 こちらには、個人的メモとして、Python 文法、基本的なプログラミングの書き方について解説したリンクを記録します。有用と思ったものを見つけたら適宜アップデートしていきます。

 

Python 3 公式ドキュメント 日本語版

docs.python.org

Python プログラミング入門 東京大学 数理・教育情報センター

utokyo-ipp.github.io

Python 早見帳 東京工業大学情報理工学院

chokkan.github.io

Python に関する情報 nkmk

note.nkmk.me

qiita.com

 

qiita.com

写真編集の知識: LUT (Look Up Table) の基本に関するサイト

 オンラインディスカッションに出ていた話ですが、LUT (Look Up Table) の基礎知識を学ぶには以下のサイトが良いよ、と推薦している方がいましたので紹介します。

blog.frame.io

 そもそも LUT とはどういうことかというと、直訳すれば「対照表」と言う意味になりますが、写真編集においては、色合いなどを変更させるための、カラー変更を行うための対照表ということになります。例えば、フィルムシミュレーションという言葉を聞いたことはないでしょうか。デジタル写真にも関わらず、アナログフィルムの色合いを再現するような効果ツールのことです。例えば、富士フィルムのベルビア調に変えてみるというようなツールです。富士のデジタルカメラではこのようなフィルムシミュレーション効果を売り物にしています。

 実際にどのように色合いを変えるかといいますと、例えば 8 bit 画像を前提とすると、R, G, B のそれぞれのチャンネルは 0-255 の 256 階調あります。その中のある色、例えば、R, G, B それぞれが仮に、(100, 125, 180) と言う値だったとしましょう。この値に関して、これを (110, 130, 175) に変えます、と決めておきます。これと同様なことを全ての色、つまり (0, 0, 0) から (255, 255, 255) までの範囲において変更する値をそれぞれ決めます。それぞれの (r, g, b) の値を (r', g', b') に変える、その対照表が LUT というわけです。この LUT にしたがって元の色の値を変えることでフィルムシミュレーションを実現しているわけです。

 この対照表は、実際に表のような形で決まっている場合もありますし、計算式で決めている場合もあります。

 LUT の最も単純な形、 Hald CLUT に関しては、2021 年に以下の記事で紹介していますが、png 形式の画像ファイルで対照表が作られています。

yasuo-ssi.hatenablog.com

 元元の、Identity HaldCLUT に定義されている色に対して、具体的にどのような色に変換するのかを記した画像が、Hald CLUT 形式の LUT となります。これに定義しきれない色に関しては、ソフト側で補間していきます。

 

 で、ここから上の紹介記事の要点ですが、明るさだけを変える LUT は 1次元 LUT になります。つまり、a という明るさに対して a' という明るさを割り当てる、というふうに決めているからです。

 カラーを変える場合は、R, G, B 三原色ありますので、3次元 LUT ということになります。r > r', g > g', b > b' と決める必要があるからです。

 

 次に重要なのは、入力ガンマ/色空間と出力ガンマ/色空間です。ここで言うガンマとは、TRC (トーン再現カーブ) のことです。LUT は必ず、 入力ガンマ/色空間と出力ガンマ/色空間が決まっていますので、これが合わないと色が変なふうに変換されてしまいます。例えば入力TRC が sRGB を前提としている LUT に Adobe RGB 画像を適用すると、結果がずれてしまいます。

 例えば、以下の記事で富士のビデオカメラ用公式フィルムシミュレーション LUT を ART で使う方法を紹介した記事を書いていますが、

yasuo-ssi.hatenablog.com単純に、富士の公式 LUT の形式を変換しただけでは ART でそのまま使えません。というのは富士の公式 LUT は、F-Log2 色空間で使うことを前提としているからです。ART の場合、通常の、Hald CLUT は、sRGB 入力データを前提としているので、それを ART の作業色空間 REC2020 リニアに変換するようになっていると思いますが、富士の LUT はそうではないので、ART 上で正しく動かすために、別途 CTL スクリプトをカマして色空間変換をする必要があるのです。

 

 そして、紹介記事では LUT の目的から、3つの種類に分けています。1, 技術的 LUT 2. クリエイティブ LUT 3. ハイブリッド LUT です。

1 は、元の画像の色空間を単純に変換するために使われる LUT です。2. はクリエイティブな目的で使われる LUT で、フィルムシミュレーションもその一つですし、映画などで、心理的効果を与えるために画面全体を青っぽくしたり、暖かくしたり変えるような LUT が相当します。そしてその両者の機能が混ざったものが、3. となります。

 

 とりあえず上の記事を読んでいただければ基本は理解できるかとおもいます。また最近ブラウザで翻訳機能もありますので、英語が苦手な方は、それを通して読んでみてください。

GIMP3 対応プラグイン: シグモイド・カーブ Ver. 3.2 アップデート

[お知らせ]

 本プラグインの最新版 (ver. 3.3) は以下にあります。

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  先日アップデートした当プラグインですが、バグについてご指摘をいただきまして、

取り急ぎアップデートします。大きな問題として、最明点、最暗点の設定が間違っていたことと、任意のガンマを指定してカーブを作れるようにしていましたが、そのガンマがちゃんと適用されていない点がありました。これを今回修正しました。UI の変更は、3.1 からありません。

 ダウンロードはこちらから。バージョンは 3.2 とします。

 なお、引き続き基本的な説明は、以下の記事をご参照ください。

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デジタルテレコンの代わりに Real ESRGAN アップスケーラを使う for マイクロ 4/3

 先日マイクロ4/3 を採用した OM System / OLYMPUS の True Pix IX 搭載機におけるデジタルテレコンの効果と、Real ESRGAN アップスケーラを使った効果を比較検証したところ、Real ESRGAN アップスケーラを使ったほうが圧倒的に高画質であることがわかりました。True Pix X 搭載機では、NPU が含まれると思いますので、デジタルテレコンのアップスケール結果も向上しているとは思いますが...

 というわけで、デジタルテレコンの代わりに Real ESRGAN アップスケーラ を使う方法について改めて解説していきます。本記事の構成は以下のようになります。

1. 前提

2. 準備

3. アップスケールの適用方法

 

1. 前提

OS: Linux, Windows, Mac OS

画像編集ソフト: GIMP 3.x (最新は、Ver. 3.2.4)

アップスケーラー: GIMP 用  Real ESRGAN アップスケーラ・プラグイン

Raw 現像ソフト: ART (但し、他の Raw 現像ソフトでも可)

オプション

 Adobe DNG Converter (カメラ機種用 DCP プロファイルを取り出すため)

 

 このアップスケーラーのメインエンジンとしてバイナリファイルを含んでいますが、これが、Windows 用と Linux 用しかありません。このため Mac OS では使えません

 GIMP, ART, DNG Converter のインストール自体は本記事では解説しません。以下の準備記事では、すでにインストールされている GIMP に Real ESRGAN アップスケーラ・プラグインをどうセットアップするかについて説明します。

 なお、ART には OM / OLYMPUS カメラのうち、カメラ固有の DCP プロファイルが含まれているのは、以下の機種のみです。

OLYMPUS 系 カメラ固有プロファイル

 それ以外のカメラの機種の固有プロファイルが必要な場合、一旦、DNG Converter をインストールし、そこから dcp プロファイルを取り出して、ART の設定ディレクトリに入れておく必要があります。詳しくは以下の記事をご覧ください。

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 カメラ固有プロファイルがない場合、カメラの標準プロファイルが適用されますが、このパラメータはカメラ機種ごとに異なっています。このカメラ標準プロファイルは、基本は Adobe 標準プロファイルと同じパラメータを使っています。

 Linux の場合は、DNG Converter は Wine を使ってインストールしてください。

 

2. 準備

2-1. 自分の OS が Vulkan 対応か確認する

 確認方法については、以下の拙稿を見てください。非対応ですと、使えません。

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2-2. Real ESRGAN アップスケーラ・プラグインのダウンロード & インストール

 以下のページから gimp3_upscale.zip をダウンロードして解凍します。

github.com GIMP 3.x におけるプラグインインストール方法は以下を参照。

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 インストールできていれば、GIMP メニューバー上の [フィルター] → [強調] から[AI Upscale] がメニューに現れます。

 

 なお、Mac OS では以上の方法だけではインストールできません。というのは、このダウンロードファイルには Mac OS 用のバイナリーファイルが含まれていないからです。そこで以下のサイトから Mac OS 用のバイナリーをダウンロードしてプラグインに含まれている Linux 用バイナリーと入れ替えます。

github.com 上のページの、Portable executable files (NCNN) というところを見ていただくと、you can download Windows / Linux / MacOS executable files for Intel/AMD/Nvidia GPU. とありますので、その MacOS をクリックして Mac 用バイナリーをダウンロードします。これを解凍して、その中の、realesrgan-ncnn-vulkan をプラグインに含まれている Linux 用の realesrgan-ncnn-vulkan と入れ替えます。

 そうしたら、一旦、GIMP 上で何らかの画像ファイルを読み込んだ上で、本プラグインを起動します。すると、realesrgan-ncnn-vulkan は公証化されていないので、realesrgan-ncnn-vulkan をごみ箱に移動するかどうか聞いてきます。そこで Apple の以下のインストラクションに従って公証化されていないアプリを起動できるようにしてください。

support.apple.com

3. アップスケールの適用方法

3-1. ART (Raw 現像ソフト) でデモザイク & クロップして TIFF (または png) ファイルで出力

 まず、ART に アップスケールをしたい Raw ファイルを読み込み、一旦処理プロファイルを (ニュートラル) に設定します。

 次に、[変形] タブの下の [切り抜き] で 1/2 サイズ x 1/2 サイズにクロップします。

[切り抜き] を使ってクロップ

 次に、カラータブの下のカラーマネジメントの入力プロファイルを設定します。なるべくカメラ出し Jpeg に近づけたいなら、カメラ固有のプロファイルを使ったほうが良いです。近づける必要がなければ、カメラの標準的プロファイルの適用で構いません。

[入力プロファイル] の調整

 この段階ではあまり凝った編集は行わず必要最低限の編集のみ行って、GIMP 読み込み用に出力します。

[出力プロファイル] の調整

 なお、出力プロファイルはデフォルトの sRGB ではなく、Linear Rec. 2020 にしたほうが結果が良くなるかもしれません。ただ Real ESRGAN の内部アルゴリズムがわからないので、断言できません。内部で一旦リニアに直してからアップスケールをやっているとすれば、ここで出力プロファイルを選択する意味はないのですが...

 

[出力] ボタン

 最後の出力ボタンを押して出力します。

 なお、以下の拙作のプラグインを入れておきますと、GIMP の上から ART を起動し、編集後 GIMP に読み込むというのをシームレスにやってくれます。

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3-2. ART で出力したファイルを GIMP に読み込む

 上で出力したファイルを GIMP に読み込んでください。その際カラープロファイルは維持を選んでください。

ファイルの読込

3-3. 読み込んだ画像にアップスケールを掛ける

 画像を読み込んだらアップスケールをかけます。[フィルター] > [強調] から [AI Upscale...] を選択します。

[AI upscale] の起動

 起動すると以下のダイアログが現れます。そこで、Output Factor で倍率 (2倍) を指定します。その後 Model を選択しますが、写真の場合は、RealESRGAN_General もしくは realesrgan-x4plus のどちらかを選びます。後者のほうが精細な結果が得られますがGPU があってもちょっと処理に時間がかかります。GPU も NPU もない場合は、そもそも vulkan が使えませんが、性能の低い内蔵 GPU などはかなり時間がかかることは覚悟したほうが良いです。前に検証したときはこの後者を使っています。

 なお、この手順では、先に Raw 現像ソフトでクロップしてからアップスケールをかけていますが、アップスケールしてからクロップしても構いません。ただ、その場合はアップスケールに約4倍の時間がかかると思いますので、このような手順にしています。

モデルと倍率の指定

 OK を押すとアップスケーリングが始まります。終わると、以下のようにレイヤーが増えて、上のレイヤーにアップスケールを行った結果が出力されています。

アップスケール終了

3-4. 結果を GIMP で出力する

 最後に結果を出力します。xcf ファイルで保存する以外は、[ファイル] > [名前を付けてエクスポート] を選びます。

[名前をつけてエクスポート] を選択

 次に保存ファイル名を入力しますが、その際拡張子も指定してください。この拡張子によって保存形式を変えます。なお、ロスレスで保存したい場合は png 形式を選んでください。tiff 形式で保存しようとすると、おそらくバグのためと思いますが、保存した際に再びもとの大きさにダウンスケールされてしまいます。

名前を指定してエクスポートボタンを押す

 次にオプション指定ダイアログが出ますので、適宜オプションを指定します。ここで[カラープロファイルを保存] にチェックを入れないと、sRGB で保存されます。再度別ソフトで編集する場合は、[カラープロファイルを保存] にチェックを入れたほうが良いと思います。

オプションを指定後、エクスポートボタンを再度押す

 エクスポートボタンを押してファイルが出力されたら完了です。

 

 ちなみに前回お示ししたカヤランの写真 (35mm 換算 600mm 相当, iso 6400)をアップスケール (アップスケールで 1200mm 相当へ変換) した結果がこちら。わかりやすいように部分拡大しています。

アップスケール結果

 Real ESRGAN の特性として、ノイズも抑えるということを前回指摘しましたが (もともとアニメ画像のアップスケールから開発が出発していますので)、マイクロフォーサーズで超望遠でアップスケールしたいという場合、シャッタースピードを上げるためにも iso6400 ぐらいまで上げて撮影することが多いと思います。OLYMPUS / OM カメラの場合、True Pix IX 採用機だと、ノイズを考えると、常用 ISO は iso 1600 - 3200 まで、True Pix X 採用機だと iso 3200 - 6400 までと言われますが、ノイズを抑えるという Real ESRGAN の特性がこの点マイクロフォーサーズに対してうまく作用してくれると思います。