省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

ARTの Raw 埋め込み レンズ補正データ対応状況について

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 ちょっと前に、ART が Olympus / OM system の Raw 埋め込みレンズ補正データに対応したという記事を書きましたが、現在 (Ver. 1.22) ART は下記のメーカーのカメラに関する Raw 埋め込みレンズ補正データに対応しています。ただ、一部の機種に関して対応していない可能性もあります。

 

dng 形式

Fujifilm

Olympus

Sony

 

dng 形式ファイルのレンズ補正埋め込みメタデータに対応している、ということは、直接その Raw ファイルのレンズ補正埋め込みメタデータを読めなくても無料で使える Adobe の DNG コンバータ使って dng 形式に直せば、レンズ補正埋め込みメタデータを読み込めることになります。

 そこで、いくつかの ART が非対応の Raw ファイルを dng ファイルに直してみたところ、レンズ補正埋め込みデータが読めるのを確認しました。確認したのは、Nikon Z シリーズ + Z レンズ及びパナソニックです。Canon の RF シリーズについては現状ではそもそも Raw 埋め込みデータを使っていないようです。

 因みに他社レンズ使用の場合の対応ですが、他社レンズが埋め込み補正データに対応していれば、レンズ情報は正しく埋め込まれますが、対応していない場合は埋め込まれません。これはどの社のどのレンズを使っているかで異なるようです。

 Nikon の Z9 以降の新しいロスあり高圧縮形式も、以前指摘したように、FOSS の Raw 現像ソフトでは現状直接読めませんが、dng 形式に変換すると読めるようになります。FOSS の Raw 現像ソフトでは 一旦 dng 形式に変換することの意義が今後大きくなっていくかもしれません。

 なお、dng ファイルに変換するとカメラ固有の機能やカラープロファイルの再現性はどうなるのか、と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、そもそも Raw ファイルにはこれらのカメラ固有機能については、それをオン/オフにしているのかというようなデータは含まれていますが、レンズ補正データを除いては、補正データ自体は Raw ファイルに含まれていません。従ってカメラメーカー純正現像ソフト以外のサードパーティの現像ソフトでは、それらを厳密に再現することはできません*1。それは LightRoom であっても同じです。ただカメラ固有プロファイルなどはエミュレートしているので、似た現像結果は出せているというだけです。その意味で、dng に変換してもデメリットはありません。

 要は、Adobe Camera Raw や Light Room で扱える範囲のメタデータはすべて dng 上にコピーされているということです。カメラメーカ固有のメタデータで dng ファイルに変換したときにコピーされない項目はあるかもしれませんが、あったとしても、それはLight Room などどのサードパーティ製 Raw 現像ファイルでも扱えない、再現されない項目なので、実質的なデメリットがないということです。

 ですので、当ブログで何度か指摘しているように、厳密にカメラ内現像と同じ結果を出したい場合は、カメラメーカー純正現像ソフトを使うべきです。

 なお、DNG の最新版 (1.7) の仕様書は以下のページからダウンロードできます。

helpx.adobe.com

 基本、Exif または TIFF-EP、および IPTC, XMPで記述されるデータはすべて含まれるようですので、大半のデータは変換時にコピーされると考えてよいものと思われます。

 

 なお、富士のカメラは純正現像ソフトも OEM なので、純正現像ソフトであってもカメラ内現像と同じ結果が出せません。そこで、富士はカメラをPC に接続し、カメラ内のファームウェアを使って Raw 現像を行う現像ユーティリティを提供しています。とくにフジのフィルムエミュレーションは、どうも動的に定義されているようなので、富士の純正現像ソフトも含めた、通常の現像ソフトに登載されているカラープロファイルや LUT では、似た結果は得られても、厳密に再現することは不可能なようです。

 

 なお、ART Ver. 1.21.3 および 1.22 において Olympus の埋め込みデータを使い色収差補正を掛けると、1:1表示にしたときに中央にグリーンのサークルが現れるというバグが報告されています。次期バージョンまでには修正される予定ですが、それまでは、Olympus / OM system の Raw ファイルに関しては、埋め込みデータを使って色収差補正をかけないようご注意ください。また、ART Windows 版バイナリーでは、現状 OM-1 以降のカメラの埋め込みデータは読めません。これは次期バージョンで修正されます(Ver. 1.22.1 で修正されました)。また、Linux においては、exif2 のバージョンが 0.27.6 以上が必要ですので、OM-1 以降で読めない場合は、exif2 のバージョンアップをご検討ください。

 因みに、darktable では OM-1 は対応ですが、OM-1 MkII はそもそも Raw ファイル自体が読めません。

 

*1:これについては、以下の記事で指摘しておきました。

yasuo-ssi.hatenablog.com