省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

ART 対応 CTL スクリプト: RGB シグモイド / 褪色フィルム画像補正テクニック

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 今回は、個別のヒストグラムのパターンに応じて、RGB シグモイドのパラメータをどう動かしたらよいかについて説明していきます。

 まず前回のサンプルファイルを見てみましょう。サンプルファイルの引用元は前回の記事をご覧ください。

サンプルファイルとヒストグラム

 これは典型的な内式リバーサルフィルムの褪色パターンで、全体に赤くなっています。ヒストグラムを見ても R チャンネルの山が一番価が高くなっており、G と B の山が中間に来ています。

■高すぎるヒストグラムのレベルを下げる

 まず、R チャンネルですが、レベルが高すぎます。画像も明るすぎるのが分かります。

R のヒストグラム

R チャンネルの画像

 これをどう RGB シグモイドを使って補正するかですが...

1) コントラストを上げる

 まず、単純にコントラストを上げると全体的にヒストグラムの幅が圧縮されるので、レベルが下がります。

R のコントラストを 11 に上げる
(他パラメータはデフォルト)

2) 最大点を調整する

 これ以外に、最大点を上昇させることで、レベルを下げることもできます。

R の最大点を 1.5 に上げる
(他パラメータはデフォルト)

 ただ、下がり方、山の形は最大点とコントラストの調整では異なります。最大点を調整した場合は、単純にヒストグラムの山の形がほぼそのまま左右に動くイメージですが、コントラストを調整すると、よりヒストグラムの変化が大きくなります。

 ちなみに、最大点とは、通常のヒストグラムではホワイトポイントに相当しますが、このスクリプトでは、単チャンネルですので、「ホワイト」とは言えません。そのため最大点と名付けています。カラー/トーン補正のRGBチャンネル分割モードでは、ハイライト/増幅 とされていますが、それと同等です。

3) 最小点を調整する

 最小点を上昇させ、シャドウ部をクリップさせることで暗くさせることもできます。ただしこれをやるとシャドウ部のデータがクリップされてしまいます。従ってこれを使うのは暗部が白浮きしている (ヒストグラムの最小値が高めになっている) 場合に限ったほうが良いです。

 これも、ブラックポイントに相当しますが、やはり単チャンネルですので、最小点としています。RGBチャンネル分割モードでは、シャドウ/引上げ とされています。

 

4) シフトを調整する

 シフトを上昇させても、R チャンネルのレベルを下げることができます。但し、コントラストがデフォルト値 (0.1) では効果がなく、コントラストの値をある程度上昇させた時のみに効果が出ます。以下の図は、コントラストを 3 に設定した場合にシフトを動かした結果です。またこれでヒストグラムの山のカーブの傾きを変えることもできます。

R のシフト を 0.7 に設定
(コントラストは 3)

 これらをうまく併用しながら、他のチャンネルのヒストグラムのパターンに近くなるようにヒストグラムの山の形とレベルを調整します。

 因みにシフト 0.5 の場合適用されるトーンカーブは...
(以下コントラスト: 10 を前提とします。実際に適用されるのは赤線です)

シフト: 0.5 コントラスト: 10

 それがシフトが0.4になると...

シフト: 0.4 コントラスト: 10

シフトが 0.6 になると...

シフト: 0.6 コントラスト: 10

 という感じです。

 このようにシフトパラメータを動かし、トーンカーブの傾斜の転換点を適宜動かすことで、ヒストグラムの山の傾き方を調節していくという感じになります。

■低すぎるヒストグラムのレベルを上げる

 今度は B チャンネルを見てください。

B チャンネルのヒストグラム

B チャンネルの画像

 青空や青い海があるので、もっと全般的にレベルが高くなくてはいけないはずですが、レベルが低すぎます。また画像を見ても眠い印象で、もっとコントラストがはっきりしていても良いはずです。

1) 最大点を下げる

 R チャンネルとは逆に最大点を下げると、ヒストグラムのハイライト部分が切り詰められ、画像が大幅に明るくなります。

B の最大点を 0.3 に下げる
(他はデフォルト)

 この時の B チャンネル画像は以下の通りです。

この時の B チャンネル画像

 ただ、やはりコントラストは低めです。

2) 最小点を下げる

 最小点を下げても、画像を明るくすることができます。

B の最小点を - 0.1 に下げる
(他はデフォルト)

 ただ、これを行うと明るくはなるのですが画像は眠いままです。暗部浮きも起こります。

最小点を -0.1 に下げた時の B チャンネル画像

 使えなくはないですが、あくまでも補助的な使い方になると思います。

3) コントラストを調整する

 単純にコントラストだけを上げると、ヒストグラムの幅が狭まり画像全体がただ暗くなるだけです。

コントラストのみを 5 に上げた時の B 画像とヒストグラム

 従って、最大点を切り詰めて、画像を明るくした上で、画像が眠い場合、コントラストを調整します。

 以下、最大点を切り詰めた上で、コントラストを上げてみた B チャンネルの画像とヒストグラムです。

最大点: 0.245 コントラスト: 7.919

4) シフトを動かしてヒストグラムの形を整える

 さらにシフトを動かして、ヒストグラムの形を整えていきます。全体的に、ヒストグラムをハイライト寄りに傾けたいなら、シフトの値を下げる一方、ヒストグラムの山を中央寄りにしたいなら逆に、値を上げます。

コントラストの上げ下げ

 基本的に、コントラスト値を上げていくとコントラスが上がります。一方、デフォルト値が、もっともコントラストが低い値 (直線トーンカーブ) に近くなっています。どうしてもそれよりコントラストを下げたい場合は、最小点を下げ、最大点を上げるしかありません。

 逆 S 字型トーンカーブを適用すればもっとコントラストを下げることができますが、現在ではそのような補正はサポートしていません。

■ RGB シグモイド以外を使いさらにヒストグラムの山を整形する

 これだけでは、望んだようなヒストグラムの形にうまく整形できない場合、カラー/トーン補正の RGB チャンネル分割モードを併用し、その [ミッドトーン/ガンマ] パラメータもしくは、[シャドウ/ハイライト圧縮] を調整してみてください。

RGB チャンネル分割モード

 なお、ハイライト、シャドウ パラメータは、RGB シグモイドの最大点、最小点とかぶりますので、使う意味はあまりありません。

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 以上の操作を、R, G, B チャンネルを調整しながら、ヒストグラムと、チャンネルごとの画像、そして、カラー画像を交互に確認しながら、編集作業を進め、R, G, B の各チャンネルが、多少レベルはずれながらも、ヒストグラムの山の形がなるべく似るのを目標に編集します。

 

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