[グリーン部分に関して、GとBの値を離す追加補正を行った事例]
次の事例は、Gチャンネル値とBチャンネル値を離す補正を行った事例です。この夏のバージョンアップから拡張疑似フラットフィールド補正アルゴリズム (ハイブリッドアルゴリズムの中でもアルゴリズムの一つとして使われています) を採用しています。それまでは、Bチャンネルの黄変のGチャンネルの情報で、いわば薄めることで黄変を補正していたのですが、今回の変更で、黄変量を推定し、それを実際に削減するように変わりました。
しかし、黄変量を推定するのに、Gチャンネルを参照して推定しています。従ってやはり間接的ながら、全体としてG値とB値が接近するという状態は変わりません。もちろん前よりは接近値はおおむね弱まっているはずではありますが。それで、現在のバージョンでは緑色の部分で補正を弱めるというオプションをつけています。
しかし、それでも植物が写った領域が広い写真などで、G値とB値を引き離す追加補正が必要なケースは存在します。今回はその事例です。
まず、オリジナルです。フィルムは、例によって黄変しやすいフジカラーHR400です。
真ん中あたりにうっすらと黄変が確認されるのと、下端を中心にB値の情報抜けが発生しています。
そこで、下記のバラメータで ImageJ用の黄変補正プラグインを走らせました。
いろいろ試した結果、この画像は全体に明るく、暗部補正の閾値が25や50では全くダメなので、100まで引き上げました。また緑部分の補正を弱めるオプションも使っています。できたファイルをGIMPで読み込みます。
なお、閾値を100まで引き上げた結果、暗部補正レイヤーは下記のようになりました。
次は周辺部補正レイヤーのマスクの編集です。
色々、Bチャンネルを合成したプレビュー画面を見たり、一旦RGB合成を掛けて結果を検討したりした結果、上のような形にマスクを編集しました。さらに、周辺部補正レイヤーを、他の部分とのつながりをよくするため、不透明度を83%弱まで引き下げました。
遠景、近景レイヤーは編集を行わず、暗部補正レイヤーからオリジナルB画像レイヤーまでの5枚を合わせて、Bチャンネルの再建を行います。
以下再建Bチャンネルのプレビュー画像キャプチャです。
そのまま引き続きRGB合成された画像が下記になります。
黄変はきれいに消えましたが、G値、B値の接近のせいか平板です。とくにトタンの壁面と、明るい部分の草の緑がほとんど同じですが、記憶色では、もっと草の緑はもっと黄緑がかっていたように思います。そこで、植物の緑部分のB値を引き下げるための追加補正を行います。相対RGB色マスク画像作成ツールを使い、グリーンマスクを下記のパラメータで作成しました。家のトタン部分の色は現状で良いように思われる一方、植物の緑は黄色味が足りないように思われますので、その差がつくようにマスクを作ります。
一度グリーンマスクを作りましたが、G-B値の接近に起因し、空の青なども含まれてしまいます。そこで空の青を除外するグリーンマスクを作りました。
さらに、下記のようにグリーンマスクを編集しました。
このレイヤーに対し、次のようにトーンカーブをいじって、B値を下げました。
しかし、まだ草の明るい部分の補正が不足しているようです。草の明るさには、B値を下げるだけでなく、R値の上昇が必要です。このあたりのノウハウについては、こちらの記事をご覧ください。いろいろ試行錯誤の末、以下のようなシアン透過マスクを作成しました。
このマスクを、一旦可視イメージをレイヤー化したレイヤーに貼り付け、さらにこれも以下のように編集します。
このレイヤーに対し、以下のようにR値を上昇させるトーンカーブ編集を行います。
これで、草の緑に対する編集は終わったのですが、このあとトーンを調整したら道路が黄色っぽいところとそうでないところが目立ってしまいました。そこで再びGIMPでの調整にもどり、道路の色を均質化するマスクを作ります。まずイエロー透過マスクを作成しました。
これをやはり今までのプレビューを可視化したレイヤーを作りそれに掛けます。そして道路以外の部分を塗りつぶします。
このマスクを掛けたレイヤーに対し、以下のように B 値を上昇させる編集を行います。
ここで、GIMPによる追加編集を終了し、TIFFに出力します。
このファイルを例によって ART に読み込ませ、トーン、コントラスト、ホワイトバランス補正等を行います。その最終結果が以下です。
ちょっと手間がかかりましたが、まずまずの結果となりました。比較のために再度オリジナルを掲載します。
今回結構手間がかかったのは、黄変の除去 (B値とG値の接近) により (あるいは黄変自体によって)、家の壁面の緑と草の緑のニュアンスの差が消え去ったという点に難しさがあります。今回一応緑部分の補正を弱めるオプションをつけてツールを走らせてはいますが、完ぺきではありません。そして、今回の補正では、再度その消え去ってしまったニュアンスの違いを、よく言えば、どう再創造するか、要はどうでっち上げるか、というところで、いろいろマスクを工夫したり、マスクを編集したりというところで手間がかかったと言えます。
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なお、参考までにBチャンネル画像の変遷を以下に示します。
オリジナルは結構テクスチャのざらつきが目立ちます。特に家の壁面はかなり目立っています。
Bチャンネル再建法適用後は、ざらつきがかなり改善されているのが分かります。これは、Gチャンネル情報をミキシングしている効果が出ている証拠です。拡張疑似フラットフィールド補正アルゴリズムだけでは、このようなざらつきの補正は不可能です。但し、屋根軒下直下の影部分は、元々のテクスチャの荒れがひどくて、ざらつきが抑えきれていません。
追加補正で草周りを中心にローカルコントラストが上がっています。
ART でのトーンカーブ補正で全体的なコントラストが上がり、メリハリがついています。
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