darktable 4.6.x で今まで不可能だったオリンパス / OM System の、Raw 埋め込みメタデータを使ったレンズ補正が可能になりました (下図)。
Ver. 4.4.x では富士のレンズに関してはメタデータを使ったレンズ補正が可能になっていましたが、Olympus では不可能でした。
近年ミラーレス化に伴い、レンズ補正データを Raw データにメタデータとして埋め込み、純正ソフトなどではその埋め込まれたデータを基にレンズ補正を行うようになる傾向が広がっています。その理由については、以下の記事で記しておきました。
ところがこれには副作用があります。このようなデータを持つレンズに関しては Adobe からレンズ補正データファイルが提供されません。つまりソフトウェアメーカーは Raw ファイルからメタデータを読むためには、直接カメラメーカーと契約してレンズ補正データに関する情報を得なければならなったということです。
ところが、そのような契約を行うとするとメーカーと秘密保持契約を結ばなければなりません。しかしフリーのオープンソースのソフトウェア (FOSS) はソースコードが公開されているため、原理的にメーカーと秘密保持契約を結ぶことができません。Adobe がミラーレスカメラのレンズ補正データファイルを提供しないのもそのせいかもしれません*1。
もっとも FOSS はレンズ補正データを得るのに、レンズファンというボランティアベースでレンズ補正データを提供しているライブラリに依存しています。従って、Raw ファイルから補正用メタデータが読めなくても、レンズファンにデータがあれば問題はありません。しかし、レンズファンはユーザからボランティアでそのレンズで撮影した画像データを提供してもらっってデータを作成しているので*2、新しいレンズが出てからデータが提供されるまでどうしてもタイムラグが発生します。
これに対し、darktable は独自に Raw に埋め込まれた補正データを解析する試みが続けられ、Ver. 4.4.0 (2023.7リリース) でヨーロッパで人気の高い富士のカメラのメタデータが解析され、メタデータからレンズ補正データが読めるようになっていましたが、オリンパス m 4/3 陣営のデータはその時点では成功していませんでした。昨秋ようやく解析に成功し、Ver. 4.6.0 からオリンパスのカメラでもメタデータからの補正データの読み込みがサポートされたという訳です。
なお、メタデータが読めるカメラのレンズの補正は、メタデータ、レンズファンデータ、手動の3つの中から選べるようになっています (デフォルトは Lensfun)。
なお同じ m4/3 陣営でもパナソニックの方はダメなようです。なお、ほかに Raw 埋め込みデータをレンズ補正に使うようになって Adobe からレンズ補正ファイル (lcp ファイル) が提供されないカメラ用レンズとして、Sony αシリーズ、Nikon Z シリーズ、Canon R シリーズなどがあります。Sigma などのサードパーティのミラーレス用レンズに関しては提供される場合もされない場合もあるようです。これらに関してはやはり darktable では埋め込みデータの読み込みはできないようです。
なお、カメラメーカーによってはメタデータに埋め込むデータを暗号化しているところもあるようなので、このまま FOSS では今後ともメタデータの読み取りができないカメラが出ると思います。
なおご自分がお持ちでないカメラの Raw ファイルの対応状況を調べるには、以下に DP Review による Raw ファイルサンプルギャラリーがあります。
なお、これらのファイルは個人使用目的のみで、このファイルを使った結果をインターネット等にアップしてはいけません。