Nikon Z9 (2021年12月発売) 以降、Nikon の Raw ファイルに、ベルギーの intoPIX社のTicoRAW技術を採用した*1不可逆 (ロスあり) 圧縮の高効率圧縮というフォーマットが登場しています。しかし、同じ NEF という拡張子であっても、このファイルに関してはフリー・オープンソフトの Raw 現像ソフトでは直接読み込むことができません。FOSS の中では最も広い範囲の画像フォーマットに対応している Libraw も現在のところ対応していません。
あくまでも推定ですが、おそらく、この技術を使おうとすると秘密保持契約が要求されるため、オープンソースのソフトウェアでは対応できないということがその理由ではないかと思われます。そうであるとすれば、今後ともオープンソースのソフトでは、対応の見込みはないということになります。
この対応策ですが、ART, darktable, RawTherapee などのフリー・オープンソフトの Raw 現像ソフトで使いたい場合は、1) 高効率圧縮で保存せずに、従来のロスレス (可逆) 圧縮フォーマットのみで記録する 2) Adobe DNG Converter で dng 形式に変換してから FOSS の Raw 現像ソフトに読み込ませる、の2つの方法があります。
なお、以下にある Zf のロスあり高効率圧縮のサンプルファイルをダウンロードしてみたところ
www.dpreview.comオリジナル Raw ファイルで約 17Mb ありました。これを DNG Converter で dng ファイルに変換したところ約 21Mb になりました。dng ファイルに変換してみたところ、ART でも読めるようになりました。ロスレス圧縮ですと 30Mb 程度になりますので、dng ファイルに変換したとしても、依然ロスレス圧縮よりファイルサイズは小さくなります。
dng ファイルに転換する手間はかかりますが、バッチ処理で夜中にでも処理しておけばそう手間でもないので、ファイルサイズを重視し、かつFOSSでの処理を考えるならやる価値はあります。
なお、市販の Raw 現像ソフトでも高効率圧縮の Raw ファイルを読めないものもあります。Affinity Photo および Luminar NEO, DxO のソフトでは未対応なようです。CyberLink PhotoDirector 及び Corel AfterShot Proは、そもそも Nikon Z9 以降のカメラ自体対応リストにありません。Adobe および Capture One, Sylkypix (一部古い CPU を使ったPC は除く) では対応しているようです。On1 Photo Raw は Z9 の高効率圧縮には対応しているようです。Zf もフォーマットが同じなら読める可能性があるとは思います。他のソフトウェアに関しては分かりません。