省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

新バージョン Bチャンネル再建法 追加補正サポート用マスク作成ツール公開

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お知らせ (2021.7)

 本ツールの機能は、下記ツールに機能統合しました。今後は以下のツールをお使いください。

yasuo-ssi.hatenablog.com-------------------------------

お知らせ

  このツールのバグ修正版を  2021.5.18に公開しました。5.8の修正し残しのバグを再修正しました。すでに各ページのリンクは修正してあります。新バージョン番号は Ver. 0.18となっています。

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 このツールのバグ修正版を  2021.5.8に公開しました。4.17の修正で発生したバグを再修正しました。すでに各ページのリンクは修正してあります。新バージョン番号は Ver. 0.17となっています。それ以前にダウンロードされた方は、再度ダウンロードをお願いします。修正内容はこちらのページをご参照ください。

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 このツールのバグ修正版を2021.4.17に公開しました。こちらのページをご覧ください。なお、当ページのダウンロードリンクも新バージョンに修正してあります。


 本 (2021) 年2月28日に、Bチャンネル再建法 追加補正サポート用マスク作成ツールを公開しました。しかしさすがにあらかじめImageJで閾値を測った上、パラメータをメモして使えというのは、我ながら自分で使っていても使い勝手が悪すぎます。

 という訳でマスクが有効範囲となる閾値を決定するのにプラグインの中のプレビュー画面を見ながら決定するような対話的なダイアログを作成しました(かなり大変でした)。これで大幅に利便性がアップしていると思います。内容的にはユーザインターフェース部分を変更しただけで、プログラムの本体部分は変更ありません。

 なお、このツールを使う目的や意義については、作成ツール公開時の2月28日の記事をご参照ください。以下、新バージョンのマスク画像作成ツールの使い方から説明します。

 

1. このツールが行うこと

1) ある特定の色チャンネル(R, G, B もしくはグレースケール)に基づいて、特定の明度(明るさ)範囲を透過させるバイナリーマスク画像ファイルを作成します。

※バイナリーマスク画像: 透過部分を白、不透過部分を黒とした、白(255)と黒(0)の二値の画像。透過部分は100%透過、不透過部分は100%不透過となる。

2) 黄変部分 (相対的に黄色い部分) もしくは相対的に青い部分を透過させるマスク画像ファイルを作成します。

※こちらは二値ではなく透過度の高い部分を白っぽく、不透過度の高い部分を黒っぽくしたグレースケールマスク画像。透過、不透過量は100%か0%の二値ではなく、段階的に変化する。

3) 1)と2)の画像を合算し、特定の明度範囲のみに有効な黄変(もしくは相対的に青い)部分透過マスク画像を作成します。

 → 例えば明度範囲が128-180の間だけ有効な黄変部分補正マスク

 予め補正を行わない明度範囲をマスキングしておいたマスク原稿画像を用意することで、マスク編集作業の手間が楽になると思います。

2. 事前準備

 当然ながら ImageJ (Fiji ディストリビューション) をインストールしておいてください。またプラグインファイルは、こちらからダウンロードして下さい。そしてこのインストールフォルダ (Fiji.App) の下の Plugins フォルダにダウンロードしたプラグインを解凍し、コピーします。

3. プラグインの実行

1) ImageJの[Plugin]メニューから、先ほどインストールしたプラグインを起動します。メニューの下の方に「Additional adjst Yellow mask Maker V0.1」表示されているはずですので(前のバージョンは V0.01でした)、それをクリックします。

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ImageJメニュー表示

2) 予め、ImageJでファイルを読み込んでいなければファイル選択ダイアログが出るので、そこで対象となるファイルを選択します。ファイルサイズが大きいと選択してからファイルが開くまでちょっと時間がかかることがあります。あらかじめ読み込んであれば、選択ダイアログが出ることなく次へ行きます。

3) すると、下記のようなダイアログが出ますので、明度範囲を決定するための対象チャンネルを選択します。選択肢は、RGBtoGRAY, Blue, Red, Greenです。黄変マスクであれば通常は Blue もしくは RGBtoGRAY を選択します。

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明度範囲決定対象チャンネルの選択ダイアログ
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GIMP 2.10.24がリリース

 先ほど、GIMPの公式サイトを見たら、Ver. 2.10.24がリリースされていました(2021.3.29)。アップデートは昨年10月(2.10.22)以来です。新しい機能として、ネガフィルムをスキャンしたファイルのネガポジ反転機能が追加されたようです。ほかに、画像キャンバスを外れた部分での編集機能が充実されたり、メタデータの扱いなどが、改善されているようです。以下の公式サイトをご覧ください。

 

www.gimp.org

春の福塩線、長閑に走る青色20号の旧型国電三連 (1977年3月) - 蔵出し画像


 先日福塩線のクモハ51067の写真を掲示いたしましたが、同時期に撮った、菜の花をバックに春の福塩線を長閑に行く旧国三連の写真です。1977年のちょうどほぼ今の季節でした。

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福塩線 備後本庄-横尾間 (1977.3.29)

 当時から福塩線沿線は結構家や工場が立ち並んでいて、家や工場が入らない撮影場所としてはほぼこの付近に限定されていたと思います。菜の花をバックに長閑に走る福塩線らしい写真が撮れたと思っています。

 因みにこの編成は三連ですが、当時福塩線を担当していた府中電車区の運用は、クハ68+クモハ51のTcMcの基本運用と、片運転台のクモハ51単独のMc付属運用があり、輸送量に応じてきめ細かく、基本x2連、基本単独、基本+付属 の2~4連で調整され運用されていました。なんと1Tcという運用までありました。もちろん1Mcの運用と組み合わされ2連で運用されたわけですが。合理化の進んだ今日では考えられない運用だと思います。

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1976.7改正 福塩線運用表

 なお、運用表は当時の府中電車区に問い合わせの手紙を書いていただいたものです。当時の国鉄の現場は、やはり国民の鉄道という意識を一人一人の職員の方が持っていらっしゃったためか、ファンの問い合わせにとても丁寧に対応していただいたと思います。当時の国鉄労働者の皆様に改めて感謝の意を表したいと思います。

 今は、国民の鉄道ではなく、私企業になってしまいましたし、労働強化も進められ、現場の職員の方々も到底ファンに丁寧に対応する余裕などとてもないでしょう。
 因みに車号ですが、当時のメモや、写真の形状から推測すると、おそらく 福山方(右側)からクモハ51037+クモハ51062+クハ68072の編成だと思われます。クモハ51037は運行灯窓までHゴム化されていたのが特徴で、その特徴はこの写真でも確認できます。

 最後に例によって車歴を紹介して終わりたいと思います。

クモハ51037

1937.2.9 川崎車両製造 → 1937.5.3 使用開始 配置大ヨト → 1937.8 大ミハ → 1937.10 大アカ → 1944.7.11 座席撤去 → 1953.12.13 座席整備 → 1954.8.19 更新修繕I 吹田工 → 1954.11.23 大ミハ → 1956.3.1 大タツ → 1969.9.28 岡オカ →  1974.3.17 岡フチ → 1978.2.28 廃車 (岡フチ)

クモハ51062

1932.12.3 汽車会社東京支店製造 (モハ41002) → 1932.12.21 使用開始 配置大ヨト → 1944.5.3 改造吹田工(モハ51059) → 1944.5.4 大ミハ → 1944.7.26 改番 (モハ51062) → 1945.1.19 座席撤去 → 1948.5.28 大アカ → 1948.12.13 座席整備 → 1950.9.25 更新修繕I 吹田工 → 1957.2.8 更新修繕II 吹田工 → 1961.9.11 岡オカ → 1963.11.2 大アカ → 1964.10.1 大タツ → 1974.2.9 岡フチ → 1977.8.25 廃車 (岡フチ)

クハ68072

1934.4.25 日本車両製造 (クハ55101→55021) 新製配置 東マト → 1950.7.23 大ミハ → 1951.8.3 更新修繕I 吹田工 → 1953.6.1 改番 (クハ68072) → 1956.3.1 大タツ → 1971.1.19 岡オカ → 1971.1.28 岡フチ → 1977.9.26 廃車 (岡フチ)

 

クモハ51037 は生粋の関西生まれで終生近畿圏を離れませんでした。使用開始時は大ヨト配置になっていた点がちょっと異例です。おそらく京阪神緩行線の電車増発等の都合ではないかと推測されます。1969年に岡鉄に移動し、岡山周辺を担当していましたが、5年後福塩線に転じ、そこで廃車を迎えています。典型的な関西国電の経歴のように思われます。なお、本車は 1951.3.1 に西明石にて火災事故を起こしています。窓の徹底的なHゴム化が行われていたのはその影響かもしれません。

クモハ51062はもともとは関西国鉄初の電車モハ41002として城東線、片町線用として配置されました。国鉄初の20m級電動車でした。但し生まれは関東です。戦時中に43系の4扉化改造計画との関連で、台車の振り替えが行われモハ51に編入され京阪神緩行線に移っています。一旦は059になるもののすぐ062に改番されています。モハ41は車番にかかわらず前者奇数向きで製造されたので、あるいは偶数向きに改造されたのかもしれませんが、はっきりしたことは不明です。その後1961年にいったん岡山に追いやられるものの、再び京阪神間に舞い戻っています。1974年に福塩線に転じ、3年使用されて廃車となりました。

クハ68072は元々関東向けのクハ55でした。当初関東向けの40系は引き通し線の違いから100番台を名乗る予定でしたが、結局通し番号に改められています。電化されたばかりの常磐線用として松戸電車区に配置されました。本車は常磐線配置が幸いしたのか戦時中でも座席撤去されることなく使用されましたが、1950年に大阪に移っています。これはおそらくモハ43一党の横須賀線転用との交換で大阪に移ったものと思われます。手持ちの資料でははっきり分かりませんが、1951年の更新修繕でロングシートからセミクロスシートに改造されたものと推測されます。そのため、1953年の改番でクハ68に編入されました。1971年に福塩線に移り、1977年に廃車となっています。

Bチャンネル再建法補正ツール簡易バージョンによる黄変写真補正事例 (2)

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 引き続き、Bチャンネル再建法補正ツール簡易バージョンによる補正事例をお見せします。補正するファイルは下記の画像です。この画像は2020年8月にBチャンネル補正法による補正結果をお見せしていますが、その時点はまだサポートツールの開発が不十分でした。今回再補正してみました。前回よりは追加補正にちょっと手間がかかるケースです。

 ご覧のように画面の左側3/4~4/5程度が黄変しています。また右側も問題ないかというと、そうにあらず、やや青すぎるようです。赤チャンネル要素もやや脱色されているような印象です。この理由が褪色なのか、それともスキャナドライバの過剰補正なのかは分かりません。とはいえ、黄変部分の補正だけでは済みませんので、ちょっと追加補正に手間がかかります。

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図1. オリジナル画像

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図2. 補正領域、およびサンプリング領域の指定
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ImageJ API レファレンスの URLが変わっています

 最近、NIH (アメリカ国立衛生研究所) のサイトにある、ImageJのAPIリファレンスのURLが微妙に変わっています。3月下旬ごろ変更されているようです。そのため、GoogleでImageJの個々のAPIを検索を掛けると 404 File not found! エラーが出てしまいます(Googleでは、3/15にクロールを掛けデータを取得しているようです)。しかし、ImageJ APIのトップ(以下のページ)からたどっていくと各APIの説明にたどり着くことができます。

 

imagej.nih.gov

あるいは、以下のインデックスからたどることもできます。

imagej.nih.gov

 ご注意ください!

Bチャンネル再建法補正ツール簡易バージョンによる黄変写真補正事例 (1)

f:id:yasuo_ssi:20210310145522j:plain  では、Bチャンネル再建法補正ツール簡易バージョンによる補正事例をお見せしていきます。今回は比較的容易に補正できるケースです。オリジナルは以下の画像です。何度か写真補正のサンプルとして使っている飯田線の流電・クモハ52003の写真です。

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図1. オリジナル画像

 この画像の場合、黄変部分が一部分にとどまっています。但し、上端部分で若干のBチャンネル情報抜け(青紫色の変色)を起こしているようです。そこで補正範囲を下記のように設定します。

 このケースの場合、サンプリング範囲をこの補正範囲の x 方向で前方向(補正範囲の左側)にしか設定できません。ただ、補正範囲は空を含んだ比較的明るい部分が多い一方でサンプリング範囲は、ホームの屋根の暗い部分を設定せざるをえません。補正範囲とサンプリング範囲の画像パターンの違いが比較的大きいです。

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図2. 補正範囲 (青白い部分)
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不均等黄変ネガ写真 Bチャンネル再建法補正ツール簡易版 (ImageJ & GIMP対応) 公開

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本ページで紹介するツールの概要
・補正の対象となる黄変写真は軽~中度に限定されるが、GIMP等によるマニュアル・レイヤー編集の必要なく、Bチャンネル再建法による補正ファイルを得られる簡易補正ツール

 

 さて先日、ネガカラー光被り補正ツールを考案・作成して公開しましたが、これを応用して、従来のツールより簡単に不均等黄変ネガカラー写真を補正する、簡易版のBチャンネル再建法補正ツールも考えてみました。通常のBチャンネル再建補正法ツールだと、レイヤー編集を行って再建Bチャンネル画像を作成していましたが、今回公開する簡易ツールでは再建Bチャンネル画像作成のためにレイヤー編集を行う必要はありません。但し、光被り補正ツールと同様正常なサンプリング領域のデータをもとに補正を行いますので、適正な補正結果を得ようとすると、補正部分と似たような画像パターンの正常なサンプリング領域が一定幅の縦列として確保できることが必要になります。

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図 1 補正の仕組み

 従って黄変が画像全体に広がっているような重度に損傷した画像は不向きで、適切な補正結果を得るには、黄変・褪色部分が画像の一部にとどまっており、かつ補正領域とサンプリング領域の画像パターンが似ているということが条件になります。従って本ツールの適用可能対象は、基本的には損傷程度が中程度以下の画像が対象ということになります。

 いわば、フルバージョンのBチャンネル再建法ツールにおいて、マニュアルでレイヤーマスク編集を通して行っていた補正編集作業を、簡易ツールでは正常なサンプリング部分と変色部分を比較することで自動化し、レイヤーマスク編集を省いていることになります。

 簡易ツールは対象が限定される一方で、メリットもあります。フルバージョンですと補正が全面にかかります。しかし原理的にGチャンネルとBチャンネルの値が接近するという特徴もありますので、補正の必要ない部分にもその副作用が及びます。一方、簡易バージョンですと補正範囲が限定されますので、補正の必要ない部分に副作用が及びません。その意味でも、黄変部分が画面の一部にとどまっている場合は、簡易ツールの方にメリットがあります。

 ただ計算時間は結構かかり、私の環境で、補正領域が全体画像の4/5ぐらいにわたる場合、16bit フルHD(1920 x 1080)程度の画像で2-3分、16bit 7500 x 5000程度の画像だと、10分強かかりました。補正領域が一部にとどまる場合はもっと時間は短縮されます。

 補正するパラメータを、何度か変えて試行してから確定しなければならない場合も多いと思いますので、補正画像のサイズが大きい場合は、1200 x 900 程度に縮小したパイロット画像を使って最初に何度か試行した上で、最後に決定したパラメータを使って本番の画像を補正するようにしてください。なお、私がこのツールを使って何枚かの写真を補正した経験では、縮小したパイロット画像では補正むらがあるケースでも、大きいオリジナルサイズの画像に補正を掛けるとむらが目立たなくなる傾向にありました。

 ツールは今までと同じくImageJ (Fiji Distribution) 対応で、得たい補正画像が8bitならImageJだけで完結します。16bitの画像を得たい場合は、GIMP上でR, G, B画像を合成するプラグインを添付しましたので、これを動かすと一挙にRGB合成した画像を作成します。この理由は、このツールのImageJプラグインにおけるチャンネル合成に、 ImageJの RGBStackConverter における convertToRGB メソッドを使っているのですが、これだとR, G, Bばらばらの画像から16bit RGB画像を合成することができないためです(他の方法で合成が可能かどうかまだ調べられていません)。もちろんGIMPよりは手間がかかりますが、Photoshop等チャンネル合成機能を持つフォトレタッチソフトを使ってマニュアルで合成することも可能です。

 画像によっては、追加の補正が必要になる場合がありうるのは、フルバージョンのBチャンネル再建法ツールや光被り補正ツールと同様です。

 ダウンロード先はこちらです。

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