省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

Raw 現像カラー再現比較: Olympus OM-D E-M1 iii

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 以下は、最近 OM-D E-M1 iii で撮影したヤマシャクヤクの写真です。まずは、この写真をサンプルに、複数の Raw 現像ソフトによる色の再現について比較します。まずは OM System の純正ソフト OM Workspace (Ver. 2.1.1) を使った現像です。若干暗場所で、ISOオートで撮影しましたが、1250で撮れていました。

OM Workspace デフォルト

 色としては、ほぼ見た目通りに仕上がっているように思われます。

 次に、ART (Ver. 1.19.3) のデフォルトです。ART のカメラ標準プロファイルを使っています。

ART デフォルト

 葉がくすんで今一つ冴えない感じです。

ART DCPトーンカーブ, ルックテーブル, 露出オフセット使用

 そこで、Adobe 提供のカメラ固有DCP プロファイル natural を使い、DCP トーンカーブ、ルックテーブル、露出オフセットをオンにしました。OM Workspace より葉が全体的に青っぽくなっています。またトーンも明るすぎるようで、細部がやや飛んでのっぺりしているような印象です。

 そこでルックテーブルのみオンにしました。

ART ルックテーブルのみ適用

 トーンは適切ですが、葉がやや青いほうに寄っているのは変わりません。なお、RawTherapee 5.9 でも試しましたが、おおむね ART と同様です。

 次は darktable 4.2.1 です。まず読み込んだデフォルトから。

darktable デフォルト

 darktable は メタデータを読み込んでカメラ設定を自動で適用するような仕様になっていません。薄暗くなっています。

 そこで、露出調整を行い、シグモイドを適用しました。以前の検証でフィルミック RGB よりもシグモイドの方がアーティファクトが出にくく自然な印象だったので、フィルミックに代わりシグモイドを適用しました。

darktable レンズ、ノイズ補正適用、露出調整、シグモイド適用

 色はかなりナチュラルな感じで OM Workspace と比べても、露出をやや暗くすれば、ほぼ OM Workspace のデフォルトと同様になりそうです。色の面では ART よりも OM Workspace に近い印象です。なお、以前、darktable ですぐ使える画像を作る方法を紹介しました。その中で Saturation を -50% にし、Chroma を +25% にするという記述がありましたので、その通りにすると、かなり彩度が下がってしまったので、その設定は使いませんでした。

 ところで、ART の色の問題ですが、これは ART の問題というよりも Adobe 提供のカメラ固有 DCP プロファイルの問題ではないかという気がしてきました。

 そこで Adobe Camera Raw に カメラ固有プロファイルを適用させてみると...

Adobe Camera Raw カメラ Natural DCP プロファイル適用

 かなり青っぽくなりしかも非常にド派手になりました。もっとも手持ちの ACR は Photoshop CS4 に付属のものでちょっと古いのですが... とはいえ Nikon の D5500 用 DCP プロファイルは結構いい感じだったので、やはり OM-D E-M1 iii の Adobe 作成の DCP プロファイルのクオリティの問題のように思われます (追加調整を前提としているのかもしれませんが)。しかし Lightroom を使っていらっしゃる方で、OM-D E-M1 iii を使っている方はどうされているのでしょうか? 違和感は感じておられないのでしょうか? いくら ACR のバージョンが古いからと言って、今の ACR や Lightroom と大きく動作が異なるということはないと思うのですが... (逆に大きく異なると互換性の面で問題があるということになりますが)。

 ちなみに Adobe Standard のDCPプロファイルを適用すると、ART のカメラ標準プロファイルを適用したものと非常に似ます。

 とりあえず上の3つを分かりやすく比較できるよう以下にまとめました。

左から OM, ART+カメラ固有DCP(LTのみオン), dt (シグモイド)

 ところで、ART がうまくいかないのは DCPプロファイルのせいだとすると、他カメラの DCP プロファイルを適用するとうまくいくかもしれません。いくつか試行錯誤してみましたが、そのうち、Nikon D5600 neutral プロファイルを使いルックテーブルを適用してみたところ...

ART Nikon D5600 neutral プロファイル LT適用

 どうもこちらのほうが、OM Workspace のデフォルトの色合いに近いようです。

 

 次にもっと撮影条件の異なる画像で検討してみます。青空を背景にした桜の画像です。まず OM Workspace デフォルトです。

OM Workspace デフォルト

 これだけ単独で見ると何の問題もなさそうですが、他の処理方法と比べると空の R 成分が少なくやや黄色い方向に振れているようにも思われます。

 次に、ART で、カメラ標準プロファイルを適用した結果です。

ART カメラ標準プロファイル適用

 空の R 成分がやや高いようです。空の青にある程度 R 成分が含まれているほうが自然と思えますが、やや R が高いかもしれないという気もします。

ART カメラ固有DCPプロファイル ルックテーブル適用

 次に、ART で Adobe 提供のカメラ固有 DCPプロファイルを適用します。上より R の値が下がっているようです。ただ OM Workspace に比べると高めです。この方が OM Workspace より妥当かもしれません。

 次は Nikon D5600 neutral の DCP プロファイルを適用してみます。

ART D5600 neutral DCPプロファイル ルックテーブル適用

 E-M1 iii 固有プロファイルより若干 R に寄っていますが、標準プロファイルほど高くないようです。これも結構正解のような気がしてきます。

 次に darktable で露出補正とシグモイドを適用すると...

darktable 露出自動調整 + シグモイド適用

 空と桜に関しては、ART + D5600プロファイル適用のものを、若干明るくした印象です。なお、この画像についても彩度の調整は行っていません。なお、この画像が他の処理結果と異なるのは、瓦の色調が比較的ニュートラルに近いことです。好みの問題かもしれませんが、色調的には darktable がベストのような気がします。ただこれが実際に現地の見た目に近かったどうか... 覚えていません(^-^;

 今まで調べた範囲では、色の面では darktable にシグモイドを適用したものがどうやら OM-D E-M1 iii とかなり相性が良い印象です。このあたり、カメラとソフトウェアの相性はあるのではないかと思います。また、ART もしくは RawTherapee を使う場合、Adobe が作成した Olympus OM-D E-M1 iii 用のカメラ固有 DCPプロファイルは、メーカー設定の再現性という点では問題があるような気がします。もしツールを持っていて自分で作成できるなら DCP プロファイルは自作したほうが良いかもしれません。あるいは、OM-D E-M1 iii に合う、よりベターな 他機用 DCP プロファイルを探してみるのもありかと思います。

 なお、オリンパスのカメラは、オリンパスブルーと呼ばれる青が特徴ともいわれますが、これだけ差があると何がオリンパスブルーなのだかよく分かりません。特に OM Workspace の青の表現はやや B 値が他の処理より下がり気味のようです。もっともオリンパスブルーとは、中心と周辺部の光量変化が少ないので空の青さが均一に写ることを言うのであって (少なくとも上の作例では当てはまります) 色彩の問題ではない、とか、デジカメ初期に Kodak 製のセンサーを使っていたため、その特徴を言うのだとか、いろいろ説はあるようですが... しかし、純正ソフトと他ソフトの空の色の違いは、以前 OM Workspace と ART を比較した時、E-5の画像でも確認されています (下記記事)。

yasuo-ssi.hatenablog.com

 ネットを見ると、これがオリンパスブルーだと、画像を示しているサイトがありますが、撮って出し or 純正ソフト処理なのか、他の Raw 現像ソフトを通しているのか...