これもAkkana Peck氏のBiginning GIMPからの情報です。眠い軟調の写真をメリハリのある写真に仕上げる方法ですが、レイヤーモードをハードライトで重ねると良いとあります。画像の荒れも少ないと指摘されています。
因みにハードライトの式は以下のように定義されます。なお、Mは上のレイヤーのピクセル値、Iは下のレイヤーのピクセル値、Eは最終結果のピクセル値です。
式8.13 レイヤーモード「ハードライト」の等式、 M > 128 の場合
式8.14 M < 128の場合
要は、上に重ねるレイヤーの明度(M)が50%(8bit相当で128)を境に、50%以上なら明るく、以下なら暗くしてコントラストを上げるという式のようです。50%以下は単純に乗算モードとほぼ同じ(それを2倍している)になっています。2倍しているのは、最大値が128になるので、それを補償するためだと思います。50%以上は基本はスクリーンモードと同じです。ただ分子で 2 x (M -128) となっているのは、Mから128を引いているので、やはりその分を補償するため2倍しているようです。
また、明度を、50%を境に処理を変えているので、おそらくリニア画像ではダメで、知覚的ガンマ補正(sRGB式ガンマ補正)がかかった色空間で処理しないとうまく動作しない可能性があります。
という訳で試してみました。オリジナルはKodakのPanatomix FilmをMicrodole-Xで軟調気味に仕上げたのですが、ちょっと軟調過ぎたようです。
そこでGIMPで読み込んでオリジナルレイヤーをコピーしてレイヤーモードをハードライトで重ねます。
最終的に同じレイヤーをコピーしてハードライトで重ねたものを3枚複写して重ねました。
非常にしっかりとした画像になりました。なお画面にゴミのようなものがありますが、ちょうど雪が降りだして、それが画面に写っています。
ところで、GIMPにはさらに、ソフトライトというモードもあります。これもコントラストを上げる処理のようです。式は以下のようになっています。
この式のRs はスクリーンモードの結果ということです。(255 - I) x M という部分が暗くする部分を、Rs が明るくする部分を担当するということで、明るく引き上げる量と暗く引き下げる量を加算して、どちらの量が大きいかで明るくなるか暗くなるかが決定されるようです。
なお、公式マニュアルによりますと、現在のGIMPでは、オーバーレイモードとソフトライトモードは、式は全く同一だそうです(Photoshopでは異なっている可能性があります)。
そこで、やはり式を見ているだけではピンときませんので、ソフトライトでも同じ画像を使って試してみました。
上と同様に、ソフトライトで重ねたレイヤーを3枚複写して重ねていますが、若干コントラスト上昇が弱いようです。4枚重ねるとほぼ同一になるか、という感じです。
コントラスト上昇が緩やかなのと、若干シャープさに欠け、ソフトな印象です。なお、ソフトライトは明度50%で処理を変えていませんので、こちらはリニアな画像でも使えるのではないでしょうか?
ハードライト、ソフトライトともいずれもコントラストの上昇に使えるテクニックです。ハードライトはよりコントラストの上昇率が高くシャープ、ソフトライトはコントラストの上昇率が低く、よりソフトと要約できると思います。なお、このケースでは効果を高めるためにレイヤーを複数重ねていますが、逆に弱める場合は、不透明度を下げます。
なお、異なる画像や色を重ねる場合は、ハードライトは色を混合した上で、よりコントラストを高める一方、ソフトライトは、あまりコントラストを上昇させずに、色を混合する機能と理解するのが良いと思います。スクリーンモードや乗算は色を混合すると同時に明度も変更しますが、こちらは明度の変更を狙っているのではなく、コントラストのみ変更する(もちろんコントラストの変更によってある程度明度も変わりますが...)というイメージかと思います。
GIMP公式マニュアル