省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

D5500で撮影した写真の空の色をARTを使って印象に近づける - ART / RawTherapee現像 Tips

f:id:yasuo_ssi:20210904211415j:plain D5500を使って撮影していると、空の色が印象色よりかなり薄めに出ることが多いような気がしていました。特に木陰から空を写したり、山間から空を写すとその傾向が強いと思っていました。そこで、そのような写真を ART を使って、印象にある空の色に近づけてみます。

 まず、NS Studioを使ってデフォルトで現像した結果をお示しします。

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NX Studio デフォルト設定で現像

 明らかに、空の色はもっと濃いのに白っぽくなっています。D3200だとモニタの色と現像結果が結構異なりますが、D5500ではモニタの方がやや白っぽくなるような気がしますが(日の当たっている所で見ているとなおさら)、おおむね現像結果と大きくかけ離れてはいないように思います。

 このRawファイルを一旦 ART に取り込みます。

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ART読み込みデフォルト

 読み込んだ結果は、NX Studio の現像結果と、デフォルトでも、そうかけ離れていません。原因を探るべくクリッピング領域を表示させてみます。

 

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ハイライトクリッピング表示

 どうもハイライトのクリッピングがひどくて白っぽくなっているようです。そこでトーンカーブをリニアにし、さらに露出補正をマイナスにすると、空の青さが戻ってきました。

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露出補正をマイナスに

 露出補正をマイナスにすると空の青さが戻るということは、そもそも撮影時の露出補正でマイナス補正をやっておけばよかったという話です。腕の下手さがばれてしまいました...なお、測光モードはデフォルトのマルチパターン測光のままでした。

 デジタルカメラの場合は、よほど暗くない限り、ややアンダー気味に撮って、ハイライトでクリッピングしないことが重要と言われますので、あるいは必ずRaw現像で修正するという方針でマルチパターン測光一本かつアンダー気味で撮るのが良いかもしれません。

 なお、露出をマイナス補正にするとハイライトでクリッピングしたところを、ハイライト復元してくれます。ハイライト復元の方式を変えると復元した空の色の出方が変わる可能性があります。ただあくまで後から合成復元しているので元の色通りにならない可能性があります。

 なおこのケースでは、露出をマイナス補正しただけでは、平板で今一つです。また空の青さもセリアンブルーに寄っている感じですが、印象では若干 R がかった青に思われました。これの修正を図って、より印象色に近づけます。

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トーンイコライザで調整

 そこでコントラストを調整するのにトーンイコライザを使ってみました。ミッドトーンを若干上げ、ホワイト領域は下げました。なお、対数トーンマッピングも試してみましたが、結果的には、そちらはいじらないほうが良かったです。

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霞除去を掛ける

 さらに霞除去を掛けると、いい感じに彩度が上がって、葉が輝いている感じが少し出ます。また色温度も上げてみました。

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カラーイコライザで空の青を調整

 最後にカラーイコライザを使ってセリアンブルーっぽい空の青を若干 R が入っている方向に寄せてみました。これであるていど印象色に近くなった気がしますが、不十分な気がします。

 以下結果です。

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最終出力結果

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左 補正済み / 右 オリジナル

 ハイライトの復元方式をブレンドからバランスにすると、少しマシになりました。

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ハイライトの復元をバランスに

 なお、ハイライトの復元を行う際に不自然な効果 artifact を避けるために、以下のディスカッションが参考になります。

discuss.pixls.us

 要点としては、1) デモザイクの際にRCDよりAmazeをなるべく使う、2) シャープニングをオフにする、3)色の波及を使う場合はスムーズさを調整する、というあたりです。