先日(2022.7.18)、ARTが1.15にバージョンアップされました。これに伴い、icc プロファイルクリエーターが移動され、ART-cli.exeから実行するようになりました。端的に言うと、GUIでiccプロファイルを作ることができなくなり、コマンドラインからiccプロファイルを作るように変更されました。
以下、この記事では変更になったiccプロファイルの作り方について説明します。まず、コマンド・プロンプト、もしくはターミナル・コンソールを開き、ARTがインストールされているディレクトリに移動します。そこから ART-cli と入力して iccプロファイルを出力することになりますが、その際次のようなオプションを入れて実行します。
ART-cli --make-icc <icc作成用オプション>
icc作成用オプションとして、次のものが用意されています。
-w x y : ホワイトポイント座標
-i VAL : 光源. 使えるオプション値 (大文字小文字区別なし):
- D50
- D60
- D65
-t VAL : 使えるTRC(トーン再現カーブ). 使えるオプション値 (大小文字区別なし):
- linear (デフォルト)
- sRGB
- HLG
- PQ
-c Rx Ry Gx Gy Bx By : R, G, B原色の xy 座標
-p VAL : 原色指定のプリセット. 使えるオプション値 (大小文字区別なし):
- sRGB
- AdobeRGB
- ProPhoto
- Rec2020
- ACESP0
- ACESP1
-g VAL : TRC ガンマ値 (上書き指定は -t)
-s VAL : TRC 傾き (上書き指定は -t)
-d VAL : プロファイルの説明 (必須)
-v2 : icc バージョン2 プロファイルを作る (指定しなければバージョン4)
-o NAME : 出力するファイル名 (必須)
上で必須とある以外のオプションは任意です。なお、上の、ホワイトポイントや原色の座標というのは、以下のページにある色空間図上のどこにホワイトポイントやRGBの原色点を置くかという座標です。この座標値は、使う色空間によって異なります。
通常、原色指定のプリセットで、色空間を指定するとこれらの座標は自動的に定まりますが、敢えて指定値から外したいという特殊な場合は、-w や -c オプションで指定します。ただ、敢えて外すという場合でも、各色空間の指定値から、少し外すという場合が大部分かと思います。しかしiccプロファイルクリエーターのCUIコマンド化によって困るのは、元の各色空間でのこれらのデフォルトの座標値が何であるかがわからなくなることです。
そこでART 1.13から各色空間毎のデフォルト値のスクリーンキャプチャを以下に示します。
また、TRC ガンマ値, 傾きというのは、通常知覚的TRCは以下のように直線部分と曲線部分で構成されています。傾きとは以下の直線部分の傾き値であり、ガンマ値は、曲線部分の曲がり具合を決定する値です。いわゆるガンマ補正値です。なお、最もよく使われるsRGB式TRCの場合傾きが、12.9231、ガンマが2.4、またl*a*bの場合は、傾きが、9.3296、ガンマが3となっています。なお直線部分のない TRC では傾きを0とし、ガンマ値のみ指定することになります。
HLG, PQ に関しては、以下のサイトをご覧ください。この中で、「伝達関数」とされているものが TRC に該当します。
おそらく、iccプロファイルクリエーターは、エキスパートユーザしか使わないだろうと考えて、コマンドラインに移したのでしょうが、GUIにあっても邪魔になることはなく、わざわざ使いづらくすることはなかったのに、とは思います。おそらくiccプロファイルクリエータを使う多くの需要は、リニアなiccプロファイルを作ることかと思いますが...