省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

電池食いのカメラばかりで良いのか...?

 カメラの売れ筋ランキングというと、kakaku.com と BCNのランキング、ほかにヨドバシ、bigcamera、amazonなども出していますが、kakaku.com の方がどちらかというとマニアックなのに対し、BCNの方が全体的な実売に近いような気がします。

 

 BCNの週間ランキングの中でもやはりミラーレス一眼が人気ですが、その中で キヤノン EOS Kiss X10 ダブルズームキットがずっと 1 ~ 5位の間をキープしているのが目につきます。上位10位以内でこれだけは一眼レフカメラです。そして、1 ~ 10位もほぼキャノンとソニーで独占され、OMの OLYMPUS PEN E-PL10 EZ ダブルズームキットがその中で5位前後をキープという図式になっています。カメラの3大メーカーは キャノン、ソニー、OM となり、Nikonはほぼ脱落です。たまに10位に Z50のダブルズームキットが顔を見せるかどうかという状態です。ひょっとすると富士の後塵を拝しているかもしれません。Nikonユーザとしては、今のNikonの状況は寂しいというほかありません。とは言え、今のNikonに買いたいカメラはないな、という気もします。

 今や数少ないレフカメラとなったEOS Kiss X10がコンスタントに上位をキープしているのは、率直に言ってやはり電池食いのミラーレスだけで良いと思っていない人が一定数いて、その人たちの支持によってEOS Kiss X10の売り上げをキープしているのでしょう。

 ミラーレスの利点も認めますが、個人的には、電池を食わないというレフカメラの長所がもっと評価されるべきではないかと思います。特に海外旅行や登山など電源確保に苦労しそうな場所に持ち出すときには、この利点は非常に大きいと思いますが、みんなそう思わないのかなぁ...?

 ミラーレスだと、カメラを軽くできるメリットがあります。とくにフルサイズではそのメリットは大きいと思います。かつてフィルムカメラ時代 Nikon のF3が715gの重さだったことを考えると、1kg近い (あるいはそれを超える) カメラは重過ぎると思います。しかも、センサーに写るようにファインダーに映るというメリットもあります。とはいえすべてのカメラがミラーレスになったほうが良いとは思いません。軽量のAPS-Cで、電池を食わないレフカメラという選択肢は必要だと思います。フルサイズはミラーレスでないと軽量化できませんが、APS-Cならミラーレスでなくても軽量化可能です。

 私は長年 Nikon ユーザで、Nikonのファンでありますが、残念ながら、NikonはD5600をディスコンにしたことで、D5600が押さえていた需要を逃してしまったと思います。Nikonの間違いは、ミラーレスだから売れる、Z50を出せばD5600の需要を引き継げるという計算間違いにある、と言えるでしょう。Nikon は、レフカメラは大鑑巨砲主義の方が売れるとも思っていうようですが、APS-Cに関してはそれも違うんじゃないのかなぁ?

 またZ50がD5600の需要を引き継げなかったのは、NikonAPS-Cミラーレスの戦略ミスもあると思います。NikonAPS-Cミラーレスのボディー内手振れ防止を省きました。しかし現在手振れ防止機構付きのZレンズの数は少ないので結局FTZアダプターを付けてFマウントのレンズを使うことになります。となるとAPS-Cのミラーレスを買う意味が半減してしまいます(しかもFTZアダプターの価格が高すぎます。自社のカメラを売れなくするつもりであんな価格設定をしているのでしょうか)。またレンズに手振れ機構をつけたとしても、今度はフルサイズのカメラを持っている人に余計なコストを掛けることになります。仮に100g近く重くなったとしても (それでもD5600並みの重量です) Z50にボディ内手振れ防止機構をつけるべきだったのです。今のNikonの体力では、DX専用のZレンズを多品種開発して供給するだけの力もないと思いますし...とにかくD5600とZ50で、グレードダウンした部分とグレードアップした部分を比べてみると、端的に言ってグレードダウンした部分の方が大きく、しかし価格はアップしている...つまり不便になったものを高い値段で買わせているという印象です。こんな中途半端なことではNikonAPS-Cミラーレスが売れないのも当然です。

 確かにCanonも、ミラーレスのRシリーズを出しても、RFレンズの価格が異様に高いので、キットレンズを除くと、おそらく多くの方がアダプターを使ってEFレンズを使っている状態でしょうから、似たり寄ったりとは言えます (しかしアダプターの価格はNikonの半額以下です)。しかし、Canonはレフ機やEFレンズをディスコンにしていませんし、APS-Cのミラーレス機でもボディー内手振れを備えた機種というオプションを提供しています。さらに、CanonのRFレンズで手ぼれ防止が省かれているのは、軽量なレンズか(軽量なので手ブレしにくいからか)、逆に1kg前後 or 超えの超重量レンズ (三脚使用が前提だからか) に限られており、どちらかというと例外です。手ブレ防止省略がデフォルトになっている Nikon Zレンズとは異なります。Canonのああいう対応は、多品種カメラやレンズを供給できる体力があるからこそ許されるのであって、そこまでの体力のないNikonに許されることではありません。NikonAPS-Cのレフ機を止めるという決断をするなら、APS-C ミラーレス全機種にボディ内手振れ機能を備えるべきだったのです。そうすれば、無理にDX Zシリーズ用に手振れ防止機構つきレンズを開発する必要もなかったはずです(最近はボディ内手振れ防止とレンズの手振れ防止を合わせて手振れ防止能力を上げるという戦略もありますが...)。また、自社に多品種を開発する余裕がなければ、サードパーティによる展開を期待して、積極的に Z マウントに関する情報を他社に供給することも考えるべきかと思います。Pentax のようにサードパーティからも見捨てられたらそれこそ終わりです。シェアが増えたらその時自社供給を考えれば良いのです。

 Nikonはこんな状態なら、ミラーレスはフルサイズに限り (しかもやるならEOS RPのような軽量フルサイズ機を目指すべきです。EOS RP はファインダーのクオリティの低さが問題になっているので、RPより多少高くてもファインダーのクオリティを上げれば勝算があると思います。重厚長大で良ければレフ機のD780 (or D850) がいかにもカメラらしくて良いと思います)、APS-Cは従来のレフ機を売り続けると割り切ったほうが良かったと思います。そしてD5600ユーザのミラーレスへの移行は、軽量フルサイズを開発することで、自発的に促すべきなのです。それなら、価格の上昇、電池持ちの低下、AFの速度低下というデメリットがあっても、フルサイズ化やオールドレンズでのぶれ防止利用可というメリットがあるのでユーザも納得するはずです。今のNikonはわざわざAPS-C機を不便に作って、フルサイズへの移行を促すという戦略を取っているのかもしれませんが、それがそもそもNikonを選ばないというユーザの選択につながっていることを自覚すべきです。Canonはユーザに不便を押し付けるようなことはしていません。それは多い選択肢を提供できるからでもありますが。

 またAPS-Cのメリットは小型軽量に作れるということですので、レフ機を残すなら、D7500だけでなく、少なくとも軽量のD3500かD5600のどちらかを残すべきだったのです。もしD5600のライブビューのAF速度が速くなればほとんど文句ありません。もちろん、D7500がペンタプリズム付きでも旧FM2並の重量に抑えられていたら、今の状況でも文句はありませんが...

 Nikonファンではありますが、率直に言って今の Nikon には買いたいカメラがない、というのが率直な感想です。