省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

黄変ネガ写真 Bチャンネル再建法 (ハイブリッドアルゴリズム) 補正過程事例 (4)

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[スキャナによる過剰補正で青紫に寄った画像を修正する]

 今回は、以前にもサンプルとして取り上げたことのある下記の画像です。おそらくは黄変に対するスキャナの過剰補正のため、もともと、かなり青紫がかっています。このファイル、なかなか自然な感じで補正ができず不満が残っていました。どうしても人工的になってしまいます。

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オリジナル

 この画像、ホワイトバランスの自動補正に掛けると以下のように非常に黄色くなります。

ホワイトバランスの自動補正を掛けた状態

 つまり、この画像で青紫の色被りがあるのは、逆にこの黄色を補正しようとして、スキャナドライバがかなり青紫方向に補正してしまった結果と考えられます。

 

 以前の補正結果です。上のオリジナルの状態からからここまで良くもってこられたとは思いますが、明るいけれども、人工的で色塗り感が残ります。

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補正2 さらに、汎用色チャンネルマスク作成ツールによる
マスクをかけGIMP上で色補正
+ RawTherapeeによる最終調整 (2021.5 写真入替)

 新しいハイブリッドアルゴリズムのデフォルト設定で、Bチャンネル再建法の素材ファイルを作成し、GIMPで読み込みます。

 まず、暗部補正レイヤーを編集します。車両の車体部分は適用しないよう切り抜きました。

暗部補正レイヤー

 次は周辺補正レイヤーのマスクです。これもどうしようかと思いましたが、全般的に青紫がかっているので、広い範囲で B 値を落としたほうが良いと思い、その意味で、広く周辺補正レイヤーを適用させることにしました。但し、車体の青みは落としたくないので、車体部分だけカバーするようにマスクを編集します。

周辺部補正レイヤーマスク

 このマスクにより周辺部補正レイヤーの適用範囲は以下のようになります。さらに不透明度も40%程度に落とします。

周辺部補正レイヤー (不透明度を40%まで引下げ)

 遠景補正レイヤーは、車体を塗りつぶし、空・遠景のみ適用するようにマスクを編集します。

遠景補正レイヤー マスク編集

 更に、空が暗くなりすぎるので、不透明度を64%程度まで落とします。

遠景補正レイヤー (不透明度約64%まで引下げ)

 他のレイヤーは編集を行いません。以上のレイヤーを合わせると以下のようにBチャンネルが再建されます。

再建 B チャンネル画像

 このBチャンネルを使ってRGB合成を行うと下の画像になります。

Bチャンネル再建法適用結果

 ちなみに以前のアルゴリズムで行った編集では下記のようになりました。下の方がやや黄色味が残っているか、という感じですが、大きな差ではないように見えます。

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補正1 (Bチャンネル再建法のみ適用) 従来アルゴリズム

 ここから相対RGB色マスク画像作成ツールを使って追加補正に入ります。いろいろ考えて今回の画像はマゼンタマスクとグリーンマスクを使って補正することにしました。

マゼンタマスク
色の閾値 10 透過度 1.5倍 明度範囲 全域

 マゼンタマスクは全明度範囲に適用することにして、プレビューを確認しながら上のパラメータで作成しました。これを使い紫味を落とすことを主眼とします。

グリーンマスク
色の閾値 35 透過度 2.0倍 明度範囲 0-128

 グリーンマスクは、植物の緑において、B値を落として青緑を緑に寄せることを主目的とします。B値を落とすので空は含めたくありません。ですので明度範囲を 0-128 としました。

追加補正 レイヤーの並び

 Bチャンネル再建法を掛けた画像を2つのレイヤーに複写し、一方にマゼンタマスク、一方にグリーンマスクを掛けます。

マゼンタ補正レイヤーのトーンカーブ調整

 マゼンタマスクを掛けたレイヤーは、G値をトーンカーブで引き上げます。画像を見て、B 値も引き下げたほうが良さそうなので、引下げ、若干 R値を引き上げました。

グリーン補正レイヤーのトーンカーブ調整

 グリーン補正レイヤーは、B値を大幅に引き下げます。あと若干 G 値を引き上げました。

グリーン補正レイヤーのトーンカーブ調整 (2)

 さらに見直して、R値も多少引き上げたほうが良さそうだと判断し、引き上げました。

GIMPでの追加補正終了

 以上で、GIMP上での追加補正は終了し、TIFFファイルに出力します。出力したファイルを ART に読み込んでトーンカーブ等でコントラスト等を補正します。

ART での補正

 ただ、やはり緑が依然青に寄っているようです。そこで結局 ART のカラー/トーン補正で大きく緑のニュアンスを変えることにしました。

ART で植物の緑を大幅に調整

 マスクはこちらです。

緑補正のマスク

 

最終出力

 地味目の画像になりましたが、今まで色々修正した中では、相対的には、あまり色の強調がなく、ナチュラルに近いのではないかと思います。6月の今にも雨が降りだしそうな天候の再現としてはまずまずなのではないかと思います。

 今回はBチャンネル補正法のアルゴリズム変更の効果よりは、追加補正に使った、相対RGB色マスク画像作成ツールのプレビュー画面を充実した効果 & ARTのローカル補正の方が大きかったように思います。

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