本家RawTherapeeとARTの違う点として、画素分布グラフが拡充されている点があります。実はdarktableがRawTherapeeより画素分布グラフが増えているので、そこから取り入れているのではないかと思います。
まず、おなじみヒストグラムから...
これは基本的にはRawTherapeeと変わりません。なおヒストグラムには3つのモードがあります。
こちらはデフォルト(リニア-リニアモード)のヒストグラムです。他の画像編集ソフトで採用されているものと同じです。ヒストグラムの左の一番下に、スコープボタンの表示/非表示というのがあって、これをクリックするとボタンの列が2列になります。
この右列の6番目に、ヒストグラムの尺度を線形(リニア) 対数-線形 対数-対数でトグルします、というボタンがあります。するとヒストグラムの尺度が変わります。
一回クリックすると対数-リニアモードになります。これはx軸(明るさ)のみ対数になるモードです。これだとシャドウ域が間隔が広くないr、ハイライト域に行くほど間隔が狭くなります。
もう一度クリックすると対数モードになりy軸(分布頻度)も対数になります。分布頻度が多くなるほど間隔が詰まります。これは基本的にRawTherapee本家と同じです。
次はRawヒストグラムです。
Rawファイルは、光のエネルギー量に比例して記録されます。通常撮影シーンの光量はEV値という対数値で測られますが、明るい部分と暗い部分の差が非常に大きくなっています。従ってリニアモードだと低いほうにグラフが貼り付いてしまいます。このような場合こそ対数モードが有利です。
これだとだいぶ分かりやすくなります。ここまではRawTherapee本家と同じです。
次からは本家にないグラフです。まず波形ヒストグラムです。
当然RawPediaに説明は出ていません。そこでdarktableの説明書を参考にして説明します。上のヒストグラムのx軸は、画像のx軸に対応します。y軸は明るさで、r, g, bの画素がそれぞれどの値に分布しているのかを示しています。またドットの明るさは、その値を取るピクセル数が多寡 (明るければ多く、暗ければ少ない) を示します。
なお、画像の y 軸に則したグラフを表示したい場合は、画像自体を 90 度回転させなくてはなりません。
ヒストグラムに対応するオリジナル画像*1は上の写真ですが、この写真を見ると左側が黄色っぽく、右側が赤っぽくなっています。全般的に色被りが見られます。従って波形ヒストグラムの左側もb値とr値が低いものが多く分布し、右に行くほど、r, b値が上がっていることが分かります。
rgbパレードは、波形ヒストグラムが同じ空間にr, g, bとも表示されていたのをばらばらに表示させたものです。パレードとはrgbの表示がパレード(行進)のように示されるからということのようです。x軸、y軸の意味は変わりませんが、ばらしたために1チャンネル当たりのx軸の幅は1/3になっています。rの値が高めで、bの値が低めなので、かなり赤に色被りした画像であることが分かります。
次は色相-saturationベクトルスコープです。円周は、色相が0~360°で表示され、この円の半径の線は、彩度(saturation)の値を示します。外側に行くほど彩度が高くなります。そして中心に〇のある十字の線が見えてますが、これはオリジナルの画像の上にカーソルを置いたときにその画素がどこに位置するのかを示しています。この画像は赤~黄色の中程度の彩度のピクセルが多いことが分かります。3つの線が入っていますが、これは光の三原色とその補色を示す、B-Y, G-Mg, R-Cyの線のようです。
最後は、は色相-chromaベクトルスコープです。これはdarktableにもありません。円周は、色相が0~360°で表示され、この円の半径の線は、彩度(chroma)の値を示します。色相は上と若干ずれています。2つの線がありますが、おそらく、へリングの心理4原色(赤、青、黄、緑)を示す軸だと思います。chromaは、人間の知覚に近い、明度要素を考慮した彩度ですので、心理4原色の軸を示しているのではないかと思われます。
なお、ベクトルスコープでは、通常ホワイトバランスが取れている画像は、ピクセル分布の中心が中央に来るのが普通です。しかしこの画像の場合、赤~黄色方向にずれているので、ホワイトバランスが取れておらず、赤~黄色方法に色被りしていることが分かります。色を調整するときは、中心がベクトルスコープの中心に来るように調整します。ベクトルスコープは、色調補正を行う時にバランスがとれているかどうかを確認しながら編集するのに便利なツールです。
この波形ヒストグラム、RGBパレード、ベクトルスコープなどのツールはどうやらビデオ編集の世界から入ってきたようです。
以下に別の事例も提示します。以前お示しした、不均等黄変した写真のケースです。
これのピクセル分布のグラフをお示しします。
左上から右に掛けて、ヒストグラム、波形ヒストグラム、RGBパレード、ベクトルスコープ(色相-Saturation)、ベクトルスコープ(色相-chroma)です。ベクトルスコープを見ると、分布の中心は真ん中に来ていますがB-Yの軸に沿って細長く分布しています。これが黄変、あるいは周辺のBチャンネル情報抜けを示しているようです。RGBパレードを見ても、真ん中からやや上のあたり、gとrの濃度が高いところがbでは分布が非常に薄くなっています。しかしすでに述べたようにベクトルスコープの中心は真ん中に来ているので、ホワイトバランス調整ツール等では、これ以上調整できる画像ではない、ということはわかります。
これを当サイトで紹介している、Bチャンネル再建法+追加補正を掛けて補正した画像も見てみます。
RGBパレードを見ると、Bの分布が、R, G の分布に近づいて、だいぶ改善されたのが分かります。通常の画像では、R, G, Bの分布がある程度似るのが普通です(但し全く同一にはならない)。Bチャンネル再建法では、Gチャンネルの情報をBチャンネルにミックスして補正しているわけですから、当然BチャンネルはG, Rチャンネルに似てきます。またベクトルスコープを見るとB-Y軸の彩度の広がりが狭まっています。チャンネルミキシングを行うことは、当然、彩度を狭めることにつながるので、これも当然の結果と言えます。ただ、正常な画像なら、この広がりが均等になるとは必ずしも言えないようです。
もう一枚、こちらはOlympus E-P3を使ってデジタルで撮った写真です。
こちらの画像のヒストグラム等は下記のようになります。
ベクトルスコープを見ると、細長く分布していますが、B-Yの軸とは方向がずれています。
*1:以下のサイトから使わせていただきました。