省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

Bチャンネル再建法 技術解説: なぜ追加補正でシャドウ域のB値を引き下げる必要があるのか

 Bチャンネル補正法で、黄変を除去した後、当サイトでお見せしている事例では、グローバルにあるいはマゼンタ、グリーン補正レイヤーで、Bチャンネルに対しトーンカーブを使って S 字カーブを掛けたり、あるいはシャドウ域の値を低下させることが多いと思います。その理由はなぜでしょうか。

 まず、デジタルカメラで撮った、問題のないカラー画像をご覧ください。まず1番目ですが、植物の緑が広い面積で写っている写真です。

緑の多い写真

 ヒストグラムを見ていただきますと、シャドウ域で B が一番低く、次はR、そしてGの値が一番高くなっています。

 さらに次の事例ですが、植物の緑と青空がコントラストになっています。

緑の多い写真

 シャドウ域以下では、先ほどと同様、B が一番低く、次はR、そしてGの値が一番高くなっています。

 仮にこれらの画像が黄変していたとして、それに対しBチャンネル再建法を適用してみたらどうなるでしょうか。GチャンネルをリファレンスとしてBチャンネルの値を修正しますので、とうぜん再構成されたシャドウ域の Bチャンネルの値は、より高いGチャンネルに引きずられて、本来の値よりもさらに高くなります。つまり過剰に黄色味が削減された状態になります。

 次の事例は、茶色がドミナントになった写真です。

茶色みの多い写真

 こちらのシャドウ域は、Bが一番したで、次がG、最も高いのがRとなっています。これも仮にこの写真が黄変して、Bチャンネル再建法を適用したと仮定すると、上の2枚ほどではないかもしれませんがやはりGチャンネルに引きずられ、本来のB値より高く修正されるはずです。

 一方、次の都市部の写真ですが...

都市部の写真

 こちらは、全域にわたりR,G,Bの差がさほど大きくなりません。植物の緑は、BチャンネルとGチャンネルの値が乖離する大きな要因ですが、都市部の写真では植物が少ないため、乖離が少ないのです。これも仮に黄変して、Bチャンネル再建法を適用したとしても、Bチャンネルの値が必要以上に上昇するということはないと考えられます。

 また次はやはり野外の写真ですが、植物がかなり黒っぽく映っています。

緑が黒っぽく映っている写真

そのため、シャドウ域以下では、R, G, B の差があまりありません。このような写真でも、仮に黄変してBチャンネル再建法を適用したとしても、シャドウ域のB値を修正する必要はないでしょう。仮に問題が出るとすれば、空で、Bが必要以上に引き下げられる可能性です。

 下も同様の写真ですが、より青空が青々しています。

緑が黒っぽく映っている写真

シャドウ域以下では、R, G, B の差があまりない一方、空・ハイライト域は、Bが最も高く、次いでG、そしてRが最も低いという状態です。この場合は仮にBチャンネル再建法を適用するとすれば、シャドウ域は問題ない一方、空のB値が必要以上に引き下げられる可能性でしょう。ただ、仮に空に黄変があまりないとすれば、Bチャンネル再建法を適用したとしても、オリジナルがより青い場合はそれを活かすマスクが掛かっていますので、追加修正はあまり必要ありません。また空がべっとり黄変していたとすれば、遠景補正レイヤーを使ったり、トーンカーブでハイライト域のB値を引き上げるなどして、追加修正が必要になります。

 

 このようにオリジナル画像で植物の緑が多かったり、茶色が多かったり (例えば鉄道の赤錆のこびりついたバラストや道床など) すると、Bチャンネル再建法を適用したときに、シャドウ域を中心に、Bチャンネルが必要以上に引き上げられる可能性が高いです。このため、黄変削減が過剰だと感じられるかもしれませんが、現行のアルゴリズムの原理上止むをえません。

 このような画像の場合、Bチャンネル再建法適用後、シャドウ域を中心にB値を大きく引き下げる必要が出てきます。

Bの補正カーブ例 1
S字カーブ

Bの補正カーブ例 2
シャドウ域中心に下げる

 以下、具体例です。

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GIMP上で緑部分に対し、トーンカーブでBチャンネルの値を引き下げているところ

 Bチャンネルに対し、S字カーブをかけています。なお上の例では、R と G もシャドウ域を中心に若干上げています。本来Bチャンネル以外は正常であれば、Bチャンネル以外いじる必要はないはずです。しかし、実際にはネガカラーフィルムを白色光で取り込むと、フィルムのコンディションにもよりますが、多かれ少なかれマゼンタにかぶる傾向が出ます。これを補償するため、R と G を多少いじっています。