省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

光線被りネガカラーフィルム補正術 (2)

f:id:yasuo_ssi:20210627103216p:plain目次 (予定)

1. 光線被り補正の基本的な仕組み・準備

2. 補正第一段階 (基本補正) (本記事)

3. 補正第二段階 (ポストプロダクション)

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2. 補正第一段階

2-1. ImageJ用光被り補正ツールの実行

 ここでは、筆者が作成したImageJ用光線被り補正ツールを使って、第一段階の補正を行う方法を示します。サンプルに使う写真は以下の写真です。長野県大町市の奥にある七倉ダムの写真です。

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図 2-1. オリジナル画像

 中央付近に光線被りが見られます。また、不均等黄変もみられます。このファイルを補正する前にまず補正範囲の座標を決定します。画像の座標を調べることができる画像ソフトで読み込み、補正範囲の x  座標を決めます。もちろん、ImageJ で読み込んで調べてもOKです。

 

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図 2-2. 補正開始 x 値と 終了 x 値の取得場所

 この画像の場合は補正範囲の開始 x 座標 (x Start) を3300 終了座標 (x End) を4100 とします。補正範囲の座標が決まったら、ImageJを起動し、メニューの[Plugins] から光線被り補正ツールを走らせます。

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図 2-3. ImageJから光線被り補正ツールを起動

 補正ツールが走ると、まず読み込みファイル選択ダイアログが開きますので、補正ファイルを指定します。

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図 2-4. ファイル選択ダイアログ

 次に、パラメータを指定するダイアログが開きます。

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図 2-5. パラメータ指定ダイアログ

[Image bit depth]は通常 Auto のままでOKです。

[Max Mixing Ratio of G Value] は Rチャンネルに Gチャンネルの情報を混入する最大値を0.0 ~ 1.0の範囲で指定します。これはあくまで最大値なので、常にこの比率で混入されるわけではありません。デフォルトは1.0にしていますが、過剰補正になるようなら値を下げてみてください。

[Max Reduce Ratio of R Value] は、Rの値を最大どの程度下げるかを指定します。これもRの値が常にこの割合で下げられるわけではありません。

 

その次は、補正領域の指定です。このサンプルの場合光被りの赤い線が1本だけ入っていますが、複数の線が入る場合があります。その場合複数の領域を最大3カ所まで指定できるようになっています。

[Start Point (x)] は補正領域の開始座標、[End Point (x)] は終了座標を入れます。このサンプルの場合は開始座標が 3300 終了座標が 4100 になります。この両者を 0 のままにしておくと、補正は行いません。

[Number of Y Dividing Zones] は縦に何分割して補正量の計算するかを指定します。補正が粗いようなら数を増やしてみてください。

[Define Sampling Normal Region] は、補正量の計算のもとになる正常なサンプリング領域をオプションで指定します。ここを 0 のままにしておくと、補正領域の直前の、画像全幅の1.5%の領域を自動的にサンプリング領域として採択します。それではまずい場合のみ、ここで指定します。

[Display Working Windows] は、作業中の画像ウィンドウを表示するかどうかを指定します。

[Restrict Correcting Y Zone] は、縦の全領域を補正するのではなく、一部の領域に補正領域を限定する場合のみ、Yes を選択します。通常は No で良いと思います。なお、ここを Yes にして、OKボタンを押すと、さらに次のダイアログが出ます。Noのままですと、次のダイアログは出ません。

 

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図 2-6. 追加ダイアログ

 ここで、追加で 補正を行う y 領域を指定します([Start Point (y)] および [End Point (y)] )。なお y の 0 座標は画像の一番上になります。それ以外は、先ほど指定したままで良ければ、そのまま変更しません。なお、ここで補正する y 領域を制限すると、1カ所しか補正できません。複数個所を補正したい場合は、一旦補正ツールを走らせ補正済みファイルを作成後、再度そのファイルに対して補正ツールを走らせてください。

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図 2-7. 補正ツール実行中

 こうすると、補正ツールが補正を開始します。作業ウィンドウの表示を YES にしていると、作業中のウィンドウが表示されます。16bitで、7700 x 5500 ぐらいのファイルだと、補正が完了するまでに3分ほどかかります。最後に補正結果を表示して終了します。結果に問題があるようなら、さらにパラメータを変えて補正をやり直してください。

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図 2-8. 補正ツール実行後

2-2. GIMPによるRGB合成実行・ファイル作成

 ところで、ばらばらのR, G, Bファイルからチャンネル合成するためにImageJ の RGBStackConverter というProcedure を使っています。これだと8bitのRGBファイルを合成することはできるのですが、16bitのファイルは合成できません。最後に表示されるファイルも、元ファイルが16bitであったとしても、8bitです。他の方法があるのかも知りませんが、まだ調べ切れていません。そこで、16bitのRGBファイルを得ため、GIMPで合成します。得るファイルが8bitで良ければ以下の過程は不要です。

 ImageJ用補正ツールを実行すると、オリジナルファイルのある場所に次の4つのファイルが作成されます。

[ファイル名]_R2.tif
 補正済み R チャンネルファイル
[ファイル名]_G.tif
 G チャンネルファイル
[ファイル名]_B.tif
 B チャンネルファイル

[ファイル名]_Merge_8bit.tif
 8bit RGB合成済みファイル

 このうち、上の3つのファイルをGIMPで読み込みRGB合成します。

 

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図 2-8. RGB合成ツールの起動

 GIMPを起動すると、筆者が作成したプラグインGIMPプラグインフォルダにインストールしてあれば、GIMPメニューの[My Plugins]→[Light Fogging Correction]→[Load Files...]でファイル合成プラグインが起動します(日本語表示プラグインをインストールしてあると、ここが日本語表示になっているはずです)。するとファイル名指定ダイアログが表示されますので、そこで必ず補正元のオリジナルファイル名を指定してください。

 

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図 2-9. ファイルRGB合成中

 すると、自動的に先のR, G, Bファイルを読み込み、RGB合成まで一挙に実行します。

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図 2-10. RGB合成の完成

 上の図のように、合成されたファイルが現れたら完成です。これと同時に[ファイル名]_composed.tif という名前でTIFFファイルも出力します。なお、表示されている xcf ファイルを保存するときは、必ず上書き保存を掛けてファイルを保存してください。保存を掛けずにGIMPを終了すると、ファイルが保存されないまま消えてしまいます。但しTIFFファイルとしては保存されていますので必要ないかもしれません。

 なお、ご覧になって分かるように、オリジナルよりは赤変がかなり改善されていますが、まだうっすらと赤変が残っています。これは次の第2ステップで補正を行います。

 なお、本記事で紹介した写真補正技法やソフトウェア (Plug-in) は、個人的および非営利用途であれば、自由に使っていただいて構いませんが、本技法を使って何らかの成果 (編集した写真等) を公表する場合は、本記事で紹介した技法を使った旨クレジットをつけて公表していただくことをお願いします。

 また、本ソフトウェアは現状のまま提供されるものし、作者はこれを使ったことによるいかなる損害補償等にも応じられないことを了解の上使っていただくものとします。
 但し、もしソフトウェアのバグがありましたら、ご連絡いただければなるべく改善するよう努めたいと思います。