[お知らせ (2022.8)]
このプログラムには、以下のUI 改善 & バグフィックス版があります。
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本ブログ開設2周年を記念して、2022.7.17に新しいアルゴリズムを実装した不均等黄変ネガカラー写真補正・Bチャンネル再建法ツールを公表したばかりですが、再度バージョンアップします。
前回申し上げましたが、従来アルゴリズム、新アルゴリズムは一長一短で、新アルゴリズムは一般に黄変の補正度合いが上がっていますが、前回のバージョン公表時にお示ししたように、黄変の様態によっては、従来アルゴリズムよりむしろうまく補正できないケースがありました。
で、よくよく考えてみたら、両アルゴリズムをハイブリッドにすれば最強の黄変補正ツールになるのではと思って、いろいろ試してみましたが、結構結果が良好そうなので、補正ツールを公開してちょうど2周年になる本日、ハイブリッドモードを実装したものを新バージョンとして公表します。バージョン番号は4.5xとします。
なお、ハイブリッド化により、再びBチャンネルに対してGチャンネルの混入率を高める方向に戻しました。このため、遠景(背景)補正レイヤーの使用は、再び、通常の場合必要になりました。但し、再度Gチャンネルの混入率を高めた副作用をなるべく減らすために、新たな近景(前景)適用マスクを考えて実装しました。
さらに、今回のバージョンアップを機に、パラメータ設定メニューに、ノービスモードを導入しました。従来版はエキスパートモードということにします。というのは結構パラメータ設定項目が増えて複雑になってしまいましたので、お勧めの設定を中心に必要最低限の設定項目を入力しできるようにしたものをノービスモードとし、いろいろパラメータをいじり倒したいという方は、エキスパートモードで入力してもらおうということです。
最初に走らせるとお勧めの設定を表示したノービスメニューが表示されます。但しこれでは不満という方は、ノービスメニューをキャンセルするとエキスパートメニューに変わるようになっています。
ノービスメニューはデフォルトでハイブリッド補正([Apply Hybrid Correction])がオンになっているので、まずはそのまま走らせていただくのが良いと思います。なお、植物の緑が多い画像は [Preserve plants green] をオンにしてください。都市部での写真など植物の緑が少なければオンにする必要はありません。
[Background Mask Threshold] は全体に非常に明るい、もしくは暗い画像のみ調整すれば良く、通常は調整する必要はありません。調整する場合は画像の明るさの平均をやや上回る値を入れると良いでしょう。平均的な明るさを調べるには、例えば、Irfanviewを使ってヒストグラムを見ると明るさの平均値が出ますので、それを参考に指定します。
[Shadow Area Threshold] は、出来た暗部補正マスク画像で黒い部分が多すぎる場合は、値を下げます。
[Periphery Adjust Threshold]は、出来た周辺補正マスク画像が濃すぎる場合は下げますが、ここで調整せず、GIMP上で周辺補正マスクの不透明度を下げることで対応してもかまいません。
ノービスメニューをキャンセルすると下記のエキスパートメニューに移ります。
エキスパートメニューでは、拡張疑似フラットフィールドアルゴリズムを単独で実行できるほか、色々とパラメータをいじれます。ただこれらはどちらかと言えば実験的目的でいろいろいじれるようにしているのであり、通常はノービスメニューでデフォルトの設定で走らせればよいと思います。調整するにしてもノービスメニューで設定されているメニューでおおむねカバーできますので、通常はエキスパートメニューを使う必要はないと思います。エキスパートメニューについて知りたい方は前回7/17のアップデート記事をご参照ください。
そのほか出力ファイル名や、GIMPでファイルを読み込んだ後の編集の仕方などは基本的に従来変わりません。なお、拡張疑似フラットフィールド補正を(単独で)使う場合は、背景レイヤーを使う必要がないことが多い、と書いていましたが、ハイブリッドモードではGチャンネルのBチャンネルへの混入量が増えるため、基本的には従来に戻ります。
なお、今回のバージョンからバージョン番号を4.5x とします。ダウンロードはこちらから。また、今回のバージョン公開に合わせてすでに公開したマニュアルも一部改訂します。
なお、以下にハイブリッドアルゴリズムを使った黄変画像の補正例を追加補正も含めてお示しします。いずれもノービスモードのデフォルト設定で走らせています。Bチャンネル再建法の詳細編集過程は省略しています。これらについては既存のマニュアルページを参考にして下さい。
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事例1
白い霧を中心に広く黄変しているとともに、周辺にはBチャンネル情報抜けが発生しています。また元々のネガフィルム特有のマゼンタ被りもあります。元フィルムはフジカラーHR400です。不均等黄変が発生しやすいフィルムです。
Bチャンネル再建法(ハイブリッド補正)を適用すると黄色みはきれいに消え、また周辺の情報抜けも補正されましたが、元々のマゼンタ被り、およびマゼンタ変色は残ります。また青空がG, B値の接近で青緑に寄っています。相対RGB色マスク画像作成ツールで、マゼンタ補正マスク、および空の緑色補正マスクを作成し補正を掛けます。
マゼンタ補正マスクを掛け、Gチャンネルをトーンカーブで上昇させます。また明るい部分を中心にRチャンネルも若干下げるとともに、Bチャンネルも若干上げました。
上の補正結果が上図です。次に空の緑を改善します。
グリーン補正マスクを掛け、Gチャンネルを下げ、Bを若干上げて空の色を調整します。補正レイヤーの重なりは以下の通りです。
背景が、Bチャンネル再建法適用後ファイルを読み込んだレイヤー、その上が、そのレイヤーをコピーし、マゼンタ補正マスクを掛け補正したレイヤー、その上が、下の2枚の可視画像をレイヤー化し、それにグリーン補正マスクを掛け補正したレイヤーです。
若干画像が荒れているようですので、ARTに読み込み、スムージングなどの処理を掛けてみました。
自然な色合いになりました。細かいことを言うと、上端が若干緑に寄っていますが、これはBチャンネル情報抜けの過剰補正が原因なので、上端部の補正量を少し減らす編集をやるべきでした。
事例2
空を中心に不均等に黄変しています。黄色の濃度も結構濃く、従来アルゴリズムだと黄色味は完全には取り切れず、追加補正でさらに黄色味を取る必要があったケースです。周辺の情報抜けは、事例1ほどではありませんが、フィルム下端を中心に発生しています。やはりフィルムはフジカラーHR400です。
やはり黄色味はしっかり消えています。元々のマゼンタがかりがあるのと、黄変に伴うマゼンタ変色が露出してきましたので、やはり相対RGB色マスク作成ツールで、マゼンタ補正マスクを作成し、補正を掛けます。
こちらが、相対RGB色マスク作成ツールで作成したマゼンタ補正マスクです。赤いバラが見えるので、バラの花などの赤を除外する複合マスクの形で作成しています。これに対し、トーンカーブでGチャンネルの値を上昇させるとともに、空の明るい部分を中心にB値を若干上げ、さらに、暗い部分を中心にR値を多少上げて、路盤の鉄錆色を再現するようにしました。本図の場合追加補正レイヤーは1枚のみです。
さらにARTに読み込んで、トーンカーブに弱いS字を掛けコントラストを上昇させたものが下図です。
ほぼ、完璧に近い補正ができたと思います。とても黄変していた画像とは思えません。会心の出来です。
事例3
こちらは飯田線クモハ52002の運転台仕切りの写真です。オリジナルのフィルムはフジカラーF-II だったと思います。
おそらく黄変の絶対量はさほどではなさそうですが、それよりも周辺のBチャンネル情報抜けがかなり激しいです。その結果相対的に黄変部分が目立っています。
ハイブリッドアルゴリズムを使ったBチャンネル再建法を適用すると黄色い部分がごっそり消えました。... ですが脱色されすぎのようです。追加補正では、どのチャンネルのマスクを掛けるか非常に迷ったのですが、RGB分解してみると、Bチャンネルに結構明度のうねりが残っているので、相対RGB色マスク作成ツールで、ブルー補正マスクを作成しました。おもにクリーム色の部分を補正するつもりなので、閾値はかなり大きく取りました(30)。
なお、ハイブリッド補正アルゴリズムでは、かなり効率的に黄色味を削除するので、本ケースに限らず、過剰に黄色味が脱色されることがあります。この場合は、なんらかの適切なマスクを作成し、ブルー値を下げて黄色味を復活させた方が良いです。全般的に青紫がかった場合は、過剰に黄色みが脱色されています。
このマスクを掛けた補正レイヤーに対し、取りすぎの黄色を復活させるため、トーンカーブでBチャンネルの値を下げていきます(下図)。
次に、気になるのは、横須賀線色のブルー (青15号) がかなり緑っぽくなっていることです。やはり緑の閾値を大きく取り(30)、相対RGB色マスク作成ツールで、暗い部分(青15号部分)を対象とするグリーン補正マスクを以下のように作成しました。
しかし、補正したいのは青い外の塗装のみで、室内は補正する必要がないので、以下のようにマスクを編集します。
これに対し、以下のようにBを上昇させるとともに、Rを暗部のみ若干下げました。
いい感じになったので、一旦出力し、最終調整のためARTに読み込ませます。
トーンカーブと色温度を調整して出力させたのが上の結果です。クリーム色の不均等な感じは完全に解消されたわけではありませんがかなり改善されました。追加補正レイヤーは2枚です。
ともあれ、ハイブリッド補正アルゴリズムに変えてからは、黄色味が取り切れないということがほぼなくなりました。この結果、追加補正で必要となる補正レイヤーもおおむね1~2枚で済み、かなり手こずるケースでも3枚程度で済むようになりました。これにより補正にかかる時間もスピードアップしています。
今まで、本サイトで紹介している黄変写真補正技法を「決定版」と称していましたが、今回のバージョンアップで、名実ともに決定版と言ってよい境地にかなり近づいたのではないかと自負しています。
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なお、本記事で紹介した写真補正技法やソフトウェア (Plug-in) は、個人的および非営利用途であれば、自由に使っていただいて構いませんが、本技法を使って何らかの成果 (編集した写真等) を公表する場合は、本記事で紹介した技法を使った旨クレジットをつけて公表していただくことをお願いします。
また、このソフトウェアを利用される方は、このソフトウェアに起因する損害に対して作者は一切の責任を負わないという点を了承したものとみなします。同意できない方はご利用をお断りします。
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但し、もしソフトウェアのバグがありましたら、ご連絡いただければなるべく改善するよう努めたいと思います。