こちらは常磐線で活躍する E501系です。2025年3月ダイヤ改正で、完全引退になるのではというニュースが駆け巡りましたが、どうやら水戸 - 土浦間の運用がなくなるだけで、とりあえず運行は続けられるようです。とはいえ、同世代の E217系が 2025年3月改正で完全撤退になりますので、当形式の終焉もそう遠くないことでしょう。
元々当形式は、常磐線快速線旧国電区間に土浦から直通させるために 1995年に製造されました。いわば交直流形国電 (とはいえすでに民営化されていましたので厳密には「国電」とは言えませんが。ちなみに、JR東日本は 国電という名称の代わりに E電という名称を定着させようとしましたが失敗しました) として企画された訳です。首都圏にお住まいの方はご存じかと思いますが、茨城県内に地磁気観測所があるため、取手以北を直流電化することができず、交流となっており、直流の通勤車両を直通させることができない状態になっています。
当時はまだつくばエクスプレスも開業しておらず、筑波研究学園都市に住んでいる人たちが東京方面へ出かけたり、通勤する際は、バスで土浦や荒川沖に出てそこから常磐線で上野に出ていましたので、土浦以南が非常に混雑しており、常磐快速線を土浦まで延長する必要がありました。そのための切り札として E501 系が開発され、さらに増備が期待されていました。導入当初は基本+付属の15輌編成という威容を誇りました。旧国電区間としては最長編成です。他線区はおおむね 10輌、山手線で 11輌ですから。
しかし、1997年に土浦で運行系統を分割するダイヤ改正を行ったところ、土浦以北から猛反発が出て、このダイヤ改正は一年で撤回に追い込まれます。いわば、土浦以南国電・土浦以北中電(中距離電車) 化計画が反対に遭って頓挫した形です。このため、E501系はこれ以上の増備が困難になってしまいました。結局中電の都心直通を復活させることになります。
その前後、E217系を皮切りに、中電に初めて 4扉車が導入され、さらに 当初中央・総武緩行線に導入されていた 231系 が中電区間の東海道線に本格的に導入されると、中電・国電という区分自体が曖昧になっていきます。
2005年にはつくばエクスプレスが開通し常磐線の混雑も一段落するとともに、4扉の E531系による 401, 415 系の置き換えが始まります。こうなるとますます E501系の存在意義が薄くなります。
そして決定的だったのは、2007年の E531系へのグリーン車導入です。グリーン車連結に不向きだった本系列は、土浦ー上野間の運用から撤退することになりました。撤退した本系列は付属編成を水戸線に、基本編成を常磐本線に転用することになります。この際、それまでなかったトイレも設置されました。
しかし、2018年に入って水戸線で交直流切り替え区間で故障が多発したため、水戸線の運用から撤退し常磐線での運用に専念します。401系や415系ではこのような問題はなかったと思いますが、もともと新系列電車は、減価償却期間の10年持てばよいというコンセプトで製造されていましたので電機機器の耐久性についてはあまり考慮せずに製造されていたのかもしれません。そのためか走行関連の電気機器に関しては、2007年、および2012年に交換が行われました。いくら車輛価格のコストダウンを進めたとは言え、やはり、10~15年程度で車輛のスクラップ & ビルドというのはバブル時代のバブリーな発想だったと言えるでしょう。
2023年3月水戸ーいわき間で5輌編成列車を対象にワンマン運転が開始され、さらに2024年3月に、土浦ー水戸間でやはり5両編成を対象にワンマン運転が開始されることで、E501系付属編成の運用がなくなります。このため、8月には付属トップ番号編成の K751 編成が廃車になりました。
結局、土浦以南国電化計画の失敗、グリーン車導入ならびにワンマン化が E501系を追い込んだと言えます。
現在では、10輌基本編成による4運用が土浦ー水戸ーいわき間で残っており、朝夕の多客時に限定されて運用されています。日中は 3 本がいわきで、1本が勝田で昼寝をしています。
なお一時2025年3月改正から E501系が引退するのではないかという情報が流れましたが、どうやら水戸ー土浦間に残った1往復運用のみの廃止にとどまるようです。
E531系は E233系の交直流版のような位置づけですが (E531系の方が先行)、直流車の製造は E235系に移っています。そのため仮に E501系を引退させるにしても、E531系の増備で補うのか、それとも次世代の交直流車を製造するのか、あるいは、列車本数を削減して運用の合理化でまかなうのか、方針が決まっておらず、様子を見るため、E501系の運用が残されているのではないかと推測します。多分 JR東日本としては、朝夕の水戸周辺の運用を5輌に統一して10輌の運用を減らしたいところかと思いますが、どうも観察している限りかなりの乗車率がある列車もあるようなので微妙です。運転士が確保できれば、5輌ワンマンに統一して、列車を増発してでも10輌編成をなくせれば E501系を引退させることができると思いますが、おそらく運転士確保もあやういところでしょう。
首都圏ではコロナ禍以降の列車本数の削減で、233系に余剰が出ていますが、交直流車ではないので常磐線交流区間に転用する訳にも行かず... 余った 233系を松戸に転用して、一部列車の運転系統を取手で分割すれば E531系10輌基本編成の運用に余裕を持たせることができるので、それを朝夕の水戸周辺の輸送に転用するということも可能になりますが、そうなるとグリーン車が上野、品川まで乗り通せなくなりますので、乗客から反発が出るでしょうし...
以下、現存最若番 K701 編成車輛の写真です。
室内は、ほぼ 209系と同じです。グレーが基調になっています。比較的閑散な区間にもかかわらず、車内広告が結構出ていますが、これは車両基地単位で車内広告を取っているためでしょうか。
上野ー土浦運用撤退の際に設置されたトイレです。
サハ E500 はサハ E501 にコンプレッサーを追加したため別形式となっています。
本車の車歴です.
1995.5 川崎重工製造 (水カツ) → 現在に至る
なお、レイルラボには東急車両製造とありますが、現車を見ると川崎重工製造です。また車体端面にも、川崎重工特有のコルゲートがあります。