省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

韓国で高速バスに乗る

 先日 KTX に乗車した話をしましたが、KTX が普及する前は長距離移動の主な手段は高速バスであり、現在でもまだまだ主力です。日本では高速バスと言っても途中多くの停留所に停まることがことが多いです。例えば、新宿ー甲府間を走る中央高速バスの場合、中央道上野原, 中央道野田尻, 中央道猿橋, 中央道真木, 中央道笹子, 中央道甲斐大和, 中央道釈迦堂, 中央道甲斐一宮, 中央道御坂, 中央道八代, 中央道境川, 中央道甲府南, 中道, 南甲府警察署, 伊勢一丁目, 勝沼, 一宮, 石和, 山梨学院大学, 善光寺, 中央三丁目 と非常に多くの中間停留所が設定されています。しかし、韓国の場合、基本は起点と終点をノンストップで走る都市間連絡であり、止まったとしても、せいぜい2,3バス停程度です。

 韓国の場合、都市間を連絡するバス概念として高速バスと市外バスがありますが、現在その区分はあいまいです。市外バスと言っても必ずしも近くの都市とを結ぶとは限らず長距離を高速道路を通って結ぶ路線もあります。但し、バス発券システムとして、高速バス発券システムと市外バス発券システムが別々になっています。

 以下は市外バス自動発券機です。

市外バス自動発券機 (安東ターミナル)

 この自販機は、BUSTAGO という韓国バス運送事業組合連合会が運営しているネット上の乗車券予約サイトと連動しています。BUSTAGOは交通カード・キャッシュビーと提携しているようです。なおキャッシュビーはかつてロッテ企業グループの傘下でしたが、現在は別の投資ファンドに売却されました。

BUSTAGO サイト (日本語)

 一方以下の自動発券機は KOBUS という全国高速バス運送事業組合が運営する予約サイトと連動しています。こちらはキャシュビーのライバル T-money と提携しています。

高速バス券売機 (安東ターミナル)

KOBUS サイト (日本語)

 いずれのサイトも日本語サイトがありますが、日本で発行されたクレジットカードが使えるか不明です。今回知人に頼んで予約をお願いしたり、あるいは現地バスターミナルの窓口で購入しましたので、日本のクレジットカードが使えるか確認しませんでした(窓口では日本のカードは使えます)。なお、韓国の人はオンラインのサイトからスマートフォンを使って乗車券を購入し、SMS もしくはアプリを通して QR コード付きの乗車券の画面が送られてくるので、それをバスに乗るときにチェックインして乗るようです。

 なお、券売機は、T-money もしくは、CashBee などの交通カードでも買えるようですので、仮に海外発行クレジットカードが使えなくても、交通カードに予め金額を入れておけば券売機を使って購入できると思います。

 もちろんバスターミナルの窓口でも買えます。

大邱市外バスターミナル券売窓口

 上は東大邱市外バスターミナルの乗車券販売窓口です。このターミナル、コロナ直前の 4, 5 年前に Korail大邱駅前に新築された建物にありますが、コロナ前はこの窓口のほとんどが開いていました。このターミナル規模が大きくて窓口もたくさんあります。ところが今回行ってみると上の写真のように大半の窓口が閉まっており、空いている窓口は、写真の奥の方に、2, 3しかありませんでした。ここ数年で一気にスマホを使った乗車券購入 (あるいは券売機利用) に移行したためと思われます。

 なお、注意すべきなのは、高速バス発券システムで買うのか、市外バス発券システムで買うのかは、バス会社や路線によって決まっているわけではないようです。以前調べた時は、行き帰り、往復で発券依頼することができない路線があり、なぜだろうと思ったら、行きと帰りで使っている発券システムが異なることが分かったことがあります。どうやら、バス運行会社の事情よりも、むしろバスターミナル側の事情によってどのシステムを使うのかが決まっているようです。ここから先は推測ですが、おそらくバス路線の設定も、バス運行会社よりも、各市外バスターミナルが営業上の主導権を握って決めていて、そのあと運行を委託するバス会社を手配しているのではないかと思われます。従って同じ路線でも複数のバス会社が運行している場合があります。その意味でも高速バスと市外バスの区別はあいまいです。

 以下はバス乗車券です。

高速バス発券システムの券売機を使った乗車券

市外バス発券システムの券売機を使った乗車券

 上は高速バス発券システム (全国高速バス運送事業組合) の乗車券です。QRコードがついています。これを、バスに設置されているQRコードリーダにかざして、乗車します。下の市外バスシステム (韓国バス運送事業組合連合会) の方は、従来通りで、半券を運転手に渡して乗ります。但し、スマホを使った乗車券の場合は、市外バスシステムでもスマホQRコードをかざして乗るようです。因みに両方ともバス会社は慶北高速でした。バス運営会社によって使っている発券システムが異なるわけではないという証拠です。

高速バス運転席 (コリアワイド慶北バス)

 上の写真は高速バス運転席の写真ですが、運転席の右側に QR コードリーダーがあり、ここに QR コードのついた乗車券をかざして乗車します。その右は交通カードリーダーですが、ひょっとするとあらかじめ乗車券を買わなくても、満席でなければ、いきなり来て、交通カードを当てれば市内バスと同様、乗車できるのかもしれません。

 なお、高速バス、市外バスはバスターミナルを発着することが多いですが、都市が大きいほど主要鉄道駅と離れていることが多いので要注意です。例えばソウルの場合、ソウル駅の近くに高速バスターミナルも市外バスターミナルもありません。ソウル高速バスターミナル(別称 ソウル京府[キョンブ]ターミナル、セントラルシティターミナル、江南ターミナル)は、地下鉄3号線または9号線高速ターミナル駅が最寄で、しかも道を挟んで湖南方面ターミナルと、慶釜方面ターミナルに分かれています。それだけでなく、ソウル南部ターミナルがあり (最寄り駅地下鉄3号線南部ターミナル駅)、東ソウル総合ターミナルがあり (地下鉄2号線 江辺[カンビョン]駅が最寄)、上鳳(サンボン)ターミナル (京春線、京義・中央線 忘憂[マンウ]駅が最寄) とあり、それぞれのターミナルから出るバスの行先方面が異なりますので予め間違えないように調べておく必要があります。しかも上鳳ターミナルの最寄り駅は地下鉄上鳳駅ではないというおまけつきです。これらのターミナルにソウル駅から行くには、30~小1時間程度時間を見ておく必要があります。むしろ安東や東大邱のように主要鉄道駅に隣接している場合のほうが少ないかもしれません。

 大田の場合は、大田複合ターミナル、大田西南部ターミナル、需城(ユソン)高速ターミナル、需城市外バス停留所と4カ所あり、大田複合ターミナルは大田駅から約3km, 地下鉄も通っていません。

 また 同じ都市に市外バスターミナルと高速バスターミナルが存在する場合、全く別の場所に存在することもあります。以前、馬山 (マサン、現在は昌原市の一部) でバスに乗り継ぐつもりでバスチケットを買っておいたところ馬山には市外バスターミナルと、高速バスターミナルがあり、その間が 2.5km 程離れていて、到着したのは馬山高速ターミナル、乗り継ぐバスは市外バスターミナル発ということで、慌ててタクシーを捕まえて市外バスターミナルに行ったことがありました。A市行き、といってもその市のどのバスターミナルに行くのかちゃんと確認しておく必要があります。馬山のように市外バスターミナルと、高速バスターミナルが別々に設置されている都市もあります。また複合ターミナル、総合ターミナルというのは市外バス・高速バス両方とも発着するターミナルということのようです。特に、バスを乗り継ごうと思っている場合は事前に良く調査しておくことが必要です。土地勘のない外国人にとっては要注意な点です。

 以下は、東大邱バスターミナル。バスターミナルと Korail の駅が隣接し、珍しく鉄道との乗り換えが便利になっているターミナルです。

大邱バスターミナル

 ターミナルの前の屋根の上には、東大邱駅複合乗換センターとあります。この反対側に Korail の東大邱駅があります。KTX と高速バスの乗り換えが簡単です。

大邱バスターミナルビルの案内

 センターの案内。1Fはバス到着ロビー、3Fはバス出発ロビーと空港のようです。また3Fから鉄道に乗り換えられます。

大邱ターミナル到着場
(コリアワイド慶北 / 金海空港 - 東大邱線)

 こちらはバス到着ホーム。釜山金海空港から到着したバスです。1時間半に1台程度出ています。

大邱駅乗り換え通路

 こちらはバスターミナル3Fから Korail大邱駅乗り換え通路です。

 

 以下は、高速バスの車内。

高速バス客室内  (コリアワイド慶北バス)

 4列席が一般座席車、3列席が優等座席車です。昔は高速バスが優等、市外が一般ということもあったようですが、今は関係なく優等座席車が主流です。優等座席は乗車定員が少ない分運賃も割高です。以前は鉄道よりも価格/到達速度のコストパフォーマンスは上でしたが、バスの運賃が相対的に割高になる一方、鉄道の速達性や客室サービスが上がってきているので、鉄道とバスの競合区間では必ずしもバスがコストパフォーマンスが高いとは言えなくなってきました。

 例えば安東ーソウル (鉄道は清涼里、バスは東ソウルターミナル)間では、高速バスがKTXよりちょっと安い程度で、到達時間では負けています。また車内設備面でも鉄道だとトイレやスマホの充電設備などがありますが、バスはありません *1ムグンファ号なら、到達時間的にはほぼ互角ですが、バスより割安ですし、渋滞に巻き込まれないという点ではより有利かもしれません。ただフリークエンシー的にはバスが有利です。ともあれ、韓国の方が国の基幹輸送手段として鉄道をしっかり後押ししていくという政策的姿勢が明確だと思います。SDGs推進という点でも正しい政策かと思われます。

 日本の場合、例えば貨物輸送におけるトラック運転手の人手不足や待遇の悪化という問題があっても、ではそれに対して鉄道の貨物輸送を積極的に活用・支援しようという方向性は全く打ち出されていません。行き当たりばったりに新幹線を作ってみたりはしますが、それが国として、SDGs を考慮した自動車から鉄道へという政策的方向性に裏付けられているわけでもありません。むしろ新幹線を作ることが既存の鉄道ネットワークを弱体化する方向に進んでいます。もちろんこれは日本は韓国とは異なり在来線は狭軌、新幹線は標準軌という問題があるためでもありますが... とはいえ政策的なちぐはぐさが目立ちます。国有鉄道を民営化して、名目的に債務を解消したように見せかけていますが (実際にはきちんと債務が解消されたわけでもありません)、それが鉄道の活性化につながっているとは言えないのが日本の現状です。政策的な位置づけもむしろ迷走するようになりました。

 もっとも韓国のバス事業者にとっては複雑な心境かと思われます。

 

*1:なお、2時間以上走る高速バスの場合、2時間ごとにサービスエリアなどでのトイレ休憩が入ります。

 なお、近年 KTX に対抗してスマホの充電器やリクライニングを備えた優等より上のプレミアム車の導入もされつつありますが、料金は KTX よりさらに高く、到達時間的には KTX に負けていますので、微妙です。