省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

darktable 3.4 を使ったカメラによるネガデュープ画像のネガポジ反転の方法

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 非Raw ファイルのネガ画像のネガポジ反転には、darktable を使って下さい。RawTherapee および ART はベイヤー & X-trans Raw形式ファイルのネガポジ反転にしか対応していません。なお、Sigma Foveon センサーRaw ファイルの場合は、一旦 TIFFに変換して darktable で処理する必要があります。

 以前、フリーウェアのRaw現像ソフトの一つ、darktableにおいてもカメラで撮影したネガデュープファイルをネガポジ反転するnegadoctorという機能が搭載された(2020.8に公開された Ver. 3.2.1より)ということを紹介しました。最近当サイトへのアクセスを見ますと、1月にクモハ11117の写真をアップしたことで一時的にこの記事へのアクセスが急増しましたが、それを除くと、どうやらデジタル一眼レフカメラ (DSLR)でどうやってネガフィルムを取り込むかの方法を検索して当サイトにたどり着く方が多いようです。それを考慮して、今回は、darkableを使ったネガ画像のポジ反転の説明を、darktableを使ったことのない方にも分かるように、詳しく紹介したいと思います。

 なお、darktableは昨年クリスマスのメジャー・バージョンアップで、Ver. 3.4となっていますので、それに準拠して紹介していきます。なお、3.2から日本語対応が外れましたが、今回も継続して日本語表示がありません。どうやらコントリビューターがいなくなったようです。linux上だと、自力でメニューの日本語化が可能なようですが、Windows版では不可能です。また、negadoctor機能が搭載されたのは、日本語に対応しなくなった3.2以降です。

 それもあって、なるべくネガポジ反転の仕方を丁寧に説明していきたいと思います。ただdarkableの全般的チュートリアルを書くのは無理なので、あくまでもネガをDSLRで撮影したRawファイルを取り込んでポジ反転する(&ファイル保存)ところまでに内容を限定します。

目次

1. darktableの基本的な構成とワークフロー
2. negadoctor モジュールの構成
3. デジタルカメラによるネガデュープの準備およびネガ撮影
4.フィルムベースカラーの調整
5. ネガ撮影コマのネガポジ反転

 1. darktableの基本的な構成とワークフロー

 まず、darktableを使用するには、ダウンロードしてインストールしておかなければなりません。ダウンロードサイトこちらです。OSごとに指示に従って(但し説明は英語です)インストールしてください。Windows版なら、インストールファイルを管理者モードでダブルクリックして実行すれば簡単にインストールできます。なお、Mac OS に関しては、Ver. 10.7 (Lion) 以降、Mac App Store で配布されていないソフトウェアのインストールが面倒になっています。英語インストラクションが配布サイトにありますので、それに従ってインストールしてください。

 インストールが終了したら、起動します。以下は、darktableを起動したデフォルト画面です。

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darktable オープニング画面

 darkableは大きく分けて2つのモードがあり、一つはlighttable (ライトテーブル)と称する、ファイルマネージャ・モード、もう一つはdarkroom (暗室)と称する編集モードです。他には、mapモード、slideshowモード、tetheringモードがありますが省略します。オープニングではlighttableになっており、ここから編集したいファイルを選んで、右上をクリックしてdarkroomに移行します。なお、編集したいファイルのあるフォルダが選択されていない場合は、左上のfolder ボタンを押して、編集したいファイルのあるフォルダを選択してからファイルを選択してください。

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darkroom画面

 darkroomでは左側サイドバーが編集ツール類、右側サイドバーがモジュール管理になります。モジュール管理では、デフォルトのタブ配置だと、今有効なモジュール、テクニカル、諧調、効果と4つのタブに大きく分かれ、ヒストグラムの下にあるアイコンをクリックして選択します。なお、3.2.1 以前はこのタブのグルーピングがもっとたくさんでしたが、Ver 3.4では、タブ配置がデフォルトの場合、大幅にシンプルになっています (タブ配置を変更することもできます)。またモジュール名でモジュールを検索できるようになっています。以下タブ配置がデフォルトであることを前提として説明します。

 negadoctor はテクニカルの下にあります。あるいはモジュール検索でモジュール名を検索してもOKです。

 negadoctorをオンにすると、下記のような画面になります。

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negadoctor起動画面

 編集結果をファイルとして出力するには、lighttableにもどり、出力したいファイルを選択し、右側のモジュール管理ダイアログ中にある export selected (選択した画像の出力)モジュールを使って、出力パラメータを入力した上で、export (出力)ボタンを押して出力します。

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lighttable: exportモジュール

 なお、編集内容は、ファイルの出力しなくても、ファイルと同じフォルダに、編集元ファイル名 + .xmf という拡張子のついた付随ファイルの中に保存されます。このファイルを消すと未編集状態に戻ります。編集してもオリジナルRawファイルの内容を改変することはありません。

2. negadoctor モジュールの構成

 darktable - negadoctorモジュールの、Rawtherapeeとは異なる特徴として、動作対象がベイヤーセンサーもしくはx-transセンサーを使ったデジタルカメラRawファイルに限られていないことです。ですので、フィルムスキャナで取り込んだTIFFjpegファイルなどにも活用することができます。またSigmaのDSLRで取り込んだファイルも、darkable3.4では、x3f形式対応となっていますので大丈夫かと思います*1もっともフィルムスキャナや、フィルム対応フラットヘッドスキャナでネガを取り込んでネガ画像のまま保存している方がどれほどいるかは分かりませんが... また設定項目もRawTherapeeより細かいです。RawTherapeeはネガモジュールではネガポジ反転のみ行って、あとの調整は他のモジュールに任せるという考え方なのでより単純です。

 negadoctorは、大きく分けるとfilm properties (フィルム設定), corrections (補正), print properties (プリント設定)の3つの構成になっています。最初に起動すると film propertiesが現れます。起動したら最初に、一番上のfilm stock (生フィルム)でカラーかモノクロかを選択します。

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nagadoctor: film properties

 film propertiesの最初、color of the film base (フィルムベース色)はフィルムベース色を設定するところで、未露光部分のフィルムのRGB値を設定します。値は通常よく使われる 0-255ではなく%表示 (0%が全暗黒、100%がハイライト)となっています。これはRawファイルは通常8bitではないからです。この値はピックアップツールで編集画面から自動的に取得することができます。D minとはダイナミックレンジ中最小値(最暗値)の意味です。

 次のdynamic range of the film (フィルムのダイナミックレンジ)はフィルムのダイナミックレンジ (D maxとは最大値 [最明値])で、スライダーを左に寄せるとフィルムが明るく、右に寄せると暗くなります。ピックアップツールで値を取得もできますが、手動で調整するときはヒストグラムを見ながら調整してください。

 scanner exposure settings (スキャナ露出設定)はスキャナの露光の偏りを調整するプロパティで、簡単に言えばブラックポイントの設定です。左に寄せるとフィルムが明るく (最暗部が明るく)、右に寄せると暗くなります。やはりピックアップツールも使えます。

 dynamic range of the filmとscanner exposure settingsを調整することで、画像のダイナミックレンジをクリップしない範囲で最大限広く取ることができます。

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negadoctor: corrections

 correctionsタブはカラー調整機能で、暗部(shadows color cast)と明部(highlights color cast)に分けて、ホワイトバランスを取るためにRGB値の出力を調整します。ピックアップツールも使えます。なお、ピックアップツールを使ってそれぞれのニュートラルポイントをピックアップすることで、自動的に調整できます。なおこのピックアップツールは指定した範囲内の最も明るい点が純白、最も暗い点が純黒と仮定してホワイトバランスを調整します。もしピックアップした範囲の最明点が純白、最暗点が純黒でないばあいは、マニュアルでRGBの出力値をいじってホワイトバランスを調整してください。

 なお、shadows color castを動かすと明るい部分にまで影響しますので、両者を調整するときは、shadows color castから先に調整してください。

 

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negadoctor: print properties

 print propertiesタブは、ペーパープリント用に画像出力を調整する機能で、paper blackは色の濃度、paper gradeはガンマ調整、paper glossは、出力するプリントの光沢に応じてハイライトを調整する機能です。さらにprint exposure adjustment (プリント露出調整)は、出力するプリント用に露光を調整する機能です。

 主に、Rawファイル現像前に画像のハードコピーを取って出力を取る際に活用する目的で設定されており、機能的には filmic RGBモジュールのlookタブとほぼ同じです。以下の説明では、print propertiesタブの説明は省略します。

3. デジタルカメラによるネガデュープの準備およびネガ撮影

 darkable 3.4マニュアルの118ページの記述によりますと、まず準備としてネガを撮影する前にカメラでプロファイル画像を撮った後、その画像をもとにwhite balanceモジュールでホワイトバランスを合わせることが望ましい、と書いてあります(必須ではありません)。プロファイル画像とは、おそらく、例えばネガをライトボックス上で撮るなら、ネガを入れずにライトボックスの白い画面をそのままとるとか、あるいは何らかの光源の前で撮るなら、すりガラスやトレーシングペーパーなどをネガ代わりに挟んで撮影しておき、その画像を元に、ホワイトバランスモジュールでホワイトバランスを取っておけばよいと思います。

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white balanceモジュール

 そのあと、Nikon ES-2などを使い、デジカメでネガを撮影しておきます。その際、クリッピングしない範囲で最大限ダイナミックレンジをフルに使うように撮影しておきます。カメラにもよると思いますが、ネガ自体が暗めですので、通常より若干絞りを開いて撮影しておいてよいと思います。また撮影の際、未露光の部分があることが望ましいですが、ES-2などを使っていて、未露光の部分を同時に入れることが難しい場合は、そのネガの未露光のコマを別途撮影しておきます。

4.フィルムベースカラーの調整

 とりあえず、まず未露光部分のあるコマのファイルを読み込みます。

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未露光ネガ読み込み

 negadoctorを使う際の一般的注意として、トーン調整を行うモジュール(filmic rgb, base curve等)はオフにしろとマニュアルに書いてあります。とりあえず、white balance以外のモジュールはオフにできるものはすべてオフにするでかまわないとおもいます(※white balanceモジュールも、上に書いたようなプロファイル画像を使った事前調整を行わない場合はオフにしないとかえって有害です。また、事前調整をやったとしても、その後別のファイル編集でホワイトバランスを動かしたような場合は、やはりオフにしておかないと結果がおかしくなり有害です。white balanceモジュールを活かすなら常にネガ編集の直前にプロファイル画像を使った調整を行って、そのパラメータを引き継ぐ形でwhite balanceモジュールを有効にしてください。また、最終的に良い調整結果が得られない場合はまず white balance モジュールの悪影響を疑ってください)*2。今どんなモジュールが有効になっているかは [今有効なモジュール (active modules)] (上のdarkroom画面の図を参照)で確認できますので、それを見てオフにすべきモジュールを確認してください。

 また、input color profileモジュールで、input profileに、standard color profileを選ぶとともに、working color spaceは、linear REC2020 RGBを選択してください。
※ Ver. 3.6.1 追加情報: standard color profile という選択肢がなくなっています。その代わり、embeded matrix を選んでください。なお、カメラではなく、スキャナで取り込んだ画像に関しては、matrix データがありませんので、もしネガ画像がリニアで取り込んだものなら working profile と同じく linear REC2020 RGB を、非リニアで取り込んだなら読み込んだ設定に応じて sRGB か Adobe RGB を選んでください。

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input color profile設定

 次にnegadoctorモジュールを探し、電源ボタンアイコンをクリックしてオンにします。そした color of the film base のピックアップツールのアイコンをクリックしてからで下図のように未露光部分を範囲指定するとフィルムベースカラーの値が入力されます。なお、未露光部分を撮影したコマが得られない場合は、次項で説明します

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フィルムベースカラー測定

5. ネガ撮影コマのネガポジ反転

 フィルムベースカラーを測定したコマとネガポジ反転したいコマが別々のコマ(ファイル)である場合は、ここで一旦lighttableに戻ります。そして今測定したフィルムベースカラーのプロパティを、ネガポジ反転したいコマにコピー&ペーストで貼り付けます

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ベースカラー設定のコピー

 まず今測定した未露光部分のあるコマのファイルを選択し、ctrl+c でプロパティをコピーします。次にネガポジ反転したいコマを選択して、ctrl+v でプロパティを貼り付けます。すると画像が反転します。そのコマを選択したまま、darkroomに行き、negadoctor モジュールを開いてください。

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darkroom

 新しいフィルムですと、この時点で良好な結果が得られるかもしれませんが、フィルムが古いと褪色のため色被りがみられます。RawTherapeeでは、この時点でホワイトバランス調整モジュール等を使って調整できましたが、darktableでは多くの色調調整モジュールはポジ画像を前提としており使えません。通常のホワイトバランスモジュールを使うと画像がオレンジ色になってしまいます。従って、必ずnegadoctor内で調整してください。

 なお、未露光部分を撮影したコマが得られず、フィルムベースカラーの測定ができない場合は、ネガポジ反転をしたいコマを選んで、darkroomに行って、negadoctorに入って最初に、手動で color of the film base の Dmin r, g, b 各 component の スライダーを適宜動かし、おおむねホワイトバランスがとれるよう調整してください。厳密でなくて大丈夫です。

 そうしたらD max値(輝度の最大値)をピックアップツール値を使って自動調整します。ピックアップツールをクリックするとデフォルトで画面の大部分が範囲指定されると思いますが、その中から最明点を探して、それに基づいてD max値を決定します。このあたりdarktableのピックアップツールの優れている点です。

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D max値設定

 自動調整では明るすぎる、もしくは暗すぎると思ったらヒストグラムを見ながら手動でスライダーを動かして再調整してください。次にカラーを調整します。

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カラー調整

 D max の設定が終わり、corrections (補正) タブに移ったら、まずshadow color cast 調整(純黒色の調整)を行います。ピックアップツールを使って画像の中の最も純黒に近い点を指定しますが、ここで画像範囲全体を指定すると最暗部を自動的に純黒点だと判断してそれをもとに調整します。最暗点が、ニュートラルでない場合のみ、範囲を絞ってニュートラルな黒点を探してピックアップしてください。画像中にニュートラルな黒点がなく、調整が不十分な場合は手動でスライダーを動かして調整してください。

 その次にhighlight color cast 調整(純白色の調整)を行います (highlightをshadowより先に調整してはいけません)。ピックアップツールを使って画像の中の最も純白に近い点を指定しますが、上と同様画像範囲全体を指定すると最明部を自動的に純白点だと判断してそれをもとに調整します。それでだめな場合は、shadow color castと同じ要領で、ニュートラルな白点を探してください。画像中にニュートラルな白点がなく、ピックアップツールでの調整が困難な場合は、手動でスライダーを動かして調整してください。

 この辺り、なかなか使い勝手が良く出来ています。RawTherapeeより調整がやりやすいです。また結果もなかなか良い感じに仕上がっています。

 なお、negadoctorをオンにした後は決して white balanceモジュールでホワイトバランスを調整しないでください。とくにピックアップツールを使ってニュートラルポイントをクリックすると画像全体がオレンジ色になってしまいます。ネガ処理においては、white balanceモジュールは、カメラ特性やネガを撮影した光源の偏りを調整するためだけのツールと考えて下さい。

 ここまで出来たら、更に別のモジュールを使って追加の補正を行っても良いですが、一旦TIFFなどに現像・出力し、そのファイルを再度読み込んでから後続の画像調整を行った方が良いかもしれません。というのは、darkableのモジュールはwhite balanceモジュールのようにネガ画像を前提としていないモジュールもありますので。フィルミックRGBなどは併用してもOKでしたが。また、ここまでの調整で色調が今一つと感じても、フィルミックRGBなどを使って追加でトーンを調整すると、うまくいくことも多いので、ここまでで100%の色調補正を目指さなくても大丈夫かと思います。

 なお元画像がネガフィルムを撮影したカメラRawファイルであって、Rawファイルでないとできない調整モジュール (demosaic [デモザイク処理]や denoise (profiled) [カメラプロファイルを使ったノイズ低減], raw denoise [Rawノイズ低減]など) をかけるつもりであるならば、出力前にそれらを調整してから出力します。なお、demosaicには、ベイヤーセンサーのRawファイルでかつ、ネガファイルム撮影時に十分な光量があったなら、AMaZEを推奨します。デフォルトはクオリティより処理速度を重視するPPGとなっていますので、AMaZEに変えた方が良いです。x-TransセンサーのRawファイルの場合は、Markesteijn 3-pass がよりベターです。

 元画像が非RawファイルであるTIFFJpeg等、もしくはRawファイルであっても、SigmaのfoveonセンサーのカメラやCCDスキャナから作成したRawファイルの場合はこれは当てはまりません。その場合、そもそもこれらの機能は有効になりません。

 ファイル出力には、lighttableに戻って、export selectedモジュールから出力します

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ファイル出力

 出力設定ですが、この後も引き続き darktable でファイル編集や調整を行うなら、file format (ファイル形式)はTIFF、bit depth (bit深度) は16bit、compresshon (圧縮)は deflate (zip)または deflate with predictor(予測因子付きZIP圧縮)、profile (プロファイル)はlinear Rec2020 RGBを推奨します。Photoshop等に持っていくならリニアなプロファイルでないほうが良いかもしれません。最終出力なら 必要に応じてファイル形式はjpegでも良いですし bit深度は8bitでもよいです。またprofileはsRGBかAdobe RGBあたりのガンマ補正のあるプロファイルが無難でしょう。web用のファイルでしたらファイル形式 jpeg +プロファイル sRGB の一択です。他のパラメータは、リサイズを行わない限り、デフォルトのままで良いと思います。リサイズをやる場合は、set size(サイズ設定)で、ピクセルを設定するほか、allow upscaling  (アップスケーリングを行うか? → 拡大設定の際指定)、high quality resampling (高品質リサンプリングを行うか?)を指定します。設定を完了したら、最後はこのモジュールの一番下のexportボタンを押してファイルに出力します。

 なお、画像編集を続けるなら、bit深度は8bitを使うべきではありません。編集の際にトーンジャンプを起こしやすく好ましくありません。

 一旦調整したパラメータ設定を他のコマに流用するにはlighttableのサムネイル画像表示から、流用元のコマの上で Ctrl+Cでプロパティをコピーしたら流用先のコマの上でCtrl + V で貼り付けることで流用可能です。

 また、ネガが不均等黄変・褪色を起こしていて、darktable上での補正で調整しきれない場合は、当サイトで公表している不均等黄変褪色フィルム補正法をぜひご参照ください。他のサイトでは知ることのできない、私がオリジナルに開発した補正技法も含めて紹介しております。

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negadoctor調整後 filmic RGBで調整し出力した結果

 褪色補正に関する使用感としては、Vuescanのように褪色復元をチェックするだけではありませんが、RawTherapeeのように、単純なホワイトバランス調整一本やりでもなく、ネガ補正に特化したシャドウとハイライトに分けたホワイトバランス調整を設けることで、セミオート的に補正が可能です。またRawTherapeeはネガフィルム・モジュールのニュートラルポイントのピックアップが使いにくいです。おそらくピックアップポイントが狭すぎて、ピックアップポイントがちょっとずれるだけでフィルムベースの値が大きく振れる感じです。darktableの方がRawTherapeeよりも良好な結果を得るまでの調整は容易だと感じました。その意味ではVuescan等に次いで、調整が容易だと思います。フリーツール中では断トツかもしれません。また、Adobe Lightroomは、簡単にネガポジ反転を行うには有料プラグインが必要なようですので、すでにLightroomを使っている方にもdarktableを使うメリットがあると思います。

 

 また、カメラのホワイトバランス調整に関しては、マニュアルではやった方が良いと書いてありましたが、褪色したフィルムではいずれにしろ、カラー調整を行わなければなりませんので、あまり神経質に考えなくても良いように思います。Rawファイルにはいずれにせよホワイトバランスの記録があり、darktebleは、デフォルトの設定ではそれを読み込んでいます。これはフィルムのベースカラー測定にも言えることで、ベースカラー(あるいは光源)が大きく異ならない限り、フィルムごとにいちいち測りなおさなくても良いように思います。

 というわけで、現時点(2021.1)では、デジタルカメラを使ってデジタル化したネガフィルムのネガポジ反転にはRawTherapee よりdarktableを推奨します

追記:

 以下に darktable を知らない方に向けた超入門記事を書きました。よろしければご参照ください。

yasuo-ssi.hatenablog.com

 

*1:なお、Sigmaのx3f形式をDNG形式に変換するには、以下のツールがあります。

github.com

*2:white balanceモジュールはあくまでもポジ画像のホワイトバランスを調整するモジュールです。従ってプロファイル画像を使ったwhite balanceモジュールによる事前調整とは、単にネガ画像が本来のオレンジ色に写るかどうかを調整するためのものであり、反転後の画像のホワイトバランスを調整するわけではありません。しかし、実際にはカメラ上でホワイトバランスを調整していれば、カメラに写った色の差よりも、フィルムベースの色の差の方が大きいはずです。フィルムベースの差はnegadoctorのなかで調整しますので、その意味ではwhite balanceモジュールをオンにして調整する意味は少ないと言えます。darktable の white balance モジュールは、光源が白熱灯や蛍光灯などで、かつ、カメラのホワイトバランス調整だけでは吸収しきれないときに使うと考えてよいかと思います。