省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

モノクロ画像のカラー化を行う業者: Adjust Photo Service

 X を見ていたら、Adjust Photo Service という横浜にある業者さんのモノクロ画像をカラー化したケースを紹介した記事が流れてきました。その業者さんのホームページはこちらです。三木秀記さんという方が個人でやっている会社のようです。

www.adjust.co.jp このページの紹介によると、複数のソフトウェアを使った AI によるカラー化画像を組み合わせて編集し、さらに、必要に応じて手作業によって着色を行い最終的に仕上げているようです。AI のカラー化に掛ける前に一旦画像の高精細化や汚れ、傷などの修復も加えているとのことです。おそらく画像の高精細化 (補間) にも AI ソフトを使っているものと思われます。元々はグラフィックデザインを手掛ける事務所だったようですが、2016年から個人向けの写真修復サービスを手掛けはじめ、おそらく AI を使い始めたのは サンプルファイルから推測する限り、2020年頃からのようで、北國新聞の昔の写真のカラー化プロジェクトを2021年から手掛けておられるようです。

 補正例を見るとかなりナチュラルな結果が得られています。このページにいくつかのサンプルが掲載されていますが、多少出来に、出来不出来はありますが、おおむねかなりナチュラルな結果が得られており、いかにも AI 加工したという感じも、逆に着色したという感じも少ないです。

 このサイトには、Ai による着色のみでは十分な結果が得られないと書かれておられますが、その通りだと思います。現状 Ai による着色は、写ったものの形状から色を推測していますので、特に人間が任意に、恣意的に色を決めているもの、例えば、着物の色や柄、看板の色、鉄道車両の塗装といったものに関しては、原理的に不正確な結果しか得られません。たくさんの学習データを読ませても正確度が上がるとは限りません。結局、指摘されている通り、資料を読み込んだり、当時を目撃した人の証言などをもとに、色を推測して手作業で着色するしかないのです。

 また、同じ Ai に掛けるにしても、元画像の解像度が高い方が、Ai の色の推測精度も上がるという指摘は、参考になりました。おそらく bit 深度も深いほうが良いと思います。

 因みに料金ですが、ホームページを拝見すると、最も難易度の低いものは 8800円 難易度が最も高いものだと、44000円 という価格設定です。仮に 1時間当たりの作業工賃が 2000 円と仮定すると、1枚当たり最低 4 時間ぐらいから、難易度が高いものだと、22時間ぐらいの時間をかけている計算になりますが、おそらくそんなものでしょう。おそらく AI で出力したものを編集する、あるいはそれにちょっと手をかける程度が、8800円、それに対し、フルに手作業が要求される画像が 44000 円というあたりでしょうか。それでも補修難易度を考えると安いぐらいかもしれません。この辺りは自分で写真補正をやってみないとどんなに大変か分からないので、高すぎると思われる方もいらっしゃるかもしれません。

 逆に最高 44000 円という料金から考えると、フルに手作業で着色作業をやっても、24時間近くかければ何とかなる、ということなのかもしれません。とはいえ、素人だと、難易度の非常に高い画像をフルに手作業着色作業を行った場合、丸々24時間かけても到底完成するとも思えませんので、この辺りは熟練の技かと思われます。