省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

DP review の OM System OM-5評

 DP Rreview に Olympus からスピンアウトした OM System の OM-5 評価が載っています(2023.2.15付)。

www.dpreview.com

 総合評価としては、 83% Silver Award を獲得しています(OM-1 は、87%)。

 

 同価格帯のライバルとして、Fujifilm X-S10、Canon R10が挙げられていますが、これらよりアメリカでのボディ価格は若干高め($1599)、有利な点としては、手ぶれ補正が、6.5 – 7.5段あること、防塵防滴であること(他機はなし)、バッテリー込み重量が軽いことが挙げられています。センサーサイズは、他機はAPS-Cですが本機は4/3、ただし、その差はさほど大きくないと述べられています(ただし ISO 800 以上での劣化は目立つので、手ぶれ補正を使って極力低 ISO で撮影することが推奨されています)。またUSB/Webカム機能も他機にはありません。

 またビデオ撮影者にとっての大きなメリットは、最長撮影時間29分の制限が撤廃された点と述べられています(この制限は関税対策でしたが [30分を超えるとビデオカメラ扱いになるのでアメリカへの輸入関税が高くなる]、関税率が変わったのでしょうか)。また、スマホのような縦のビデオが撮影可能になっています。さらに、ハイエンドカメラでしか使えなかった、OM-Log400 color profile が使えるようになりました。

 ボディは OM-D E-M5 iii と同じで、センサーや画像処理エンジンなどの基本性能は、OM-D E-M1 iii と全く同じと思われるとあり、センサーが今となっては古めなのが残念とあります。なお、OM-D E-M1 iiiのセンサーは2016年開発と思われます。

 なお電子ファインダーについては、E-M1 mark iii ではあまりクオリティが良くないと書かれていましたが、OM-5 に関しては言及がありません。

 また残念な点としては、OM-1に採用されている (E-M1X 以降採用) 被写体認識システムが搭載されていないこと (被写体認識システムは野生動物などの動体を撮りたい初心者に最適と述べられています)、カメラのメニューシステムが、OM-1 では非常にわかりやすく一新されているが、OM-5はわかりにくいと不評だった従来のものが踏襲されている、さらにUSBの形式が、USB-Cではなく、旧来のマイクロUSBになっている点が挙げられます(USB給電不可)。

 USBについては、OM-D E-M1 iii ですでに、USB-Cを採用していますし、なぜ採用しなかったのかは謎です。それに電池を食わないレフ機ならUSB給電は不要とは思いますが、電池食いのミラーレスは、やはりUSB給電は必須ではないでしょうか。またメニュー体系もBIOSの書き換えだけですので、やはりそんなにコストがかかるとは思えないのですが... OM-1が売れなくなるのを恐れてわざわざアピールポイントを下げたのでしょうか。

 OM-1では、USB給電を入れて、充電器を別売にしたことが結構批判的に受け取られたので、OM-5では、USB給電を止めて充電器を同梱することにしたと思われますが、OM-1では安くないモデルにも関わらず、充電器を別売にしたことがケチっていると思われたためであり (しかも OM-D E-M1 iii ではUSB給電+充電器同梱でした)、OM-5 の価格なら、USB給電を入れて、充電器を別売でもさほど文句は言われなかったのではないかと思います。しかも OM-D E-M1 iii の初値より安いですし... *1。ただアメリカの$1599という価格は日本の値段よりだいぶ割高です。

 被写体認識システムに関しては、OM-1とは価格差があるのだから、OM-5には採用しないという考え方は分かります。しかし、初心者こそ被写体認識システムが有用だと考えれば、初心者が買うであろう比較的低価格な機種に搭載していくことも戦略的に検討されても良いように思われます。

 因みに kakaku.com の口コミ欄には、被写体認識をOffにしたほうが良く止まると書いておられる方もいますが、どうもかなりベテランの方の投稿のようで... 初心者が真に受けていいのかどうか疑問です。逆に言えばベテランにはあまり必要がないけれども初心者にはより必要な機能と言えるのではないでしょうか。

 結論としては、OM-5は決して悪い買い物ではなく、他のライバル機にない防塵・防滴性、強力な手ぶれ防止機能、安定して動く Webカム機能、従来より改善した顔認識システムなど良い点はたくさんある、しかし、USB-Cを採用しなかったことと、旧来のメニューを踏襲した点で大きくアピールポイントを下げてしまっており、OM System の名を冠した初号機としてはちょっと残念としています。OM-1の弟分とは言えないが、OM-D E-M5 iiiの焼き直し以上にはなっている、しかしOM-D E-M5 iii ユーザは、買い換えるほどではないと述べられています。

 以前のフラッグシップ機であった OM-D E-M1 iii のスペックが、より軽量なボディに盛り込まれ、低価格化したということで納得できるなら買いでしょう。しかも日本ではアメリカより割安に買えますし。ただそう思えるには、やはり USBのスペックダウンが致命傷かもしれません。BNCの売れ行きデータでも高価な OM-1 より売れていないようですし...

 スマホの普及により、全体的にカメラの価格を高い方に誘導したいというメーカー側の方向性は分かります。しかし、そうであるならばやはりどうそれを納得させるだけの魅力をつけるかということを考える必要があると思います。大してコストに影響しないにも関わらず、上位機への配慮から敢えてアピールポイントを下げるような仕様を採用したのだとすれば、それはやめた方が良いのではないでしょうか。せっかく初めて OM System のロゴを搭載したカメラだった点を考えても...

 また、Olympusのカメラが今まで欧米で同じ 4/3 の Panasonic に比べ今一つ注目度が低かったのは、どうもメニューシステムのせいではないかと思われます。この辺りは、携帯電話の i-mode が欧米に売り込めなかったのと共通するのではないでしょうか。この点でももう一歩踏み込んだ経営判断が必要ではないかと。

 

因みに、OM-Log400 color profile のLUT は以下からダウンロードできます。

cs.olympus-imaging.jp

 

 

cs.olympus-imaging.jp

 

*1:OM-D E-M1 iii ボディの kakaku.com の初値の最低値は19万6020円, OM-5 は、14万4076円。