先日 pixls.us のオンラインディスカッションを見ていたところ、playraw のオンラインディスカッションで、高ISO の荒れた画像をどう救済したらよいかという話題が出ていました。元画像は Nikon のカメラで ISO 25600 で撮影した小鳥の写真です。暗めでかなり粒状の荒れが目立つ写真です。
その中で、Terry Pinfold 氏が、darktable の拡散 / シャープ化モジュールなどを使って補正した結果がかなりうまく荒れを抑え込んでいるようでした。Pinfold 氏によると、マスクとして、マスク精緻化 (mask refinement) のパラメータを使うと、ノイズ低減をすべき部分と逆にシャープニングを掛ける部分をうまく区分け出来て、よい結果が得られると述べています。おそらく、これはウェーブレットアルゴリズムを使ったマスクだと思われます。
そこで、Pinforld 氏の darktable のサイドカーファイル (編集設定ファイル) をダウンロードして、実際にどのようなマスクを掛けているのかを確認してみました。原画や補正後の効果は、上のディスカッションを直接ご覧ください。
ここではどのような編集モジュールをどのようなパラメータで使っているのかを見てみます。なお元画像は CC ライセンスを付与されています。
まずコントラストイコライザーです。輝度や彩度が高いほどややコントラストが高くなるように設定しているようです。
マスクは上のような描画マスクを使っておられました。小鳥の周辺以外にマスクを適用しているようです。
・拡散/シャープ化1
拡散 / シャープ化は、かなり良いシャープニング効果やノイズ低減効果が得られるということで、darktable でかなり人気のあるモジュールです。但し、4G 以上のメモリを積んだ GPU がないと、非常に動作が遅くなってしまう点、そしてパラメータの意味を解釈するのが非常に難しいという難点があります。ちなみに以前は、NVIDIA の GPU が必要でしたが現在は AMD の GPU でも大丈夫になっているようです。また、パラメータの意味を解釈することが難しいことから、大半の人は、直接パラメータをいじるのではなくプリセットを使っているはずです。Pinforld 氏の場合、2つのインスタンスを掛けていました。まず一つ目のインスタンスです。
パラメータを見ただけでは、どのプリセットを使っているのかよく分かりにくいですが、調べてみたら、このインスタンスでは [レンズぼけの除去(強)] プリセットを使っているようです。
それに、上とは逆の小鳥の部分だけ指定する描画マスクを組み合わせています。小鳥に対し、シャープニングを掛ける編集です。
・拡散/シャープ化
拡散/シャープ化の2番目のインスタンスです。
こちらは [シャープ化: デモザイク] プリセットを使っているようです。マスクは、[マスクの精緻化] を使っています。
その、ディテールの閾値パラメータを +97% に設定していますが、これは非常に細かいエッジのみにシャープニングを掛けるよう制限しているようです。これを下げると大まかなエッジやエッジのあまりない部分まで効果が及んでしまうようです。
・天体写真ノイズ除去
以上、拡散 / シャープ化は、シャープニングのために使っておられるようです。ではノイズ低減のためには何を使っているかというと、一つは天体写真ノイズ除去です。なお天体写真ノイズ除去はごま塩ノイズに有効のようです。
ここでも [マスクの精緻化] マスクを掛けていますが、閾値をわずかにマイナスに設定し、やや大まかなエッジのノイズに対し、ノイズ低減を掛けています。
・ノイズ除去 (プロファイル)
もう一つのノイズ低減モジュールですが、こちらは Raw ファイルのみに適用可能なノイズ低減です。カメラモデルに対応したノイズ低減プロファイルが提供されている場合はかなり効果的であることは、以前当ブログでも検証しています。一方プロファイルが提供されていない場合は並みの効果しかありません。こちらはマスクはありません。
最近は、例えば DxO など、商用ソフトで AI を使った効果的な高 ISO 画像のノイズ低減ツールが実装されるようになってきています。しかし、AI を使わない darktable であっても、かなりそれに迫るようなノイズ低減ができることは心強いです。
なお、マスク精緻化は Raw ファイルのみに有効で、現像済みの TIFF ファイルなどでは使えないようです。
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[参考 darktable ノイズ低減関連 youtube チャンネル]