・ART (Another RawTherapee)
現行の1.10を微修正した開発版のバイナリーが下記で公開されています。
keybase.pub こちらでは拙訳の日本語ファイルの翻訳の問題点が修正されているほか(特にホワイトバランスのモードの翻訳のダブリ)、トーンカーブにニュートラルモードの追加、さらに韓国語訳が付加される等の修正が加えられています。修正点は少ないので、開発版とは言えかなり安定して使えると思います。
なお、単に、拙訳の修正であれば当サイトで配布している日本語ファイルの入れ替えだけで大丈夫です。
また、現在Rawファイルの読み込みエンジンを、RawTherapee以来の、個人のボランティアベースで開発が進められているオープンソースソフトであるDCRawから、民間企業であるLibraw LLC. によってオープンソースソフトとして開発が進められている、Librawに変更するプロジェクトが進んでいます。DCRawだと新規Raw形式への対応が遅いため、対応の早いlibrawに全面的に変更しようというもので(部分的にはlibrawは使っているはず)、ソースコードが公開されいますが、今はコンパイルするにも環境によってエラーが出る状況でその検証を募っている状態です。今年のクリスマスに新バージョンが間に合うことを期待したいです。
なお、Librawのライブラリは、Microsoft の Windows上でRaw画像を表示されるユーティリティ Raw Image Extention にも採用されています*1。
・Adobe DNGコンバータ他
DNGコンバータで、今までCamera固有プロファイル非対応だったことがネットで話題に上がっていた、Canonの R5, R6等のCR3形式ファイルについて、10月のバージョンアップから、Camera固有プロファイルが追加されました。おそらく Camera Raw, Lightroom等も同様だと思います。ファイルの日付は2021.9.30となっていました。なおAdobe Standardプロファイルでは既にこれらの形式対応のものが用意されていました。
海外のオンラインディスカッションを見ると、Adobeの対応が遅れていたのは、CanonからCR3形式に関する情報提供を受けるためには、かなり厳格な包括的秘密保持契約を結ぶことをを求めらるため、どうもそれをAdobeが嫌っていままで遅れてしまったようです。Adobe Standardプロファイルでは、CR3形式に対応していましたが、これはCanon側からの情報提供を受けずに独自にAdobeが解析していたようです*2。Adobe側がリバースエンジニアリングまでやっていたかどうかは分かりませんが...
ただ、リバースエンジニアリングを行わなくても、推測である程度データのインターフェースを突き止めて対応可能という議論もありますので、Adobeも同様の方法で対応していた可能性もあります。なお、CR3形式と言ってもすべてのカメラで同一ではなく、フリーソフトでは機種によって対応出来たり、出来なかったりしていました。
ちなみにCanonが今回厳格な包括的秘密保持契約を結ぶことをを求めたのも、どうやらCR3形式が使っている特許供給元から求められた可能性が高いです(引用のスレッドでは、CR3形式で使われている、HEIF フォーマットと CRX 圧縮技術のためではないかと推測されています)。Canon側としては、カメラの普及という点では、広くCR3形式に対応してもらったほうがメリットが大きいはずですので。
今回、Adobe側が観念してCanon側の要求通り包括的秘密保持契約を飲んだのか、それともCanon / 特許供給元が妥協して条件を緩めて情報を供給したのかは分かりませんが...
*1:
*2:以下この情報の出典です。
discuss.pixls.us なお、ここで明らかになったことは、2020年9月の段階で、Canonはどこのソフトウェア開発業者にもCR3フォーマットの情報を提供していないということと、Adobeは独自解析でCR3フォーマット対応を行っている、ということです。