省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

欧米のユーザーは富士フィルムのカメラのどこに魅力を感じているか

 最近、pixls.us に Nikon の D5100 を 富士フィルムの X-T4 に買い替えるべきかというスレッドが立っています。相談者は X-T5 は高すぎるので X-T4 を買うべきかどうか迷っているということでした。

 

discuss.pixls.us

 もちろん、D5100 は 2012 年 12 月X-T4 は 2020年 4月に出ており、8年の差があります。当然、センサーの感度は上がっていますし、暗い状況、高 ISO でのノイズの出方も全く違います。ですので、センサーの違いでも T型フォードからフェラーリに変えるぐらいに差があると、他の方から指摘があります。

 また一般的にレフカメラを電子ファインダーのミラーレスに変える利点として、WYSIWYG (センサーに写る通りにファインダーで見られる) である点も指摘されています。またビデオを撮る際にはミラーが邪魔になるので、ビデオを頻繁に撮るならミラーレスが有利とも指摘されています。その一方で電池の減りは早いので、撮影する時だけオンにし、終わったらすぐオフにする習慣をつける重要性が指摘されています。

 それ以外に富士のカメラの大きな魅力として、電子メニューからではなく、昔のフィルムカメラのように、ダイヤル操作で設定ができる点が指摘されています。ダイヤル設定の方が、パネルのメニューから確認するよりも、分かりやすく、ISO 設定などが、電源を入れなくても確認できるという点が大きな利点と指摘されています。ただダイヤルで設定することで D5100 よりややエルゴノミックでない側面もあるとも指摘されています。

 また好みによっては、これらの設定を DSLR 方式に変える (つまりボタンを使わずメニューから設定する) こともできると指摘されています。

 これが富士のカメラを使った撮影体験の楽しさにつながっているようです。

 さらに富士のカメラの筐体のコンパクトさ、富士のレンズのラインナップに焦点距離の被りが少なくどのレンズを選んだらよいかとあまり迷わなくても済む、という点も指摘されています。

 なお、質問者は、ソニーの α シリーズの電子ファインダーを使っみて、そのクオリティの低さに辟易した体験があるようで、大丈夫なのかという質問をされていましたが、他の回答者からは富士のカメラの電子ファインダーについては、気にしなくても良いとの回答を得て安心されたようです。ただ、デフォルト設定ではなく、 “natural live view” モードで使うべきとのアドバイスを受けていました。

 

 日本のカメラメーカーからは、フィルムカメラのような、ダイヤル式のデジタル一眼カメラを出すことは、ややもするとレトロ趣味、懐古趣味に合うので売れていると受け止められているような気がします。そういう側面を全面的に否定するつもりはありませんが、上の記事を読んで感じられたことは、必ずしもそうではないということです。

 つまり、ひとつは伝統的なダイアル式でカメラを設定するということが、背面モニタから設定するよりもやはり分かりやすいのであって、それが撮影の楽しさにつながっているということです。もうひとつは、ミラーレスカメラでは電子ファインダーのため、電池の消耗が激しいです。電池を節約するには、必要のないときは極力電源をオフにする必要があります。そのため、ミラーレスカメラ上で電源をオフのままダイアルから設定できるということは、電池の持ちを維持するためにも大きなメリットがあるということです。

 つまり、ダイアル式は、単に懐古趣味というよりもやはりカメラの UI として (特にミラーレスにおいて) 優れているということだと思います。この辺りに自覚的なのが富士フィルムのカメラということではないでしょうか。

 また、ミラーレスによるコンパクトさやマニュアルレンズとの相性の良さも高く評価されています。

 こう考えると、D5100 ユーザなのに Nikon の Z シリーズに買い替えようという話にならないことも理解できます。Nikon のカメラはミラーレスでコンパクトなカメラを作れるはずなのに、コンパクトなカメラを開発することに大きな力を入れていません。一応 APS-C で Z50 や Z30 を作ってはいますが、どうも力を入れているのはミラーレスで作る必然性の薄い、重厚長大カメラばかりという印象があります。フルサイズでもミラーレスならもっと小型化が可能なはずですが...

 さらに、Nikonダイアル式の、Df, Zfc, Zf なども出しています。それらは、あくまで、「レトロ趣味」カメラとしての位置づけであるようです。しかし、それで良いのでしょうか。

 おそらくカメラやレンズ単価を上げるにはやはり重厚長大でないと消費者からお金が取れないと Nikon が考えているせいだと思われますが、ミラーレスで行くなら、コンパクトかつある程度リーズナブルなカメラを出してほしいなというのが、Z シリーズに移行する気になれないニコンユーザからの願いです。