省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

最近海外で話題の商用写真ファイルノイズ低減ソフト

 最近、主としてフリーのRaw現像ソフトの高ノイズ画像に対するノイズ低減力を見てきましたが、商用 (有料) ソフトではどうでしょうか。海外のサイトを見ていると最近話題となっている、機械学習を活用した商用ノイズ低減ソフトには以下の3つがあるようです。

DxO PhotoLab4 / PureRaw

・ON1 NoNoise AI / Photo Raw 2022

・Topaz DeNoise AI

 Adobe Lightroomのノイズ低減機能は比較的良好という声を聞きますが、上の3つのソフトはいずれも、Lrを上回るノイズ低減を実現するノイズ低減専用Raw現像ソフトのようです。私自身は使ってみたことはありませんが、海外記事などを参考に特徴をまとめてみます。

DxO PhotoLab4 / PureRaw

www.dxo.com

www.dxo.com

 DxOはフランス、パリ近郊に本社のあるイメージ製品メーカーでカメラを評価する指標として知られるDxOマークでも知られます (但し最近DxOマークを担当するラボ部門と分社化)。また、Googleが放棄したNik Collectionを引き取って継続して開発を行っています。

 DxOの上記2つのソフトウェアですが、PhotoLab4 は通常のRaw現像ソフト、一方PureRawは、ノイズ低減専用ソフトで、オリジナルのカメラRawファイルをDNGファイルに変換し、Lr等他のRaw現像ソフトに渡すことを目的にしています。既にLrなど他社のRaw現像ソフトを使っている人向けの製品です。日本語にも対応しています。PhotoLab4は2020年12月リリース、そしてPureRawは2021年4月リリースです。

 両者が採用する、PRIME および Deep PRIMEというノイズ低減アルゴリズムが非常にノイズ低減効果が高いようですが、PhotoLab4のうち、安価なPhotoLab4 Essencialでは使えず(通常のHQアルゴリズムのみ)、高価(19900円)なPhotoLab4 Eliteのみで使えます。PureRawは12900円です。なお、DxOは2013年10月にリリースしたDxO OpticsPro 9というRaw現像ソフトで初めて機械学習を使ったPRIMEというノイズ低減アルゴリズムを搭載し、昨年12月にそれをさらに発展させたDeep PRIMEを開発しPhotoLab4に登載しました。

 なおPRIME, Deep PRIMEはベイヤーセンサーのRawファイルのみに有効で、フジフィルムのX-trans採用カメラや、SigmaのFoevion採用カメラのRawファイルでは使えません。

 なおPureRawはドラッグ&ドロップで直ちにDNGファイルを作ってくれ、操作も簡単な反面、補正量等パラメータを調節することができません。パラメータを調節するにはPhotoLab4 Eliteが必要です。

 

www.dpreview.comwww.dpreview.com DPReviewでは、PureRawのノイズ補正とレンズ補正力は目を見張る、としています。またPureRawはパラメータ調節ができない分、PhotoLab4のデフォルト設定と若干変えていると指摘しています。ただPhotoLab4の価格に対してPureRawは安くないとも指摘しており、高ISOファイルのRaw現像を頻繁に行う人にはメリットがあると指摘しています。またPhotoLabのノイズ低減能力については、圧倒的なPRIME, Deep PRIMEはもちろん、通常のHQ(Rawファイルでなくても適用可能)でもLrを上回ると指摘しています。

www.pcmag.com

www.pcmag.com PC Magのレビューの指摘は、PureRawは既に他のRaw現像を持っている人向けで、ベストの結果が欲しいならPhotoLabを買うべきである、という点と、最も高いノイズ低減を行うとかなり現像時間がかかると指摘しています。

 

www.digitalcameraworld.com この記事ではPureRawにDigital Camera World賞を与え、高く評価しています。ただし、他のRaw現像ソフトに読み込ませるときは、他ソフト側で自動でかかるレンズ補正やシャープニングをオフにする必要がある (PureRawで既に補正されるので) ことに注意喚起しています。

 なお、PhotoLab4のRaw現像ソフト自体としての使い勝手ですが、ユーザインターフェースの分かりやすさ、自動的にかかるレンズ補正や画像補正の優秀さ、サブスクリプション契約でない点が評価される一方、フジのX-transセンサーカメラ非対応 (今後とも対応見込みなし)、 マルチショットイメージングの非サポート (HDR、 パノラマ撮影、ペンタックスピクセルシフトやキャノンのRawバーストモード等非対応 [単独の画像としては読み込み可能])、Lrのような便利なファイル管理機能の欠如、多くのユーザーにとって必要かどうか分からない機能の満載などがネガティブポイントとして指摘されています。

 とはいえNik Collectionやfilmpackの機能も取り込まれており、また出力される結果のクオリティに関しても高く評価されているようです。

 国内で、Pure Rawを使った感想を書かれている記事に以下のものがありました。

moognyk.jp

 

■ON1 NoNoise AI  / Photo Raw 2022

www.on1.com

 こちらはON1という会社の、No Noise AIです。この会社はアメリカのメーカーでオレゴン州に本社があるようです。リリースは今年(2021)の5月です。単独のソフトウェアとしても実行可能ですが、PhotoshopLightroom、Affinity Photo、CorelApple Photos、CaptureOne
プラグインとしても実行できるようです。また、日本ではあまり話題になりませんが、On1 Photo Raw 2022というRaw現像ソフトの一部としても利用できるようです。価格は No Noise AIが約8900円、Photo Rawだと、スタンドアロンが13000円弱ですが、Adobeと同様年間サブスクリプションも用意しています。

 こちらは、DxOと異なり、X-transのrawファイルにも対応するようです。また現像済みのファイルにも適用が可能なようです。日本語対応に関しては、販売サイトは日本語表示が可能ですが、ソフト自体はどうなのか分かりません。

www.dpreview.com こちらは評価記事ではなく、機能&リリース紹介記事です。主要メディアによる本格的な評価記事はまだ出ていないようです。日本語による、使ってみた感想・評価記事もほとんど見当たりません。

■Topaz DeNoise AI

www.topazlabs.com

 Topazはテキサス州に本社のある会社で、こちらは、単独もしくはLr/Psのプラグインとして動くソフトウェアです。Ver. 1がリリースされたのは2019.4です。現在の最新バージョンは3.3.1となっています(2021.10初現在)。DxOやOn1とは異なり、汎用Raw現像ソフトはリリースしていません。価格は$79.98です。当初はRaw現像能力はなく、Rawファイルを直接読む場合は、他のRaw現像ソフトのプラグインとして動かす必要があったようですが、現在は直接Rawファイルを読めるようです。現在はメーカーではRawファイルから直接読むことを推奨しているようです。逆にTIFFなどの現像済みファイルでもAIノイズ低減機能が働く点が大きなメリットです。なお、日本語には非対応のようです。

 

www.digitalcameraworld.com 上のレビューでは、価格が比較的安価な点、およびLrに比べ簡単にノイズ低減ができる点を評価する一方で、結果はツルっとし過ぎ(Too Waxy)で、Lrに比べて一長一短と論じています。

 

nikonrumors.com こちらは絶賛に近い評価です。特に星空写真のノイズ低減効果が高い点、また一般の風景写真でも、ノイズ低減だけではなく色収差の補正に効果があると指摘しています。Topazの写真補正ツールの中にはほとんど効果がないものもある中で、このソフトは、確実に効果があると論じています。

 そもそもこのソフトのノイズ低減機能はデモザイク前の画像に対しては働かず、デモザイク後の画像に対して働くようなので、他ソフトに比べると、その点からしてハンデがあります。そのあたりを考慮すべきかと思います。

 国内で使用した感想が書かれた記事として以下のものがありました。

camerafreak.net

starphotographing.blog.fc2.com

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 以上3つのノイズ低減ソフトの能力についてですが、ノイズ低減能力に関しては、DPReview等に出ているレビュー、ユーザレビューから判断すると Topaz Denose AIが一歩劣るようです。Topazに関しては、若干色合いがオリジナルと変わったり、シャープネスがやや強めだったり、シャドー/ハイライトのトーンが変わったりするという指摘があります。またTopazに関しては優れていると指摘する人と、全くダメだと指摘する人に大きく分かれる傾向にあるようです。AIでどのような画像をあらかじめ学習させているかにより、得意なタイプの画像と不得意なタイプの画像で大きく結果が異なるのではないか、という指摘もあります。

 DxO、および、ON1はおおむねそれより良いと評価されているようですが、この両者でどちらが優れているかは、評価が分かれるようです。但し、DxOはこのDeep PRIMEノイズ低減技術で、5月に、2021 TIPA Award for Best Professional Photo-Editing Softwareを受賞しています。DxOの方がよりシャープな画像を出力し、ON1はややソフトな画像を出力する傾向にあるようで、そのあたりは好みの問題になるかと思います。但しON1の No Noise AIに関しては、単独で直接Rawファイルを読み込んだ場合は結果が良好ですが(その場合はDNGファイルで出力し他ソフトに持っていく)、他ソフトのプラグインとして動かすと(つまりデモザイクを他ソフトに任せる)、ノイズ低減効果が大幅に落ちてしまうという指摘があります。

 Topazは、おおむねノイズ低減能力で一歩劣ると評されていますが、現像済みのファイルを扱うとなると変わってきます。DxOは現像済みファイルには優秀なノイズ低減アルゴリズム(Prime, Deep Prime)が使えませんし、フジのカメラのRawファイル(X-transセンサー)もダメです(但し、HQは現像済みファイルに適用可能)。優秀なノイズ低減アルゴリズムは、ベイヤーセンサーカメラ専用です。また、PureRawではそもそもこれらのファイルは扱えません。ON1は、フジのRawファイルを扱えますし、現像済みのファイルも扱えますが、現像済みファイルの場合ノイズ低減力は落ちるようなので、おそらく、TIFFなどの現像済みファイルのノイズ低減能力に関しては、Topazが一番高いようです。Topazは、海外のネットの書き込みを見る限り、多くのユーザは、別のRaw現像ソフトで現像したものをTopazに掛けてノイズ低減を行っているようです。

 日本語でも、DxOとTopazについては、一定数レビューが出ているようですが、ON1に関してはほとんど見当たりません。Topazに関しては天体写真をやるような方の評価が比較的高いような感じがします(Nikon Rumorsの評価もそうですが)。

 以上をまとめると...

ベイヤーセンサーのカメラのRawファイルしか使わない

 → DxO

フジのX-transセンサーのカメラを使う、or DxOはシャープすぎて気に入らない

 →ON1

TIFFなどの現像済みファイルに使う

 → Topaz

また、一般的評価としてノイズ低減能力は、DxO > ON1 > Topaz

といったところでしょうか。

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参考レビュー記事 & ビデオ

lestreasurehunters.com こちらの個人記事では、DxOとTopazを比較していますが、Topazに関しては16bit TIFFで読み込ませて比較しています。ノイズ低減能力自体はDxOを評価していますが、補正できるファイル形式の汎用性でTopazを評価しています。なお、ISO3200以下のファイルは、SILKYPIXで処理することを推薦しています。

 

www.youtube.com こちらのビデオの作者は、ON1 > DxO > Topaz と評価しています。いずれもRawファイルでの補正結果です。DxOはややシャープすぎると論じ、ON1のナチュラルさで評価しています。Topazは色とコントラストが不必要に変化していると指摘しています。またON1はプラグインとして使うとノイズ低減能力が下がるので、スタンドアローンとしてまず使い、その後DNG等に変換して他のソフトに読ませるべきだと指摘しています。