省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

DxO PhotoLab 6 & DxO PureRAW 3 に関する DP Review のレビュー

 非常に強力なノイズ低減機能で知られる フランスのソフトウェアメーカー DxO PhotoLab 6 と PureRAW3 のレビューが DP Review に掲載されています。

 

PhotoLab6 レビュー (2022.12.19)

https://www.dpreview.com/reviews/dxo-photolab-6-review-a-powerful-alternative-to-adobe-s-editing-suite

 

PureRAW3 レビュー (2023.3.31)

https://www.dpreview.com/reviews/dxo-pureraw-3-review-give-adobe-s-apps-a-much-needed-boost-with-modern-ai-algorithms

 

 PhotoLab6 は DxOが提供する、Raw現像ソフト、そして PureRAW3 はPhotoshop, Lightroom 用のプラグインソフトウェアです。日本向け価格は PhotoLab6 Elite Edition は、23,900円、Essensial Edition は、14,900円、PureRAW3 は、14,900円となっています。

 PureRAW3 は PhotoLab6の提供する一部機能をAdobeのアプリケーションで使えるようにするもので、有名なノイズ低減機能、そして、レンズ補正機能とファイル出力機能 (Linear DNG, TIFF または JPEG) を搭載しています。

 今回のバージョンアップの目玉は、有名なAI を使ったノイズ低減機能 DeepPRIME に加え、新たに DeepPRIME XD というアルゴリズムが PhotoLab6 Elite 版および PureRAW3 に加わったことだと思われます。サンプル写真を見る限り、従来の DeepPRIME が極力粒子を細かくして極力ノイズを減らしているのに対し、DeepPRIME XD は単に粒子を細かくしてノイズを減らすだけでなく、テクスチャを創造して付け加えるところまで踏み込んでるようです。 但し Essential版では AI を使ったノイズ低減は使えません。

 ただ DP Review のレビューでは、DeepPRIME XD に関して、皮膚や毛など自然なものに対しては効果的であるが、人工物 (例えば煉瓦など) に対しては、不自然な効果 (アーティファクト) が出てくる可能性が高いとしており、まだまだ改善の余地があるとしています。サンプル写真を見る限り、DeepPRIME XD は、自然なものに対しては自然にテクスチャを付加できるものの、人工物では付加されたテクスチャが不自然でアーティファクトとして感じられることが多いようです。

 これは、例えばモノクロ写真をAI を使って着色するソフトウェアなどでも人工物の色を推定するのが至難の業なのと同じではないかと思います。AIによる着色は、写っている物体の形状と色の対応関係を推定することによって、機能を実現していると思われます。この時、自然物は人間の恣意性が入り込みませんので、物体の形状と色の対応関係が比較的推定しやすくなっています。しかし、人工物は人間が恣意的に作りますので、色対応関係の推定が困難です。

 例えば、鉄道車輛の色を考えると、戦前のように、蒸気機関車、貨車は黒、客車や電車は茶色と決まっていれば、AI による着色は容易です。しかし、今日、車輛の色は赤でもありうるし、青でもあり得ます。その色は恣意的に決まります。青い車輛の写真ばかりを機械学習させれば、AIによって推定される車輛の色は青になってしまう一方、多様な車輛の色を学習させれば、AIの推定結果は不定になります。仮に、形状認識で、車輛の形式まで区分できたとしても、同じ形式でも異なる色で塗られうるとしたら、これは原理的に正しく推定できません。

 同じことが、テクスチャ創造まで踏み込んだ DeepPRIME XD にも言えるのではないかと思います。自然物ではノイズパターンとテクスチャの対応関係の推定は容易ですが、人工物の場合、テクスチャが不自然になりがちなので (例えば真っ平、直線など)、ノイズパターンとテクスチャの対応関係の推定が困難なのではないかと思われます。

 なお、富士フィルムの X-trans センサーを使った Raw ファイルには、Deep Prime, Deep Prime XD は非対応でしたが、最近のバージョンアップで サポートになったようです。

www.dxo.com

日本以上に欧米で富士フィルムのカメラの人気は高いので、これは必要な対応だったと言えるでしょう。

 これ以外には、PhotoLab で修復ツールの機能改善、Elite版のみですが、ジオメトリを補正するキーストン補正ツールが搭載されています。

 他に、自社のラボでデータを測定している、レンズ補正の精度の高さも指摘されています。

 また、内部作業色空間に、今回、Adobe RGB より広い DxO ワイド作業色空間と称する色空間を採用したことが指摘されています。が、既にフリーの darktable、GIMP や ART などは、作業用色空間に、リニア ProPhoto や REC2020 を採用していることを考えると、この点では商用ソフトの方がフリーソフトより遅れていますね。

 なお、DP Review は Essential 版はバージョンアップ項目があまりなく、今回バージョンアップする利点は少ないと述べています。またPureRAW3 に関しては機能が少ない割に価格が高いと指摘しています。Deep Prime, および XD にそれだけの価値を見出すかどうかというあたりかと。ただ Adobe のソフトウェアが全面的にサブスクリプション化されましたので、それに加えてこの負担は痛いかと。

 むしろ PhotoLabに切り替えれば、Nik Collection にある U-point 編集も使えるし、サブスクリプションでもなくなるのでメリットは大きいかと思われます。