省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

韓国の都市型 BRT - 世宗市 BRT

 最近、災害で運休していた日田彦山線が BRT (Bus Rapid Transit) として再出発しましたが、日本では現状 BRT というと需要が低迷し線路維持が難しくなったローカル線を舗装してバスを走らせるケースしかないようです。しかし韓国では、都市型の BRT が導入されている場所がありました。廬武鉉政権下で新しい行政都市として建設された世宗 (セジョン) 市です。

 乗ってみたわけではないので、外観の写真だけですが...

走行中の BRT (B1 系統)

 上は市中を走る BRT です。後ろの窓ガラス部分に B1 という系統番号が LED で表示されています。現在ではBで始まる系統番号がBRT路線となっています。但し以前は異なっていたので一部旧系統番号と併記されている案内があります。なお、一部には連接式のバスが導入されているようです。真ん中の車線が BRT 専用となっており、一般車が進入できないよう柵で囲われています。

BRT 駅
(ドタム洞ドレム・マウル 駅)

 こちらは BRT の駅。電車と同じくホームドア(韓国語ではスクリーンドア)が設置されています。

BRT 高架部分

 一部は、上のように BRT 専用高架道が作られており、通常のバスよりも早く到達することができます。

 韓国の場合、近年公共交通機関の普及が急速に進み、大都市では地下鉄の建設が急速に進んでいますが、地下鉄ほど多くの需要が見込めない大都市近郊都市の場合、軽電鉄 (LRT) の建設が進んできました。しかし、世宗市の場合、軽電鉄ではなく、BRT が採用されたようです。おそらく世宗市開設当初は人口が非常に少なかったため、既存のバス路線を活用しつつ徐々に建設を進めていくということで BRT が選択されたものと思われます。BRTだと、すべての施設が完成していなくても運営可能ですので、その点で都市型 BRT のメリットはあります。

 世宗市への首都移転は進歩派の廬武鉉政権で公約として謳われましたが、次の保守の李明博政権で、ソウル南部果川(クァチョン)市にあった政府庁舎移転程度の話に規模が縮小されました。しかし、その後の政権交代を経て、現在世宗市は人口 30万人程度だそうですが、今後国会議事堂の移転も予定されているそうで、そうなってくると名目はどうあれ、実質的な首都移転になってくると思われます。人口も今後さらなる拡大が想定されているようです。

 BRT が走っている区間は、大田駅ー大田地下鉄盤石(バンソク)駅ー世宗市外バスターミナルー政府世宗庁舎ーKTX五松駅ー梧倉(オチャン)プラザー清州国際空港、ならびに、世宗市内巡回コースが2コースあり、BRT の路線系統は B0: 世宗市外バスターミナルー政府世宗庁舎ータソム洞ー世宗市外バスターミナル循環、B1: 大田駅ー世宗市外バスターミナルー政府世宗庁舎ーKTX五松駅 (約70分)、B2: 盤石駅ー世宗市外バスターミナルー政府世宗庁舎ーKTX五松駅(約40分)、B3: 世宗市外バスターミナルー政府世宗庁舎ーKTX五松駅ー梧倉(オチャン)プラザー清州国際空港 (約70分)、B4: 盤石(バンソク)駅ー世宗市外バスターミナルー国際研究団地ータソム洞ーKTX五松駅、B5: 世宗市外バスターミナルーコウントゥル公園ー伝統文化体験館ー世宗研究団地ー世宗市外バスターミナル循環です。なお、大田市外バスターミナル、および清州市中心街は通りません。なお世宗市 BRT には BRT の略称にひっかけて、BaRoTa (すぐ乗る) という愛称がついているようです。日本で言えば「ゲタ電」(電車ではありませんが) といったところでしょう。

世宗BRT 路線図
赤は幹線、青は循環線
灰色、青灰色は Korail在来線, KTX

 BRTは、2012年五松駅ー盤石駅間、試験運行開始、2013年4月に正式開業となったようで、その後運行地域、区間を施設の整備とともに徐々に拡大していった模様です。

 BRT の施設所有者は、ナム・ウィキによりますと行政中心複合都市建設庁、大田広域市、世宗特別自治市、清州市、そして BRT の運営主体は世宗都市交通公社、大田BRT、清州市内バス準公営制管理委員会 (清州市バス会社6社で構成)です。

 因みに、準公営制管理委員会とは、元々韓国の市内バス路線の多くは民間事業者に任されており自由競争で運営されていましたが、バス会社間の過当競争でバス会社の倒産が多発し、利用者が困ることが多かったため、行政が主導してバス運営に関してバス会社間の調整を乗り出すための制度だそうで、2004年ソウル公共交通の再編時に韓国で初めて導入されたそうです。韓国ではバスが公営であることはほとんどないにもかかわらず、世宗市の市内バスに世宗都市交通公社という表示があったので、あれっと思ったのですが (民間のバス会社もあります)、どうもそのような背景があるようです。

 日本の場合は路線バスは基本的に認可制なので路線バス会社間の過当競争でバス会社が倒産というのは考えられません。ただツアーバスの形態をとった事実上の長距離路線バス的運用がそれに近いかと思います。ただこのような事情を考えると公共交通を完全に市場に任せることにはどうなのかと思わざるをえません。

 今日韓国のバスでは多くの場合、交通カードを使って乗ると乗り換えは少なくとも1回までは追加料金なくできますが (地域によって異なるが、ソウルの場合は4回まで可)、これも準公営制を適用して可能になったそうです。なお乗り換え無料分は行政が財政補填をしています。

 なお、料金は世宗市内は1400ウォン、市外第1区間は 1700 ウォン(例: 世宗市内ー五松駅)、第2区間、2000ウォン (例: 盤石駅ー五松駅)、第3区間は2300ウォン (例: 大田駅ー五松駅)と、地下鉄と同様距離によって料金が変わります(2023.9 現在)。乗・降時にそれぞれ交通カードをタッチして料金を精算しているものと思います。このためか、現金での乗車はできず、交通カードによる乗車のみとなっています。因みに、韓国のバスで日本のバスに見るような整理券は見たことがありません。かつて現金支払い時代にも距離によって料金が変わるバス路線はありましたが、その場合、運転手に行先を申告して料金を払っていました。そのため、市内バスは均一料金制のバス路線が多く、距離によって料金が変わるバス路線は少なかったように思います。

 

[参考URL]

世宗都市交通公社 BRT

https://www.sctc.kr/page/PAGE1810092201264806

世宗特別自治市交通情報システム - リアルタイム路線検索

bis.sejong.go.kr