省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

ImageJ対応 相対RGB色マスク画像作成ツール Ver. 0.54 バージョンアップ

[お知らせ (2024.7.6)]

 ダウンロードリンクに誤りがあったのを訂正しました。

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 昨年12月に本ツールをバージョンアップしましたが、久しぶりにバージョンアップします。

■バージョンアップ内容

 今回の主なバージョンアップ内容は、内部リニア処理ワークフローの追加です。先日、広範囲のほこりや傷などを一度に補正するためのマスク作成ツールを公表しましたが、その際、GIMP 上での動作をエミュレートするために、知覚的 TRC がかかった画像を内部的にリニアに戻して処理するようプログラムを作成しました。それにより、知覚的 TRC をかかった画像をそのまま計算するより、GIMP に倣って一旦リニア画像に直してマスクを作成したほうがより効果的にほこりや傷を補正できそうということが分かりました。

 それを受けて、ひょっとしてこのツールに関しても内部的にリニア処理をしたほうがより良好な結果が得られるかもしれないと思い、従来と同様の動作モードに加え、内部的に GIMP などと同様にリニアに戻した画像で処理を行うというモードを加えました。

 どちらの方がより効果的なのか、今のところはっきり分からないので、リニア処理動作モードはオプションで選べるようにしています。なお、知覚的<>リニアの変換には、単純にするために、近似値である、2.2 のガンマを使っています。従って厳密にリニアの画像になるのではなく、リニアに近似した画像に直して計算処理を行っています。今のところちょっと試作的な実装になります。

 よろしければこちらからダウンロードして下さい。

 マニュアルは引き続き以下のページをご覧いただければと思いますが、下記マニュアルと異なる点だけ、その下に紹介します。

yasuo-ssi.hatenablog.com

Ver. 0.53 以前と異なる点

 チャンネル選択ダイアログで以下のように、[リニアワークフローを適用 (Apply linear workflow)] のチェックボックスが表示されますので、ここでチェックを入れるとリニアワークフローで処理します。

チャンネル選択ダイアログ

 なお、チェックを入れますと、作成されるマスク画像のファイル名の末尾が一律 _Linear.tiff となりますので、従来ワークフローで作成した画像と区別をつけることができます。

 他はダイアログ上違いはありません。但しできるマスクは明らかに異なるので、プレビュー画面やパラメータの効果は異なります。

 なお、除外領域を設定するなどの目的で2種類のマスクを組み合わせる場合、ここでリニアワークフロー適用のチェックを入れると、2枚目のマスクのチャンネル選択ダイアログではデフォルトでチェックが入りますが、それを外すとエラーになります (ファイル名の違いのため) のでご注意ください。

 

知覚ベース処理とリニア処理の違い

 従来の知覚的 TRC ベースでの処理と、リニアデータベースの処理の違いについてですが、中間グレー点以下では、リニア処理の方が知覚的 TRC ベースの処理よりもコントラストが高くなる一方、中間グレー点以上のハイライト部ではリニア処理の方がコントラストが低くなる傾向が見られます。これは TRC を考えてみれば自明です。

 どちらが適切なのかは画像によるのではないかと思われます。例えば以下の画像についてマゼンタマスクを作ってみると...

オリジナル

従来通り知覚的 TRC ベースでマスクを作ると... (範囲は全明度領域)

知覚的 TRC ベース 色の閾値: 25

 一方、リニアベースで作成すると...

リニアベース 色の閾値: 40

 閾値は、従来バージョンと明るさをある程度合わせようとすると、だいぶ引き上げてることになります。リニアベースでは明らかに全般的にコントラストが低いですが、これは元画像が全体的に明るいためだと思います。これがもうちょっと暗い画像だと逆転します。

 またもう一つのケース。やはりマゼンタマスクを作ります。

オリジナル

こちらのオリジナルは上の画像より平均値はやや暗く、コントラストがはっきりしています。

次は従来バージョン。色の閾値はデフォルトの 25 です。

従来バージョン 色の閾値: 25

次はリニアワークフローバージョン。閾値は上と濃度を合わせるために、40に上げています。

リニア処理バージョン 色の閾値: 40

 この両者を比較すると、より従来版とリニア処理の違いが明確になりますが、ハイライト部に相当する後ろの山は、従来バージョンの方がコントラストが高く、リニア処理はコントラストが低いのに対し、ミッドゾーン (およびそれ以下) に相当する河原の石などは、従来バージョンの方がコントラストが低く、リニア処理バージョンの方がコントラストが高くなっています。

 また、空の部分にあるほこりなども、リニア処理の方が目立ちます。

 おおむね、人間の視覚の敏感な部分でコントラストが高くなるのがリニア処理の特徴です。

 どちらが編集で使いやすいかは、一概には言い切れないように思います。ただできるマスクは明らかに異なりますので、どこを中心に編集したいかにより、ケースバイケースで選んでいただければと...

 

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 なお、本連載記事で紹介した写真補正技法やソフトウェア (Plug-in) は個人的用途および非営利目的であれば自由に使っていただいて構いませんが、本技法を使って何らかの成果 (編集した写真等) を公表する場合は、本記事で紹介した技法を使った旨クレジットをつけて公表していただくことをお願いします。

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