省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

GIMPが使い物になるようになってきた

 5-6年ほど前から、昔の鉄道写真フィルムのデジタル修復をいろいろ考えるようになってきました。その当時のメインツールはPhotoshop、しかもちょっと古いCS4でした。もともとはスキャナか何かについてきていたPhotoshop LEを優待バージョンアップでスタンダード版にアップグレードし、その後2-3世代ごとにアップグレードしてきていたのが、CS5から直前のバージョンからのアップデートしか認めなくなり、CS5のアップデートを見逃してからは、そのままになってしまっていたのです。

 もっとも当初はたまに使うぐらいで、Photoshopの本格的な機能を使いこなすまでには至っていませんでした。というのは2000年代初めは、結構良いフィルムスキャナが販売されていたものの、パソコンの性能が追いついておらず、16bitでフィルムを取り込んでみたものの、当時のストレージの価格に比べてデータ容量も大きく、編集も非常に重く到底日常的に写真編集作業をやろうという気力がわきませんでした。

 しかし2010年代半ば以降、ようやくストレージの価格がフィルムをスキャンした容量に追いつくようになり、また4コアぐらいのCPUが出てくるようになってようやく本格的な写真編集の環境が整ってきました。その一方でフィルムスキャナは売れず、高性能フィルムスキャナーを作っていた国産メーカーは、フラットヘッドスキャナのおまけ機能としてフィルムスキャナ機能をつけているEPSONを除いてはことごとく撤退、今はまともなフィルムスキャナのメーカーは台湾メーカーしか残っていません。

 で、その時の本格的写真編集ツールといえばPhotoshop CS4しか手元になかったわけです。Photshopは非常に多機能で直感だけでは使いこなせず、勉強しなおしにも非常に苦労しました。

 とはいえ、当時Adobeサブスクリプション制を始めて、Photoshop をいつまでも使い続けられるかと不安に思いました。Photoshopの最新バージョンを使うには、今は年間約27,000円のAdobe税を取られます。プロの業務として使うツールの料金としては安いですが、たまにいじる趣味作業ツールの料金としては高すぎます。かといって素人向けの買切り制が残っている Photoshop Elementでは、トーンカーブがいじれないし、16bit画像の編集にも対応していないなど変褪色写真の補正ツールとしては不十分です。 さらに入門のハードルの高いソフトウェア (Photoshop) に慣れてしまうと、他のソフトウェアへの切り替えが難しくなり、結局Adobe税を払い続ける道しかなくなるのではないか、と不安に駆られました。

 というわけで、当時注目したのは、名前だけ知っていたGIMPでした。しかしインストールしてはみたものの、Photoshop以上にインターフェースが分かりにくく、しかも、各ツールボックスやダイアログごとにウィンドウがばらばらで、うっかり閉じてしまうとどこかへ行ってしまいます。もっとも2.8以降導入されたシングルウィンドウモードに切り替えていればこれも解決していたのでしょうが、当時は知りませんでした。さらにPhotoshopにある調整レイヤーという概念がなく、画像レイヤーしかありません。一番大きかったのが、全般にPhotoshopに比べて動作が重く、しかも64bit非対応で頻繁に固まったり、クラッシュします(特に容量の大きい写真のスキャン画像を扱う場合には)。所詮タダだから仕方なく使う出来の悪い互換ソフトの域を出ませんでした。

 しかし、GIMPは試験的なVer2.9の途中から64bit対応になって大きく印象が変わりました。固まったりクラッシュすることが大幅に減ったのです。そして2018年4月の2.10リリース以降これはまともに使える、と感じるようになりました。そう思うと無料なのであちこちインストールします。インストールすれば使う機会も増えるということで、だんだんGIMPにも慣れてきました。そうすると一部の操作ではGIMPのほうがPhotoshop より優れている点があることもわかってきました。

 とはいえ、まだまだPhotoshopの方が優位点が多いのも事実です。まず明らかにPhotoshopの方がパフォーマンスが高いです。例えばPhotoshopならヘタすればメインメモリ8Gぐらいでもそこそこ大きな写真ファイルを扱えますが、GIMPだったら最低16Gは要ります。おそらく、Photoshopは内部でデータを圧縮して扱っており、より低メモリ環境でもそこそこパフォーマンスを確保しているのに対し、GIMPは無圧縮で扱っているのではないかと思います。だからこそGIMPは64bit対応で大きく安定性が上がったのではないかと思います。

 ですのでGIMPPhotoshopと同じパフォーマンスを確保するには、自分の個人的感覚としてはCPUで1.5倍、メモリ容量で2倍は必要だと思います。逆に言えばその分パソコンに投資できれば年間約27,000円のAdobe税の支払いを免れるということです。

 また、GIMPPhotoshopと異なり、CMYKモードに対応していない点があります。この点で印刷関係のプロには使われないようです。これについては2.8までは日本人の方が開発したCMYK対応のファイルを吐くプラグインがありましたが、2.9, 2.10では非対応で正常に動作しません。ただGIMPTIFFなどを作れば、それをCMYKに変換するユーティリティはあるようです。またそれ以外にもCMYKプラグインはあることはあるようなのですが、入れてみたところ、どう動かすのか私が分かっていません。

 調整レイヤーがない点はGIMPの最大の弱点ですが、一応ロードマップには導入が予定されています(Ver. 3.2で対応予定ということですが...)。ただその弱点を補う方法はあります。Photoshopで行う操作をどうGIMP上で再現するかというノウハウも今後書いていきたいと思います。

 また日本人ユーザーとして痛い点は、日本語でGIMPの情報を集約するようなサイトがあったようなのですがYahooのブログサービス終了とともに消えてしまいました。GIMPがせっかく使い物になるようになったのに情報面では逆転現象が起こっており、それが残念な点です。そのあたりもこのブログで微力ながら今後補っていきたいと思います。