省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

レフカメラか、ミラーレスカメラか?

 先日、Yahoo知恵袋をたまたま見ていたら、一眼レフカメラを買うべきか、それともミラーレスか、というような質問が上がっていました。一眼はオワコンだとか、老人用と言われる一方で、やはりプロは一眼レフ、という話を聞くが... ということのようです。

 寄せられた回答の過半数は、好きなほうを買えばいいじゃない、と答えていました。まぁ、その通りなのですが、一方で質問者はそもそもその「好み」が自分でも分からないから質問しているのであって、そういう回答も不親切だなと思いました。かと言ってミラーレスがはやりだからミラーレスを... というのも違うと思って回答を書きました。同様な悩みを持っている方はいると思うので、その回答をベースに加筆してここに書いておきたいと思います。

結論を先取りすると...
 スナップ写真中心で撮影に特にこだわりがない方は、以下のポイントだけ押さえれば良いでしょう。
■ファインダー
 ご自分の視力、好みにより、レフ機とミラーレス機のどちらのファインダーが見やすいかが異なります。実機を見てご自分にとって見やすいファインダーのカメラを選んでください。
■充電に困りそうな場所に持ち出す可能性が高いかどうか
 充電に困るようなところ (海外旅行や登山など) に持ち出す可能性が高いなら、電池交換の頻度が低いレフ機を勧めます。そうでなければどちらでも構いません。なお、レフ機でもファインダーをあまり使わず、主に背面液晶を見て撮影していると、電池節約効果がありませんのでご注意ください。

 撮影にこだわりのある方は、下のレフ機、ミラーレス機選択のポイントを見て、ご自分の撮影スタイルに合うものを選んでください。
 

 まず、レフカメラとミラーレスで、原理的に映りが違うということはないはずです。
またファインダーに関しては、どちらが使いやすいかは、それぞれの人の好みや視力によって異なります。ただ老眼の人はレフ機のファインダーの方が見易い傾向にあるでしょう。カメラ店で実機を見て考えて下さい。

その上で、レフ機とミラーレス機の長所と短所を挙げると

ミラーレス機: 長所: 同じ性能ならレフ機より軽く作れる、オールドレンズが使いやすい
       短所: 電池消費量が多い

レフ機: 長所: 電池消費量が少ない, AFの追従速度がミラーレス機より早め
     短所: 同じ性能ならミラーレスより重くなりがち、オールドレンズ対応が不十分

と要約できると思います。

 

 まず、ミラーレス機がレフ機より軽めに作れるというのは大きなミラーレス機の長所です。女性や男性でも手の小さい人は小さめのミラーレス機の方がおおむね使いやすい傾向にあるでしょう。とはいえレフ機でも500gを切っている小型のものもあります。逆に重いミラーレス機というのは存在意義がないと思っています。重いしっかりした重厚なカメラでないとカメラを持った気がしない、という人はレフ機が良いでしょう。

 私個人は、手が小さめなので軽量で小さめのカメラが絶対善と思っています。いくらレンズの性能が良くても重くて大きい大三元レンズをそろえようという気はさらさらありません。しかし、逆に大三元レンズにこだわるような方であれば、NikonのD850など重厚なレフ機が良いのではないでしょうか。

  一方、電池の消費量は、現状ではレフ機とミラーレス機ではかなり違うという実感です。レフ機はファインダーを覗くだけでは電池消費量は少ないですが、ミラーレス機はファインダーを覗くだけで電池をそれなりに消費します。ですので、登山や海外旅行(特に先進国以外)など、充電先が簡単に見つかるとは限らない可能性があるところに持ち出す場合はミラーレス機は不利です。もちろん予備電池をたくさん持っていけばその欠点はカバーできますが、そうすると軽量というメリットがなくなってしまいます。その点、レフ機は、電池消費量が少ない分、ミラーレスより電池交換の頻度が少なくて済むというメリットのみ目立ちます。

 しかし、街中や家庭内での使用が主なら電池の消費量や交換頻度を気にする必要はありません。プロの報道現場でレフ機が使われ続けているのも電池交換頻度が少ないという理由が大きいと思います。バシャバシャ撮りまくっていたら、最大のシャッターチャンスに電池切れで電池交換ではシャレになりません。プロの報道カメラマンは、シャッターチャンスを逃さないために複数のカメラを持っていくのは常識にしても、電池交換の頻度が少ないのは絶対善です。レフ機なら2台持っていけば済むところを、ミラーレスなら4台必要になるかもしれません。一方同じプロと言ってもスタジオカメラマンなら、この理由でミラーレスの使用を躊躇する理由はないと思います。またレフ機でも、ファインダーを使わず背面液晶による撮影が主であれば電池消費量はミラーレス機と変わらないので、このような撮影スタイルの方は、レフ機にこだわる理由はありません。

 さらに、ミラーレス機のAF(オートフォーカス)は一般に焦点が合うまで時間がかかるコントラスト検出式AFを採用しているケースが多いのに対し、レフ機は位相差検出方式AFが使えますので、スポーツや鳥の撮影など高速でAF追従が要求される場合は優位です。この点もプロの報道現場でレフ機が使われ続ける理由です。とはいえ、すべてのレフ機がAF高速追従可能というわけではなく、それなりの機種を選ぶ必要があります。また、機種にもよりますが、背面液晶を使った撮影の場合位相差検出AFが使えずにAF速度が遅くなるものがあります。つまり、いろいろな意味でレフ機はファインダーを通した撮影を基本にしないとメリットが生かせないということです。

 ただ最近ミラーレス機でも、位相差検出式AFセンサーとなる画素を埋め込んだ機種が登場しており、今は、上位機種では位相差検出式とコントラスト検出式のハイブリッド式が多くなりつつあります。ソニーα9とオリンパスOM-D E-M1 Mark II以降、高速追従を謳うミラーレスも出てきています*1

 また気候が厳しいところ、特に極寒冷地などでは電池消費量の多いミラーレス機の方がレフ機より動作不安定になる可能性が高いと思います(電池の性能が低下しますのでベースの電池消費量が多いと不利)。

 オールドレンズの対応については、現状ミラーレス機の方がオールドレンズが使いやすいのは確かですが、これは必ずしもミラーレス機の機構的な理由とは言えないところがあります。

 まず機構上の理由としては、ミラーレス機はフランジバックが短いので、様々な会社のオールドレンズをアダプターを介して使おうと思っている場合、有利ということは間違いがありません。ただ特定の会社のオールドレンズだけを使おうと思う場合は関係ありません。

 また、オールドレンズユーザはオートフォーカスを使おうとは思わないでしょうが(だったらオートフォーカスレンズに買い替える)、手振れ補正は使いたいと思うでしょう。そこで、オールドレンズでも手振れ補正を使おうと思った場合、当然ながらボディ内補正でないと使えません。しかし、ボディ内補正を採用している会社は、ミラーレス機に多く、レフ機では少ないです。しかもオールドレンズを使おうと思っている人は、画角が変わってしまうAPS-C機よりもフルサイズ機を使いたいと思うでしょう。また既存のカメラメーカーも自社のオールドレンズ対応をおろそかにしていた(フラッグシップ機以外は対応が不十分)側面もあると思います。そのためオールドレンズユーザの中にはミラーレス機に流れた層がかなりいると思います。

 ただレフ機でもPentaxは比較的フランジバックが短く、かつボディ内手振れ補正を備えています。

 結局、手持ちのオールドレンズを活用したい人で、電池の消費量を気にしない層が、ソニーのαシリーズに流れて、結果的に今日のミラーレス盛況の流れを作ったということかと思います。

 なお、ミラーレス機でも、ファインダーのあるものとないもの(背面液晶画面のみ)があります。ファインダーのないものはそれだけ小さくポケットにも入れられるというメリットがありますが、一方それではスマホと同じで、とくにピンポイントの焦点を合わせるのに手間がかかります。従ってマクロ撮影などがしにくいです。マクロ撮影をやるなら、ファインダー付きカメラが良いでしょう。

 今ポケットに入る小ささを求めるなら、スマホのカメラの性能も上がってきていますので、ファインダーのないカメラを選ぶ理由はあまりなくなってきていると思います。逆にミラーレスカメラを買うならポケットに入る小ささを選ぶよりも、ファインダーのあるカメラをお買いになることをお勧めします。

 

最後に、レフ機かミラーレス機かを選択するポイントをまとめます。

・フォーカスが自分にとって合わせやすいか (ファインダーが見やすいか)。
  特にピンポイントでフォーカスを合わせるような写真を頻繁に撮るかが重要
  (自分の視力や、見やすさ、好みで判断)

・充電に困るような場所に持ち出す機会は多いか、少ないか。電池交換の頻度が少ないほうが良いか、頻度は気にしなくてよいか。
 → 交換頻度が少ないほうが良いならレフ機
   (但しフォーカシングで背面液晶を多用するなら電池節約効果なし)

・オールドレンズを積極的に活用したいか。
 → 積極的に活用したいならミラーレス機 (但しPentaxという選択肢もあり*2 )

・気候の厳しいところ(特に零下10度以下になる極寒地)に持ち出す可能性が高いか
 → 持ち出す可能性が高いならレフ機が無難
   (但し、耐候性を謳うミラーレス機も出てくる可能性はある)

・重量の軽いフルサイズ機が必要か。
 → ミラーレス機 (APS-Cで良ければ重量の軽いレフ機もあり)

・スポーツや鳥など高速AF追従が要求される対象を撮る機会が多いか
 → ミラーレス機も改善されつつあるものの、レフ機が優位
   (但しすべてのレフ機が高速合焦するわけではない)

 結局、マニアではなくこだわりのない一般的なユーザなら、やはり海外旅行や登山など、充電先に困るところに持ち出す可能性が高いかどうかでの判断で良いと思います。充電先に困るところに持ち出す可能性が高いならレフ機を選択した方が良く、そうでないならファインダーの見やすさや好みで決めたら良いのではないでしょうか。

 オールドレンズを活用したいとか、鳥の撮影をやりたいといった、趣味性の高いこだわりがあるかたは、それに応じて選択していただければ... 

 なお、APS-C (あるいはマイクロフォーサーズ)機を選択すべきか、フルサイズ機かという問題がありますが、それぞれの特徴、メリット、デメリットをまとめておきます。

■フルサイズ機
・センサーの画面サイズが35mmフィルムと同じ36.0×24mm。
焦点距離は変わらず、オールドレンズが同じ画角で使える。
被写界深度APS-Cに比べ浅い。
 ボケを活かした写真を撮るなら有利だが、マクロ撮影ではピントを合わせるのが難しくなる。
・広角レンズは小さめに作れる一方、望遠レンズは長く大きくなる傾向。
APS-Cと同じ同じセンサー(画素)数なら、センサー面積が大きい分、よりダイナミックレンジが広くなる(1センサー当たりの面積が広く受光光量が増えるため)。

APS-C
・センサーの画面サイズがやや小さく、23mm前後 x 15mm前後。サイズは各社によって微妙に違う。
焦点距離はフルサイズ換算で x 約1.5倍になる。オールドレンズを活用する場合は画角が狭くなり実質焦点距離が延びる。
被写界深度はフルサイズに比べ深い。
 マクロ撮影ではピントが合わせやすい一方、明るいレンズでないとボケを活かした写真が撮りにくい。
・望遠レンズはフルサイズ比で短く軽く作れるが、広角レンズは大きくなる傾向。
フルサイズと同じセンサー(画素)数なら、センサー面積が小さい分、よりダイナミックレンジが狭くなる(1センサー当たりの面積が狭く受光光量が減るため)。

フォーサーズ / マイクロフォーサーズ
・センサーの画面サイズは17.3×13mmとさらに小さく、より軽く小さいカメラが作りやすい。
焦点距離はフルサイズ換算で x 2倍になる。
APS-Cのフルサイズ機に対する特徴がさらに強化される。

 端的に言えば、軽量のカメラが好ましい人や、望遠レンズを使って機動力のある写真を撮りたいなら、APS-Cマイクロフォーサーズ機が良く、ポートレートなどを、三脚なども活用して、じっくり構図を構えて写真を撮るスタイルならフルサイズ機、というあたりでしょうか。フルサイズ機は、ボケ味が良く出るといいますが、同時に被写界深度も浅いので、軽率に撮ると微妙なピンボケ写真を量産する可能性も高いです。

 動き回るお子さんやペット、鳥などの動物の写真が中心の方は、被写界深度の深さ=ピンボケの可能性が低いことや望遠レンズの軽さを考えると、フルサイズ機にこだわるのではなく、APS-Cマイクロフォーサーズ機を選択したほうが有利ではないでしょうか?

  なお、画素数は必ずしもセンサーサイズと一致しません。現在フルサイズの最大画素数ソニー α7R IV 約6100万画素 9504 x 6336 ですが、画素数の多いものはフラッグシップ機に限られ、一般的な機種ではAPS-C並みの画素数が多数派です。APS-Cの最大画素数Canon EOS 90Dの 3230万画素 6960×4640 フォーサーズでは2037万画素 5184 x 3888 (または約1600万画素 約4600 × 3450)ですが、おおむね 2000万~2400万画素 (6000 x 4000) がセンサーサイズにかかわらず、一つの標準になるでしょう。因みにTVのフルHDは1920 x 1080 約207万4千画素, 4Kで3840 x 2160 約829万4千画素, 8Kで7680 x 4320 約3317万8千画素です。通常のカメラなら4Kは上回る解像度を持っています。また画素数が多ければファイルのサイズも大きくなりますし、センサー面積が同じならセンサー(画素)数が少ないほうがダイナミックレンジが広くなり有利です。

 Nikonのフラッグシップ機であるD6 (フルサイズ) やD500 (APS-C) は、センサーの画素数は 2088万画素(5568×3712)と下位機より抑えています。おそらく報道写真で要求される、高速で移動するオブジェクトに対するオートフォーカスの追従性を上げたり、ダイナミックレンジを広く取るため、敢えて少なめの画素数にしているものと思われます (画素数が少ないほうがフォーカシングのスピードは有利です)。逆に言えばアート写真でもない限り、プロでもその程度の画素数で十分ということだと思います。一方、例えホームユースであっても、例えばカメラで文献を複写してOCRに掛けようと思うなら画素数は多いに越したことはありません。

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 ところでさらに、具体的にどこのブランドのカメラを選ぶべきかは、レンズ資産がどれぐらいあるかということがポイントになると思います。ソニーのαシリーズの成功は、自社がマイナーなのを自覚してユーザーが他社レンズを使うことを積極的に容認したことが、大きな鍵となったと思います。今や、シグマやタムロンコシナなどのレンズ専業メーカーもまず真っ先にソニーEマウント用のレンズを出し、それをベースに他マウント用モデルをリリースするようになっています。

 また、α7IIまでは、他社マニュアルオールドレンズを使いやすくするオプションのカメラアプリ、「レンズ補正」をリリースしていました(但しα7IIIでは使えなくなっています)。実際、街中でNikonのオールドレンズにα7あたりをつけて使っている人をよく見かけます。NikonユーザであればFM2, 3あたりを使っていた人たちが、軽さへの評価も含めてαシリーズに流れたのではないでしょうか。F3, 4あたりを使っていた人はD800シリーズに移行しそうですので。

 一方、PentaxのKマウントは、残念ですがもはやレンズ専業メーカーが自発的にレンズを作ってくれないほどになってしまいました。

 Nikonはレフ機と競合するミラーレス機Zシリーズをようやく出しましたが、ソニーの成功理由を考えると、Nikonが「ミラーレスなら売れるだろう」程度の考えで出しているとすれば失敗すると思います。またNikonの既存レンズ資産を持つユーザを囲い込めば何とかなる、と思っていても失敗すると思います。おそらく、Nikonのオールドレンズ資産を最大限生かしたいと思っているユーザはすでにソニーαシリーズへ流れ、今Nikonに残っているユーザの多くは、オプショナルでオールドレンズを使うことはあっても、今のレフ機に合わせてレンズのラインナップをそろえてしまったユーザです。従ってこのようなユーザにとっては積極的にZシリーズに移行する理由が見当たりません。私もオールドレンズでよく使うのはAi Micro Nikkor 55mmだけです。あとは軽さで勝負を掛けるか、というあたりです。

 具体的に考えると、Z6, Z7は585gですが、Fマウント用アダプター(135g)をつけるとD780 (755g) に対し重さ的にはさほど変わりません。既存のレフ機ユーザーを自発的に移行させるには500gを切らないと難しいのではないでしょうか。端的に言えばD3500, 5600クラスの重量のフルサイズ機が実現すれば、FTZアダプターの重量増分+電池交換頻度の高さというデメリットをフルサイズが使えるというメリットで埋め合わせてかろうじてレフ機と同等の使い勝手ということだと思います。D780を使っている方なら、現状なら撮影性能、重量はZ6と同等で、電池交換頻度が増える分デメリットなので、Z6に買い替えるメリットゼロ、Z7なら同等重量で解像度が上がるメリットはありますが、デメリットも考えると価格差ほどの買い替えメリットはない、というあたりでしょうか。FTZアダプターの希望価格の高さ(約4万円)も狂気の沙汰としか思えません。

 仮に、NikonがZマウントを成功させたいと思っているなら、自社レンズで既存ユーザの囲い込みを狙うのではなく、Zマウントの情報を積極的に公開して他社レンズの使用を積極的に容認すべきでしょう。当面自社生産レンズは、キットレンズと、勝負玉のみに限定するのもありだと思います。そのほうが投資リスクが少なくて済みます。また、他社が見捨てた他社オールドレンズを使えるアダプターも積極的にリリースし、自社、他社を含めたオールドレンズユーザの呼び込みを積極的に図るべきです。ソニーαの最新機種で「カメラ補正」が使えなくなったのもNikonにとってはチャンスです。今のレフ機とは異なる層を開拓する (簡単に言えば既存のユーザを守るのではなく、ソニーαのユーザを奪いに行く) という視点が必要だと思います。

*1:AF技術については、以下の記事を参照。

dc.watch.impress.co.jp

*2:Pentaxのカメラはオートフォーカスが弱いと言われていますが、オールドレンズの活用がメインなら問題ないでしょう。またレンズの種類が少ないのも弱点ですが、オールドレンズの活用が中心なら問題になりにくいでしょう。