現在メインのデジタル一眼カメラとして、Nikon D5500を使っています。Nikon D5500での撮影は、空の色などが若干薄めに見える傾向にありますが、色に関してはかなり肉眼で見る結果に近いように思います*1
しかし、サードパーティー製のRaw現像ソフトで読み込むと、とくに空の色などは結構変わってしまいます。だったら純正ソフトを使えばいいではないか、と言われるかもしれませんが、RawTherapeeは純正ソフトより優秀な点も多いので、現像補正の出発点として、やはり純正現像ソフトで処理した色に近づけたいところです。
という訳でなるべくRawTherapeeで純正現像ソフトに近づけてみた記録です。まずCapture NX-Dで現像した結果です。
空の色は、かなり実際に見た色に近いように思われます。草の色はちょっと地味目でもうちょっと彩度があっても良いかもしれません。ヒストグラムは下記です。
ところで、この現像前のRawファイルをRawTherapeeに読み込んでトーンカーブの自動調整を掛けると、以下のようになります。
枯草等植物が写っている部分はやや明るいような印象ですが、まずまずです。ただ青空のニュアンスがかなり異なります。青みが強く、R成分が少ないです。またヒストグラムの形も純正処理とは全く異なり、とくにRの形が全く違っています。空のRの低さもここからきていると思います。トーンカーブの自動調整はRawファイルに含まれるプレビュー画像を基にエミュレートしているはずですが、なぜこんなにヒストグラムの形が違うものか...
これを補正する方法ですが、RawTherapeeの場合、サードパーティー製のDCPプロファイルが読み込めます。カラータブの[カラー・マネジメント]の下に入力プロファイルを選択する項目があります。この[カスタム]で、サードパーティー製のDCPプロファイルを指定することで、読み込むことができます。
このサードパーティー製プロファイルとしてはadobeのプロファイルを使うのが一番簡便でしょう。adobeが無償で配布しているDNGコンバータを導入すると、プロファイルを入手することができます。
このプロファイルは、Windowsの場合以下のディレクトリにあります。
C:\ProgramData\Adobe\CameraRaw\CameraProfiles
さらにこの下にAdobe Standard と Camara という二つのディレクトリがあります。このうち、Adobe Standard はAdobeが作成したカメラ機種ごとの標準的なプロファイルで、Lightroomなどでデフォルトで使われる、いわばAdobeの色づくりが反映したプロファイルです。Camera以下は、やはりAdobeが作成していると思いますが、カメラ会社固有の色づくりをエミュレートして作成されたプロファイルです。純正処理に似せたいならこちらのプロファイルを使います。そこでここからD5500の標準プロファイルを採用します。
なお、Adobe Standardの下にあるD5500のプロファイルを使うとLightroomでD5500のRawファイルを読み込んだデフォルトと同じになるはず (つまりadobeの色づくりになる) です。
なお、一部のNikonの機種ではRawTherapeeに付属するDCPプロファイルが使えます。場所はWindowsの標準的インストールの場合下記です。
C:\Program Files\RawTherapee\5.8\dcpprofiles
さらにDCPトーンカーブ使用、ルックテーブル、基本露出オフセットにチェックを入れます。すると空に赤みが入り、ヒストグラムも純正処理に似てきます。トーンカーブの自動調整は使わない方が良いです。
ヒストグラムの形は、さっきよりはだいぶ似てきました。純正処理とのファイルと比較した図を示します。
ただ、あくまでAdobeがエミュレートしたプロファイルであるためか、完全に一致することはありません。RawTherapeeでの出力結果を示します。
再度 純正のNX-D処理結果も掲示します。微妙に異なりはしますが、かなり似てはいます。精細感はCapture NX-Dの方が上のような気もしますが、植物部分の方はAdobeのプロファイルを使ったRawTherapeeによる現像結果のほうが色あいが微妙にベターかもしれません。
なお、おまけとして Adobe StandardのD5500用プロファイルを適用した結果は下記のようになります。
これはLightroomで読み込んだ結果に酷似しているはずです(使っていないので分かりません)。ヒストグラムもまた独自の形をしています。GとBのピークが、Capture NX-Dやカメラ固有特性をエミュレートしたDCPプロファイルに比べて近接しているので、やや黄色っぽいです。
なお、RawTherapeeのプレビュー結果と、ファイル出力結果で色が異なる、という場合、カラーマネジメントがしっかり行われているかを確認してください。通常、モニタ出力はsRGB準拠になっているので、ファイルもsRGBで作成している場合は問題になりませんが、ファイル出力でsRGBを使ったり、AdobeRGB1998、さらにはREC2020を混用している場合、プレビューとファイル出力で違いが出たりする場合があります。おおむね広い色空間で現像・作成された写真を、カラーマネジメントのないビューアーで見た場合(つまりRGB値を変化させずにsRGB色空間で見た場合)、彩度が下がります。また、sRGBで作成した画像をRGB値を変化させずに広い色空間で見た場合は彩度が上がります*2。ただ後者は通常のWindows環境では、意図的に行わない限りあまり体験することはないでしょう(但し、Adobe RGB対応のモニタを使っている場合はしばしば体験するはずです)。
実は、上のCapture NX-Dの現像結果は、AdobeRGBで現像していますが、カラーマネジメントされていないIrfanViewで見ると以下のようになります。
空の色が若干紫に寄り、植物の部分も彩度が下がっています。
上図は、分かりやすいように、同じAdobeRGBで出力したファイルですが、左半分に、カラーマネジメントのあるビュアーで、右半分に無いビュアーで見た結果を合成しました(合成結果はsRGBで調整しています)。
一般的である、モニタ出力がsRGB準拠の場合、sRGB以外の色空間でファイル出力を行うと、Windows環境の場合、異なって見えてしまう場合があります。これはカラーマネジメントに対応していないファイルビューアーで見ているからです。あるいはカラーマネジメントに対応しているファイルビュアーでも、デフォルトでカラーマネジメントが有効になっていない場合が多いので、オプション設定で有効にする必要があります。
もちろん、Adobe RGB準拠のモニタを使っていても同様の問題は出てきますが、たぶんAdobe RGB準拠のモニタを使う方は既にカラーマネジメントについて概ね理解されているものと思います。
また、テレビの場合、sRGBに類似したRec. 709 に準拠しているはずですが、最近HDTVを主対象としたより広い色空間であるRec. 2020という規格が制定され、それに準拠したTVも出始めているかもしれません。さらに見た目を重視して、TVメーカー独自の色づくりがされている可能性もあります。
iMacの場合は基本的にOS側でカラーマネジメントを行っているので、ごく一部の例外を除いて通常このような問題は起こりません。
とりあえずこの点で引っかかる方は、カラーマネジメントに対応した以下のファイルビューアーを導入することをお勧めします。ファイルにどのiccプロファイルが埋め込まれているのか、あるいはないのかがすぐ分かります。
blog.livedoor.jp また、単純に色を確認するだけならWindowsフォトビュアー(フォトではダメ)でも構いません。これらで見て、ファイル出力とRawTherapeeのプレビュー画面で色の差がなければ問題ないはずです。
またWindowsでの画像ビューアのカラーマネジメント対応状況について上記ビューアーの作者の方がまとめておられます。
なお、XnViewは、XnView MPはデフォルトでカラーマネジメント対応、XnView Classic はメニューの[ツール]→[オプション]→[全般]→[icc]で、ICC埋め込みプロファイルにチェックをつければカラーマネジメントに対応します。
しかし、Windows10でカラーマネジメント的に優秀だったWindowsフォトビュワーがデフォルトで使えなくなり、カラーマネジメント的に退化している「フォト」がデフォルトになってしまったのは困ったものです。
Windows10でWindowsフォトビュワーが再び使えるようにするには以下のサイトをご覧ください。