先日、pixls.up の Play Raw スレッドを見ていたところ、Canon の EOS R10 で撮った京都の仁和寺の夜のライトアップの写真を、それをみんながどう処理するのか見てみたいと、アップされているドイツの方がいらっしゃいました。
その中で、Lyle Kroll氏という方がご自分の現像結果をアップされたのですが、他の方から、暗部ノイズがざらつきを無くしつつ、かつ画像のエッジの鋭さも失うことなく、非常にうまく処理されている、と称賛されていました。
この写真のノイズ処理ですが、GIMP のプラグインを使って処理されたようです。ご本人は数年前 Gimp chat のスレッドで見かけたプラグインをダウンロードして使ったのだが、ダウンロード元がどこだったかはっきり覚えていないとおっしゃっています。
ちょっと調べてみたところ、どうもこれは Marco Rossini 氏という方が作成された、GIMP wavelet denoise プラグインではないかと思われました。
この方はビルドしたバイナリーファイルは公開されていませんが、他の方がビルドしたバイナリーを Gimp chat などに公開されたようです。
Gimp chat における Windows 版の公開先は以下です。ただし、GIMP 2.x 対応で、3.x にはまだ対応していません。
プラグインのインストール方法は以下の記事をご参照ください。
また、Ubuntu 用のバイナリーは gimp-plugin-registry というバイナリーパッケージに含まれており、以下のコマンドでインストールできるようです。
sudo apt-get install gimp-plugin-registry
.
しかし、このコマンドだと、sudo apt で GIMP 2.10 をインストールしていれば使えますが、Flatpak でインストールしていると使えません。2.10 で Python-fu を使おうとすると、Flatpak でインストールする必要がありますのでこれでは困ります。
そこで、以下から gimp-plugin-registry の deb 形式のバイナリーをダウンロードします。
しかし、ちょっとわかりにくいので、ファイルへのダイレクトのリンクを紹介しておきます。
http://launchpadlibrarian.net/724271486/gimp-plugin-registry_9.20240404_amd64.deb
ダウンロードしたら、一旦以下のコマンドで解凍します (ダウンロード先が、Downloads になっていることを前提とします)。
~/Downloads$ mkdir -p gimp-plugin-registry
~/Downloads$ dpkg-deb -X gimp-plugin-registry_9.20240404_amd64.deb gimp-plugin-registry
このコマンドはgimp-plugin-registry という名前のディレクトリに解凍しています。
解凍したディレクトリに入ると、その下の、
/usr/lib/gimp/2.0/plug-ins/
というディレクトリに、
wavelet-denoise
というバイナリーファイルが見つかりますので、それを以下のディレクトリに移動します。
~/.config/GIMP/2.10/plug-ins/
実行可能になっているかどうか確認してください。
なお、Mac 版のバイナリーは発見できませんでした。
ただ、Windows 版 Ubuntu 版いずれもバイナリーのバージョンは 0.3.1 となっていますが、ソースコードは、0.4 となっています。
インストールすると [フィルター] > [強調] の下に、Wavelet denoise... というメニューが現れます。
起動すると以下のダイアログが現れます。
特徴としては、通常のノイズ低減は、チャンネルをまとめてノイズ低減を行いますが、本プラグインはチャンネルごとに分解してノイズ低減を行う点がユニークで、そのため、元の画像によっては、より効果的なノイズ低減ができるということのようです。デフォルトでは YCbCr チャンネルに分解してウェーブレットを掛けられるようになっていますが、CIE L*a*b*、RGB でもチャンネルごとにウェーブレットが掛けられます。Threshold を上げると、画像がスムーズになりますが、細部が失われます。0 だと一切補正のない状態です。Softness を上げると、Threshold で失われた細部を回復する役割を持ちます。デノイズの機能をソフトに(緩く)掛けるという意味かと思います。デフォルトの YCbCr の場合、主として Y チャンネルに対しノイズ低減を掛けるとノイズ低減効果が出ますが、Cb, Cr に掛けてもあまり効果はありません。
他に、元々 GIMP に含まれている Wavelet-Decompose というプラグインもあります。場所は上で紹介したプラグインのすぐ下です。こちらは本来のウェーブレットの原理を理解するのに非常に良いプラグインです。
Wavelet-denoise は、GIMP 2.10 対応のプラグインで 3.0 では使えませんが、興味のある方はお試しください。こういうのを見るとやはりまだまだ GIMP 2.10 は捨てられません。また、Wavelet-Decompose の方は、3.0 でも予め含まれています。
なお、そもそもウェーブレットって何、という方には、以下に解説を書いておきました。
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