省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

Nikon D5500 明暗差の大きいシーンの写真補正テスト (NX Studio & ART)

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本記事の要点

Nikon D5500 (および、おそらく他のNikon 一眼、ミラーレスカメラも) で明暗差の大きいシーンを撮るときは、ハイライト域、またはそれに準ずる明度域を基準にスポット測光 & 露出補正して撮影する。マルチパターン測光はハイライト域がクリッピングするので使わないほうが良い。

NX Studioで編集する場合は、露出補正+アクティブDライティングを使ってダイナミックレンジの圧縮を図る。

ART を使う場合は、露出補正 + トーンイコライザーもしくは対数トーンマッピングを使って、ダイナミックレンジの圧縮を図る。なお、対数トーンマッピングを使ってシャドウ域の明るさを引き上げるためには、基準中間グレー点を18%から上に引き上げる必要がある。

 

 先日空の青をNikon D5500を使って見た目通りに撮るにはどうしたら良いかということについて記事を書きましたが、今度は明暗差の大きいシーンについて検証します。

スポット測光のケース

 まず、空を中心にスポット測光で撮ってみます。以下NX Studioを使って現像したデフォルトです。空の色は適正です。

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スポット測光デフォルト (NX Studio)

 これに露出補正を掛けます。露出の+補正とアクティブDライティングを併用し、ピクチャーコントロールもExpeed6相当(最新)としました。

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スポット測光画像調整 (NX Studio)
アクティブDライティング最大+露出補正 +2/3EV

 

 さらにもうちょっと露出補正で明るくします。

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スポット測光画像調整 (NX Studio)
アクティブDライティング最大+露出補正 +1+1/3EV

 なお、同様の補正をARTを使ってやってみました。

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スポット測光画像調整 (ART)
露出補正+0.5EV+トーンイコライザ補正
D5500カメラ固有DCPプロファイル適用

 露出を+0.5EV補正し、トーンイコライザでシャドー、ブラック域を明るくしました。なお、基準中間グレー点を変更しない場合、対数トーンマッピングの自動適用は効果がありません(むしろ逆効果)。また、トーンカーブもいじっていません。またDCPプロファイルはDCPトーンカーブとルックテーブルを有効にしています。露出補正を+0.5EVにとどめたのは空の濃さをあまり薄くしないためですが、そのためNX Studioでの補正より若干暗めになりました。トーンイコライザは以下のように設定しました。

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トーンイコライザ設定

 ほぼNX Studioと同様に補正できています。

 なお、上の補正では、対数トーンマッピングで自動適用するとむしろ暗くなってしまいましたが、対数トーンマッピングの基準中間グレー点を引き上げると暗い部分の引き上げが可能になりました。それが以下の結果です。

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対数トーンマッピング中間グレー点引上げ (ART)

 ちょっと空の色が薄くなっているかもしれません。このケースの場合、比較の意味で、上とは逆にトーンイコライザーはオフにしています。トーンマッピングの基準中間グレー点は以下のように引上げた上、自動適用しました。

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対数トーンマッピング中間グレーの調整値

 なお、中間グレー値のデフォルトでの標準は18 (%)です。

 このケースの場合、効果検証のため中間グレー値の調整とトーンイコライザーの二者択一で比較しましたが、実際に調整する場合は中間グレー値の調整とトーンイコライザーの組み合わせで調整するのが良いと思います。

 

■マルチパターン測光のケース

 次に同じシーンをマルチパターン測光(Auto)で撮った結果です。まずはデフォルトから。

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マルチパターン測光 (Auto) デフォルト (NX Studio)

 やはり、空の色がかなり白っぽくなってしまいました。次に補正を掛けます。アクティブDライティングと、マイナス露出補正を組み合わせます。

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マルチパターン測光 画像調整 (NX Studio)
アクティブDライティング最大(+2)+ 露出補正-2EV

 ハイライトクリッピングした部分にピンクの偽色が発生しています。クリッピングした部分を復元・補間した際の問題かと思います。NX Studioは、ARTとは異なりハイライトクリッピング部分の復元の方法を選択することはできません。画像全体も色温度が温かいほうに動いている印象です。これはNX Studioが非リニアベースで画像データを扱っているためかもしれません。

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マルチパターン測光 画像調整 (ART)
露出補正-1.5EV + 対数トーンマッピング 自動 
D5500カメラ固有DCPプロファイル適用

 そこでARTを使って補正してみます。ハイライトの復元の方法を[バランス]や[色の波及]を使うと、NS Studioよりも偽色の発生を抑えられますが完全ではありません。[ブレンド]を使うと、NX Studioの結果とほぼ同じに偽色が発生します。なお、D5500カメラ固有DCPプロファイルを適用し、DCPトーンカーブおよびルックテーブルを適用しています。またこちらは、上とは異なり、アクティブDライティングの代わりに、基準中間グレー点を動かさずに、対数トーンマッピング(自動)を使ってみました。明るすぎるものをダイナミックレンジ圧縮を掛けて暗くするのには、基準中間グレー点を動かさずに、対数トーンマッピングを使うのは有効のようです。

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 以上をまとめると、明暗差の大きいシーンでは、やはり、マルチパターン測光を使わず、スポット測光を使ってシャドー部がかなり暗くなった画像から、補正をかけたほうが良好な結果が得られます。つまりデジタルカメラ撮影において、日中の明暗差の大きいシーンでは、ハイライト側を基準に露出を決定すべきということです

 また撮って出し Jpeg で結果を出したい場合は、カメラ側でスポット測光露光補正+アクティブDライティング (オート設定では不足。マニュアルで強めに掛ける必要) を使えば、良好な結果が結果が得られるということだと思います。

 また、NX StudioのアクティブDライティングというのは、ほぼARTのトーンイコライザをいじるか、あるいは対数トーンマッピングで基準中間グレー値を動かすのと同等機能のようです。