省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

DP Review Canon R8 概観レビュー

 DP Review に国内では4月下旬発売予定の Canon EOS R8 の概観レビューが載っています。詳細レビューではないので採点はありません。

www.dpreview.com

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 基本的には Canon RP のボディにR6 ii のセンサーとAFシステムを載せたもの、とあり、NikonのZ5 および Sony α7cの対抗機と目されています。

 R8 は、R6iiと同じ新しいセンサーを載せていますが、このセンサーは前面照射型で、さらにEOS RP や R に劣る24メガピクセルといささか時代遅れのぱっとしない仕様です。DP Review はこれを聞いただけで、肩をすくめる人もいるだろうが、しかしそうすべきではなく、このセンサーは非常に良いと述べています。

 AFは高速で、40fpsまでの高速連写、さらにオーバーサンプリングの 4k ビデオは 60fpsまで可能となっているということです。そして、画質、AFの優秀さは R6 ii 譲りとあります。

 一方泣き所は、コンパクトなEOS RPの筐体を流用したためか、バッテリー容量の小ささです。バッテリー1本当たり、CIPA基準で、背面液晶使用時は、290枚、電子ファインダーを使うと150枚しか撮れず、熱心な写真家でなくてもバッテリー容量は足りないと感じるほどだと指摘されています。これは、R6 ii の半分です。

 その他、コストダウンのためグレードダウンしているのは、ボディ内手ブレの省略、フルメカニズムシャッターの省略、電子ファインダーの仕様ダウン、ジョイスティックの欠落、SDカードスロットが1つのみとなっています。もちろん、防塵・防滴もなし。

 ライバルのZ5 および α7c と比べると、両者はボディ内手ブレ補正を備え、また一応防塵防滴仕様になっているのに対し、R8はありません。また、ただし、手ブレ補正付きレンズを使っている限りは、高度ではないにせよ、普通に手ブレ補正は効きます。また、α7c にはありませんが、Z5 はジョイスティックとカードスロットを2つを備えており、プレミアム仕様を維持しています。ただ、α7cとZ5 はやや古いセンサーやチップを使うことでコストダウンを実現していますが (さらに Z5 はその代わりプレミアム仕様を維持)、R8 はセンサー、チップは最新のものを使用する代わりに、プレミアム仕様を削ぎ落とし、チープなボディを流用することでコストダウンを行っています。どちらがユーザに支持されるのか興味深いと述べられています。

 とはいえ本機の最大の泣き所は、USB給電がサポートされているとはいえ、バッテリーの持ちが悪い、という点になりそうです。ただ、その分バッテリー込みで461g と非常に軽量です。ライバル機は、ややバッテリーの持ちの悪い Z5 でも本機の2倍弱程度はバッテリーが持ち、α7c は2.5倍程度です。

 なお、アメリカでは本機のメーカー希望小売価格は $1499 (ボディのみ) ですが、国内大手量販店の予約価格は 26万4000円(同)で、ドル-円の為替を考えてもかなり割高です。OM System が国内価格をかなり割安に設定しているのに対し反対です。Canonアメリカの顧客に対しては、安い価格を設定する一方、国内の顧客に対しては強気の戦略で出ています。ちなみにDP Review で対抗機と目されている、Nikon Z5 の大手量販店価格は、最近では、17万 500円 (米 $1399)、Sony α7c は 25万2110円 (米 $1799)となっています。α7c は高いですが、アメリカでの価格設定も Canon より $300 (約4万2000円) アップとなっていますので... とはいえ、Nikon より Sony は若干割高にはなっていますが、Canon ほどではありません。こう言ってはなんですが、国内ユーザからぼったくる強気の価格戦略かと思います。

 ちなみに 24-50付きキットの米国メーカー希望小売価格は $1699となっていますが、国内価格は 大手量販店およびCanonオンラインショップで 29万3700円で、為替レートを考慮すると6万円ほど割高となっています。

 Canonは、R8 について、カメラの基本性能、写りは上位機同等を維持しつつ、装備面では大幅にグレードダウンを図るという方針を立てています。しかし国内価格はアメリカよりワンランクアップの価格設定になっていることを考えると、価格に見合わないというユーザは多いのではないでしょうか。とはいえ R6 ii も割高の価格設定という点では同じなのですが... このあたりをどう評価するか、ということになるかと思います。

以上をまとめると...

ピクセル数を追い求めなければ、上位機 (R6 ii) と同じ最高の写りと優秀なAF
 特に、前面照射型センサーだからダメという先入観を持つべきでない

・一方、価格に見合わない程の装備のグレードダウン

APS-C機同等の軽量化を達成するも、それを打ち消し兼ねない、バッテリーの持ちの悪さ

つまり、価格を上回る写りと、価格を下回る装備というコンビネーションをどう考えるかということになりそうです。また日本ではアメリカでの小売価格を上回る見込みですので、装備へのがっかり感はもっと大きくなるかもしれません。

 おそらく室内、家族写真、お散歩に持ち出すことが中心なら、低価格化、軽量化、USB給電や高性能な写りのメリットを最大限享受できます。しかし、旅行や登山などに持ち出して熱心に撮りたい場合は、たくさん予備電池を持ち歩くか、より電池の持ちの長い機種を選ぶか考えなくてはいけません。またチープな筐体も考えどころでしょう。

 またビデオに力を入れて撮りたい場合は、写り自体は優秀であるとしても、ボディ内手ブレの省略と電池の持ちの悪さがマイナスポイントになりそうです。

 なお、Canon では Nikon の Z シリーズとは異なり、レンズ内手ブレ補正を省略しているレンズは、一部のF値の明るいレンズに限定されていますので、ボディ内手ブレが省略されていたとしても、従来並みと考えればさほど大きなデメリットにはならないものと思われます。

 なお、日本ではどうなるかわかりませんが、アメリカでは、R8 は RP の当初希望価格より$200高い価格設定になっていますが、RPの後継というわけではなく、RPは更に希望価格を引き下げて併売されるようです。