今まで、NX Studioの現像について多く検証してきましたが、今回、Olympus Workspaceに関して検証したいと思います。とはいえカメラが最新ではありませんのでちょっと割り引いて考える必要があるかとは思います。
手持ちのオリンパスE-5はフォーサーズ最後のフラッグシップ機でした。ただE-5に採用されていたパナソニックのセンサーは性能的に今一つと言われていましたし、また画素数も現在のm4/3のカメラに比べて少ないです(約4000 x 3000、約1200万画素。最新のm4/3機種では、約2030万画素 / 1605万画素)。NikonのD3200に比べ半分の画素数です。
ところで、先日サンプルとして上げていた画像、実はうっかりISO1600のまま撮っていました。4/3は、画素数も少なく、センサー面積も小さいので、ISOは極力下げて撮るのが原則なのですが。そのためかなり盛大にノイズが出てしまっています。
まず、一見して空のR成分が減っています。NikonはExpeed4→6への変更でむしろR成分を強める方向になっていましたが...
また、デフォルトでは空の粒状感が結構残っています。ノイズフィルタを強にすると、粒状感はだいぶ減りますが、均一感は今一つです。ただ解像度の低下は少ないようです。
次はARTです。カメラ一般の標準プロファイルを使い、デフォルトではノイズ低減は控えめでかかっています。
デフォルトだと純正ソフトに比べ、かなりノイジーです。そこで、ノイズ低減を強化してみました。ノイズ低減関係はディテールタブのノイズ低減とローカル編集タブのスムージングがあります。試行錯誤の結果、ノイズ低減は控えめにし、スムージングの補正量を上げるよりも、ノイズ低減を積極的に行い、スムージングの補正量を控えめにするほうが良いようなので、そうしてみました。
ノイズ低減は、積極的にし、輝度を24.4に変えました。ディテールの復元は37.8まで下げました。またスムージングはRGBモードのガイド付き、半径3, ディテールは高めの4.7にしました。ARTのデフォルトの状態と比べると、解像度はさほど低下なく、かなりテクスチャがスムーズになったと思います。Workspaceのデフォルトと比べても解像度はさほど低下なく、テクスチャのスムーズさではやや上回るか、というところです。空の滑らかさは明らかに上回ります。これ以上やると解像度が低下します。デモザイクはRCD+Bilinierです。
次はdarktable3.6.1です。まず読み込んだデフォルト状態です。
確か、OlympusのカメラはISOを表示より1段下げて、カメラ内現像設定で明るめに上げることで、センサーの小ささから来る解像度の低下などをカバーしていたはずです。それがどうやらdarktableでは素直に補正しないまま出たようで、他のソフトに比べ暗めです。ただデフォルトでもノイズ低減が掛かり、テクスチャはかなりスムーズです。これを露出を他のソフトに合わせてみます。
露出を上げ、若干コントラストを下げました。ノイズ低減の設定はデフォルトのままとなっています。スムーズで、エッジはシャープである一方、テクスチャはARTやWorkspaceに比べやや潰れ気味です。
そこで再調整を掛けました。
denoiseのパラメータのうち strengthを0.5に、preserve shadowsを0.18に減らし、denoiseの効果を半分程度に弱めました。
テクスチャは少し回復しましたが、ARTの結果に比べると、空はうまくいっていますが、それ以外のところでややざらつき感が残ります。高ISOのかなり荒れたNikonの画像ではかなりうまくいっていましたが、やはりE-5には、ノイズ低減のためのプロファイルがない分、こちらの画像ではARTに一歩劣るようです。NikonD3200, D5500のRawファイルは画素数が6000 x 4000でしたが、こちらは4000 x 3000と少ない上に、センサーの感度も劣り(画像が荒れやすい)、テクスチャのバランスを取るのがより困難なせいではないかと思います。端的に言えば、低解像度の画像でそのテクスチャとスムーズさのバランスを取ることが難しい、ということかと思います。デモザイクはRCD+VNG4です。
最後は市販ソフトの代表として、Luminar3です。
テクスチャは非常に良く保たれているもののノイジーです。ただARTのデフォルトより、ノイズのきめが細かいように思います。
そこでノイズ低減を掛けてみました。
ノイズ感は消えましたが、ちょっとのっぺりした印象です。
全般に一長一短という感じで、なかなか甲乙がつけがたいところですが、それはソフトウェアの力不足というよりも、元々センサーの感度が低くノイズが発生しやすいうえに、画素数の少なさによる、ディテールと絵の滑らかさのバランスのとり方の難しさにあるような気がします。その中では、ARTのノイズ低減調整後の結果がバランスがとれていて良かったような気がしますが、それはソフトウェアのせいというよりもこちらの調整力や、個人的なソフトとの相性(使いやすさ)の問題かもしれません。
おそらくこの程度の画像の荒れなら、ノイズ低減のアルゴリズムよりも、ノイズ低減とディテールのバランスを取る使い勝手の方が重要であるような気がします。最近個人的に ARTをいじる機会が多いので、慣れの問題もあるかと思います。
Olympus Workspaceも、とりあえずデフォルトであそこまでの絵が出せるという点では、労力と絵のバランスを考えるとまずまずかもしれません。ただ、Workspaceには、NX Studioのような、何か突出したものはあまり感じられませんでした。バランスで評価できるかというあたりです。ただこれはカメラが古いせいかもしれません。
かつて鐸木能光氏が『デジカメに1000万画素はいらない』というタイトルの本を講談社現代新書から出していました。確かに、今多くの人がスマホの写真で満足していること、そして今現状、Webに載っている写真の画素数を考えれば(はてなは、フルHD, 200万画素止まり)、その通りなのですが、それは加工を前提しない最終形態の写真の話であり(多分スマホの写真の大半は撮って、撮ったデバイス上で見て、あるいは他の人に転送して、それで終わりでしょう)、このような加工を前提としたときにはやはり画素数的な余力がないと、編集が難しくなってしまいます。現に、例えば上のARTのデフォルトの全体写真ですが、1280 x 963ピクセル (約120万画素) に縮小していても、クリックして拡大すれば空のざらつき感は分かってしまいます。
一方、APS-C / フルサイズ機では、Nikon D3200の登場で6000 x 4000ピクセルの2400万画素が一つの標準になっていました。しかし、ここ最近、Nikon主導で、2000~2100万画素程度と標準的な画素数を下げようとしています。Nikonの場合、APS-C機はミラーレスも含め新規に出てきているカメラは軒並み2080万画素に抑えてきていますし、フルサイズ機でも報道用を意識したフラッグシップ機、D6がこれに倣っています。Canonは、やはり報道用フラッグシップ機EOS-1D X Mark IIIと、ミラーレスのEOS R6を2010万画素で出してきました。Sony, Pentaxはこの流れに乗ってはいませんが。これはセンサーの感度が上がって、高ISOでも画像が荒れにくくなった分、画素数を稼いで余力を増やさなくても良い、もしくは、1つのセンサー当たりの面積が大きいほうが画像が荒れにくく画素数も稼がなくても良い、という判断なのかもしれません。とはいえ、説明不足で、これでは単に経営が苦しくなったからコストダウンしているだけと思われかねません。個人的には2400万画素を標準とするのは維持してほしいところです。カメラ評でもオートフォーカスの追従性の高まりを評価する一方、画質的には画素数が減ったデメリットの方が指摘されているようです。
なお、上の事例での発色の違い、とくにWorkspaceは他のソフトと全く違う方向になっていますが、この問題はまた別途取り上げたいと思います。