こちらは、飯田線旧型国電置き換え直前 (1983.6) のクハ68404です。撮影場所は豊橋駅です。
この、写真も黄変写真から復旧したものです。スキャン直後のオリジナル写真は下記のような状態でした。
Bチャンネルを見ると、結構黒変しています。また、上端、下端もBチャンネルの情報抜けが見られますが、上のほうが情報抜けが激しいです。マチエールが油絵状ほどまで行きませんが、きめの荒れは明らかで、最重度ではないにしろ、重度の損傷状態であることは間違いありません。
そしてこちらが、再編集して再建したBチャンネルです。全般に明るくなっているほか、周辺部分の情報抜けも補正しています。
Bチャンネル再建法適用後です。Bチャンネルを再建するときに、上端、下端にR+Gチャンネルを混合した画像から抜き出して補正をかけています。ただ、これだけだと、微妙に黄色みがとり切れません。そこで色域指定を使って部分補正を掛けます。
駅ビルの壁面部分、電車のブルー部分、ホーム手前の黄色みの三か所を、三層の補正レイヤーを使って補正を掛けました。それぞれ、黄色い部分を色域指定して、トーンカーブでBチャンネルを補正しました。追加補正前と追加補正後では、微妙な差しかないように見えるかもしれませんが、トーンカーブを使ってコントラストを上げたり、彩度を上げると、この微妙な差が強調されますので要注意です。
この画像をTIFFに保存したものを、RawTherapeeに読み込ませ、全体にトーンカーブ補正をかけ、さらにフィルムシミュレーション (Fuji Sensia) で仕上げました。RawTherapeeでトーンカーブ補正を掛けると、なぜかGIMPやPhotoshopでトーンカーブ補正をかけるより、もやが晴れたように色彩がしっかりし、鮮明になります。発色も素晴らしいです。もともと、RawTherapeeはフィルムシミュレーションを目当てに使い始めましたが、黄変ネガフィルムの補修に手放せなくなりました。
念のためトーンカーブの違いもお見せします。
一番左がオリジナル、2番目がBチャンネル補正法適用、3番目が色域指定補正、一番右が最終結果です。
最後に例によって本車の車歴を紹介します。
1937.2.28 日本車両製造 68004 → 1937.5.16 使用開始 大ミハ配置→ 1937.12.10 大アカ →1944.10.20 改造 55118 (座席撤去 吹田工機部) →1948.12.8 座席整備 →1953.6.1 改番 68030 → 1955.8.30 更新修繕I → 1966.5.28 静ママ→ 1967.12.16 改造 (便所取付工事) → 1968.5.15 改番 68404 →1983.8.31廃車 (静ママ)
当初は、京阪神緩行線用に、クハ68004として新製され、戦時中にロングシート化でクハ55に改番、戦後座席が再整備されましたが、当初番号に戻ることなく68030と改番され、その後1966年に飯田線にやってきてそのまま最後まで伊那松島区で過ごしました。119系置き換え直前まで活躍していたと思います。関西で29年、飯田線で17年過ごした計算です。関西時代は新製当初を除きずっと明石区で、飯田線時代はずっと伊那松島でした。