省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

DP Review Nikon Zf 評

 Nikon Z6 MkIII が発表されたところで、いささか遅ればせの感もありますが... ただ、Z6 III への関心が、やはり Zf の評判を下敷きにしているようにも思いますので。というわけで、ちょっと前になりますが DP Rreview の Nikon Zf 評を紹介します。

www.dpreview.com-----------

・概要

 センサーは Z6II と同じ裏面照射型センサー。それに Z9 に搭載したものと同様の 3D トラッキングと9種類の対象認識を搭載したAF を採用。また Z9 で導入した高圧縮 Raw を採用。またコンテキスト対応のノイズ低減システムを採用し、ISO の最高値を204,800 まで上げる。また連写モードは Raw ファイルで秒速11枚、Jpeg モードで 14 ~ 15枚。手振れ防止は本体のみで 8 段。

・ファインダー

 3.68M ドットの電子ファインダーで同クラスでは普通。但し倍率は 0.8 倍でかなり見やすくなっている。

・背面モニタ

 2.1Mドットの液晶で、バリアングル式。Z8のようなチルト式のほうが良かった。

・バッテリー

 これも Nikon 中級機標準の EN-EL15c で 1回の充電で 360 ~ 380枚撮影可。

 

・つくりは非常に良く、デザイン面では、Nikon の Df がこうでであってほしかったとユーザが思ってきた理想のデザインを実現している。

・イメージクオリティは、一般的な24MP 裏面照射型CMOSが使われ、それから期待されるとおりに高い。基本ISO ではノイズはほとんど見られない。色づくりは標準的な Nikon カメラと同様。ノイズ低減は良く、Z6II と同等。

・カメラのハンドリングという点では多少難点がある。グリップがない古典的スタイルなので、意識的に左手でレンズを支える必要がある。

・操作性面では、同じクラスのカメラに比べてカスタマイズの余地が少なく Z6 II よりも余地が少なくなっている。またダイアル操作を取り入れているが、Nikon のエンジニアは他のダイアルのあるカメラを模倣しただけであり、十分その操作性を考えて取り入れているとは言えない。例えば ISO ダイアルを使うと Auto ISO 設定に戻すのが面倒になり却って不便になっている。

・AF は3Dトラッキングモードが導入され、Z6II や Z5 に比較して大幅に改善されている。特に対象認識による AF のパフォーマンスがよい。これはビデオモードでも有効で、Z8, Z9 のようなプロレベルまで行かないにせよ、ライバル機に十分に伍するだけの性能になっている。

・クラシックな外観にもかかわらず、ビデオカメラとしても非常に有能で、出てくる画像は非常に安定しており、また出力フォーマットにもフレキシビリティが高い。ローリングシャッター現象はリーズナブルな範囲にとどまるものの、優秀とは言えない。

Nikon Zf は操作性に癖があるが、熱心なフォトグラファーはそれらをうまく回避して失望するような写真を撮るようなことはないだろう

・Zf は、軽量なレンズでは操作性が良いが、レンズが重くなればなるほど操作性に難が出る。それにもかかわらず Nikon には軽量なレンズのラインナップが少ない。また Zf の操作性は絞りリングのあるレンズと親和性が高いにもかかわらず、Z レンズには絞りリングが省略されており操作性の一貫性がない。さらに良くないことに、Nikonサードパーティに対しこのギャップを埋めるようなレンズの発売を妨害していると言われている。

 これを考えると、イメージクオリティでは Zf は 富士の X-T シリーズをしのぐものの、軽量なレンズのラインナップ、操作の一貫性という点で富士の X-T シリーズに負ける。特に富士の X-Tシリーズに Sigma の iシリーズレンズの組み合わせには負けるかもしれない。

・Zf のスタイルには非常に共鳴し、このカメラを大好きになると思っていたが、数か月使ってみた結果、心ではゴールド賞と叫んでも、冷静に考えるとシルバー賞という結果となった。

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 以上を考えると、特にデザイン面で魅力的であり、また AF やビデオ面で Z6 II から大幅に進化していると言えます。また手振れ防止はクラストップクラスです。オリンパスOM-1 II に肉薄しています。

 一方、ダイアルの追加は単に美観的な意味ではなく、電池消費量の多いミラーレスで特に有効なはずなのに*1その操作性がよく考えられておらず、却って不便な側面も出ています。

 さらに、現在の Nikon のレンズ販売戦略とマッチせず、Zf にあう軽量で小型でかつ絞りリングのあるレンズに欠けています。この点、Canon EOS R50 と同じ轍を踏んでいます*2

 いま、Nikon重厚長大高価格路線に走っており、それで一応業績が回復しているようではありますが、個人的にはこの路線は、どうなのかと思います。特に小型に作れるはずのミラーレスでこれでは、ミラーレスのカメラを出す意味がないのではと非常に疑問です。少なくとも、Nikon Zf が生かせるような方向性を打ち出せないと、今後の Nikon に期待は持てないと個人的には思っていますが... Z シリーズに買い替えている顧客も、ミラーレスだから買い替えているのではなく、機能が進化したカメラが Z シリーズしかないから買い替えているのであり、その機能も必ずしもミラーレスで出す必然性はないということが問題かと思います。根本的にミラーレスならではの利点を生かしたカメラが今まで出ていなかったという点が問題だと思います。Zf のリリースを機にそのあたりを見直してほしいと思いますが...

 

 なお、DP Review から主要スタッフが移った PetaPixel ではプレビュー評しか載っていません。

petapixel.com こちらは概ね好評で、AF ジョイスティックの廃止もタッチスクリーンで十分代替可能と評価しています。AF に関しても暗い部分での合焦は Z8/9 を上回るとしています。手振れ補正は、他社とは異なり、画面の中心のみを基準とせずに動作し、特に広角で有効と高く評価しています。

 全般的に Zfc が単に Z50 に古い外観を持たせただけだったのに対し、本機は Z6 II より新しい機構やデザインを組み込んでおり、1983年のデザインに2023年の内容を盛り込んだカメラと評されています。

 かなり絶賛に近い内容です。

 なお、Z6 MkIII は日本円価格にして 40万円以上になっています。アメリカでの希望小売価格は $2500 程度で、Z6 Mk II とあまり変わらないようですが、日本円価格は、日本円の為替の急落で、2倍近くとなってしまいました。しかし、性能面ではZ6 Mk III は、 Zf をちょっとアップしたという感じだと思いますので、Zf のお買い得感は高まっていると思いますが...

*1:これについては、以下の記事をご参照ください。

yasuo-ssi.hatenablog.com

*2:

yasuo-ssi.hatenablog.com